●リプレイ本文
●12月動乱の始まり
──ラン南方・ザバ分国戦線
グオングオングオングオン
高速で飛来するフロートシップ。
ラン王国に所属する空戦騎士団及びウィル特務艦グリフィンなど、数多くのフロートシップが集まりつつある。
だが、空戦騎士団本部隊のフロートシップの姿はいまだなく、補給艦に使われている小型フロートシップが数隻のみ、その姿を見せていた。
全てのフロートシップは、王都ダーナ南方、
ザバ分国北方山脈北の裾野に集結し、作戦のタイミングをじっと待っていた。
「グリフィンからの偵察報告です!! 敵歩兵部隊は山岳山頂より下山、山脈北方の森林地帯に広がる様子を見せているとのことです!!」
本陣に着地している高速艇ロータスにて待機していたセシリア・カータ(ea1643)の元に、ウィルの特務艦グリフィンからの報告が届いたのは、其の日の正午のことであった。
「地図は?」
「こちらに。で、偵察機からの報告によりますと、敵軍勢は3つの部隊に分離、こことここ、そしてこのエリアより森林地帯に潜り込んだ形跡があると」
次々と地図に印を付けていく魔法兵団副官。
そのまま地図をじっと睨みつけつつ、セシリアは色々と試行錯誤を繰り返していた。
「セシリア隊長。ジャグ・バンの一行はこのルートから突入したと‥‥」
と、もっとも東方からの進軍ラインを指差す副官。
「敵の戦力と武装、それらについて少しでも判る事はないか通信を入れてください。それが判り次第、ラン傭兵陸戦騎士団は進軍を開始します!!」
セシリアのその言葉に、全員が素早く行動を開始した。
「恐獣を止めるのは私の仕事ですから‥‥」
──ズバァァァァァァァァァァァァァァァァッ
接近してくるティラノザウルス・レックスに向かって、リュドミラ・エルフェンバイン(eb7689)のキャペルスが剣を振るう。
鈍重ながらも硬い皮膚、それを切りさき、骨を砕く。
──グオァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ
咆哮をあげ、突進してくるTレックスの一撃を楯で受止めると、そのままカウンターでTレックスの首に向かって一撃を叩き込むリュドミラ。
──ズバァァァァァァァァァァァァッ
一撃で首を切断すると、さらに次の獲物にむかって 剣を構える。
崩れ落ちたTレックスの首から血飛沫が上がり、リュドミラの機体を赤黒く染め上げる。
「あ、悪魔だ‥‥悪魔の機体だぁぁぁぁぁぁぁぁ」
赤黒いリュドミラの機体を見て絶叫する敵陸戦騎士。
だが、血肉に餓えた敵恐獣は、さらにリュドミラに向かって突進を開始する。
‥‥‥‥‥‥
‥‥‥‥
‥‥
大地は血に染まり、10にも及ぶ恐獣の死体が散乱する。
その中心で、剣を構えたまま、リュドミラのキャペルスは停止していた。
胸部制御胞は破壊され、跡形もない。
頭部も巨大な顎によって咬みちぎられ、見るも無残な状態になっている。
「ふぅ。こんなにやられたのは久しぶりね‥‥」
全身についた無数の傷の手当をしつつ、リュドミラは静かにそう呟いた。
──一方、その頃
「敵Bアザレア確認。山頂にてEパスターを構え、こちらを睨みつけています」
ラン空戦騎士団からの偵察報告がロータスに届く。
「ということだそうだ。あー、ロータス各員につぐ、これより作戦行動に入る。傭兵陸戦騎士団は隣の補給艦に移動、そこから進軍を開始して欲しい。アザレア各機はスタンバイ、ギリギリで出撃し、敵アザレアを倒す‥‥以上、よろしく」
ロータスブリッジにて指示を飛ばす後藤艦長。
『こちらアザレア1、鳳レオン了解』
『こちらアザレア2、草薙麟太郎了解』
制御胞内部で風信器に向かってそう告げる鳳レオン(eb4286)と草薙麟太郎(eb4313)。
『こちらキャペルス1のリュドミラ・エルフェンバイン。作戦内容了解しました』
リュドミラもまくた、キャペルス制御胞内部にて通信を受けている。
「さて、それじゃあいきますか」
「了解。第一目標は敵黒アザレアの撃破と」
そう麟太郎が告げて、隣で浮上を開始した特務艦グリフィンをじっと眺める。
「ウィルのイーグルドラグーン。あれとの連携ならば、なんとかいけそうですね」
「ああ、そうだな。問題は起動時間。そこさえうまくすれば、敵を一網打尽にすることができる。敵も味方も、起動時間に差異は無い筈だから、どれだけ早く敵を殲滅できるかが勝負の鍵だな」
レオンがそう告げると、麟太郎は静かに懐く。
『あーもしもし。こちらシフール制御胞のビン・シャウンツェ。なんかよく判らないけれど飛びながら戦って、でっかいのをバシバシ倒すんだよね? まっかせてよ!』
そうアザレア1のシフール制御胞で叫ぶビン・シャウンツェ(ea3932)。
『そういうことだ‥‥よし、行くぞ』
そう叫ぶレオン。
やがてロータスとグリフィンは敵最前線まで移動を開始した。
●立体的戦闘空間
──ザバ分国北方山脈裾野
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
絶叫と怒号が入り交じる戦場。
大森林内部では、敵カオスニアン兵力とセシリア達ラン傭兵陸戦騎士団が戦闘を開始していた。
──ズバァァァァァァァァァァァァァァァァツ
一撃で敵カオスニアンの頭部を刎ね飛ばすと、セシリアは返り血を気にすることなく次の獲物をさがす!!
