●リプレイ本文
●12月動乱の始まり
──ラン南方・ザバ分国戦線
グオングオングオングオン
高速で飛来するフロートシップ。
ラン王国に所属する空戦騎士団及びウィル特務艦グリフィンなど、数多くのフロートシップが集まりつつある。
だが、空戦騎士団本部隊のフロートシップの姿はいまだなく、補給艦に使われている小型フロートシップが数隻のみ、その姿を見せていた。
全てのフロートシップは、王都ダーナ南方、
ザバ分国北方山脈北の裾野に集結し、作戦のタイミングをじっと待っていた。
「定時連絡はまだか!! 偵察部隊からの報告は!!」
特務艦グリフィン艦長であるアーレン・フィルマーは、通信兵に向かってそう叫んでいる。
ランの偵察部隊からの報告が遅れている為、こちらの動きに若干の支障が起きやしないかと懸念しているのである。
『こちら雷電の市川。現在地点は山脈麓の大森林上空。眼下を移動するザバ分国の陸戦騎士団を確認、これより詳細調査を開始する』
ゴーレムグライダー『雷電』にて偵察任務を行なっている市川敬輔(eb4271)が、業を煮やして通信を入れてきた。
戦地では、『機密情報』に抵触するものは全て風信器では行なわないようにしている。
というのも、風信器のチャンネルは大体各国共通で回線数が少なく、傍受しようとおもえばできないこともないのである。
「それにしても、この数は尋常じゃあないか‥‥ザバ分国と報告にあった沖合の所属不明軍隊と手を結んだというところか‥‥」
そう呟きつつ、偵察任務を続ける市川。
と、その眼下を駆け抜ける一陣の風のような部隊を確認。
「カオスニアンの軍勢‥‥眼帯を付けた大剣装備の奴がリーダーか‥‥」
そう告げてから、それらの詳細も全て報告を入れる。
『こちら特務艦グリフィン、通信受けました。引き続き偵察を御願いします』
『こちらラン高速艇ロータス。偵察報告受けました、ありがとうございます』
次々と返信を受け取る市川。
「まあ、これで相手の先手を潰すことができるか‥‥それじゃあ、そろそろ本陣の調査といきますか」
そのままグライダーを上昇させると、市川は山頂付近にて展開している敵戦力の確認に向かった‥‥。
──そのころ
『こちら『震電』のヴァラス。現在山頂付近、敵ゴーレムを確認‥‥数は18、所属不明機が15、漆黒のアザレアが3。アザレアは全て、エレメンタルバスターを装備‥‥』
雲間に隠れていたヴァラス・シャイア(ec5470)のゴレムグライダー『震電』が、強行偵察を開始。
眼下に広がっている陣形などを全て報告し、情報を逸早く送っている最中である。
『こちら中継機、『震電』よりグリフィンへの情報を送ります‥‥』
風信器の通信範囲を越えている為、中間エリアにて待機している通信兵のゴーレムグライダーやフロートチャリオットが、ヴァラスの情報を中継し、グリフィンへと送っている。
「どうだ?」
と、ヴァラスの近くに飛来する市川の『雷電』が、横を飛ぶヴァラスにそう告げる。
「偵察任務ご苦労様です。こちらは順調です。たった今、報告をいれました‥‥」
そう告げた刹那、市川機が加速を開始。
「敵が揚がってくる!! 撤収だ!!」
そう叫ぶと同時にインメルマンターンに入る『雷電』。そのまま機体を水平に戻し、高速で離脱を開始。
「了解です!!」
ヴァラスはそのまま通常旋回からの高速移動に入る。
と、インメルマンターンに入ったとき、垂直状態からの立て直しのときに市川は、見知らぬ騎士団を山頂付近で確認した。
「‥‥見た事のない鎧だな‥‥『こちら市川、紋章の称号を頼む‥‥』」
素早く風信器を手に、市川が叫ぶ。
『こちら中継、了解しました、報告をどうぞ』
『カイトシールドにセプター(王杓)、鎧の頭部には羽根飾りのついている奴だ。鎧を着ていない兵士は鍔の広い帽子を着用!! 頭部にはやはり羽根飾りがある‥‥』
その報告の直後、帰ってきた通信は一言。
『敵はバの国、陸戦騎士団かと思われます、作戦変更し、直ちに帰還してください!!』
その言葉を聞いた直後、後方から揚がってきた12機のゴーレムグライダーと市川、ヴァラスの2機はドッグファイトに突入した!!
