●リプレイ本文
●1月動乱の始まり
──ラン南方・ザバ分国戦線
グオングオングオングオン
高速で飛来するフロートシップ。
ラン王国に所属する空戦騎士団及びウィル特務艦グリフィンなど、数多くのフロートシップが集まりつつある。
だが、空戦騎士団本部隊のフロートシップの姿はいまだなく、補給艦に使われているスモールシップが数隻のみ、その姿を見せていた。
全てのフロートシップは、王都ダーナ南方、ザバ分国北方山脈に向けて集結し、作戦のタイミングをじっと待っていた。
先日の戦いで確認された『フロートキャッスル』。
その攻略の為の作戦が、現在ベースキャンプにて展開している。
「では、私は陸戦騎士団を率いて、地上から侵攻するカオスニアンや敵陸戦騎士団を止めに入ります‥‥」
セシリア・カータ(ea1643)がそう集まっているメンバーに進言する。
その言葉に対しては、誰も異議を唱えることはない。
ここ最近の、彼女の部隊の活躍はかなり目を見張るものであったから。
「となると、問題は敵空戦騎士団という所でしょう‥‥それも、黒アザレアが2機、エレメンタルバスターを装備しているとなると、なおさらキツい戦いになりそうですね」
草薙麟太郎(eb4313)がそう告げると、横に座っていたシャリーア・フォルテライズ(eb4248)とライナス・フェンラン(eb4213)にも意見を問い掛ける。
「アザレア対策はどうしますか?」
「私はEバスターを使うことにする。後方からの援護も兼ねてな‥‥。可能ならば、フロートキャッスルにも何発か打ち込んでみるつもりだ‥‥」
シャリーアがそう告げると、ライナスは静かに肯く。
「兎に角、問題はアザレアのEバスターだ。素早く間合を詰めて、あれを止める必要がある。でないと、最悪の事態すら起こりかねない」
そのライナスの言葉には、全員が同意。
「こちらとしても、イーグルドラグーンを使っての援護に参加する‥‥」
「そちらのEバスターで敵を牽制してくれれば、オレがイーグルドラグーンで敵フロートキャッスルにとりつく。そうすれば、突破口は開けるだろう?」
そう告げるグリフィンのドラグーンパイロット。
「私はグリフィンの機動力を駆使して、敵フロートキッャスルの後方から奇襲攻撃に入ります。ぎりぎりのタイミングで、イーグルドラグーンでとりつくようにしたいですね」
「私はグライダーで斥候と偵察を務めますわ。多少は囮になると思います」
次々と意見が出るグリフィンの搭乗員。
「私も今回は偵察を務めますね。登場するグライダーには、ランスチャージ用の突撃槍をセットしておきましたので、多少は役に立つと思われます」
その言葉に肯く、グリフィンのアーレン艦長。
「では、今回の作戦はそのような方向でいきましょう」
最後にビリー卿が締めくくり、いよいよ作戦開始の準備に向かう一行であった。
●激戦区での侵攻
──ザバ分国北方山脈・その裾野よりさらにダーナへ
ウアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァア
絶叫をあげつつ、敵カオスニアンを次々と切り捨てていくセシリア。
先日の戦いとは違い、今回は正統派陸戦騎士やカオスニアンとの戦いがメイン。
「敵はかなり疲弊している!! 今こそ叩き潰すチャンスだ!!」
セシリアの檄が飛び、それに呼応するようにラン陸戦騎士団の面々は次々と敵カオスニアンに向かって飛込んでいく!!
