●リプレイ本文
●運命のカウントダウン
──ラン王都ダーナ郊外・フロートシップ停泊場
ドダダダダダダダダダタダタダダダダ
停泊場は現在、慌ただしい空気に包まれている。
「敵フロートキャッスルの内部データは?」
ダーナ市内にいる鍛冶師や大工などを駆け回り、城内見取り図がないかどうか探していたのはセシリア・カータ(ea1643)。
フロートキャッスルに突入し、内部からアルティラブースターを破壊、囚われているアルティラを救出しようということであろう。
その為には、最短コースで内部に突入し、一刻も早くアルティラまでたどり着く必要がある。
つまり、作戦の成否については、内部地図もしくは見取り図が必要なのである。
そのために、セシリアは市内の大工や鍛冶師の元を訪れていた。
1度でもザバ分国領に出向いた事のある人物には、大まかな内部地図の作成も依頼、とにかく少しでも情報を集めようということなのであろう。
「セシリアさん、大体このような感じでしたが」
と告げつつ、ビリー・アンデルス卿が大まかな見取り図をセシリアに手渡す。
「助かりますわ。大まかでも、大体の見取り図があるだけで変わってきますから。問題は、アルティラが何処に配置されているかということですね」
と告げるセシリアに、ゴーレム工房のオーウェン・プラウドが助言。
「浮遊するためのゴーレム機関ですけれど、あのような形状では城の下層部にあるかと思われます。あのあたりは外部は天然の岩で覆われている為、かなり頑丈な作りになっています‥‥おそらく内部の中心最下層あたりに浮遊機関と、その上辺りにアルティラブースターがあるかと思われます。では、ボクはゴーレムグライダーの強化にまわりますので‥‥」
と告げて立ちさって行く。
「ふう‥‥これでOKですね。あとは作戦開始をまつばかりですわ」
そう告げるセシリアに、ビリー卿が一言。
「今回の突入部隊の活躍いかんで、今後の作戦に影響がでます。セシリアさん以外に、突入隊希望者が数名居ますので、彼等とチームを組んで作戦に望んでください」
と告げると、ビリーもまたその場をあとにした。
──一方そのころ
特務艦グリフィン・ツヴァイ。
その停泊場所の外では、ウィル製ドラグーンであるイーグルドラグーンと、ラン製ドラグーンのグラビティドラグーンが待機している。
その近くでは、ドラグーンパイロット達が集まり、色々と細かい打ち合わせをしているようで‥‥。
「まあ、可能な限り敵を殲滅。それはいいんだが‥‥」
と呟いているのはライナス・フェンラン(eb4213)。
「ん? なにか不安材料でも?」
とライナスに話しかけているのはイーグル2搭乗員の市川敬輔(eb4271)。
「ああ。なにかこう‥‥フロートキャッスルとカオスゴーレム。そんな強大な敵を相手に、中途半端な攻撃では意味がないような気がするんだ‥‥」
と告げる。
確かに、先日見たあのパワーを考えるに、ここにあるドラグーン3機でどこまで対処できるか、はなはだ疑問であることはまちがいない。
けれど、今回のドラグーンの役目は『囮』であり、メインはゴーレムグライダーで特攻をしかけるセシリアたちである。
──ガシィィィィィン‥‥ガシィィィィィン
と、近くで待機していたロータスから、アザレアもこちらへと移動してくる。
そして静かに腰を下げると、制御胞ハッチが開き、中からスレイン・イルーザ(eb7880)とリュドミラ・エルフェンバイン(eb7689)が姿を現わした。
「こちらの準備は完了ね」
「Eバスター換装型アザレア。連射機能はないが、より多くの弾頭を装備できるように改造されているらしい」
と告げる二人。
チーム・アザレアの作戦は陽動とEバスターによる牽制。
それによってさらに敵の動きを止めようというのである。
「とりあえず、細かい打ち合わせをしておこう‥‥」
と告げるライナスの元で、一行はさらに細かい打ち合わせを続けていた。
──そのころのドラグーン開発工房
「重力波ブレス?」
素っ頓狂な声でそう告げているのは加藤瑠璃(eb4288)。
グラビティドラグーンの搭乗許可を受けて、瑠璃は工房長であるナーガに、細かい説明を受けている。
「左様。ランのグラビティドラグーンは、その口から重力波のブレスを放出することができる‥‥また、その重装甲により、かなりの耐久力をも維持している‥‥」