──一方・グリフィン
「敵Bアザレア確認の報告あり。山頂にてEパスターを構えて待機、ゴーレムの数は全部で15です」
市川からの偵察報告がグリフィンのブリーフィングルームに届く。
「さて、それじゃあ動くとするか。隣のロータスも出撃準備に入った。これより特務艦グリフィンは作戦行動に入る。第一目標は敵アザレアの殲滅、ロータスのアザレアと連携を取り、作戦を遂行するように!!」
グリフィンブリッジにて指示を飛ばすアーレン艦長。
『イーグル1の加藤、アザレア2との連携にはいります』
イーグルドラグーン壱号機の加藤瑠璃(eb4288)がそう告げる。
『おなじくイーグル2のライナス、了解した。アザレア2との作戦行動に入る』
続いてライナス・フェンラン(eb4213)がそう告げると、グリフィンが浮上を開始。
それに続くようにロータスもゆっくりと浮上を開始すると、最前線へと移動を開始した。
「ランの最新鋭との連携。ゴーレムのくせに飛ぶっていうのが、なにか納得がいかないんだが‥‥」
「ええ。そうですね。それにランには地の精霊力を付与されたドラグーンもあるって言うじゃないですか‥‥私達ウィルに劣らず、かなりゴーレム技術が発達しているようですね‥‥」
「ゴーレムの技術については、うちのオーブル殿の方が上だと思っていたんだが‥‥」
「報告書によれば、ランのゴーレムは独自開発らしいですわ。それに一般情報ではありませんけれど、ランのアザレアは二人乗りの機体で、精霊力をより効率良く供給しているとか‥‥」
そう告げる瑠璃に、ライナスはやれやれという表情を見せた。
『こちらグリフィンブリッジ、艦内極秘連絡』
伝声管からアーレン艦長の声が響く。
「なんだろう?」
「何かランサイドに伝えたくない情報でもあるのかしら?」
そう二人は制御胞のハッチを開放したまま、アーレン艦長の声をじっと聞く。
『ザバ分国の背後にバの国の姿を確認。偵察兵よりバの陸戦騎士団とザバの騎士の姿を確認、敵はアザレアの技術を得た可能性がある。可能性から考えて、所属不明ゴーレムの中身は全てバのゴーレムであることを想定して戦うよう。なお、この情報は第一級機密とし、騎士団長クラス及び軍上層部以外に漏らすことは禁ずる』
その言葉の直後、二人は制御胞を閉じる。
(つまりそれって、対バの国を想定して戦えって言うことか? ウィルとしてはバの国と戦争状態に突入することをよしとするのか?)
(不味いことになったわ‥‥私達の戦力がバに報告されることも考えると‥‥)
二人の思考がフル回転。
そして出た結論が一つ。
『今更遅いよな‥‥好き勝手に行かせてもらうか』
『今更遅いわよね。難しいことは上層部に任せるわ』
おいおい。
そのまま次々と出撃するイーグルドラグーン。
かくして派手な戦闘が開始されることとなった。
●立体的戦闘空間
──山頂付近
「飛行しない‥‥Eバスターを安定して使う為かしら?」
黒アザレアを見下ろすように移動するイーグルドラグーンとアザレア1。
──ガシィィィッ
その横で、アザレア1が大地に展開を開始した敵ゴーレム兵力に向かって、上空から改良型Eバスターを叩き込む!!
──ドッゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ
大地をえぐり、クレーターを生み出す。
その結果、敵ゴーレム部隊は散り散りとなり、連携を組みにくくなる。
「今ね‥‥」
すかさず瑠璃のイーグル1画急上昇を開始、そのままシールドを前に突き出した体勢を取ると、そのまま垂直降下を開始、敵の黒アザレアに向かって突撃を開始。
「速度でこのイーグルドラグーンを越える事なんてできないわ‥‥」
そう叫びつつ、イーグルドラグーンがアザレアに向かって移動、そのまま反転してEバスターの砲身を蹴り上げる!!
