●リプレイ本文
●1月動乱の始まり
──ラン南方・ザバ分国戦線
グオングオングオングオン
高速で飛来するフロートシップ。
ラン王国に所属する空戦騎士団及びウィル特務艦グリフィンなど、数多くのフロートシップが集まりつつある。
だが、空戦騎士団本部隊のフロートシップの姿はいまだなく、補給艦に使われているスモールシップが数隻のみ、その姿を見せていた。
全てのフロートシップは、王都ダーナ南方、ザバ分国北方山脈に向けて集結し、作戦のタイミングをじっと待っていた。
先日の戦いで確認された『フロートキャッスル』。
その攻略の為の作戦が、現在ベースキャンプにて展開している。
「では、私は陸戦騎士団を率いて、地上から侵攻するカオスニアンや敵陸戦騎士団を止めに入ります‥‥」
ロータスの女騎士がそう集まっているメンバーに進言する。
その言葉に対しては、誰も異議を唱えることはない。
ここ最近の、彼女の部隊の活躍はかなり目を見張るものであったから。
「となると、問題は敵空戦騎士団という所でしょう‥‥それも、黒アザレアが2機、エレメンタルバスターを装備しているとなると、なおさらキツい戦いになりそうですね」
同、ロータスのキャペルス担当鎧騎士がそう告げると、横に座っていたアザレア1とアザレア2の鎧騎士にも意見を問い掛ける。
「アザレア対策はどうしますか?」
「私はEバスターを使うことにする。後方からの援護も兼ねてな‥‥。可能ならば、フロートキャッスルにも何発か打ち込んでみるつもりだ‥‥」
アザレア2の鎧騎士がそう告げると、もう一人の男の鎧騎士は静かに肯く。
「兎に角、問題はアザレアのEバスターだ。素早く間合を詰めて、あれを止める必要がある。でないと、最悪の事態すら起こりかねない」
そのアザレア1の鎧騎士の言葉には、全員が同意。
「こちらとしても、イーグルドラグーンを使っての援護に参加する‥‥」
市川敬輔(eb4271)が静かに意見を述べる。
ここまではロータスが主体での作戦であった。
だがグリフィンとしても、ロータスとの共同作戦に参加し、ウィルのドラグーン乗りとしての実践経験を積む事も必要だとアーレン艦長は作戦前に、皆に告げていた。
「そちらのEバスターで敵を牽制してくれれば、オレがイーグルドラグーンで敵フロートキャッスルにとりつく。そうすれば、突破口は開けるだろう?」
そう告げる市川。
「私はグリフィンの機動力を駆使して、敵フロートキッャスルの後方から奇襲攻撃に入ります。ぎりぎりのタイミングで、イーグルドラグーンでとりつくようにしたいですね」
加藤瑠璃(eb4288)もそう告げると、偵察部隊として参加したリュドミラ・エルフェンバイン(eb7689)も静かに手を上げて意見を述べる。
「私はグライダーで斥候と偵察を務めますわ。多少は囮になると思います」
次々と意見が出るグリフィンの搭乗員。
「私も今回は偵察を務めますね。登場するグライダーには、ランスチャージ用の突撃槍をセットしておきましたので、多少は役に立つと思われます」
ヴァラス・シャイア(ec5470)がそう告げると、アーレン艦長も静かに肯いてメンバーを静かに見る。
(ここ数回、ラン遠征に来てから‥‥皆、いい顔になった。戦いを実戦で経験しているということが、これだけ彼等に自信を与えるものだろうか‥‥)
そう考えてから、アーレン艦長は静かにロータスのビリー・アンデルス卿を目で促す。
「では、今回の作戦はそのような方向でいきましょう」
最後にビリー卿が締めくくり、いよいよ作戦開始の準備に向かう一行であった。
●激戦区での侵攻
──ザバ分国北方山脈・その裾野よりさらにダーナへ
きぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃん
雲間を抜けて、一気に加速をするヴァラスのゴーレムグライダー『秋水』。
偵察任務を兼ねて、ヴァラスは実践装備で敵フロートキャッスルを確認に出た。
高速で雲間を突破し、後方からやってくる3機の敵グライダーを引き離す。
「加速性能で、この『秋水』を越えるグライダーなんか存在しないよッ」
後ろを向いてニィッと笑うヴァラス。
素早くスロットルを戻し、精霊力噴射口を前に向けると、一気にスロットルを全開にする!!
