【生と死の狭間】竜創騎兵出撃!!

■ショートシナリオ


担当:一乃瀬守

対応レベル:8〜14lv

難易度:やや難

成功報酬:4 G 98 C

参加人数:8人

サポート参加人数:1人

冒険期間:01月18日〜01月23日

リプレイ公開日:2008年01月20日

●オープニング

──事件の冒頭
 ザザーーーンザザーーーーン
 海岸線に波飛沫が舞う。
 昨夜の荒れ模様から、其の日は掌を返したかのように快晴。
 またかよという突っ込みはさておき、ウィル北東に位置する都市『カルム』。
 そこから更に海岸線に向かって進んだ場所にある港町『モーレス』。
 そこで今、とんでもない事件が起こっていた。

「オラミタダヨ!! アレハオトツイノバンダッタ!! タシカニオラミタダヨ!!(私は見ました。あの日、夕方に港に戻ってくる途中、水中を動いている巨大な影を‥‥)」
「ンダンダ、トナリノタゴサックノフネモヤツニオソワレタダ。トナリノフネノワカイノモ、アイツニクイコロサレタダ(ええ。隣のジョーセフも、あの水を動く恐獣に襲われました。あの修理している船は、そいつに襲われて沈没、乗組員は殆ど食い殺されたらしいです)」
 なんつーか、ひっどい『セトタの港訛り』が激しい人ですこと。
 兎にも角にも、港町モーレス沖合を蠢く巨大な恐獣。
 あれをどうにかしないと安心して漁に出られない。
 と言うことで、若者有志が装備を整えて恐獣退治に向かって、そして一人も帰ってこなかったんだなこれがまた。


──フォロ領・ゴーレム工房
 港町モーレスの事件は、すぐさまフォロ領騎士団詰め所にまで連絡が入った。
 そしてすぐさま、この案件はアーレン・フィルマー艦長の耳に届く。
「あの時の魚竜か‥‥逃げてしまったのは仕方ないと思っていたが、まさかこんな事態になるとは‥‥」
 拳をギュッと握り締め、実験艦グリフィンのブリッジに急ぐ。
「ウィル本国に至急連絡。これより実験艦グリフィンはウィル北東海域に現われた魚竜討伐任務に入る」
 そう告げると、アーレン艦長はブリッジで伝声管に向かって叫ぶ。
「各員出撃準備を。今回は海上戦及び水中の魚竜が相手だ。砲丸射出型ゴーレムグライダーを6機、そして新型を一機搭載。バガン級ゴーレムは今回も基地施設に待機」
 その掛け声と同時に、グリフィン搭乗員が一斉に作業に入る。
 そして全ての準備が完了するまでに、再びアーレン艦長は風信機を手に、何処かに話を付けている。
「あー、カイン総監あて伝令準備。すまないが鎧騎士を7名派遣して欲しい。今回も海上戦なので、グライダーに載れる人材。それと、一機だけ『竜創騎兵(ドラグーン)』を出す。何分、かなり激しい戦いになるのを想定しているので、腕は当然だが、それよりも『肝っ玉』の座っている奴を頼む。以上伝達せよ」
 そう告げると、アーレン艦長はさらにゴーレム工房に連絡をいれる。
 その報告を受けて、新規配備『イーグルドラグーン』の最終調整が始まった。
 どうやら、今回もひと波乱ありそうで‥‥。


●フロートシップ『グリフィン』搭載戦力
・ゴーレムグライダーは以下の機体を準備
 今回は全て砲丸射出機搭載

強襲型『富嶽』『深山』『泰山』
(翼の形状が細く、低速での任務に耐えられないが、速度は早いらしい)

攻撃機『閃電』『天雷』『震電』
(通常型)

