【生と死の狭間】所属不明船迎撃命令
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■ショートシナリオ
担当:一乃瀬守
対応レベル:8〜14lv
難易度:普通
成功報酬:4 G 15 C
参加人数:4人
サポート参加人数:-人
冒険期間:12月22日〜12月27日
リプレイ公開日:2007年12月26日
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●オープニング
──事件の冒頭
ザザーーーンザザーーーーン
海岸線に波飛沫が舞う。
昨夜の荒れ模様から、其の日は掌を返したかのように快晴。
波は穏やか、静かな時間。
先月、この海岸線に打ち上げられた漂流船の調査報告書を手にした、アーレン・フィルマー艦長は、引き続きこのエリア一体の定期調査を部下に命じていた。
それも、海岸線だけでは無く海上まで。
そして毎日、定時にゴーレムグライダーによる偵察任務が繰り返されたある日のこと。
──海上・とある船
「アー、モウスグシンテンチダー(間もなく目的地に到着か)」
「ソーダナヤー、ソロソロオヤカタニホウコクスッペー(ああ、とりあえず艦長に報告、今後の指示を確認する)」
「ソダ、アノコサエサヤッタダカー(ああ、そう言えば、あいつに餌をあげたか?)」
「インヤ、マダダガヤー、トットトヤルベー(あ、済まない、うっかりしていた。直にやるから待っていろ)」
とまあ、えっらい訛りの激しいカオスニアン達が、戦場で何かを告げている。
そして一人のカオスニアンが、船体後方に巨大な樽を持って移動すると、そこから大量の液体を海中に投与、そして次の樽から肉の塊を海中に向かって投げた。
──ザババババババン
と、海中からジャンプした、体長10mはあろう巨大な『魚竜』が餌に喰いつき、そのまま海に飛込んでいく。
「アーモットクエーモットデッカクナレヤー(ああ、すくすくと育ってくれ‥‥大切な商品さんよ‥‥)」
と、そんなことを叫んでいたとき。
ちょっと後方で、知らないゴーレムグライダーを確認したカオスニアンが、すぐさま笛を吹いて魚竜を呼び出す。
──ピリリリリーーーーーーーーーーー
「オイコラ、ポチヤ、アイツクッテマエ!!(不審なグライダーだ。頼むぞ。ここでばれると不味い)」
そう叫びつつ、身振り手振りで何かを命令。
そして魚竜は1度水中に潜っていって‥‥
──ザーッ
その光景を見ていたウィル偵察用ゴーレムグライダー『瑞雲』
「こちら偵察機『瑞雲』。海上に所属不明の船舶を2隻確認。現在は海上にて待機し、何かを調べている模様。船体の形状から、先日の漂流船と同タイプのものと‥‥う、うわ、あれはなんだ‥‥うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
──ザーッ
グライダーの下方から、魚竜がジャンプ、そのまま翼を食い破り、グライダーを海の中に叩き落とした。
風信機の声がそこで途切れる。
そしてこの報告は、実験艦フロートシップ『グリフィン』のブリッジに届けられた。
「メイ本国に通信。これより実験艦グリフィンはウィル北東海域に現われた所属不明船の確認及びなんらかの事故に巻き込まれたグライダー搭乗員の捜索に入ると」
そう告げると、アーレン艦長はブリッジで伝声管に向かって叫ぶ。
「各員出撃準備を。砲丸射出型ゴーレムグライダー『富嶽』『深山』『泰山』『連山』『閃電』『天雷』『震電』『秋水』全てを格納庫に、バガン級ゴーレムは全て降ろせ。海上ではあいつらは使いものにならない」
その掛け声と同時に、グリフィン搭乗員が一斉に作業に入る。
そして全ての準備が完了スルまでに、再びアーレン艦長は風信機を手に、何処かに話を付けている。
「あー、カイン総監、すまないが生きの良い鎧騎士を数名貸してくれないか? ああ、今回の任務地域は海上。空中戦を想定しているので、腕のいい所を頼む」
そう告げると、アーレン艦長はさらにゴーレム工房に連絡をいれる。
どうやら、今回ひと波乱ありそうで‥‥。
●実験艦『グリフィン』の今回の戦力は以下の通り
・ゴーレムグライダーは以下の機体を工房より納品。
強襲型『富嶽』『深山』『泰山』『連山』
(翼の形状が細く、低速での任務に耐えられないが、速度は早いらしい‥‥と、開発の人がいっていた)
攻撃機『閃電』『天雷』『震電』『秋水』
(通常型)
・炎の精霊砲×1(船首搭載)
●リプレイ本文
●天界人って英雄だっし!!