──ガギィィィィッ
イーグルドラグーンの足に付いている鍵爪が砲身を引っ掛け、そのまま弾き飛ばす!!
さらにアザレア1もまた、黒アザレア及び敵ゴーレム部隊に対してEバスターを構える。
「連射はできないけれど、時間を稼いでくれて助かる‥‥」
アザレア1のパイロットがそう告げて、Eバスターを射出。
──ドッゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ
水平発射されてEバスターのエネルギーが黒アザレアと敵ゴーレムを巻き込んだ!!
その刹那、敵ゴーレムは消滅した‥‥。
「残り黒アザレア2。そちらに移動します」
そう告げて、イーグル1は別の部隊に移動を開始。
それに同調するように、アザレア1もまた上空に飛び立つ。
「これがEバスター。こんな破壊兵器をランが保有するなんて‥‥この国は危険だわ‥‥」
壊滅的な戦場を眺めつつ、瑠璃は別エリアへと向かっていった。
──その頃の別エリア
「地上から動かない? 報告では飛んでいる筈だか」
イーグル2のライナスがそうアザレア2のパイロットに問い掛ける。
『ええ。その筈ですが‥‥地上に足を付ける事で、Eバスターをより安定させるコトが出来るということでしょう』
そう告げると、アザレア2とライナスのイーグル1は黒アザレアに急速接近。
──ドッシィィィィィィィィィィィン
手にしたEバスターを大地に落とし、横に突きたてられていた楯と剣を引き抜くと、アザレア2の一撃を楯で弾き飛ばす黒アザレア!!
──ガギィッン
「いい腕しているな。中に乗っているのはパの鎧騎士ということか‥‥まさか、噂のカオスゴーレムのパイロットとかか?」
ライナスがそう呟きつつも、ロングソードを構えて突進する。
──ブゥァン
そのイーグル2に反応するものの、同時に横からアザレア2の一撃を叩き込まれる黒アザレア。
「甘いか‥‥中は普通の鎧騎士か?」
その一瞬の隙を突くライナス。
後方に向かって構えているロングソードを、バックスイングで力一杯叩き込む!!
──ドッゴォォォォォォォォォッ
イーグル2のロングソードが黒アザレアの頭部をはじき飛ばす。
「まだうごきやがる。一体どんなゴーレムなんだよっ」
そのまま体勢を整えつつ、急ぎEバスターを手に取る黒アザレア。
と、横にいたアザレア2を殴り飛ばすと、それを逆に構えて『弾倉部分』で殴りつけた!!
──ガギィィィィッ
その一撃を楯で受止めるが、パワーがそのまま伝わり、弾き飛ばされてしまう!!
『こ、これはきついです‥‥が』
そう告げるアザレア2のパイロット。
そのままアザレア2は転がるように山頂から落ちていく。
『タイミングOK。グッバイ‥‥』
と、上空に到着したアザレア1。
そこにライナスも機体を上昇させて合流すると、アザレア1の構えているEバスターの砲身を2機のイーグルドラグーンでしっかりと固定。
そして黒アザレアに向かって精霊力の塊を叩き込む!!
──チュドォォォォォォォォォォォォォォン
その一撃で黒アザレアは消滅。
「さて、あとは1機だが‥‥」
「ライナス!! 下がります!! あ、あれは一体なんなの‥‥」
ライナスに向かって瑠璃が叫ぶ。
そしてライナスもまた、信じられない光景を見た。
ザバ分国上空に突然姿を現わした、『飛行する巨大な城』。
そこに搭載されている巨大な精霊砲が、ライナス達の方角を見つめていた。
さらに、その左右に飛行する漆黒のアザレア。
その手には、Eバスターが2門構えられ、砲身が精霊の輝きを見せていた!!
──ドッゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ
「全軍撤退‥‥敵新兵器だ!!」
運良く直撃しなかったものの、近くを飛んでいった精霊力の塊により、イーグルドラグーンとアザレアは飛行制御が取りにくくなった。
そのまま活気とも母艦に着艦すると、後方とへ撤退を開始する。
だが、敵巨大要塞──フロートキャッスル──もまた、その場から追撃してくる様子はなく、戦闘は再び膠着状態となってしまった‥‥。
──Fin