【ラン動乱】未確認部隊侵攻開始
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■ショートシナリオ
担当:一乃瀬守
対応レベル:フリーlv
難易度:やや難
成功報酬:5
参加人数:4人
サポート参加人数:-人
冒険期間:07月20日〜07月31日
リプレイ公開日:2008年07月29日
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●オープニング
──現在のできごと
ザザーーーーン、ザザーーーン
巨大な波間を高速で進むガレー船。
その上には、なにやら不穏な存在が確認されている。
巨大なそれは、ゴーレムと呼ばれる代物である。
それ以外にも、時折船から聞こえてくる叫び声、あれは恐獣ではなかろうか。
ラン北東海岸に上陸した奴等は、凄い速さで荷物を纏め、そのまま森の中へと消えていった‥‥。
ガレー先はすぐさま沖合に向かい、そして数日後にまた同じ海岸へとやってくる‥‥。
「以上、空戦騎士団が偵察任務のおりに確認した情報です。どうやら他国の、それもランに対して敵対していると思われる者たちがラン国内に侵入、何かを画策しているように思われますが」
議会の場にて、ジョージ・ドゥニー宰相がラン女王のレベッカ・ダーナにそう進言する。
「我が精鋭達の偵察でも、その後の奴等の動きを追うことは出来ず。現在も引き続き調査を続けています」
空戦騎士団責任者のステイン・ジェロールがそう告げると、女王は静かに口を開く。
「ドゥニー宰相はハイター外務官と共に諸国に向けての調査を御願いします。ジェロール騎士団長は引き続き侵入したものたちの調査を、可能であれば捕らえて情報を引出してください。出来る限り穏便に‥‥」
「はっ。女王どのは相変わらずお優しい事で‥‥」
レベッカの言葉のすぐあとに、ザバ分国のジャバナ・ザバ・ボア分国王がそう告げる。
「ボア分国王、口が過ぎますぞ」
「構いません。ボア分国王、なにかご意見でも?」
ジョージ宰相の言葉の直後、レベッカはボア分国王にそう問い掛ける。
「各分国の騎士団も動員し、可能な限り奴等を追い詰める。その上で、捕らえたのならばいかなる手段を用いてでも情報を引出すというのは‥‥」
「それは人道に反します」
「それが甘いというのです。奴等はこのランに侵入した、いわば敵対している存在。早いうちに見付け出し潰してしまわなくては、内部から食い破られてしまいます‥‥」
と告げると、ザバ分国王は静かに立上がる。
「ボア分国は、今回の件独自に動きます。ジェロール騎士団長、ザバ分国に戦力を削ぐ必要はありませんので‥‥」
と告げて退室するボア分国王。
「ううむ‥‥まだ話は終っていないというのに‥‥」
と呟くドゥニー宰相に、ギルド総監のビリー・アンデルスが手を上げて話を始める。
「まあ、ボア分国王も独自にということでしたら、戦力をそちらにまわす必要は無い。むしろ他の部分に戦力を傾けられますのでよろしいかと。こちらからは例のレジスタンス、ジャグ・バン一味についての情報です。王都ダーナ付近に潜入しているということ以外はいまだ見当がつかず。詳しい報告はまた後日ということで」
──閉会・そして場所は変わって
「プラウド君。エレメンタルブースターのシリンダーに使う媒体は?」
「殆ど遣い切っています。新しく補充する必要があるのですが‥‥」
ここはカーガン・ゴーレムファクトリー。
アザレアの調整を行なっているカーガンが、助手であるオーウェン・プラウドにそう問い掛けていた。
「補充か。まあいいでしょう。手の空いた者にそれはまかせるとしましょう。で、王都の方で開発の進んでいた『アレ』は、どこまで出来ているのですか?」
そうプラウドに問い掛けるカーガン。
「王都ゴーレム工房で開発の進んでいた『フォレストドラグーン』ですが、まもなく試験運用段階にはいるかと‥‥」
その言葉に、カーガンは少しご機嫌斜め。
「フォレストドラグーンねぇ‥‥私の作り出したアザレアと、どちらが上位か是非試してみたいものです‥‥では、私はすこし工房を空けます。明後日には戻ってきますので‥‥」
と告げると、外で待機していた馬車に乗り、そのまま工房を後にした。
「‥‥一体、どこに向かうのでしょうか‥‥」
と呟くものの、留守を預かる身としては、工房を取りまとめなくてはならない。
色々と雑務のある中、プラウドもまた独自の研究を始めていた。
●リプレイ本文
●暗躍する影‥‥
──ラン王都・ダーナ
