●リプレイ本文
●敵は最悪の存在
──フォーモリア分国東方・港町イル手前20kmの森
グォングォングォングォン
高度200m。
その上空に停泊しているウィル所属フロートシップ・特務艦グリフィン。
その横には、ランの大型フロートシップ・オルテンシアが停泊し、静かに時を待っている。
現在オルテンシアでは、既に未確認国家の軍勢によって占拠されかかっている港町イルの奪回について色々と作戦を考えている所であった。
グリフィンから参加するのは艦長であるアーレン・フィルマーと、その補佐官。
そして約3時間の会議の後、アーレン艦長はグリフィンへと帰艦、ブリーフィングルームに集まっているメンバーに作戦について説明を開始した。
「オルテンシアはイル方面に向かって進軍を開始。上空からのフロートシップ及びグライダーによる上空制圧と、陸戦騎士団によるイル解放、人質として囚われた街の人々の解放がメインとなる。グリフィンはそのバックアップ、ゴーレム部隊は陸戦騎士団と共に遊撃任務、ドラグーンはフロートシップと共に上空からの制圧任務となる」
その説明を受けると、一行はすぐさま作戦の為の準備を開始する。
●激戦区に至るまで
──イル手前10km地点
静かに進軍を開始するグリフィン。
既に地上にはキャペルス1機、グラシュテ2機が降ろされている。
──地上部隊
「こちらキャペルスの市川。これよりラン陸戦騎士団アザレアと合流、そのままイルの街に突入する!!」
その市川敬輔(eb4271)の声はグラシュテの制御胞に搭乗しているオラース・カノーヴァ(ea3486)の耳にも届く。
「了解と・・・・。それにしても壮大な光景だな・・・・これがラン本国の本気っていう奴か?」
オラースの搭乗しているグラシュテの前には、白銀の輝きを放つアザレアが3機、剣を手に立ち止まっている。
その背後には、グラシュテが9機、そしてバガン『鬼殺し壱号』が18機と、まさに大規模戦闘の予感を孕んでいる。
「こちらアザレア1のロッド・カースン。ウィルの鎧騎士さん、落ちついて行きましょう・・・・」
「同じくアザレア2のエル・ブラウンよ。ウィルの方、大規模戦闘は初めてかしら?」
その二人の声が風信器に届くと、オラースと市川はそのまましばし二人とのやり取りを続けていた。
──フロートシップでは
「それじゃあ先行は俺が、後退で加藤さんが乗り込むということでいいな?」
ライナス・フェンラン(eb4213)はイーグルドラグーンの制御胞の前で、加藤瑠璃(eb4288)にそう伝えている。
「ええ。問題はないわ。ドラグーンを普通に乗りこなせるように再訓練は行なってきたから」
と瑠璃が告げると、ライナスは静かに懐く。
「それじゃあ問題はない。出撃命令がでるまで、ここで待機ということか」
「そうですね・・・・それにしても、大きいフロートシップ。ランはゴーレム開発については後衛の国でしたのに。いつのまに、ここまで巨大なゴーレムシップを作り出す技術がついたのでしょうね・・・・」
その瑠璃の言葉に、ライナスは静かに一言。
「カーガン工房長の力だって、メンテナンスの人が告げていたな。あのアザレアの設計技師でもあるらしい」
「あの飛行型ゴーレムの・・・・どうりで」
「それにしても、こっちの部隊には飛行型アザレアは配属されていないのか。けれど陸戦型アザレアが3機とは、また随分と気合の入っているようなかんじだな」
「綺麗ですよね・・・・」
と、陸戦騎士団の元に並んで立っているアザレアを上空から見て、静かにそう話を続けていた。
●激戦区・そして
──イル手前150m
ドッゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン
激しい一撃がキャペルスの胸部を襲う。
敵未確認ゴーレムのハルバードの一撃を、市川は真面に受けてしまったのである。
「ちっ・・・・ふざけた真似を!!」
すぐさまキャペルスの損傷度合を確認する市川。
(・・・・胸部装甲破損・・・・制御胞ハッチ部分上部に亀裂を確認・・・・視認エリアが20%減・・・・だがいける!!)
すぐさま体勢を取り直し、敵のさらなる追撃を躱わす市川。
目の前の敵。
未確認の鎧を身に纏った、未確認のゴーレム。
国を示す紋章もなにもなく、ただ淡々と市川に向かって攻撃を繰り返してくる。
「敵の数が多すぎる!! もっと効率よく戦わないと駄目だ!!」
風信器からオラースの声が響いてくる。
そのオラースもまた、眼の前に姿を現わしたティラノザウルス・レックスの攻撃を躱わすのが必死。
それに合わせて、中型の恐獣達がオラースのグラシュテに向かって攻撃を仕掛けてくるから堪らない。
いくら躱わすのが得意なオラースとはいえ、いつまでも躱わしきれるものではない。
──ドゴォッ
ついにティラノザウルス・レックスの攻撃がグラシュテを捕らえた。
「このっ・・・・上等だっ!!」
倒れそうになった機体を立て直すが、さらにティラノザウルス・レックスは尻尾でグラシュテを吹き飛ばす!!
