【生と死の狭間】ラン女王即位
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■ショートシナリオ
担当:一乃瀬守
対応レベル:8〜14lv
難易度:難しい
成功報酬:5 G 97 C
参加人数:6人
サポート参加人数:-人
冒険期間:05月23日〜05月30日
リプレイ公開日:2008年05月31日
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●オープニング
「静粛に・・・・」
巨大な議事堂。
その中央で、ラン評議会議事長を務めるエレアザール卿がそう叫ぶ。
ラン国王崩御の後日。
葬式も一通り終り落ち着きを取り戻したラン評議会がまず最初に行なわなくてはならないこと。
それはすなわち『ラン国王選定』。
そのためにまずラン元老院が国王選定を行ない、それを評議会に進言。
評議会は元老院が選定した国王候補が相応しいか、議会で議決を取る。
その結果を元老院に報告し、正式に国王選定が為される。
その後、戴冠式などの儀式を執り行い、霊廟にて新国王の宣誓式を執り行うという流れになっている。
そして現在、費用議会では新国王に、ラン先代国王コンラートの第一王女である『レベッカ・ダーナ』が推薦され、それについての議決が行なわれていた。
義会員120名の中で、レベッカを女王として認めるという意見は93。やはり年が若いという事で反対している者が多かったが、それらについては『五賢老』が補佐に付くという事で概ね合意。
だが、ラン南方ザバ分国王であるジャバナ・ザバ・ボアはレベッカ王女即位に対して全面否定。
彼に付き従う貴族27名と共に、この決議に不服を申し立てると、そのまま退席していった。
その行為により、議会は一時混乱を来したものの、そののちには静けさを取戻し、レベッカ・ダーナ女王の即位が決議した。
●親書を携えて
レベッカ・ダーナ女王の即位が決定した翌日、各国に親善使節が派遣される。
各国の国王宛に送られたその親書にはラン新国王として『レベッカ・ダーナ』が即位すること、そしてその戴冠式の日時などについて記されていた。
それを受けて、各国国王はそれぞれ使節団を派遣し、戴冠式及び宣誓式に参加するということが決定した・・・・。
皆、戴冠式にあわせてランを訪れるのだが、その際に『各国の最新ゴーレム』のお披露目もあるのではという噂が流れている。
そしてランに届けられた親書には、戴冠式に参加したいという、各国からの返答が添えられていた。
一番近い所ではヒの国王『ウィロウ・ブランクーシ』。騎士団長であるクリフ・アヴァランス卿を引き付けてやってくる。
続いてメイ。アリオ・ステライド国王はやってこれないものの、親善使節を派遣してくるという事である。
ジェドからは王妃であるジュディス・ルイドが来国。大勢の騎士を引き連れての参加となった。
そして問題なのはバの参加。
バ国王であるジオ・ガルは参加せず、変わりに王女であるジゼ・ガルがお供を引き連れてやってくる。
その他にもジェド南方からは『伝説』と伝えられし『王立兵学校』からの参加も噂されている。
セトタ6国に送られた親書でも、各国から親善派遣が行なわれるらしい・・・・。
「さて、そろそろラン傭兵騎士団にも仕事をして頂きますかねぇ・・・・」
と呟いているのはラン五賢老にして冒険者ギルド統括責任者であるビリー・アンデルス卿。
「といいますと?」
「ジャグ・バン一味は必ず襲撃に来るでしょう。また彼等にその相手をして頂きたいという事ですよ」
と呟くと、ビリー卿は傭兵騎士団員宛の依頼書を作成し、ウィルに飛ばした。
「ふむ・・・・それで我々が護衛ということか・・・・」
キリッと引き締まった口調でそう告げているのは特務艦グリフィン艦長のアーレン・フィルマー。
「ええ。かなり大勢の貴族や重鎮も向かいます。フロートシップで移動しますので、そのフロートシップの護衛と、可能であればラン国内での貴族達の警護を御願いしたいのです」