女王が即位してから、ラン内部では様々な改革が行なわれている。
特にゴーレム関係の普及率は高まり、王都ダーナゴーレム工房とカーガンゴーレムファクトリー以外にも、各分国にてゴーレムの研究が始まっていた。
つい先日、王都にてランでは初めてのドラグーンがロールアウトした。
大地の竜であるフォレストドラグーン。
その実験が間もなく開始されようとしている。
そんなある日のこと。
──自警団詰め所
「今の所。この王都近郊ではジャグ・バン一味の隠れられそうな建物はありませんね‥‥」
そう静かに地図を見ながら告げているのは、魔法士のシオン・マードリィ。
「この地図によると、王都は中央行政区、してその周囲に4つに分かれて商業区と工房区、繁華街、そして住宅区に分かれているようですね。で、この王都の外縁部分は?」
そう問い掛けているのはセシリア・カータ(ea1643)。
今回はランにやってきて、ジャグ・バン一味との戦いについて色々と検討をしている所である。
「倉庫区画とスラム街区などですね。その外は王都外縁の農村部になりますが」
「この倉庫区画とスラム街区の調査は?」
と周囲の自警団に問い掛けるセシリア。
「自警団からの報告では、倉庫区は8割が所有者の決まっている倉庫であり、残る2割も管理している商人がはっきりしているそうです。スラム街区ですが、あのエリアは危険でして、内部調査まではまだ‥‥」
「成る程。隠れられる場所はその辺りですか。後日調査に向かいます。それまでは、ラン魔法兵団との連携について、色々とシミュレートしていきたいとおもいますので‥‥」
と指示を出すと、セシリアは午後から始まる合同戦闘訓練の為の準備を開始した。
──場所は変わってダーナ冒険者ギルド
「ふむふむ。ザバ分国の部隊と合流ですか‥‥」
腕を組んで静かに呟いているのはギルド総監のビリー・アンデルス。
「ええ。どうもあのザバ分国の動きが気になるもので‥‥監視ということで同行することは可能でしょうか?」
と問い掛けているのは鳳レオン(eb4286)。
「可能ではありますが、行くのですか?」
とといかけるビリー卿に、レオンは静かに肯く。
「では、紹介状をかいておきましょう。冒険者ギルドのメンバーとして、ザバ分国の騎士団の動きを学ぶという名目で‥‥それでよろしいですね?」
「ああ、ついでに『勇猛なザバ分国軍の働きを若い騎士に見せたい』とでも付け足してくれ。他の同行者は適当に見繕っておいてくれないか?」
「それは構いません‥‥明日にでも取りに来てください。それまでに準備をさせておきますので」
ということで、レオンは1度その場を後にした。
そして翌日早朝、ラン冒険者ギルド員と共にザバ分国へと出発した。
●禁忌
──王都ダーナ郊外
そこはロールアウトしたばかりのゴーレムの実験場。
現在、フォレストドラグーンが静かに起動実験を行なっている。
その近くでは、空戦騎士団のアザレアが2騎、静かに立っていた。
傭兵騎士団のアザレアは2騎とも、近くの仮設工房にて最終調整が行なわれている。
──ドゴォッドゴォッデゴォッ
軽快に走り出すフォレストドラグーン。
だが、それを見ている人々は、色々な意味で声を上げていた。
ラン空戦騎士団員達は、その機動性の高さに驚き、感嘆の声を上げていたのだが、ラン傭兵騎士団は溜め息ばかり。
「‥‥あ、あれって凄いのですか?」
と横に居る加藤瑠璃(eb4288)に問い掛ける草薙麟太郎(eb4313)。
「いえ。普段私の載っていてるアザレアの方が、数倍機動性が高いように見えますね」
と瑠璃が返答を返す。
「ですよね‥‥ロータスでアザレアの動きを見ていたので、それは私にも理解できます。なんで、アザレアよりも性能の劣る機体を作る必要が合ったのでしょうか?」
麟太郎の言葉には、周囲で待機していたゴーレムニストやカーガン・カーム工房長も同意である。
「あれがドラグーンですか。まあまあ動きのいい機体ではありませんか。ただ、私のアザレアの半分以下のスペックですね‥‥」
と溜め息一つ。
「そうなのですか?」
「ええ。まもなく模擬訓練が始まります。空戦騎士団との戦闘の後、貴方たちとの戦闘もありますので、準備しておいてくださいね」
「了解です」
「判りました」
と、瑠璃と麟太郎の二人は、1度その場を離れる。
そして現在の調整が何処まで進んでいるのか見たくて、仮設工房に足を踏みいれた。
──ギィィィィィィィィィッ
ドタンバタンドダンバタン
二人が扉を開いた瞬間、中ではなにか慌ただしい動きをしている。
「どどどどどどどどどうしたのですか?」