・イーグルドラグーン×1

●今回の参加者

 ea3486 オラース・カノーヴァ(31歳・♂・鎧騎士・人間・ノルマン王国)
 eb1592 白鳥 麗華(29歳・♀・鎧騎士・ハーフエルフ・華仙教大国)
 eb4213 ライナス・フェンラン(45歳・♂・鎧騎士・人間・アトランティス)
 eb4270 ジャクリーン・ジーン・オーカー(28歳・♀・鎧騎士・エルフ・アトランティス)
 eb4271 市川 敬輔(39歳・♂・天界人・人間・天界(地球))
 eb4288 加藤 瑠璃(33歳・♀・鎧騎士・人間・天界(地球))
 eb4326 レイ・リアンドラ(38歳・♂・鎧騎士・人間・アトランティス)
 eb4578 越野 春陽(37歳・♀・ゴーレムニスト・人間・天界(地球))

●サポート参加者

レヴェシクス・レヴェクスオーン(ec4421

●リプレイ本文

●旅立ち
──フォロ分国ゴーレム工房・フロートシップ停船場
 慌ただしい停船場。
 その一角に、ウィル空戦騎士団特務実験艦グリフィンは停泊している。
 今回は任務の為、ゴーレムグライダーとロールアウトしたばかりのイーグルドラグーンを積み込んでいる所である。
 作戦内容は、ウィル北東の海域に出現した『謎の海竜』討伐。
 そのため、現場海域である『港町モーレス』に向かう。

──ということで
 いよいよ2時間後には実験艦グリフィン出発。
 そのタイミングで、冒険者ギルドから派遣されてきた人々が到着した。
「よっ。今回も頼むわ‥‥」
 咥煙草を軽く吹かしつつ、市川敬輔(eb4271)がそう呟く。
 既にグリフィンには顔パスで搭乗できる市川。
 さらにメンバーは次々と集ってきた。
「ご無沙汰しています。また世話になります」
 そう軽く敬礼をして、艦内に入っていくレイ・リアンドラ(eb4326)。
「同じく。ウィル空戦騎士団登録申請を出している 白鳥麗華です。今回は、このグリフィンに搭乗したく、やって参りました」
 丁寧に挨拶をする白鳥麗華(eb1592)。
「あ、リアランドラ副騎士団長を呼んできて‥‥この子の登録について、ちょっと確認するから」
 と、入り口の御衛士が仲間にそう告げる。
 そして少し立ってから、レイが姿を表わす。
「ああ、白鳥麗華さんですね‥‥確かに、書類申請は受け付けました。まあ、略式戦時任官となりますが、ここで鎧騎士として申請許可という方向でいいでしょう」
 そのレイの言葉に、麗華も無事にウィル航空騎士団登録。
「なら、俺はどうなんだ? 鎧騎士として登録は‥‥」
 そうレイに問い掛けるオラース・カノーヴァ(ea3486)。
「まだ鎧騎士見習いですね。グリフィンの搭乗許可については、こちらで御許推薦はしておきます。それでいいですか?」
 と、レイの言葉に、受け付けも納得。
「ウィル航空騎士、ライナス・フェンラン到着した」
「同じくジャクリーン・ジーン・オーカー。到着したわ」
「加藤瑠璃です。只今任務到着しました」
「越野春陽よ。同じくグリフィン搭乗許可を御願いします」
 と、次々と『ウィル航空騎士章』を付けた鎧騎士が到着する。
 そして全員がブリーフィングルームに集まり、自己紹介。
 といっても、殆ど航空騎士団員ゆえ、知らないのはオラースと麗華の二人のみ。
 それでも無事に自己紹介を終えると、いよいよ実験艦グリフィンは目的地へと向かっていった。
 


●移動中の‥‥
──グリフィン横
 キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン
 グライダーが5機、横一列に並んで飛んでいる。
 強襲型グライダーに載っているライナス・フェンラン(eb4213)とジャクリーン・ジーン・オーカー(eb4270)、越野春陽(eb4578)の3名。
 そして通常型グライダーに載っている市川、加藤瑠璃(eb4288)の2名は、テスト飛行も兼ねて、ゆっくりと飛んでいる。
「強襲型3機、これより機体性能テストに入る‥‥」
 そう風信機に向かって叫ぶライナス。
 そして全員が一気にスロットルを全開にする。

