【ラン動乱】ザバ分国戦線・11月期
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■ショートシナリオ
担当:一乃瀬守
対応レベル:8〜14lv
難易度:難しい
成功報酬:7 G 47 C
参加人数:7人
サポート参加人数:-人
冒険期間:11月16日〜11月26日
リプレイ公開日:2008年11月24日
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●オープニング
──現在のできごと
キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン
青空を駆ける2機のアザレア。
最終調整を終えた新型アザレアが、静かに工房横の発着場に着地する。
「ふぅ‥‥これでお役目御免だな」
「そうみたいね。まあ、兄貴としては、まだ乗り回したいんでしょうけれど」
アザレアの胸部ハッチが静かに開き、中から二人の鎧騎士が降りてくる。
男性の方はラン所属の天界人ロッド・カースン。そして女性の方も同じく天界人のエル・プラウン。
本来は空戦騎士団所属である二人だが、今回はアザレアのテストパイロットとしてここにやってきていた。
──ギィィィィィィィィィィィッ
アザレア後背部に作られた『シフールコクピット』からも、二人のシフールが降りてくる。
「アザレア1の方は調子がいいですね。言うことを聞いてくれて助かります」
そうアザレア1のサポートパイロットであるヴェルダンディが呟く。
「アザレア2は‥‥エルねーさんが乱暴なので‥‥」
とアザレア2のサポートパイロットのパルセットが呟く。
「パルセ!! あかんたまたなんてことを」
「クククククッ‥‥まあいいじゃないか。今回のテストで俺達は古巣に戻る。あとは、ラン傭兵騎士団とうまく調整を付けてくれればいい」
エルの後で、ロッドがそう呟いていた‥‥。
●情況の変化
──ザバ分国沖合の島
度重なる襲撃により疲弊しているかと思われた島。
敵所属不明国家の船団もその数を大きく減らし、いまは以前ほどの活気はない。
いや、それもここ数日までの話。
その日、偵察兵から聞いた報告に、ビリー・アンデルスは驚きの表情を見せていた。
「敵ゴーレムの中にアザレアですか? それは先月の報告にもありましたが」
「はい、漆黒の鎧を身に纏い、エレメンタルバスターを手にしたアザレアが2機、それとEWバスターを装備していない漆黒のアザレアが4機、さらにその近くで集まっていた傭兵らしき奴等の中に、ジャグ・バンの姿も確認しています‥‥」
その報告から、ビリー卿は幾つかの推測を行なっていた。
その結果、最悪のケースとして、敵にアザレアの秘密が漏れ、さらに2機のエレメンタルブースター型アザレア(仮称としてブラックアザレアと呼んでおこう)が敵となったという事実を改めて認識した。
エレメンタルバスターの火力については、いやというほど知っている。
それが敵にまわったとなると、さらに被害は甚大であろう。
「ラン傭兵騎士団を招集してください。新型アザレアのロールアウト、そして敵との戦いについての報告も‥‥」
にわかに雲行きが怪しくなってくる。
このまま動乱は続くのであろうか‥‥。
●高速艇『ロータス』中型フロートシップ『オーキッド』搭載戦力
・新型アザレア×2(ロータス)
(装備としてロングソード、カイトシールドもしくは新型エレメンタルバスターを搭載)
・炎の精霊砲×1(船首搭載)
・キャペルス×3(積載はオーキッド、装備はロングソード、カイトシールド)
・風の精霊砲×1(各艦に1門ずつ船首搭載)
●リプレイ本文
●悪夢の始まり
──ザバ分国上空
ゴウンゴウンゴウン
上空を飛んでいく高速艇ロータスと、中型フロートシップオーキッド。
間もなく到着するであろうザバ沖合の島にて始まる戦い。
その為の作戦が、間もなくスタートする。
「敵ジャグ・バン傭兵団‥‥いつのまに移動したのでしょう」
そう呟くのはセシリア・カータ(ea1643)。
今回は対ジャグ・バン用にこちらも傭兵団と魔法兵団を導入、セシリアはその指揮にあたる。
「各班の風信器の調子はいかがかしら?」