と工房主任のプラウドが慌てて二人の前に立つ。
その後方では、大勢のゴーレムニストがなにやら巨大な金属筒をあちこちに運んでいる所であった。
「まもなく模擬訓練が始まるそうです‥‥スタンバイしたいので、制御胞にのっていいですか?」
と瑠璃がプラウドに問い掛ける。
「え、ええ、もう間もなくですから‥‥外で待っていてください」
と返答されるが。
「プラウド主任、あの金属の筒は? 見た所、アザレアのどこにもあのようなものがついていませんが‥‥あれもアザレアの部品なのですか?」
と麟太郎が問い掛ける。
「ええ。あ、いや、あれはエレメンタルバスターの弾でして、あれに精霊力が充填されています。さ、危ないのででていってください」
と急ぎ外に押し出される二人であった。
「ふぅん。まあ、あたしにはゴーレムの事はよくわからないから‥‥で、どうしたの麟太郎?」
「いえ、ちょっと腑に落ちないもので‥‥」
と腕を組んで呟く麟太郎。
「何が?」
「あの金属筒です。プラウド主任はEB(エレメンタルバスター)の弾といっていましたけれど、今回の模擬戦、EBは持ってきていない筈なのですが‥‥」
と呟く。
「と言うことは、あれに何かアザレアの秘密が?」
そんなこんなで、いよいよ模擬訓練が開始された。
最初のうちは空戦騎士団同士の戦い。
フォレストドラグーンvsアザレアであったが、瑠璃や麟太郎の見る限りでは、いま戦っているアザレアは普段自分達の接していたものよりも、格段動きが鈍くなっている。
「鎧騎士の動きが悪い?」
「と言うか、扱いきれていませんね‥‥アザレアの性能を発揮できてはいないようで」
そのまましばし様子を見ていた後、いよいよ二人の出番となったのだが‥‥。
──瑠璃のケース
アザレアの制御胞に乗る前‥‥。
「ほぼ機体のリミッターは解除してあります。いままでよりも性能が上がっている分、扱えるかどうか‥‥」
と説明するプラウドに、瑠璃はニコリと微笑む。
「この機体に乗る為に、私は鎧騎士の道を選んだのです。ご安心ください」
と告げて制御胞のハッチを閉じる。
静かに起動制御球に手をかざす瑠璃。
「アクセプト(目覚めなさい)‥‥」
そう告げて意識を集中させる瑠璃。
──シーーーーン
だが、アザレアはピクリとも動かない。
「ど、どうして? 今までは反応があったのに‥‥プラウドさん、アザレアが起動しません!!」
動揺して風信器にそう告げる瑠璃。
「えーっと、多分今までよりも起動条件がシビアになっているかと推測されます。機体を扱う基礎練習をもう少し積んでみてください」
と告げる。
「そ、そんなぁ‥‥御願いアザレア、目覚めて!!」
再び意識を集中する瑠璃。
そして一瞬だけ、機体とシンクロした。
その時のアザレアから流れてきた感覚は、『己の未熟さと、無念の想い』であった。
──ギィィィィィッ
静かに制御胞をでる瑠璃。
今のままの腕ではなく、せめて達人と呼ばれる粋に達しなくては‥‥。
そう思いつつ、瑠璃は1度キャペルスに搭乗し、訓練を再開することにした。
──麟太郎のケース
「今までは動いたかもしれませんけれど、今のアザレアはかなりナイーブですからね」
そう告げるプラウドの声に耳を傾ける麟太郎。
「まるで、アザレアが生きているみたいですね?」
と告げた言葉に、プラウドが一瞬何かを告げた。
そののち風信器が切られたが、その言葉は麟太郎の耳にも残っていた。
『生きているようなものだから‥‥』
「成る程。まあ、ではいきますか? アクセプト(起動せよ)!!」
──ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ
アザレアの背後にあるエレメンタルバランサーから精霊の輝きが吹き出す。
それと同時に、アザレアが静かに立上がった。
だが、その刹那、麟太郎の意識の奥で、何かがグルグルと駆け巡る。
──タ‥‥ス‥‥ケ‥‥テ‥‥
それは声ではない何か。
そしてそれは、このアザレアが発しているように感じられた。
「生きている‥‥でも、何故助けを乞うのです?」
そう問い掛けるが、アザレアが答える筈もない。
そしてそのまま、空戦騎士団のフォレストドラグーンとの戦闘が開始された。
ドラグーン対アザレアの戦いは、以前ウィルの特務艦のイーグルドラグーンとの一騎打ちで経験済み。
そのまま前回の経験を生かしつつ、アザレアはフォレストドラグーンを完全に押さえこむ。
「ふぅ‥‥これでおしまいですか‥‥」
溜め息をつきつつ、麟太郎はアザレアから降りる。
そしてそのままアザレアが簡易工房に運びこまれるのを、じっと見ていた。