そう告げる冒険者ギルド総監のカイン・グレイス。
「任務了解。ではさっそく準備にはいります」
と告げて、アーレン艦長はフロートシップ停泊場へと向かっていった。
●その頃の・・・・
「各国の貴族が大終結か・・・・ジャグ、そっちはどう動く?」
道化師と呼ばれているジャグの片腕が、そう静かに問い掛ける。
「こっちは大きく動く。そっちは静かに暴れてくれ。『泣き男』と『復讐女』はそっちに、マヤはこっちに・・・・それでいいな?」
「ああ、こっちは頭脳戦でいかせてもらう。戴冠式、そこでの不祥事・・・・ランを表面から突き崩すには絶好のチャンスだ・・・・」
と告げると、道化師と呼ばれた男は闇の中に消えていった。
●リプレイ本文
●大空駆ける黄金の翼
──ラン王都・ダーナ・フロートシップ停泊場
カシャカシャッ
次々と響くシャッター音。
ウィルを出発し、無事にラン王都までやってきた特務艦グリフィン。
現在はフロートシップ停泊場にて、緊急時の為に待機モードに入っている。
「それにしても、絶景だな‥‥」
と告げてつつ、デジカメで周囲のフロートシップを撮影しているのは市川敬輔(eb4271)。
目に見える範囲でも、セトタ6国の国旗を掲げているフロートシップが目に入る。
その遠くでは、バの国章を掲げた中型フロートシップが、そして遠くからはさらに別の国のフロートシップが飛んできている。
「まるで万国博覧会ね‥‥そういえば艦長、イーグルドラグーンのパイロットですけれど、今回はどなたが?」
と問い掛けているのは加藤瑠璃(eb4288)。
「メインは加藤、サブをライナスで。市川はグライダー搭乗、グリフィン待機とし、残った3名でウィル親善大使の護衛について貰う」
そのアーレン艦長の言葉に、全員が静かに肯く。
ちなみに搭乗しているガイアス・クレセイド(eb8544)は実に3月ぶりの原隊復帰であり、グレナム・ファルゲン(eb4322)に至ってはメイから帰還したばかりである。
「ま、まあ久しぶりの復帰だからしかたなし‥‥というところだな」
そう笑いつつ告げるガイアスと、少しだけ不服そうなグレナム。
(今まではウィルの為にメイに赴き、ようやく戻ってきた‥‥まあ原隊復帰が認められただけれ今回はよしとするか‥‥)
ということで、一人やる気十分のルーク・マクレイ(eb3527)と共に、3名はグリフィンから降りて親善大使の休んでいる建物に移動。
ライナス・フェンラン(eb4213)&加藤&市川はこのままグリフィン待機となった‥‥。
●えーっと、私達場違いですかそうですか?
──ダーナ王城付近・親善大使の宿泊施設
そこは巨大な建物。
各国親善大使がラン逗留の間宿泊する為の施設であり、各フロアごとに国が定められているらしい。
「私達は2階東ですね」
ルークがそう告げつつ親善大使の部屋の前に進むと、後ろから歩いてきたガイアスがヒの新鋭騎士団をチラリと見ている。
「初めまして。ウィル空戦騎士団のガイアスと申します。その肩の国章はヒの国とお見受けしましたが‥‥」
「ええ。こちらこそ初めまして‥‥」
「同じくウィル空戦騎士団のグレナムと申す。そちらの方は東方の方とお見受けしましたが‥‥」
「ああ。ジェドから御衛士としてやって来た‥‥」
といった感じで、同じ棟の他国の御衛士達と仲良くなっている一行。
と、その後ろで瞳を光らせている‥‥というか殺気を放っている騎士に、その場の全員が振り返る。
だが、その男は静かに頭を下げると、その場から立ちさって行った。
「‥‥バの国章‥‥ジゼ・ガル親衛隊か‥‥」
ボソリと呟くグレナム。
彼はメイ滞在時に、バの話を何度も聞いている。その為、国章にも見覚えがあったのだろう。
「そのジゼ・ガル王女なのだが‥‥親衛隊の目を盗んで外に出ていったらしい。親衛隊員が外で走りまわっているのを見たが‥‥」
と呟くランの御衛士。
「それにしても物騒な‥‥」
とまあ、一時的にですが、その場で略式挨拶を行うと、護衛同士で情報交換をする一行。