──ガグゥゥゥゥゥッ
エアブレーキもさらに伴い、『秋水』は一気に減速し、まっ逆さまに落下を開始。
その『秋水』の動きに翻弄され、敵グライダーは一瞬で追い抜いた後に素早く旋回、そして降下を開始しつつ『秋水』に近寄っていく。
「そんな動きに惑わされると思ったのかっ!!」
敵鎧騎士がそう叫ぶ。
「いやいや‥‥ここからだよね‥‥」
すかさずスロットルを戻し、精霊力噴射口を右に片寄らせる。
そのままエアブレーキはカット、そして加速を開始しつつ機体をゆっくりと立ち上げる。
大きな弧を描きつつ、『秋水』が上空に向かって飛び出す。
「また逃げるというのかっ!!」
「ついてこれるなら‥‥ついてきなよっ!!」
ヴァラスはそのまま全体重を機体に預け、スロットを引く。
身体全体にかかるGに耐えつつ、『秋水』をループ飛行させる。
その瞬間、ヴァラスの視界が真っ黒になり、何も見えなくなった‥‥。
(大丈夫‥‥これは加速のせいだから‥‥このままアクセルを引いていれば大丈夫‥‥)
身体で憶えている技術。
それをひたすら実践しているヴァラス。
そして後方から追いかけてきた敵もまた、いきなり視界が真っ暗になった為、機体の制御ができなくなりあちこちへと飛んでいってしまう‥‥。
やがてヴァラスの視界も元に戻ると、そのままフロートキャッスルの偵察を続けることにした。
●バスターの悲劇
──森上空
「こちら偵察機『秋水』のリュドミラ。現在、敵フロートキャッスルに異常なし。左右にEバスターを構えた黒アザレアが待機している模様」
『了解。引き続き偵察を頼む』
そう報告を受けると、グリフィンのブリッジオペレーターはすぐにロータス及び各部隊に風信器で現在の情況を報告。
「こちらロータス。了解です。引き続き偵察任務をよろしく‥‥ロータス各部隊はすぐさま作戦開始。敵アザレアの撃破を!!」
ロータス艦長の後藤が風信器に向かって叫ぶ。
その声を聞いて、次々と飛び立つアザレアと、陸上で待機しているキャペルスであった。
──一方そのころ
ドッゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォツ
激しく吠える精霊の怒り。
アザレア2の構えていたEバスターから、精霊力の塊が発射された。
それはフロートキャッスルの右サイドの岩を破壊し、内部の装甲板を剥き出しにしている。
「続いて2撃目っ!!」
──ガッゴォォォォォォォォォォォォォォォツ
カートリッジをリロードし、素早く2撃目を構えるアザレア2。
と、正面の敵黒アザレアも、アザレア2に向けてEバスターを構えている!!
「正確な射撃で負けるワケにはいかないな‥‥狙い撃たせてもらう!」
そう叫ぶと同時に、トリガーを引くアザレア2。
──ドッゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ
2撃目のエレメンタルバスターが、敵味方とも同時に発射。
──ジュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥツ
アザレア2の放ったEバスターは、敵黒アザレア2の胸部から上を蒸発させた。
そして敵の放った一撃は、アザレア2の腰部から下を蒸発させている。
そして腰部蒸発の際、アザレアの制御胞も破壊された‥‥。
そしてその光景を、上空からじっと見ていた市川のイーグルドラグーン。
「その一撃に敬意を表させて貰う!!」
そう告げると同時に、上空から市川のイーグル1が急降下で特攻。
素早く左舷の黒アザレア2の両肩を足の爪で掴みあげると、そのままフロートキャッスルから真下に向かって放り投げた!!