──ガササッ
と、突然森の奥からバの陸戦騎士団が突撃してくる。
「さて、ここのエリアを守っているのは貴殿達か」
そう告げられて、セシリア達は静かに肯く。
「ええ。ラン傭兵騎士団陸戦部隊筆頭、セシリア・カータです」
そう丁寧に挨拶を返すセシリア。
「ではこちらも名乗りをあげさせて頂こう。バ陸戦騎士団ラン派遣部隊第一師団筆頭・バール・セドリックだ。このエリアの覇権を掛けて、貴殿に部隊長として一対一の決闘を申し込む!!」
そう告げるバール。
「お互い、兵士の疲弊はかなり激しい。ここはその名乗り、飲ませて頂こう」
そう告げて、セシリアはスッと武器を鞘に納める。
その動きに合わせて、バールもまた武器を納め、セシリアの正面に立つ。
お互いの距離は100m。
そこで同時に剣を抜くと、両手で剣を胸の前にかざし、騎士の礼を行う。
「それでは」
「参る!!」
──ガサササササ‥‥ズバァァァァァッ
お互いに踏込み、一気に間合を詰めての初手。
それは二人の胸部装甲を一撃で破壊し、そして再び間合を取る形となった‥‥。
(ジャグ・バンの方が重い‥‥が、かなり正確な攻撃だ‥‥)
そう考えつつも、セシリアは素早く振り返り、2撃目に入る。
それにはバールも合わせてきた。
──ガギィィィィン
激しく撃ちなる拳戟の響き。
この戦いは、かなりの時間が掛かっていった‥‥。
●バスターの悲劇
──森上空
「こちら偵察機『秋水』の‥‥現在、敵フロートキャッスルに異常なし。左右にEバスターを構えた黒アザレアが待機している模様」
『了解。引き続き偵察を頼む』
そう報告を受けると、グリフィンのブリッジオペレーターはすぐにロータス及び各部隊に風信機で現在のり情況を報告。
「こちらロータス。了解です。引き続き偵察任務をよろしく‥‥ロータス各部隊はすぐさま作戦開始。敵アザレアの撃破を!!」
ロータス艦長の後藤が風信器に向かって叫ぶ。
その声を聞いて、次々と飛び立つアザレアと、陸上で待機している草薙麟太郎(eb4313)のキャペルス。
「こちらキャペルス。敵の新型ゴーレムを確認‥‥これより情報収集及び殲滅を開始します」
そう風信器に叫んで、麟太郎は目の前のバの国のタイプ未確認ゴーレムに向かって突撃を開始。
──ガギィィィィィィン
まずは先手を叩き込んだ一撃を、敵シルバーゴーレム・ガナ・ベガが手にしたシールドで弾き飛ばした!!
「いい腕。そしていい度胸です‥‥」
そうガナ・ベガの制御胞から聞こえてくる。
「ここから先は一歩も進ませません!!」
すかさず2撃目を叩き込む麟太郎のキャペルス。
──ヒュンッ
だが、その刹那、ガナ・ベガが瞬時にキャペルスの一撃を躱わす。
──ドッゴォォォォォォォォォォォォォォッ
そしてカウンターで叩き込まれた一撃が、キャペルスの胸部装甲を破壊する。
「ぐうっ!!」
破壊された破片が制御胞内部に飛び散る。
その一部が麟太郎の頬を掠め、うっすらと血が滲んでいる。
「いい腕です。けれど、死んでもここは通しません!!」
──シャキィィィィィィィン
お返しとばかりに打ち込んだ麟太郎の一撃に、敵は同じ軌跡で剣を振るい、そのまま受け流した!!
「なら、貴殿を殺して先に進ませていただこう‥‥」
──一方そのころ
ドッゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォツ
激しく吠える精霊の怒り。
シャリーアのアザレア2の構えていたEバスターから、精霊力の塊が発射された。
それはフロートキャッスルの右サイドの岩を破壊し、内部の装甲板を剥き出しにしている。
「続いて2撃目っ!!」
──ガッゴォォォォォォォォォォォォォォォツ
カートリッジをリロードし、素早く2撃目を構えるシャリーア。
と、正面の敵黒アザレアも、シャリーアに向けてEバスターを構えている!!
「正確な射撃で負けるワケにはいかないな‥‥狙い撃たせてもらう!」
そう叫ぶと同時に、トリガーを引くアザレア2。
──ドッゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ
2撃目のエレメンタルバスターが、敵味方とも同時に発射。
──ジュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥツ
シャリーアの放ったEバスターは、敵黒アザレア2の胸部から上を蒸発させた。
そして敵の放った一撃は、シャリーアのアザレア2の腰部から下を蒸発させている。
「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
制御胞の中で絶叫するシャリーア。
腰部蒸発の際、アザレアの制御胞蕪も破壊。
シャリーアは両脚の膝から下を一瞬で失っていた。
それでも意識は保ち、なんとかロータスまで帰投しようと移動。
「その一撃に敬意を表させて貰う!!」
そう告げると同時に、上空からイーグルドラグーンが急降下で特攻。
素早く左舷の黒アザレア2の両肩を足の爪で掴み上げると、そのままフロートキャッスルから真下に向かって放り投げた!!