──キン‥‥
 そのとんでもない加速性能に、全員が一瞬気を失いそうになった。
 だが、それでもなんとか耐えぬくと、次々と飛行テストを始める。
 加速、減速、旋回、急上昇、急降下。
 そのどれもが、機体とパイロットに過激なまでのGを叩き込む。
「あ‥‥駄目。この加速は危険よ‥‥」
 ジャクリーンがそう風信器に呟いて、一旦グリフィンに着艦する。
 そして越野、ライナスの二人も次々と着艦し、グライダーから降りる。
「対空時間は約1時間。それ以上は、肉体にかかる負荷が強くて駄目ね‥‥」
 越野達の言葉に、甲板で待機していたレイがレポートに書込む。
「実稼動時間は、やはり普通型の方が上ですか。まあ、これについては、各チームごとにローテーションを組むという方向で、隙間の無いようにしていくと」
 そう説明をしているさ中に、瑠璃、市川の両名も着艦。
「ふう。真面目に乗ったのは、なんとなく久しぶりのようだが」
「私もです‥‥」
 と告げる二人のレポートを作りあげると、いよいよレイはイーグルドラグーンに搭乗。
──フォン
 制御胞に乗り込むと、制御球に手を当てる。
 意識が同調し、制御胞のハッチが閉じる。
 そして外の風景が映し出されると、レイは機体を立ち上がらせる。
──ガシィッ‥‥
 そのまま周囲を見渡す。
 じつに、いい。
「これがイーグルドラグーン‥‥」
 以前乗った事のあるウィングドラグーンとはまた一味も二味も違う。
 同じスモールドラグーンでも、ウィングは風、イーグルは陽。
 付与されている魔法の本質が違う。
 そのためか、イーグルはウィングには無い、力強さを感じる。
「専用武器はハルバード。シールドはなし。スモールでも軽量級・高機動として造られたウィングに対して、中量級高機動というコンセプトとして‥‥」
 グリフィン担当ゴーレムニストのシヴァ・シゲーオが、そう説明する。
「つまり、イーグルドラグーンの方が、じゃじゃ馬なのですね‥‥では」
 そう外に向かって告げると、レイは一気に上空に飛び立つ。
 黄金に輝く機体。
 イーグルドラゴンをモチーフとした、陽精霊の輝きを持つ。
 その華麗さと、獰猛さを掛け持つドラグーンである。
 そして、試作ロールアウトということもあり、レイは僅か30分で一旦グリフィンへと戻っていった。



●作戦開始
──港町モーレス沖合
 グリフィン甲板上では、オラースがいかだにロープと空樽を括りつけて、仕掛けを作っている。
「これで10個目と‥‥これだけあれば大丈夫だな」
 そのいかだの上に血まみれの生肉を用意し、魚竜をおびき寄せる算段である。
 この肉には、ライナスの提案でフックを仕掛けておき、魚竜が喰ったときに浮きで体が沈みづらくなるように仕掛けてあるらしい。
 他のメンバーはグライダーで偵察任務。
 順次2機ずつ出撃し、帰還したら別の2機というふうに、疲労が溜まらないようにシフトは組んであるらしい。

「魚竜の影を撹乱したという連絡が入った。グリフィンはその海域に移動する!!」
 ブリッジから伝声管で各ブロックに声が届く。
 そしてその海域にたどり着くと、次々と仕掛けを海に向かって投げ込むオラース。
「よしよし、うまく引っ掛かってくれよ!!」

──そのまましばらく待つこと30分
 ビクビクビクッ
 一つのいかだが揺れたかと思うと、突然海流がジャンプしていかだごと肉を食らう。
──ヒュルルルルッ
 そして浮きが海面に浮かび、凄い勢いで水中に沈む。
 だが、その浮きもやがて浮かび上がってくると、ものすごい早さで海面を蠢く。