●ザバ南方海域にて
──未確認船団
ザバ南方。
ザバ分国騎士団に合流したレオンは、そのままグライダーを与えられた。
そして10機からなるグライダーの編隊に参加し、未確認船団を発見。ザバの騎士がそのまま彼等にたいしてランの海域から撤退するように叫んでいるのを、横目で見ていた。
「攻撃はしないのですか?」
と備え付けの風信機で連絡するレオンに対して、騎士は一言『戦わないに越したことは無い』とだけ告げる。
(話に聞いた勇猛さとは離れているが‥‥話している事にも一理ある)
と納得し、そのまま船団がラン領海から離れるのを見守っていた。
そののち、ザバ南方の港町にて1度着陸し、そこにやってきている諸外国の船の検閲などを手伝う。
その時は、特に怪しい船は確認できなかったものの、『ジェド』からやってきたという交易船の船員に、数名のカオスニアンが乗船していたのが気になっていた。
「あの船員達は調べないのか?」
「正式に船員登録がなされているからなぁ。迂闊に調べると国際問題になりそうだからいいだろう」
という感じでその場は丸く収められた。
そして数日間のザバ滞在で、レオンは幾つかの事実にきがつく。
諸外国の入り口である港に出入りしている外国人の数が、予想よりも多いこと。
そしてそれらの殆どがジェドからやってきているという事実。その船員には、かなり大勢のカオスニアンが乗っているというのも気になる。
いずれにしても、レオンの見た目にはザバ分国は『グレーゾーン』に位置するという結論に至った。
●シティファイト
──ダーナ郊外・スラム区画
そこはかなり危険な区域。
街のあちこちから犯罪の匂いがプンプンとしている。
そんなエリアに堂々と、セシリアと瑠璃、そしてシオンら魔法兵団がやってきた。
「いい女だねぇ。どうだいお嬢さん、俺と★△×■しないか?」
「いいクスリがあるよ。今なら安くしておくよ?」
「いい腰しているねぇ‥‥どうだい? うちの店で働かないかい?」
といった感じで、女性であるセシリアと瑠璃は彼等にとっては性欲のはけ口程度にしか見られていない。
そんな街区に嫌悪感を抱きつつも、セシリア達は目的である情報屋の元にたどり着いた。
「ここが?」
とセシリアの告げた先には、古びた洋館が立っている。
「ええ。以前は天界人が住んでいました。今は別の人が管理しています」
「天界人? どうしてそんな人がこんな危険な場所に?」
と瑠璃が問い返すと、シオンは静かに口を開いた。
「かなり変わり種の天界人でして。傭兵部隊、特にカオスニアンに興味を持ちまして、ここに住んでいたのです。出入りしていた傭兵に色々なことを教えていたので、彼等傭兵にとっては尊敬されていたそうですよ‥‥」
と告げると、シオンは扉をノックする。
──コンコン
静かに扉が鳴り、やがてやっくりと開かれる。
「情報屋のアルバートさんですね? これを」
とシオンが紹介状を手渡す。
と、その裏を確認しただけで、アルバートと呼ばれる男性は入れと合図した。
──居間
「ジャグ・バン一味の動向ねぇ‥‥ここ最近は活発に動いているっという噂だね」
とアルバートが告げる。
「彼等はどこに? そして何を企んでいるのでしょうか?」
とセシリアが問い掛けると、アルバートは煙草を吹かしつつ、ゆっくりと話を始める。
「奴等の居場所は知っている。けれど教えられない。なにを企んでいるかというのは、復讐‥‥とだけ告げておくか」
「それだけですか? 貴方は何を知っているのですか?」
瑠璃もそう問い掛けると、アルバートは眉間にしわを寄せつつ告げた。
「知っているのはここの主、今は亡きハロルドについて。彼を慕っていたという傭兵団は『ジャグ・バン隊』。ハロルドはジャグ・バンに天界の知識を与えていた。天界ではかなり博識だったらしく、戦い方から、日常に至るまで。その中で、特にジャグ・バンが興味を示していたのは『戦略と戦術』。数少ない戦力で、最大級の戦果をあげる術を、ジャグ・バンは学んでいたさ‥‥」
と告げて、アルバートは口を閉ざす。
「そのジャグ・バンが復讐‥‥まさか、ハロルドという方は、ランの関係者に殺されたのですか?」
セシリアが問い掛けると、アルバートはなにも答えない。
「真実を知って居るのは少ない。ただ、次にジャグ・バンが狙うのは、五賢老の一人で空戦騎士団騎士団長であるステイン・ジェロール。それもそう遠くはない‥‥私が告げるのはここまでだ」
そして一行はその場から出される。
様々な想いの中、一行は静かにスラム街区を後にした‥‥。
──Fin