さらにフロートキャッスルの後方から、特務艦グリフィンが高速で接近!!
「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇ」
そこから飛び出したイーグルドラグーンが左舷の黒アザレア1に向かって高速接近!!
「今日で終りにする!!」
アザレア1のライナスもロングソードを振りかざし、黒アザレア1に向かって襲いかかる!!
──ガギガギガギッ
その一斉攻撃を次々と楯で受止め剣で流す黒アザレア1。
「ククク‥‥あーーーーーーーっはっはっはっはっ。このラピスラズリ、畜生にも劣るランの鎧騎士などに一撃も食らうことは許されないっ!!」
そう叫ぶと同時に、黒アザレアの後部スラスターから勢いよく精霊力が放出される。
──キャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ
そして響き渡る精霊達の叫び。
「たちの悪い奴だな‥‥」
素早く間合を詰めて、素早く連撃を叩き込むイーグル1。
だが、それらの攻撃は全て躱わされ、さらにカウンターでイーグルドラグーンの左翼が引きちぎられた!!
──ベギバギボギッ
そのままバランスを失い落下するイーグル1。
それをイーグル2が右腕で受止め、そのまま大地に着地。
「な、なんだ? あの黒アザレアの鎧騎士は、一体なんなんだ?」
ライナスがそう叫ぶのも無理はない。
今までに戦った鎧騎士とは全く異質な『何か』を感じたのだ。
そのまま後方に下がり、今度はフロートキャッスルに向かってEバスターを一斉砲撃するアザレア1。
だが、それらの攻撃の全ては、『目に見えない何か』によって阻まれてしまった。
フロートシップからの一斉攻撃もまたその見えない何かに止められ、一撃も与えることは出来ない。
ただ、その何かが発生している間、フロートキャッスルの動きは全くといっていいほど止まってしまっている。
「移動に必要な精霊力を、全て防御壁のようなものに転換しているって言う感じですね‥‥」
偵察用グライダー『震電』にのっている鎧騎士からの通信が、ロータスとグリフィンに届く。
『それが何か判るのですか?』
そう通信を受けた『震電』の鎧騎士は、もう一度急上昇し、そして真っ直ぐにフロートキャッスルの真上に移動、そこから急降下でもう一度観察を開始。
「フロートキャッスルの中央・巨大な塔の背てっぺんから、放射状に精霊力がながれています。
それがバリアーのようなものを形成しているようですね‥‥1度戻ります」
そう風信機による通信を入れて、『震電』は1度帰投。
そしてベースキャンプに戻った一行もまた、今後の作戦について色々と対策を練ることにした。
──そして
「撤収ですか‥‥」
機体の装甲などもうなにも残っていない。
すべての装甲が弾かれたキャペルスの制御胞で、麟太郎は静かに呟く。
相手の腕はかなり上。
だが、お互い本気で打ち込みあい、相手の装甲もあちこち破壊している。
それでもなお、麟太郎はその場から一歩も下がることなく、ずっと前線を支えてきていた。
「お互いに撤収のようだな‥‥ランの鎧騎士よ」
「ええ。そのようですね‥‥では」
「今度、また死合いたいものだ‥‥」
そうお互いに挨拶を躱わすと、敵ゴーレム部隊は後方に撤退を開始。
それに合わせて、麟太郎とセシリア達もまた、後方へと戻っていく事となった。
アザレア2の修復、及びシャリーアの治療はすぐさま行なわれたが、完全に元の力を取り戻すまでは、今しばらく時間が掛かるだろう。
そして其の日から、ラン空戦騎士団もようやく合流し、定期的にフロートキャッスルに爆撃を開始、その場から動けない情況を作り上げた。
だが、それでもあのバリアーを破壊することは出来ず、まさに一進一退の情況となってしまった‥‥。
──Fin