と、イーグルとはまったく異なる戦闘力のため、瑠璃は細かい部分についての操作方法を学んでいる。
とにかく、ラン製ドラグーンは扱いが細かい。
最初に起動制御球と同調しないと、ドラグーンはまったく作動しない。
が、作動さえしてしまえば、ウィル製ドラグーンよりも意志伝達がかなり早い。
もっとも、ラン製ドラグーンは大量生産には全くといってよいほど向いておらず、現在でもランには『フォレストドラグーン』『クエイクドラグーン』『グラビティドラグーン』の3機しか存在しない。
さらにフォレストとクエイクの2機は空戦騎士団所属の為、ロータスではグラビティしか貸し与えられていない。
それでも、最新鋭機ということもあり、瑠璃は工房や他の騎士からも好奇の眼差しで見られている。
「それと、ドラグーン用の鎖は用意しておいたが‥‥これはどうするのだね?」
そう工房長が問い掛けるが、瑠璃は静かに一言だけ。
「一瞬だけでも、カオスゴーレムを拘束するので‥‥では、ドラグーンと鎖、大切に御預かりします」
と告げて、瑠璃はゴーレム・ドラグーン隊の元へと戻っていった。
──さらにその頃・ロータス・ブリーフィングルーム
「『連山』のパイロットは俺、で、後ろはセシリアで問題はなしと‥‥」
ブリーフィングルームで羊皮紙に作戦をメモしつつ、そう確認を取っているのは鳳レオン(eb4286)。
現在、セシリアとレオン、草薙麟太郎(eb4313)、ヴァラス・シャイア(ec5470)の4名と、有志25名があつまり、細かい作戦を行なっている。
大まかに分けて作戦は二つ。
一つめは、フロートキャッスル中央の塔破壊。
そしてもう一つは、地下に封じられているアルティラの解放。
塔の破壊は、エレメンタルフィールドがそこから発生していると踏んだレオンの案、アルティラの解放はセシリアの案。
二人の元に、それぞれ12名の部下を付ける。そしてヴァラスは上空から強行偵察、随時風信器によって情況を説明するという大役を与えられた。
「塔の破壊、アルティラの奪回、どちらにしても、これが成功した暁には、フロートキャッスルは航行不能にまでいく可能性が有る。ゴーレムチームは今回我々の為の囮として戦ってくれる」
そう告げるレオンに、麟太郎が一言。
「そうだが、相手はカオスゴーレム。どれだけもちこたえられるか‥‥」
「兎に角、こちらは一刻も早く先に目的地に到達する必要があるわわね‥‥」
セシリアもそう告げると、ヴァラスが胸をどんと叩く。
「随時情況は風信器で連絡します!!」
そののち、細部まで煮詰めつつ、一行は出撃の日までを過ごしていた‥‥。
●アルテイラ奪回作戦
──フロートキャッスル前方、距離12km
後方では、ラン空戦騎士団や陸戦騎士団が待機し、ザバ北方森林に潜んでいる敵に対しての備えをしている。
さらに上空では、ラン旗艦スノードロップと2機のドラグーンが、開戦の合図をじっと待っている。
「‥‥実質、ここからが本当の戦争である。我々は、敵バの国の戦力を殲滅し、ランの平和を護らなくてはならない!!」
ステイン卿の怒声が、風信器を伝って全艦隊、全兵力に届けられる。
そしてそれは、敵フロートキャッスルでも傍受しているであろう。
この放送が実質の開戦の合図となるのであった。
「全軍、突撃!!」
ステインのその号令と同時に、全勢力が進軍を開始。
それと時同じくして、敵フロートキャッスルも上昇を開始、ゆっくりとダーナに向かって進軍を開始した。
上空で待機していた高速艇ロータスおよび特務艦グリフィン・ツヴァイも全速で進軍を開始。
そのデッキ上では、特攻作戦に参加するメンバーが、ゴーレムグライダーでスタンバイしていた。
「アザレアとドラグーンがカオスゴーレムとの戦闘を開始したときが突撃のタイミング。それより早いとカオスゴーレムに魂を喰われる、遅いと戦場空域に巻き込まれる。タイミングはほんの僅かだ‥‥覚悟を決めてくれ」
レオンがそう告げると、その場に居合わせた面々は静かに肯く。
「それじゃあ作戦開始。全機搭乗!!」
セシリアの号令で全員がグライダーと同調した‥‥。
──一方その頃
「こちらアザレア1のリュドミラ。いつでも出発できます」
「おなじくアザレア2のスレイン。タイミングを教えてくれ」