「ここから先はランの王都、一歩も進ませる訳にはいきません!!」
その言葉に鼓舞され、ラン陸戦傭兵騎士団の士気が向上。
敵陸戦兵力にたいして、互角の戦闘を行なっていた。
「イッツ、ショーターイム!!」
突然、森林奥から姿を表わすジャグ・バンの一党。
その背後からは小型恐獣と、その背中に跨ったカオスニアンの姿もある。
「敵陸戦本陣だ!! 各自連携して対処せよ!!」
セシリアがそう叫ぶと、彼女の近くには二人の陸戦騎士と魔法兵が接近。
そのまま4名でジャグ・バンに向かって走り出す!!
「あの時のお嬢さんか‥‥今度こそ決着を付けさせてもらうぜ!!」
そう叫ぶジャグ・バン。
そして右腕を大きく構えると、突然腕が伸びで仲間の陸戦騎士の首を掴み、そして引きちぎる!!
──ブヂィィィィィィッ
大量の血が吹き出し、絶命する陸戦騎士。
「ニィィィィィィィィィィィィィィィィック」
ニックと呼ばれた陸戦騎士の名を叫びつつ、もう一人の騎士がジャグ・バンの伸びた腕に向かってスマッシュを叩き込む!!
──ズバァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァツ
その一撃で腕を切断する。
その刹那、魔法兵がジャグ・バンに向かってグラビティキャノンを高速詠唱!!
──ドッゴォォォォォォォォォォォォォォッ
一直線に飛んでいく重力波に逆らう事が出来ず、その場でジャグ・バンは転倒。
そのまま切断された腕を再生し、背中の巨大な剣を引出す。
「今度は‥‥貴様だ!!」
ブゥンを構えた大剣を陸戦騎士に向かって投げ付ける!!
「させないっ!!」
瞬間、魔法兵が大地より石の壁を生み出し、飛んできた大剣を壁で弾き飛ばす。
「まだまだぁっ!!」
そう叫びつつ、一気に間合を詰めてくるジャグ・バンに、セシリアは自身の武器を構え、カウンターの動作に入る。
──キィィィィィィィィィィィィィン
セシリアのオーラが高まり、セシリアの武器と全身がオーラによって包まれていく。
「これでおしまいです!!」
「小賢しいわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
──ズバァァァァァァァァァァァァァァッ
セシリアの左肩がジャグ・バンの巨大ナツメによって引き裂かれ、ちぎられる。
だが、セシリアの剣は、ジャグ・バンの顔面に深く突き刺さっていた!!
「あ‥‥が‥‥ご‥‥な‥‥」
「まだ生きているか‥‥しぶといっ!!」
そのまま残った腕と全体重を掛けて、剣を大地に向かって引き落とす!!
ジャグ・バンの全身は真っ二つとなり、そのまま崩れていく。
やがてそれは塵となり、なにも残らなくなった‥‥。
「隊長、傷の手当を!!」
「それよりも、敵ジャグ・バンは討ち取った!! カオスニアン共の一掃を!!」
その叫びは周辺のエリアまで伝達される。
そして主を失ったカオスニアン兵力は蜘蛛の子を散らすように散っていった‥‥。
「陸戦騎士団は進軍!! 恐獣を王都に近づけるなっ!!」
フロートチャリオットによって後方へと運ばれていくセシリア。
その風信器からの報告を受けて、バガン隊が対恐獣兵装にて進軍を開始した‥‥。
──一方
「ちぃっ‥‥相手は陸から動かないのかっ!!」
黒アザレアを見下ろすように移動するイーグルドラグーンとアザレア1。
「きゃはははははははははははははっ。いけいけいっちゃえーーーーーーーーーーーーっ」
シフール制御胞で愉しそうに叫ぶビンの声を聞きつつ、レオンが大地に展開を開始した敵ゴーレム兵力に向かって、上空から改良型Eバスターを叩き込む!!
──ドッゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ
大地をえぐり、クレーターを生み出す。
その結果、敵ゴーレム部隊は散り散りとなり、連携を組みにくくなる。
──ガチャッ
黒アザレアがEバスターを構えた刹那、上空から楯を構えたイーグルドラグーンが垂直降下で急速接近する!!
「速度でこのイーグルドラグーンを越える事なんてできないわ‥‥」
そう叫びつつ、イーグルドラグーンがアザレアに向かって移動、そのまま反転してEバスターの砲身を蹴り上げる!!
──ガギィィィィッ
イーグルドラグーンの足に付いている鍵爪が砲身を引っ掛け、そのまま弾き飛ばす!!
さらにアザレア1もまた、黒アザレア及び敵ゴーレム部隊に対してEバスターを構える。
「連射はできないけれど、時間を稼いでくれて助かる‥‥」
レオンがそう告げて、Eバスターを\射出。
──ドッゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ
水平発射されてEバスターのエネルギーが黒アザレアと敵ゴーレムを巻き込んだ!!
その刹那、敵ゴーレムは消滅した‥‥。
「残り黒アザレア2。そちらに移動します」
そう告げて、イーグルドラグーンは別の部隊に移動を開始。
それに同調するように、レオンもまた上空に飛び立つ。
「たった一撃で、多くの命を‥‥これは危険すぎる代物だ‥‥」
そう告げるものの、いまはこれしかない。
Eバスターの弾倉を交換しつつ、別エリアへと向かう二機であった。
──その頃の別エリア
「地上から動かない? 報告では飛んでいる筈だか」
イーグルドラグーンのパイロットがそう麟太郎に問い掛ける。
「ええ。その筈ですが‥‥地上に足を付ける事で、Eバスターをより安定させるコトが出来るということでしょう」
そう告げると、麟太郎のアザレア2とイーグルドラグーン1は黒アザレアに急速接近。
──ドッシィィィィィィィィィィィン
手にしたEバスターを大地に落とし、横に突きたてられていた楯と剣を引き抜くと、麟太郎の一撃を楯で弾き飛ばす!!
──ガギィッン
「いい腕です。それに反応速度も早い‥‥」
あきらかに腕が違いすぎる。
それを感じた麟太郎だが、さらに後方から飛んできたイーグルドラグーンの追撃をサポートする!!
──ブゥァン
イーグルドラグーンに反応するものの、同時に横から麟太郎の一撃を叩き込まれる黒アザレア。
──ドッゴォォォォォォォォォッ
そして正面からのイーグルドラグーンの一撃。
ロングソードが黒アザレアの頭部をはじき飛ばす。
「確か、首の付け根がアザレアの弱点だったが‥‥まだ動くのかっ!!」
そのまま体勢を整えつつ、急ぎEバスターを手に取る黒アザレア。
そのまま砲身で麟太郎のアザレアを殴り飛ばすと、それを逆に構えて『弾倉部分』で殴りつけた!!
──ガギィィィィッ
その一撃を楯で受け止めるが、パワーがそのまま伝わり、弾き飛ばされてしまう!!
「こ、これはきついです‥‥が」
そう告げると同時に、アザレア2は転がるように山頂から落ちていく。
「タイミングOK。グッバイ‥‥」
レオンのアザレアが上空に到着。
Eバスターの砲身を2機のイーグルドラグーンでしっかりと固定し、黒アザレアに向かって精霊力の塊を叩き込む!!
──チュドォォォォォォォォォォォォォォン
その一撃で黒アザレアは消滅。
「ふぅ‥‥残りはあと1機ですが。それはどこに‥‥」
そう麟太郎が告げたとき、イーグルドラグーン及びアザレアは、信じられないものを見た。
ザバ分国上空に突然姿を現わした、『飛行する巨大な城』。
そこに搭載されている巨大な精霊砲が、麟太郎達の方角を見つめていた。
さらに、その左右に飛行する漆黒のアザレア。
その手には、Eバスターが2門構えられ、砲身が精霊の輝きを見せていた!!
──ドッゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ
「全軍撤退‥‥敵新兵器だ!!」
運良く直撃しなかったものの、近くを飛んでいった精霊力の塊により、イーグルドラグーンとアザレアは飛行制御が取りにくくなった。
そのまま二機とも母艦に着艦すると、後方へと撤退を開始する。
だが、敵巨大要塞──フロートキャッスル──もまた、その場から追撃してくる様子はなく、戦闘は再び膠着状態となってしまった‥‥。
──Fin