「ここが護衛の者たちの待機場所か‥‥失礼する」
そう告げると、二人の男がルーク達の前に姿を現わした。
「初めまして。ジェド南方王立兵学校名代・イワン・フルティンビッチである。ラン滞在中はよろしく」
「同じくジェド南方王立兵学校講師代表・ハンス・ヨアヒムだ‥‥」
そう告げると、二人は静かに挨拶を終え、そのままその場から退出していった。
そしてだれともなく、呟いた一言。
「あれが‥‥噂のジェド王立兵学校‥‥通称『岡本学校』か‥‥」
その場に居合わせた全員に、戦慄が走ったことはいうまでもない。
──その頃
「待機ですかー。暇ですよね」
とグリフィン甲板で呟いている加藤。
「そうか? 俺は結構愉しいが‥‥」
とデジカメのデータを再生し、各国のフロートシップを堪能している市川が呟く。
「何時敵襲があるか判らないのだから、気を抜かないほうが‥‥」
とライナスが告げたとき、ふとグリフィンの近くでこそこそとしている女性を確認。
「市川、加藤、第2戦闘配備で‥‥」
と呟いた時、二人はライナスの視線の先をじっと見る。
そこでは、こそこそとしているどこかの令嬢の姿があった。
「お嬢様、そんな所で何をしているのですか?」
と甲板から呟く加藤。
「あっ‥‥シーッシーッ‥‥見つかってしまいますわ‥‥」
と振り向く令嬢。
その姿は、ラン到着時に挨拶したジゼ・ガルそのものであった。
「ジ・ジゼ王女!! どうしてそんなにこそこそと‥‥」
市川もそのまま問い掛けるが、王女は必死に何かから隠れているらしい。
「どこにいくのも御衛士と一緒ですから‥‥ちょっとまいてきましたのに‥‥」
その言葉の直後、遠くから走ってくるバのジゼ親衛隊。
「あら‥‥これは大変失礼を‥‥」
と丁寧に謝る加藤だが、ジゼ・ガルは笑って許す。
そしてそのまま親衛隊に保護されて、王城へと戻っていったとさ。
●式典当日・誰がために鐘は鳴る?
──王都ダーナ
正午。
王宮では、レベッカ・ダーナの戴冠式が執り行われている。
その周辺では、陸戦騎士団がしっかりと警護、さらに周辺でも各国からやってきた貴族の御衛士達がしっかりと固めている。
会場である王宮内神殿で、竜と精霊の像の前で宣誓を行なっているレベッカ・ダーナ王女と、その周囲を取り囲む重鎮、そして親衛隊が並んでいる。
その後方では、各国の親善大使が列席し、その後方に御衛士たちの姿があった。
厳粛な中で行なわれている儀式。
その間、外では大変な事が起きていた‥‥。
──ゴゥゥゥゥゥゥゥゥッ
と、突然建物が崩れる音が響く。
それは王宮からはかなり離れた、中央街道から西門の方角。
その方向にある城壁が破壊されたようである。
「ラン傭兵騎士団より援軍要請、特務艦グリフィンはこれより西方に向かいアザレア隊と合流、敵を一掃する!!」
アーレン艦長の叫びが艦内に響く。
それと同時に、ライナスと加藤はイーグルドラグーンの元に向かう。
その間に、市川はゴーレムグライダー『震電』に飛び乗り出撃。
そのまま西方に向かおうとしたのだが‥‥。
「こちら『震電』。眼下で王城に向かうカオスニアンを確認。正門の派手な奴は囮だ‥‥こっちが本体と思われる」
と風信器に向かって叫ぶ。
「了解。加藤はそのままイーグルでアザレアと合流。ライナスはグライダーで市川と合流、カオスニアンを王城に近づけるな!! 各国のフロートシップに緊急通信を、急げっ!!」
アーレン艦長の叫びがグリフィンに響く。
「艦長、ルーク達に連絡は?」
「式典の最中だ。それに王城周辺はラン陸戦騎士団ががっちりと警護している、最悪の場合はそちらから連絡が入るだろう‥‥」
その通信を聞いて、ライナスも直にグライダーで出撃。
そのまま街中を縦横無尽に駆け巡るカオスニアン達を追撃していった。
●白と黒の戦慄
──ダーナ西方・プリムラ地区
ドッゴォォォォォォォォォォォォォォォォツ
激しい打ち込みあいが起こっている。
イーグルドラグーンの眼下では、ランの国章の入ったアザレアと、それと戦っている国籍不明の漆黒のアザレアが激しいバトルをしている。