そう風信器に向かって叫ぶ二人。
『まず先発で出撃、のちに後方からドラグーンが追尾します。敵フロートキャッスルが目視できた時点で作戦開始、アザレア隊はとにかくカオスゴーレムにのみターゲットを集中、Eバスターの弾頭が尽きるまで連射を御願いします。その間にドラグーン隊がカオスゴーレムに接近、囮としてとにかく引き付けに入ります‥‥』
風信器から聞こえるオペレータの声。
それはドラグーンの制御胞にも届いていた。
「アザレア1、2、ちょっと御願いが有ります」
そう告げるのは瑠璃。
「なんでしょうか?」
「ああ、できることならな」
そう告げる二人に瑠璃は彼女なりの作戦を告げる。
「グラビティドラグーンの重力波ブレスを使います。それでカオスゴーレムのフィールドが少しでも開いたら、そのタイミングでその一点にEバスターを集中させてください」
「随分と難しい注文だな‥‥」
そう告げるスレイン。
「ええ。ですがドラグーン工房での説明を受けた限りでは、その一撃のみが、顔ゴーレムの鉄壁の防御を破壊する可能性があります‥‥ですが、重力波ブレスは、一度使うと再チャージに丸一日かかりますから‥‥」
と告げられる。
「責任重大ですね。でもやらないといけないのですね?」
と問い掛けるリュドミラ。
「まあ、こっちも限界までプリンシュパリティを引き付けるから、頼むぞ」
「俺達の命、瑠璃の一撃に預けるからな‥‥」
ライナスと市川がそう告げて、先行したアザレアを追尾する。
「では‥‥この戦いで全てを終らせる覚悟でいきましょう‥‥」
そう告げて、瑠璃もグラビティの翼を広げ、アザレアの後方にまわりこんだ‥‥。
●戦場の戦乙女
──フロートキャッスル周辺エリア
高速で飛行したアザレアが、上下左右に展開しつつフロートキャッスルの正門前に待機しているカオスゴーレムを確認。
「いきます!!」
──キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン
アザレア1の構えたEバスターのシリンダーが高速回転。その砲身内部に高圧縮された精霊力が充填される。
その横でも、アザレア2が同じく身構えている。
ターゲッティングを上下二つに分け、万が一躱わされてもフロートキャッスルにダメージが通るようにする。
さらに左右からはイーグルドラグーンが待機、バスター発射のタイミングで左右から挟撃にはいる。
──ドッゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ
激しい爆音。
それと同時に、カオスゴーレムに向かって2条のEバスターが射出された。
「無駄なことをっ!! このプリンシュパリティに叶うと思っているかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
絶叫する敵パイロットのラピス・ラズリ。
その叫びと同時に、プリンシュパリティは全面にカオスフィールドを形成、Eバスターのエネルギーを相殺した。
──プゥン
「このタイミング」
「ばっちり!!」
左右から飛び出していった市川とライナス。
其の手のハルバードで一気に切りかかったのだが。
──ドゴドゴドゴドコドゴドゴドゴッ
プリンシュパリティの後方にある背面スカート。
そこから44本の射出式触手アンカーが飛び出し、イーグルドラグーンの両腕、両脚、胴部、胸部を一気に巻き込み、締め付けていく!!
「ゲーーーーーーーーラゲラゲラゲラゲラ。無駄だっていっているだろうが!!」
ラピスがそう高らかに笑いつつ叫ぶ。
──ミシシッ‥‥ギシッ
イーグルドラグーンの全身が軋みはじめる。
胸部制御胞ハッチも巻き込まれている為、開けての脱出は不可能。
「頼む‥‥持ちこたえてくれっ‥‥」
「早く‥‥頼む‥‥」
制御胞内で神にも祈る二人であった。
──一方そのころ
「今だ!!」
アザレアの砲撃が始まったと同時に、低空飛行から一気に上昇し、カオスゴーレムの横から城内に突入するグライダー隊。
と、そのまま奥の回廊まで飛んでいくと、そこで全機着地。
「ここからは塔と地下の二つに分かれる!! 一人でも多く、目的の場所に向かい任務を遂行してくれ!!」
そう叫ぶと同時に、全員が走り出した!!
