【ラン動乱】ザバ分国戦線・序

■ショートシナリオ


担当:一乃瀬守

対応レベル:8〜14lv

難易度:難しい

成功報酬:6 G 64 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:08月26日〜09月06日

リプレイ公開日:2008年09月05日

●オープニング

──現在のできごと
「敵は恐獣を扱う部隊と、カオスニアンの陸戦兵士が多数!! 繰り返す、敵は・・・・」
 ヒュンッ・・・・
 グライダーに跨がり携帯型風信器に叫ぶ偵察兵の頭部にバリスタの矢が突き刺さる。
 そのままコントロールを失い、グライダーは森の中に墜落していった。

──ザーーーッ
 
「通信跡絶えました!! リリス7の偵察エリアはE5A21。急ぎ救援に!!」
 巨大フロートシップ『オルテンシア』のブリッジで、通信兵が艦長であるステイン・ジェロール卿に叫ぶ。
「グライダー隊は発進準備。これよりオルテンシアは敵部隊殲滅に向かう!! 二番艦と三番艦も随行、敵は恐獣部隊。飛行型恐獣も敵となる可能性が十分にある!!」
 その言葉が伝声管を走り、各部署にさらなる緊張が走った・・・・。


──その頃
 ゴウンゴウンゴウンゴウン
 ウィル東方の海上を、高速艇ロータスが移動する。
 目的はウィルに向かい、今回ランを襲撃している『未知の敵殲滅』の為に助力を頼むという事である。
 すでにシフール便でウィル冒険者ギルド総監のカイン・グレイスには連絡は届いている。
 即座にウィル王宮でも援軍要請が行なわれ、特務艦グリフィンの出撃準備が進んでいた。
 そして冒険者ギルドには、いつでも出撃できるよう、『ラン傭兵騎士団』のメンバーにも呼集が掛けられている。
「グリフィンとの打ち合わせの後、我々はザバ分国に向かいます。ザバ南方からの侵攻部隊を阻止し、敵を殲滅するのが目的ですから・・・・」
 ビリー・アンデルスの言葉に、艦長の後藤も静かに肯いた。
 
 黒い霧が静かにランを包みこむ。
 それが晴れるのは、いつのことなのか・・・・。


●高速艇『ロータス』
 中型フロートシップ『オーキッド』搭載戦力

・アザレア×2(ロータス)
 (装備としてロングソード、カイトシールド、エレメンタルバスターを搭載)
・グラシュテ×3(積載はオーキッド、装備は同上)
・風の精霊砲×1(各艦に1門ずつ船首搭載)

●今回の参加者

 ea0244 アシュレー・ウォルサム(33歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea1643 セシリア・カータ(30歳・♀・ナイト・人間・ノルマン王国)
 eb4286 鳳 レオン(40歳・♂・天界人・人間・天界(地球))
 eb4313 草薙 麟太郎(32歳・♂・天界人・人間・天界(地球))
 eb4333 エリーシャ・メロウ(31歳・♀・鎧騎士・人間・アトランティス)
 ec5470 ヴァラス・シャイア(37歳・♂・鎧騎士・パラ・アトランティス)

●リプレイ本文

●奇襲作戦
──ザバ海上
 グォングォングオングオン
 ラン空戦騎士団所有の中型フロートシップ『オーキッド』。
 現在海面上に停泊しているその横に、ゆっくりと高速艇ロータスが接舷。
 そのまま渡し板を繋げると、ロータス責任者であるビリー・アンデルス卿がオーキッドに渡っていく。
「ロータスの方は、あとは後藤艦長にお任せします。ラン傭兵騎士団の皆さんもがんばってください。詳しい作戦変更などがありましたら、都度風信器で連絡をいれますので・・・・」
 とつげて、アンデルス卿はオーキッドに移動。
「ビリー卿、ちょっと待ってください」
 鳳レオン(eb4286)がそう叫びつつ、ビリー・アンデルスの横に並ぶ。
 そして彼にだけしか聞こえないような小声で、静かに話を始める。
「ザバ分国軍がもっと積極的に不審船団を取り締まっていれば、現在の状況は防げたはずだ。
 逆を言えば、こうなるように仕向けた可能性がある。俺達の目と戦力がザバ分国南方に向いている間に、別の場所・・・・例えば王都ダーナで何かおこる可能性がある。ジャグ・バン一味の居場所も掴めていないんだ。警戒しておいたほうがいい」
 と告げる。
「なるほど・・・・では、セシリア殿」
 と呟くと、ビリー・アンデルスはセシリアを呼ぶ。
「はい・・・・何か?」
 そのままビリーの横に立つと、そのままビリーはセシリア・カータ(ea1643)に何かを耳打ち。
「・・・・了解しました。では急ぎそちらに向かいます」
 そう告げると、セシリアはそのまま部下と共にオーキッドに移動。
 そして数分後、セシリア率いる部隊はゴーレムグライダーでオーキッドから離脱した。