──フォロ分国ゴーレム工房・フロートシップ停船場
慌ただしい停船場。
その一角に、ウィル空戦騎士団特務実験艦グリフィンは停泊している。
ウィルゴーレム工房より承った様々なゴーレム機器の『実戦運用実験』を行う為に作られた部隊であり、その任務毎に様々な『新型兵器』が搭載されている。
艦長はアーレン・フィルマー。
かつては腕の立つ騎士であり、そして現在はこの船を取り仕切っている。
船員たちも各方面から選りすぐられた者たちである。
もっとも、能力が優秀なのではないというのが若干問題ではあるが‥‥。
──ということで
いよいよ5時間後には実験艦グリフィン出発。
そのタイミングで、冒険者ギルドから派遣されてきた人々が到着した。
「壮観だねぇ♪〜」
咥煙草を軽く吹かしつつ、市川敬輔(eb4271)がそう呟く。
出撃前のフロートシップの姿を見て、そしてその横に並べられているバガン級ストーンゴーレムを見て、そう呟いたのだろう。
「それだけじゃない‥‥あれを見ろ‥‥」
そう市川に告げているのはレイ・リアンドラ(eb4326)。
そうレイが告げた先には、また幌を被ったままで姿がみえない巨大なゴーレムが待機している。
「あ、あれはなんだ? 横のバガンよりもでかいな‥‥」
そう呟く木下陽一(eb9419)と、その姿をじつと見ているクナード・ヴィバーチェ(eb4056)。
「副隊長‥‥あれは?」
「ああ、新型‥‥だろう」
クナードがそうレイに話し掛けると、レイは近くに止めてあったグリフィンの作業員に話し掛ける。
「あれは新型のドラグーンだろう? 所属は? 使えるのか?」
「あ〜、これは副隊長殿。あれはこのグリフィンで実戦対応実験をする機体っすよ。最終調整がまだですので、使えませんってば」
そう告げるグリフィン作業主任のシヴァ・シゲーオ。
「成る程。完成度合は?」
「8割って所かな。まあ外装甲の締め付け、及び制御胞の最終調整と、色々と仕上げるのに時間が掛かるんですよ。知ってます? ドラグーンを作るのにかかる時間?」
そう問い掛けるシヴァ作業主任の言葉に、木下が返答。
「50日程度とか?」
「まっさかぁ〜。ストーン級ゴーレムで大体20日。あのタイプのドラグーンだと、大体200日の時間は必要っすよ‥‥」
そのシヴァ作業主任の言葉に、ゴクリと喉をならす一行。
「ま、それでも作る必要はあると。このウィルの空を護る最新兵器、男の浪漫溢れるあの機体。まさにこれ『竜の名に相応しい』機体であると‥‥って、おいおい、話聞いてよぉ‥‥」
あ、いつのまにか全員フロートシップ登場口に向かったのね。
「身分証はございますか?」
登場口でそう告げられると、一人ずつ身分を証明していく。
「ウィル空戦騎士団のクナード・ヴィバーチェだ」
そう告げてウィル航空騎士章を見せる。
はいOK。
「同じく、ウィル空戦騎士団副団長のレイ・リアンドラ」
同じく身分証明はウィル航空騎士章。
立場からも当然、だれも疑う余地なし。
「同じくウィル空戦騎士団所属天界人・市川敬輔だ」
ウィル航空騎士章を手にそう告げる。
うむ、確かに。
そして最後は
「未所属天界人・木下陽一だ」
そう告げて入船しようとしたが、止められる。
「船長に連絡を入れますので、少々お待ちを‥‥」
ということで、木下はしばしそこで待機。
「天界人は、乱世を修める為に精霊が遣わしてきたものだからとりあえずOKだ。但し、ゴーレムを取り扱うとき、及びそれらの格納庫に入る場合はウィル空戦騎士団に所属してもらうこととなる‥‥」
あ、天界人特権ね。
ということで、全員が揃った所で、船はゆっくりと浮上していく。
●敵確認、サーチ&デストロイ!!