さらにフロートキャッスルの後方から、特務艦グリフィンが高速で接近!!
「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇ」
そこから飛び出した瑠璃のイーグル2が左舷の黒アザレア1に向かって高速接近!!
「今日で終りにする!!」
アザレア1もロングソードを振りかざし、黒アザレア1に向かって襲いかかる!!
──ガギガギガギッ
その一斉攻撃を次々と楯で受止め剣で流す黒アザレア1。
「ククク‥‥あーーーーーーーっはっはっはっはっ。このラピスラズリ、畜生にも劣るランの鎧騎士などに一撃も食らうことは許されないっ!!」
そう叫ぶと同時に、黒アザレアの後部スラスターから勢いよく精霊力が放出される。
──キャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ
そして響き渡る精霊達の叫び。
「たちの悪い奴だな‥‥」
素早く間合を詰めて、素早く連撃を叩き込む市川のイーグル1。
だが、それらの攻撃は全て躱わされ、さらにカウンターでイーグルドラグーンの左翼が引きちぎられた!!
──ベギバギボギッ
「なんだと? 一体どこからそんなパワーがでるんだっ!!」
そのままバランスを失い落下するイーグル1。
それをイーグル2が右腕で受止め、そのまま大地に着地。
「なんなの‥‥あのアザレア‥‥黒い何かを感じる‥‥」
瑠璃がそう風信器越しに叫ぶのも無理はない。
今までに戦った鎧騎士とは全く異質な『何か』を感じたのだ。
そのまま後方に下がり、一旦グリフィンに回収されるイーグル1とイーグル2。
その間にも、フロートキャッスルに向かってEバスターを一斉砲撃するアザレア1。
だが、それらの攻撃の全ては、『目に見えない何か』によって阻まれてしまった。
フロートシップからの一斉攻撃もまたその見えない何かに止められ、一撃も与えることは出来ない。
ただ、その何かが発生している間、フロートキャッスルの動きは全くといっていいほど止まってしまっている。
「移動に必要な精霊力を、全て防御壁のようなものに転換しているって言う感じですね‥‥」
偵察用グライダー『震電』にのっているリュドミラからの通信が、ロータスとグリフィンに届く。
『それが何か判るのですか?』
そう通信を受けた『震電』のリュドミラは、もう一度急上昇し、そして真っ直ぐにフロートキャッスルの真上に移動、そこから急降下でもう一度観察を開始。
「フロートキャッスルの中央・巨大な塔のてっぺんから、放射状に精霊力がながれています。
それがバリアーのようなものを形成しているようですね‥‥1度戻ります」
そう風信器による通信を入れて、『震電』は1度帰投。
そしてベースキャンプに戻った一行もまた、今後の作戦について色々と対策を練ることにした。
──そして
「一旦本国に帰投。ロータスサイドもかなりの打撃を受けている為、こちらとしても1度作戦を組み直す必要がある‥‥」
特務艦グリフィンのアーレン艦長が、集まっているメンバーにそう告げる。
「それに、ハンとの戦争が始まる恐れもある。そうなるとグリフィンがどのような立場として動くのか、1度考え直す必要もある‥‥」
その言葉に、一同は息を飲む。
今までのようなラン遠征ではなく、本国の、それも隣国との戦いが始まるのかもしれない。
そうなると、今までのような『他所様』としての戦いではすまされない。
「まあ、この部隊はあくまでも特務部隊、今まで通りにランへの遠征にあたる可能性が高いがな‥‥」
そう告げると、一行は1度ウィルへと帰還していった。
そしてランからの報告では、ラン空戦騎士団がロータスと合流、定期的にフロートキャッスルに爆撃を開始、その場から動けない情況を作り上げたらしい。
だが、それでもあのバリアーを破壊することは出来ず、まさに一進一退の情況となってしまった‥‥。
やはり、グリフィンが必要となるのだろう。
──Fin