「さて、それじゃあ配置について貰おうかな。」
 ロータス艦長の後藤が、ラン傭兵騎士団にそう告げる。
「後藤艦長、ロータスの作戦はどのように?」
 そうアシュレー・ウォルサム(ea0244)が問い掛けると、後藤艦長は一言。
「各自、自分で出来る最大限のことを行う事。オーキッドとの連携その他は考える必要はない。向うは正騎士であり、こちらは傭兵。戦い方はまったく別の方向であると考えてくれれば」
 との事。
「せめて作戦の目的だけでも教えて頂けませんか?」
 エリーシャ・メロウ(eb4333)が後藤艦長にそう進言する。
「目的は、目の前の小島に滞在する敵部隊の殲滅。敵戦力その他については、ビリー卿指揮のもと、オーキッドの偵察部隊が潜入、そののち得た情報を元に、傭兵騎士団は独自で活動せよ・・・・というところかな? で、これが敵の情報ね」
 と、大量の羊皮紙をエリーシャに手渡す。
「暫定で、エリーシャ・メロウを傭兵騎士団長に戦地任命するので、あとは宜しく・・・・何か会ったらブリッジにね」
 と告げると、頭をボリボリと書きながらブリッジに向かう後藤艦長。
 その姿を茫然と見ていたエリーシャだが、気を取り直して残ったメンバー全員をあつめて作戦会議を開始した。



●そして作戦実行
──ロータス甲板
「よーし、そのまま・・・・」
 静かに整備員の誘導に従い、甲板上でアザレアがゆっくりと歩いていく。
 そして指定の場所に足を止めると、そこで整備員達がアザレアをロック。
「これでいいのか?」
 アザレアの制御胞の中で、レオンがそう外に向かって叫ぶ。
「おういえーい。そこがアザレアの固定ポイント。あとは腰を落として両腕で・・・・」
 と指示された通りに構えると、そのまま腰溜めにエレメンタルバスターを構える。
「今回のは総弾数4発の特製カードリッジ使用。4発撃ちおわったらそのまま上空に飛んでください、で、あとは遊撃ということで、バスターの予備を持っていってください・・・・いいのですよね?」
 そうレオンに指示を飛ばしてから、横に立っているエリーシャに話し掛ける整備員。
「ええ。私はあの武器が気に入りませんから・・・・」
 騎士として、エレメンタルバスターに誇りを持てないというのが理由らしい。
「ま、いいっすけれどね。バスターによる初撃ののち、ロータスは高速低空飛行で一気に島まで向かいます。そこでゴーレム部隊を上陸させてから、ロータスは再び離脱。後方援護にまわるってことでいいっすね?」
 そう整備員が告げると、ゴーレム隊は静かに肯く。
「俺はゴーレムの揚陸と同タイミングでいいのか?」
 アシュレーがそう問い掛けると、整備員は静かに肯く。
「そのタイミングで。オーキッドの部隊は島側面より奇襲、その前にロータスが囮として突入ですからね」
 一通りの手順を踏まえてから、一行は早速持ち場についた!!