──ウィル北東エリア22
天候:やや曇り
風速:かなり強い
ゴーレムグライダーの展開には、ちょっと厳しい。
目標海域に到達した実験艦グリフィンだが、どうやら目標の不明船の影が見えない。
「グライダーで偵察に出たほうが‥‥」
「いや、この風ではかなり厳しい。よほどの腕が無いと‥‥許可できん!!」
そう告げるアーレン艦長。
「風、収まったら大丈夫なんだな?」
そう告げるのは木下。
「ああ、天界人か。まさか、風を納められるか?」
風を制御するには、ウィンドレスなどの魔法が必要。
だが、木下にはそんな魔法は存在しない。
「可能性だけだが、賭けてみるか? もっとも、うまくいく保障はどこにもないのだ」
その木下の言葉に、アーレン艦長はしばし思考。
「うーむ。これ以上悪化する可能性もあるようだが‥‥いいだろう。やってみろ!!」
そのアーレン艦長の言葉に、木下は甲板の最前部、精霊砲の真横に立つ。
──バッ!! バババババッ!!
素早く印を組み韻を紡ぐ。
発動の瞬間、木下の全身が混じ黄色に輝く、そして収まった。
──ヒュルルルルルルルルルルルル‥‥
雲間から光が挿しはじめ、風が穏やかになる。
木下の魔法、ウェザーコントロールが発動に成功したらしい。
曇っていた天候を晴れにシフト。
偶然かもしれないが、その副作用で風の力が弱まったらしい。
──フォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ
その刹那、風が収まったのを確認して後部看板からグライダーが次々と飛び立つ!!
「助かる!! グライダー『天雷』、レイ・リアンドラ出る!!」
「同じく、 グライダー『秋水』、クナード・ヴィバーチェでる!!」
「同、グライダー『震電』、市川敬輔出るッ!!」
次々と飛び立つと、それぞれが別エリアに向かって跳びはじめた。
目的は、漂流しているであろう仲間の救助。
それが最優先であった。
●海戦開始
──ウィル北東・エリア24
かなりウィル本国から離れた場所。
そのエリアで、偵察に向かっていた市川が1隻の所属不明船を確認した。
その報告を受けて、フロートシップ・グリフィンは全速でそちらに向かう。
「ターゲット確認‥‥けれど‥‥」
天候は晴れ。
ヘブンリィ・ライトニングを発動させる為には、最低でも雨雲が必要。
だが、今天候を変えると、最悪グライダー達は飛行不可能になってしまう。
「仕方ない。精霊砲につきます!!」
木下は最終手段として、精霊砲に付く。
万が一の為に、扱い方はここにくる途中で聞いてきた。
あとは実践あるのみだが。
「所属不明船に告ぐ。いますぐ停船し、武装解除せよ。繰り返す、いますぐ停船し、武装解除せよ」
そう不審船の上空で叫ぶクナード。
だが、そのクナードの声と同時に、甲板にわらわらとカオスニアン達が姿を表わす。
そして
──ヒュヒュヒュヒュヒュッ!!
次々と弓を構えて射出してきた!!
「ナンダオメータチ、ハンカクサインデネーカ(ふざけるな。ここから生きてかえれると思うな)」
「ンダ、トッチャ、アイツヤッチマウベ(各員、あのグライダーを叩き落とせ!!)」
なまってんなぁ。
その攻撃にたいして、レイは全機に上空に上がるよう指示。
そして一気に急降下爆撃作戦を開始した。
──ビィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン
翼が風をきり、蜂のような羽音を鳴り響かせる。
「敵艦確認。攻撃開始!!」
「了解。『震電』攻撃開始」
「了解、『秋水』攻撃開始」
レイの声にクナードと市川が風信機に向かって叫ぶ。
そして次々と、砲丸を射出。
敵船のマスト及び後部を次々と狙っていく。
砲丸が切れるとフロートシップに帰還、タッチ&ゴーで砲丸を補給すると、再び急降下爆撃にはいった。
●戦い終って
──帰路
グライダーの攻撃により航行不能となった敵船の拿捕に成功。
そのまま検閲を行ない、武装は完全に解除、カオスニアン達は全て捕縛し本国に連行。
その間にグライダーで本国に向かうと、至急ゴーレムシップの派遣を要請。
其の日の夕方には、ゴーレムシップで別働隊が合流、不審船を無事に本国まで牽引していくことができた。
任務も無事に終った。
魚竜に襲われた仲間は、喰われて死んだというカオスニアンの証言もあった。
その魚竜も、薬の効果が切れた為、何処かにいなくなってしまっている。
徐々に、このウィル近郊にもバの勢力が見えはじめている。
急ぎ戦力を増強する必要があると考えていた其の日。
実験艦グリフィンに、ロールアウトしたばかりの『イーグルドラグーン』が一機、実戦配備となった‥‥。
──Fin