「空中戦なら塔の破壊に向かうのだが‥‥」
レオンと12名の騎士はまっすぐに塔へと向かう予定であった。
だが、グライダーがそれ以上侵攻できないため、地下へと向かう部隊に合流。
その途中、バの陸戦騎士と遭遇した。
そこで近接戦闘が始まった!!
「こんな所で貴様たちの相手をしている暇はない!! 邪魔をするなっっっっっっっ」
「今は時間が足りないのですっ」
そう叫びつつ、次々と敵を切り捨てていくレオンとセシリア。
そして麟太郎もまた、敵の動きを予測しつつ、囚われているのであろうアルティラの位置を感じ取ろうとしていた。
「このまま下‥‥ですか‥‥」
そう告げて、麟太郎は一気に走り出す。
その動きでセシリアとレオンも走り出すが、途中でレオンが立ち止まった。
「どうしたの?」
「まだ先に向かわないと」
そう叫ぶセシリアと麟太郎。
だが、レオンはそのまま二人に背を向ける。
突入したセシリアたちを追いかけて、敵陸戦騎士団が増援をよこしたのである。
「あれだけの敵を相手に戦いながらは無理だろう‥‥」
そう告げると、レオンは回廊の途中にあった内部隔壁を閉じはじめる。
その向うにレオンは留まり、単騎で敵を足留めするつもりらしい。
「レオン殿、お供します‥‥」
そう告げて、隔壁の向うへと走りこむ騎士が3名。
「駄目だ、たった4名であれだけの騎士を倒せる筈がないじゃないかっ!!」
慌てて戻りはじめる麟太郎。
だが、それをレオンが制した。
「倒しはしない。時間を稼ぐから‥‥あとは任せた‥‥」
そう告げると、レオンはニィッと微笑って隔壁を完全に閉じた。
「‥‥急ぎましょう‥‥急げばまだ、レオンさんたちも助けられます‥‥」
セシリアがそう告げて再び走る。
そして麟太郎もまた、素早く走りはじめた。
──そして
最下層中央。
最終隔壁を突破し、アルティラブースターのある空間にたどり着いたセシリアと麟太郎。
円形の巨大な空間。
その中央にはアルティラの納められている透明の円柱が立っている。
その周囲には、無数の小さな透明のシリンダーが、さらにその内部にはエレメンタルフェアリィが納められている。
まだ息のあるもの、絶叫を上げて苦しんでいるもの、そして干からびて死んでいるもの‥‥。
これらの全てがエレメンタルブースターであり、そして中央のものがアルティラブースターであった。
『ほほう‥‥そこまでたどり着くとはねぇ‥‥』
突然、室内に響くカーガン・カームの声。
「カーガン博士‥‥どこですかっ!! アルティラを解放してください!!」
セシリアが周囲を見渡しつつ叫ぶ。
と、そのセシリアを狙っているなにかに、麟太郎が気付いた!!
「あぶないっ!!」
──ドシュッッッッッ
それは潜入してきたものを排除する為のトラップなのであろう。
カーガンが外部から何等かの方法によって起動したそれは、セシリアの心臓を目掛けて飛んでいった。
だが、麟太郎がセシリアを突き飛ばした為、セシリアは一命を取りとめた。
だが、麟太郎の左胸部にそれは深々と突き刺さった。
「ゴボッ‥‥」
口から泡と血を吹き出し、その場崩れる麟太郎。
「そ‥‥んな‥‥まって、今手当を‥‥」
そう叫ぶセシリアだが、麟太郎は頭を振りつつ円柱を指差す。
「早く‥‥解放し‥‥て‥‥」
力なく呟く麟太郎。
「ダメよ。貴方が死んじゃう‥‥」
「今、止めないと‥‥もっと大勢の人が‥‥うぃるが‥‥ガファッ!!」
大量の吐血。
その言葉に、セシリアは麟太郎から離れた。
そして円柱と向かうと、その手前に配置されている『制御球』に手をかざす。
「プロウドさんから聞いたキーワード。アザレアのブースターと同じ解除コード‥‥」
静かに意識を集中し、一つずつ制御システムを停止していく。
その都度、室内のエレメンタルブースターが停止を開始。
全てが停止すると、いよいよアルティラブースターの停止コードの入力であった‥‥。
●起死回生
──フロートキャッスル外部
「ぐっ‥‥まだかっ‥‥」
ミシミシと音を立てているイーグルドラグーン。
2機のアザレアも上空で待機し、Eバスターをじっと構えている。
アザレアがEバスターを構えるたびに、プリンシュパリティはその砲身に向かってイーグルドラグーンをかざす。
そのため、迂闊に手が出せない情況になっていた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
と、瑠璃のグラビティドラグーンが一気にプリンシュパリティに向かって間合を詰める。
「あははっ。死にに来たのねっ!!」
そう呟くと、プリンシュパリティは残りのアンカーをグラビティに向かって射出する。
だが、それらを次々と楯で弾き飛ばすと、そのままイーグルを捉えているアンカーに向かって剣を振るう!!