●知らされた禁忌の兵器
──ロータス甲板上
「作戦開始まであと5分。各自持ち場に!!」
 後藤艦長の叫び声が艦内の伝声管を伝わっていく。
 その声に合わせて、レオンはバスター装備型アザレア1に、エリーシャは正式装備アザレア2に搭乗。
「こちらグラシュテ1の草薙です。ヴァラスさん、風信器から聞こえていますか?」
 草薙麟太郎(eb4313)は横で起動スタンバイしているヴァラス・シャイア(ec5470)にそう話し掛ける。
「こ、こちらグラシュテ2のヴァラスです・・・・これより機体の起動開始・・・・ええっと・・・・」
 オロオロしつつ、ヴァラスは起動制御球に手をかざす。
 ウィル型制御胞になれている者にとっては、この起動はなかなか思うようにいかない。
 ましてやヴァラスは初実戦。
 ゴーレムに搭乗するのも初めてである。
「アクセプト・・・・」
 手をかざした制御球が、ヴァラスの言葉に反応して光り輝く。
 そして静かに制御胞正面部分に、外の風景が映し出される。
「ふぅ。なんとか起動しましたか。ヴァラスさん、戦闘時は私からあまり離れないでください」
 その草薙の言葉にグラシュテ2が肯く。
「飲込みはいいようですか・・・・」
 と呟くと同時に、アザレア1がバスターランチャーを構える。
「作戦開始10秒前・・・・8・・・・6・・・・4・・・・2・・・・0!!」

──ドッゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ
 カウントダウンが終ると同時に、レオンのアザレア1がバスターランチャーを発射!!
 収束された精霊力が一気に放出されると、正面海に停泊していた敵艦に直撃、そのまま敵艦を破壊する!!

──ガッゴォォォォォォツ
 そのまま使用済みエレメンタルシリンダーを排出すると、次弾を装填するレオン。
「思ったよりもいい感じだ・・・・敵は動いたか?」
 そうブリッジに問い掛けると、ブリッジでは敵の動きを追跡している最中であった。
 そしてそれとほぼ同時に、草薙は見てしまった。

 エレメンタルバスターから排出されたシリンダー。
 それが甲板に落ちた瞬間、その先にある蓋が開き、中から『干からびたエレメンタルフェアリー』が飛び出したのである!!

「アザレアの悲鳴・・・・収束された精霊力!! レオンさん、それを撃ってはいけない!!」
 そう草薙が叫んだが、時はすでに遅し!!

──ドッゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ
 第2弾が射出される。
 そして排出されたシリンダー。
 今回は蓋が開くことはなく、なにも落ちてこない。、
 だが、同じ光景を見ていたアシュレーが、急いでシリンダーに走り出す!!
「それを触らないでください!! 危険です」
 整備員がそう叫ぶが、すでに時遅し。
──ジュッ!!
 加熱しているシリンダーで、アシュレーの手が焼ける。
 だが、それを気にすることなく、アシュレーはシリンダーを開いた!!
「ひ、酷い・・・・どうしてこんなことに・・・・」
 シリンダーの中には、また干からびたエレメンタルフェアリーが入っている。
 そしてそれは、射出したレオンにも見えた。
「そんな・・・・生体兵器なんだと・・・・う・・・・うぉっ・・・・」
 耐えきれず制御胞の中で嘔吐するレオン。
 そしてその刹那、エリーシャはアザレアから飛び降りた!!
「予備の機体を出せ!! あのシリンダーはこのアザレアにも使っているんだろう!! 詳しい話は作戦が終ってから聞かせてもらう!!」
 予備のキャペルス3を起動させると、そのままエリーシャは作戦変更を皆に告げる。
「ブリッジの後藤艦長、作戦の変更許可を!! ゴーレム隊は全て揚陸作戦に変更、アザレアの使用は禁止する」
「こちら後藤、作戦の変更了解した。整備責任者はちょっとブリッジまで来て戴こうか・・・・」
 と、そのまま作戦は続行、但しアザレアは使えないという情況になった・・・・。