そう各班に風信器で問い掛けるセシリア。
『こちら傭兵団『暁』、風信器問題なし』
『同、疾風戦士団、問題ないぜ‥‥どーぞ』
『こちらラン魔法兵団、サラマンダー隊問題なしです』
『同、ヴァルキュリア隊、問題なし、いつでもいける』
『同、ウンディーネ隊、問題なしですわ』
次々とセシリアの風信器に通信が届く。
『各班そのまま待機。私達の敵はジャグ・バンの傭兵部隊及び敵地上戦力であるカオスニアン。ゴーレム戦には加担しないように』
と告げる。
そしてセシリアもまた武具の最終確認を開始、これから起こる戦いの準備をしはじめた。
──一方・オルテンシア・ゴーレムデッキ
「敵アザレアにたいして、こっちのアザレアは一機ですか‥‥」
キャペルスの制御胞の中で、ヴァラス・シャイア(ec5470)がそう告げる。
今回の作戦、搭乗する鎧騎士の関係上、飛行型アザレアが一機しか稼動しない。
敵の飛行型は最低でも2機、それ以外のアザレアもまだ未知数の戦力。
今回は かなり厳しい戦いとなりそうである。
「取り敢えず、敵飛行型がEバスターを装備しているらいので、それを狙っていくしかないわね」
金色のロングヘアーをリボンで纏めつつ、シュバルツ・バルト(eb4155)がそう告げる。
「そうですね。今回は起動ゴーレムが少ないですから、絞っていった方がいいかとおもいます」
草薙麟太郎(eb4313)もそう告げると、自分の搭乗するキャペルスから降りてくる。
「敵戦力にたいして、こちらの戦力が少ないです。まあ、こちらのEバスターがどこまで使えるかが今回の戦力になりますが」
ヴァラスが制御胞から降りつつ告げると、シュバルツが自分のキャペルスに搭乗し、機体の調子を確認する。
「やれるだけやらないと。ここで負けたら洒落にならないでしょう?」
そう告げつつ、機体の調子を確認。
よし、いい感じに仕上がっていると確認して、シュバルツは一行の元に戻り、最後の打ち合わせを開始した。
──その頃のロータス
「アクセプト‥‥」
機体制御球に手をかざし、機体を起動させようとしているスレイン・イルーザ(eb7880)。
だが、機体は全く反応しない。
「どういうことだ? このアザレアは壊れているのか?」
そう風信器に向かって叫ぶスレインに、シフールコクピットのヴェルダンディが風信器で一言。
「貴方の腕が未熟だから、アザレアは反応しないのでは?」
きっつーーー。
「そ、そんな筈は‥‥」
焦りをあらわにするスレイン。
だが、いくら起動しようとしても、アザレアは起動しない‥‥。
「メカニック。アザレアを見てくれ!! もうすぐ作戦開始だというのに、これでは‥‥」
そのスレインの言葉に慌てて整備兵もアザレアの最終点検を開始するが、どうにもこうにもどこもおかしいところはない。
「そ、そんな‥‥ばかな‥‥」
「予備機としてグラュテを1機、搭載してきています。今回はそちらで」
と告げられて。スレインは渋々グラシュテに乗り込む。
そしてEバスターを構えるが、それすら真面に反応しない。
「‥‥使えないのか‥‥反応してくれない‥‥」
ここにきて、大幅な作戦変更。
その事実をロータスより受けたオルテンシア。
そして作戦は開始されたのだが‥‥。
●殲滅どころか‥‥
──ザバ沖合の小さな島・港湾施設
ドッゴォォォォォォォォォォォォォォッ
激しい一撃を受けて、スレインの機体が後方に吹っ飛ぶ。
既に戦闘は始まっていた。
漆黒のアザレアを相手に、ラン傭兵騎士団は後手にまわる羽目になっている。
既に敵Eバスター装備型は上空に飛び立ち、オルテンシアを襲っている。
それにはロータスがヒット&アウェイで迎撃に出ているが、アザレアの空中起動戦力に手も足も出ない。
地上では、残り4機の敵アザレアと戦いも激化。
ヴァラスも奮闘を見せていたものの、頭部と腕を破壊され、さらに制御胞に一撃を受けて機体が停止。
そのまま後方に撤退となった。
さらに今、スレインの機体も敵によって撃破される。
『スレイン無事か!!』
『あ、ああ。体は無事だ。だが、機体が反応しない‥‥』
スレインの搭乗していたグラシュテも起動停止。
のこりはシュバルツのキャペルス一機、そして敵は4機のアザレア‥‥。
どう見ても分が悪すぎた。
「撤収するしかないの‥‥」