──ドゴォッ
だが、その動きに合わせてプリンシュパリティがカウンターアタックでグラビティを殴り飛ばす!!
「こ、ここまでだなんて‥‥」
素早くバランスをとってキャッスルの大地に着地する瑠璃。
──グラッ
と、突然足もとがふらついた為、素早く体勢を整える。
『こちらヴァラスです‥‥フロートキャッスルの高度がわずかに下がりました!!』
その通信が瑠璃の元に届く!!
「‥‥さがった‥‥そして足元がふらつく‥‥そうか!!」
素早く立上がると、瑠璃はアザレアに指示を飛ばす。
「Eバスターをカオスゴーレムに向かって撃って頂戴!!」
「無茶なことを言わないでよ!!」
「二人にあたっちまうだろう!!」
「大丈夫。二人にはあたらないから!!」
そう叫んで、グラビティ画剣を構えてカオスゴーレムに走り出す!!
──キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン
再びEバスターのシリンダーがうなり声を上げる。
「ままよっ!!」
「神さまっ」
祈りつつトリガーを引くアザレア1と2。
──ドッゴォォォォォォォォォォォォォォォォオツ
爆音と同時に、Eバスターが射出された。
「味方殺しを出来るなんて‥‥あんたたち素質あるわねぃ!!」
ラピスがそう笑いつつ二人のイーグルドラグーンで楯を作り、Eバスターを受け止めようとする。
──ヒュンヒュンヒュン‥‥カッ!!
と、そのタイミングでグラビティが口から重力波ブレスを『プリンシュパリティの足元』に向かって叩き込んだ!!
──ドゴォォォッ
その一撃でプリンシュパリティの足元が崩れ、バランスを失う。
──ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォツ
そして2発のEバスターのうち一発がプリンシュパリティに直撃。
カオスフィールドで威力は押さえているものの、咄嗟のために機体のあちこちが損傷し、イーグルに巻き付いていたアンカーが全て溶け落ちた。
──ブチブチッ
機体に絡まっている、残ったアンカーを引きちぎると、イーグルは2機とも急上昇。
──ガグッ‥‥
そしてそのタイミングで、フロートキャッスルがゆっくりと降下を開始した。
──その頃
「ふぅ‥‥もう大丈夫だよ‥‥帰ろう‥‥」
アルティラを解放し、すでに意識のない麟太郎を抱えて、セシリアはゆっくりと外に向かって歩きはじめた。
アルティラは意識を取り戻し、そのセシリアの後ろをついてくる。
そして回廊を戻って行く途中、突然フロートキャッスルは制御不能に陥り、急降下を始めた。
「‥‥ここまで‥‥か‥‥まあ、これでみんな助かるから、いいか‥‥」
その場に崩れていくセシリア。
近くでは、やはりレオンが意識なく倒れている。
「ウィルのみんな‥‥ゴメンネ‥‥もう帰れない‥‥」
そう呟いた刹那。
──ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ
突然横壁が破壊され、巨大な手が伸びてきた。
「早く手に捕まってください!!」
「こっちもだ。急がないと瑠璃が持たない!!」
それは急降下して城内に突入した2機のイーグルドラグーン。
そのまま回廊に倒れているレオンやアルティラ、麟太郎、セシリアたちを回収すると、一気に上昇していった。
──そして
落下していくフロートキャッスルを横目に、プリンシュパリティもまた後方へと撤退を開始した。
追撃しようにも、稼動限界を越えそうになっている為、一行もまたフロートシップへと帰還する。
フロートキッャスル陥落と同時に、ラン陸戦騎士団、空戦騎士団が攻勢に転進、いっきにザバ残党殲滅作戦を開始した。
それを横目に、ロータスとグリフィン・ツヴァイの2機は一路ダーナへと帰投していった‥‥。
──Fin