「‥‥見た所、腕は互角ね‥‥さてと」
と呟くと、加藤は単騎で城壁に向かっているノーマークの漆黒のアザレアを確認し、そこに向かって移動。
──ドゴォッ
そのまま地表すれすれに飛んで着地すると、素早く武器を引抜き構えるイーグルドラグーン。
ちなみに得物はハルバード、腰溜めに構えつつ、ブラックアザレアとの間合を取る。
「私はウィル空戦騎士団所属、特務艦グリフィン配属・鎧騎士加藤瑠璃。貴公の所属を告げなさい」
そう風信器越しに叫ぶ加藤。
「所属は不明‥‥名はサフィール。縁あってランを破壊する為にはせ参じた‥‥邪魔立てするならは、叩き斬る」
と告げると、ブラックアザレアは『居合』の構えを見せる。
「ならば、こちらも一歩も通すわけにはいかない!!」
イーグルドラグーンもまた、静かにハルバードを構えた。
そのままお互い、隙を伺うのだが、両者ともに隙はまったくない‥‥。
(‥‥参ったわ。こんなに強敵がでるなんて‥‥)
その均衡がしばらく続くが、やがて後方から各国のゴーレム部隊が駆けつけてくると、ブラックアザレアは後方に下がる。
「ふん。時間稼ぎにはなったが、こんなにランの国力が強かったとは‥‥出直してくるとしよう」
風信器からサフィールの声が届くと、加藤もまた構えを解いた。
「いつでもかかっていらっしゃい。私はいつでも相手になるから‥‥」
騎士道には騎士道で返す。
深追いはせず、撤退していくブラックアザレアを見届ける加藤。
──その頃
「左舷に二人!!」
「了解‥‥」
市川とライナスの二人は、市街地を駆け抜けるカオスニアン達を次々と迎撃、そのまま自警団にカオスニアンを突き出していた。
──ヒュンッ
と、突然市川の右肩をクロスボウボルトが貫く。
「痛っ‥‥誰だ?」
慌てて急上昇する市川。
──スカカカカカン!!
と、グライダー底部に次々とクロスボウボルトが突き刺さる。
「市川、後方だ!!」
上昇して旋回するライナスと、同じく旋回してライナスの指し示す方向を確認する市川。
そこには、ロングコートを着たピエロのような化粧をした人物がクロスボウを構えて立っていた。
「初めまして。とりあえず道化師の仕事はここまでということで‥‥ウィルの騎士のみなさん、それではごきげんよう」
そう告げると、道化師と名乗った男は素早く屋根から飛び降りる。
「逃がすかっ!!」
素早く機体を降下させ、街道筋を馬で駆け抜ける道化を発見すると、低空飛行でそれを追いかける!!
──ヒョイ
と、前方の道化師が身体を低くする。
その刹那、市川の身体がなにかにぶつかり、グライダーから弾き落とされた!!
「なんだって‥‥ぐはぁっ!!」
背中から落ちる市川。
そのまま素早くライナスが追撃に入るが、やはりライナスもなにかにぶつかり、グライダーから落ちた。
「だはぁっ‥‥い、一体何が‥‥」
そう呟きつつ、ゆっくりと立上がる市川とライナス。
そのまま正面をじっと見ると、空中で血が浮かんでいた。
──ファサッ
それを手に取ると、目に見えないロープが、建物のあちこちに張り巡らされている。
市川とライナスの二人は、これに胴体がひっかかりグライダーから落ちたらしい。
もしこれがもっと鋭利な何かであったら、市川とライナスは死んでいた‥‥。
その後、市街地を自警団や各国の御衛士達が駆け巡り、それ以上の騒動は起きなかった。
●そして顛末
──特務艦グリフィン
ラン傭兵騎士団のほうではある程度の被害が出ている。
街中のカオスニアンを追撃した市川とライナスはそれぞれ8人のカオスニアンを倒し、ラン陸戦騎士団に突き出す。
それ以外にも、街中では各国から派遣されてきた待機御衛士とかの活躍により、戴冠式は無事に終了した。
全てが終ると、各国の親善大使はフロートシップで自国へと戻っていく。
そしてグリフィンも、親善大使達の載っているフロートシップの護衛を行ないつつ、ウィル本国へと帰還していった。
さて、次の任務まではしばし時間がある。
それまでは、各自訓練を惰らぬように‥‥。
──Fin