そう制御胞の中で呟くシュバルツ。
『ランの鎧騎士に告げる。降伏するのならば命まではとらない‥‥』
そうシュバルツの上空から声がする。
ふと見上げると、上空で漆黒のアザレアが1機、Eバスターをシュバルツに向けて構えている。
『止むをえまい‥‥』
そう呟いて、シュバルツは制御胞を開き、そのまま外に出て両手を広げる。
「騎士道にのっとり、身柄の安全は保証して頂きたい」
そう大声で叫ぶと、敵正面のアザレアの制御胞が開く。
「竜と精霊の名に掛けて、誓おう」
その言葉に肯くシュバルツ。
そしてそのまま、シュバルツは捕虜として捉えられてしまった。
●混沌の使者
──ザバ沖合の小さな島・港湾施設外
ズバァァァァァァァァァァァァァァァァァァツ
切り裂かれた肉体から鮮血が飛び散る。
そのまま意識を失い、その場に崩れていくカオスニアン。
セシリアの目の前には、大量の死体が転がっている。
敵、そして味方。
死屍累々ということばがまさに当てはまる光景。
敵の傭兵団とセシリア率いる傭兵団は正面から激突。
双方一歩もゆずらない情況であったが、やがてラン傭兵騎士団の方が優位に立つ。
そして敵の8割を殲滅した所で敵カオスニアンは敗走。
残るはジャグ・バンただ一人。
相棒であるマヤの姿は今回は見えず、黒いレザーアーマーに身を包んだジャグ・バンだけがそこに立っている。
そして一気に止めを刺しに向かった傭兵達だが、逆に返り討ちにあってしまっていた。
「茶番だな‥‥」
口の中に並ぶ牙。
そしてジャグ・バンは転がっている死体をヒョイと持ち上げると、その喉笛に噛付き、引きちぎり、貪り食らう。
「少なくとも、貴方一人を倒せばカオスニアン達はもう戦うことはないでしょう?」
そうセシリアが告げるが、ジャグ・バンは笑い飛ばす。
「ハーーーーーーーーーーーーーーーーーーッハッハッハッハッハ。そうさ、まさにその通りさ。だったら倒してみろよ、卑怯者の騎士さんよ!!」
それはセシリアを侮蔑する叫び。
だが、その手は喰わないと、セシリアは心を落ち着ける。
そして素早く手を上げると、一言叫んだ!!
「魔法兵団、一斉攻撃!!」
その叫びと共に、後方の魔法兵団が次々と魔法を連射する。
ファィアーボムやライトニングボルテックス、さらにはグラビティキャノンやウンドスラッシュ。
それらが次々とジャグ・バンに直撃し、その肉体を穿つ。
人間ならば死んでいる。
それほどのダメージを受けてもなお、ジャグ・バンは生きている。
その肉体はそれほど傷ついていない。
いや、瞬時に回復しているようである。
だが、まったくの無傷という事では無い事を、セシリアは見抜いた。
頭部の傷はそれほど回復しない。
そこがジャグ・バンの弱点であると見抜いた。
「第二射っ」
そうセシリアが叫んだ刹那。
──ドッゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ
上空で爆発音が響く。
セシリアが見上げると、漆黒のアザレアの放ったEバスターにより破壊されたオルテンシアが、上空で爆発、そのまま海に落下していく光景であった。
「そ、そん‥‥な‥‥」
ここにきて情況は逆転。
「どうするおじょうさんよぉ‥‥まだやるっていうのなら相手するぜ。それとも引くかい?」
そう告げられて、セシリアは考える。
ここで引かなかった場合、ジャグ・バンには勝てるかもしれないけれど、人的被害は甚大。
1度撤退し、対策を練り直した方がいいと判断する。
「撤収する‥‥この戦いは引かせて貰うわ‥‥」
屈辱の捨て台詞。
だが、その一言で、ジャグ・バンはセシリア達を追撃するのを止めた。
そしてセシリア達は、風信器の連絡を受けて、ロータスに戻っていく。
そして生き残った者たちを乗せて、ロータスはザバ分国へと撤退していった。
──そして後日
囚われていたシュバルツも一隻の小舟によって解放。
但し、ラン本国に対してのメッセージを預かることとなった。
厳重に閉ざされた封。
それをビリー・アンデルスに手渡すと、ビリー・アンデルスは執務室へと戻っていく。
そして作戦が終了すると、ロータスは一路ウィルへと向かう事となった。
作戦失敗。
だが、完全な敗北ではない‥‥。
──Fin