●ダーナ異変
──王都ダーナ
 セシリア達グライダー隊は真っ直ぐに王都ダーナに向かう。
 最低限の陸戦騎士団が王都周辺を警護、そして市内は自警団が目まぐるしく動いている。
 その光景を、セシリア達は上空から確認している。
(もし私がジャグ・バンなら・・・・今この瞬間を逃しはしない。ビリー卿もそう告げてくれたから、だからこそ別働隊として私達を派遣してくれた・・・・)
 そう思いつつ、セシリア隊は上空から王都ダーナの監視を開始した。
 やがて、王都のあちこちで火災が発生する。
 それらに自警団がまわりこむと、セシリアはそのおかげで手薄になった場所へと向かう!!
 そこには、街の中を駆け抜けるジャグ・バン一党の姿があった。
「ここから先にはいかせない!!」
 素早くグライダーで先回りしつつ、セシリアは配下の者たちに指示を飛ばす。
 そして自身はジャグバンの正面でホバリングをすると、そのまま片手でノーマルソードを引き抜く。
「またあんたか・・・・そろそろおしまいにしようや?」
 ジャグ・バンも立ち止まると、巨大なその剣を上段に構える。
「それはこちらの台詞だ・・・・」
 そう叫ぶと、セシリアはグライダーを地上すれすれに飛ばす。
「あんたはこのあと、俺の下で喘ぎ声を出してくれればそれでいい・・・・」
 素早くカウンターの構えを見せるジャグ・バン。
 
──ガギィィィィィィン

 そしてジャグ・バンの剣とセシリアの剣がぶつかった瞬間、セシリアは機体を思いっきり旋回させる。
 その反動で翼がジャグ・バンの胴部に直撃、勢いよくジャグ・バンは横に吹っ飛ばされた。
「これでおしまいといっただろう・・・・」
 セシリアは倒れているジャグ・バンに向かって剣を伸ばす。
 普通ならば、これで全ては終り、降伏するしか道はない筈だが。
「悪かったな・・・・こう見えても、切り札は残してあるものでね・・・・」
 そう呟く。
──ドシュッ
 その刹那、ジャグ・バンの腕が剣のように変化して伸び、セシリアの胴部を貫いた。
「もう戻れないなら、全てを終らせて・・・・殺す・・・・犯して・・・・クラウ・・・・オマエヲ・・・・」
 ミシミシとジャグ・バンの体が変化を始める。
 筋肉が異様なまでに煽動し、盛り上がる。
 体表面は黒く染まりはじめ、鋼のような硬度を増していく。
「カ、カオスの魔物に成り果てたのか・・・・」
 意識が朦朧とする中、セシリアはそれでも剣を構える。
「ウグ・・・・モドル・・・・アノトキニ・・・・ウア・・・・」
 突然ジャグ・バンが叫び出す。
 そしてその場から素早く逃走。
 そして仲間たちも一斉に走りだし、その場から逃げ出していった。
「何とか、撃退したというところか・・・・それにしても・・・・痛いな・・・・また同じ場所か・・・・」
 血が止まらない。
 それでもセシリアは携帯用風信器を使って、仲間たちに指示を飛ばす。
 その後、自警団と合流し、傷の手当を受けていった。


●結末
 小島に対する奇襲作戦は、アザレアの使用停止という事態によって半ば失敗に終る。
 但し、側面からの襲撃により、敵もそれなりの打撃を被っている。
 直には敵もザバ侵攻を再開する事はないだろう。
 そう判断したロータス隊は、一旦王都に向かうと、ゴーレム工房に立ち寄る。
 そこでカーガン工房長を問いただすが、全ては工房内の機密ということで何も聞き出せず、アザレア及びエレメンタルバスターは全て工房に降ろしてメンテナンスを行う事となった。
 こののち、後藤艦長を始めとするラン傭兵騎士団はビリー・アンデルス卿に今回の一件を進言。
 精霊を核として使用する兵器の存在が危険であると判断したレベッカ・ダーナ女王の名により、カーガンゴーレム工房は閉鎖、エレメンタルシリンダー及びそれらを使用するゴーレムを封印しようと陸戦騎士団を派遣したが、すでにカーガン工房長及び空戦型アザレア1、アザレア2、2機のエレメンタルバスターの消息は不明となっていた・・・・。

──Fin