──ドッゴォォォォォォッ
その一撃で制御胞のハッチが吹き飛ぶ。
剥き出しになったオラースは、そのまま本来の作戦を続行。
でかい敵の動きは鈍く、サイドからまわりこめば勝機が見えてくる。
だが、敵もその弱点を知って居るらしく、中型の機動力のある恐獣が牽制してくるため、やはり正面からティラノザウルス・レックスと戦うこととなる。
「ふぅ・・・・一時撤退したほうがよさそうだなぁ・・・・」
稼動限界が近づいてくるオラースがそう呟くと、グラシュテを転回し、前線より一時離脱。
その途中で、稼動限界が近づいた市川機と合流、二人はそのままグリフィンに帰還することとなった。
●大空の覇者
──イル上空
敵は中型フロートシップの艦隊。
その周囲を巨大な飛行型恐獣が飛び回っている。
──ズバァァァァァァッ
そのうちの一体と激しいドッグファイトを転回しているのはイーグルドラグーンの加藤瑠璃(eb4288)。
「はあはあはあはあ・・・・これで4匹。あとは15・・・・」
額から流れる汗を拭いつつ、瑠璃はひたすら戦いつづけている。
もうまもなく『稼動限界』。
この空中での稼動限界突破はすなわち墜落し、死亡。
そんな馬鹿なことにならないよう、瑠璃は一旦その場から交代し、グリフィンへと向かっていった。
──その頃のグリフィン
どっごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ
激しい爆音ど同時に、グリフィン艦首から炎の精霊砲が射出される。
それは目前の未確認中型フロートシップの側舷を掠めるが、その衝撃で敵船体が大きく揺らぐ!!
「なんとか制空圏さえ取り返せば・・・・」
精霊砲の制御球に手をかざしたまま、リュドミラ・エルフェンバイン(eb7689)がそう叫ぶ。
「次弾のチャージを御願いします!! 終了次第私を呼んでください」
そう精霊砲付き魔導師に告げると、素早く側舷のバリスタに向かうリュドミラ。
そのままグリフィンの周囲を展開している飛行型恐獣に向かってバリスタを撃つが、高速で飛行している敵に対してバリスタを当てる事は不可能に近い。
そのまま無駄弾として総て遣い切ったとき、一匹の飛行型恐獣がリュドミラ目掛けて突っ込んでくる!!
「ダメっ間に合わないっ!!」
躱わすのではなく、一か八かのカウンターに出ようとするリュドミラ。
だが、その大きさにも速さにも差がありすぎる。
──ヒュンッ!!
その巨大な嘴でリュドミラを突き刺そうと飛んできた刹那、上空からその恐獣の頭部に向かって、巨大なハルバードが突き刺さった!!
『リュドミラは精霊砲に戻ってください!!』
リュドミラの急降下で飛んできたイーグルドラグーン。
その制御胞から聞こえる瑠璃の声で、リュドミラは素早く精霊砲へと戻っていった。
そして瑠璃はそのまま機体をロックすると、素早く制御胞を開いて飛び出す!!
「ライナスさん、あとは任せます!!」
「オーケー。まかしておけ」
と素早くパイロットが入れ違うと、そのままイーグルドラグーンは再び上空へと飛んでいった!!
『ラン陸戦騎士団の情況は?』
ライナスが風信器に向かって叫ぶ。
『現在、陸戦騎士団がイルの内部に向かう所です。けれど、その手前で敵ゴーレム部隊と交戦状態。別エリアで展開していた市川達は、すでに後方に帰還、機体とパイロットの休憩に入っています・・・・』
『了解。空戦騎士団は?』
『海上に展開しているフロートシップでの艦隊戦に突入、両軍のグライダー隊が交戦状態。艦隊での艦砲射撃も開始されています』
グリフィンからの通信を確認しつつ、ライナスは的確に戦力の手薄な方にバックアップに入った・・・・。
●そして今回の戦況
両軍とも疲弊状態。
港町イルを挟む形で、海上には敵未確認国家のフロートシップ及びゴーレムシップ。
イル手前では、ラン陸戦騎士団が『イルの人々の避難』を開始。
出来うる限りイル内部での戦いは避けようと動いている。
既に港湾設備については敵艦隊により占拠されているので、港部分は使用不可能。
これよりさらに過酷な戦いが待っているようである・・・・。
──Fin