──キィィィィィィィィィィィィィィィィィィィン
「ターゲット捕捉。砲丸射出に入る」
 そう風信器に叫ぶライナス。
 一気に急降下でターゲットを捕捉し、そのまま砲丸を水中の魚竜に向かって射出。
──ドゴォォォォォッ
 そのまま一気に急上昇というハードな攻撃を叩き込む。
「ヒット‥‥だが、浅い」
 そしてライナスの攻撃の直後、ジャクリーンが水面近くに現われた魚竜に向かって、急降下爆撃。砲丸は加速を付けて、魚竜に直撃する。
──ドゴォッ
 その一撃で、魚竜は水面から離れ、深くに沈んでいく。
「直撃ね。沈んでいくわよ‥‥」
 その報告を受けて、麗華が上空から高度を下げて偵察に入る。
「ウキがこの真下で‥‥あ」
──ザッバァァァァァァァァァァァァァァツ
 突然浮きが浮かび上がり、その真横から魚竜がジャンプ。
 そのまま麗華のグライダーをかみ砕こうとしたが。

──ズバァァァァァァァァァァァァァツ
 海面ギリギリを飛んできたイーグルドラグーンが、その一撃に向かって、ハルバードによるチャージングを叩き込む。
──グゥォォォォォォォォォォ
 大量の血を流し、絶叫をあげる魚竜。
 さらに
──ドゴォォォッ‥‥ドゴォォォォォッ‥‥ドゴォォォォォォォォォォッ
「直撃っ!!」
「同じく‥‥」
「同感。いいかんじです」
 市川と瑠璃、そして越野がグライダーによる3機同時降下。
 そして海面ギリギリで砲丸を叩き込むと、そのまま機首を一気に上げて上昇開始。
──ザザザザザザザザザザッ
 越野の機体のみが機首上げが間に合わず、水面で波を切り裂きつつ弾け、そして再び飛び上がる。
 強襲型の加速度が強すぎて、機首上げが間に合わなかったらしい。
 それでも魚竜は再び海面下に潜りつつ様子を伺おうとしている。
──クラッ‥‥
「イーグル、1度帰還します。加藤、次に乗って下さい‥‥」
 そう告げて、レイがグリフィンに戻る。
 戦闘疲労と、通常疲労の差が激しい。
「了解しました」
 すぐさまグリフィンに戻るレイと瑠璃。
 そして甲板上で飛び降り、すぐさまイーグルに飛び乗ると、素早く同調開始。
──キィィィィン
「イーグルドラグーン、加藤瑠璃でます!!」
 すぐさま飛び出し、海面ギリギリを飛行する瑠璃。
「ターゲットの状況は?」
「ああ、現在爆撃中っと」
──ドゴォォォォォッ
 既に市川が4発目を叩き込む。
 その直後に、ジャンプした魚竜に向かって、麗華が砲丸を水平射撃!!
──ドゴォッ
 その腹部に直撃。
 そのまま水面に落ちると、再び沈んでいく‥‥。
「このままだと、水面にまで上がってきません‥‥どうしますか?」
 越野がそう告げると、レイがグリフィンで風信器を片手に指示を飛ばす。
「瑠璃さん、樽が上がってきたら、力尽くで引っ張り出してください!! あとはその瞬間を全機で!!」
 その指示に従い、瑠璃は浮かんできた樽を手に、全力で飛び出す。
──ミシミシミシミシミシミシミシミシッ
 機体のあちこちでミシミシと音がする。
 やがて魚竜が水面に姿を出したとき、残ったグライダーで一気に爆撃を開始。
 そして、それが致命傷となったのだろう、魚竜は腹部を上にして死亡した。



●そして帰還
──移動中
 魚竜の死体の処理は港に任せて、一行は訓練飛行を兼ねてフォロ分国へと帰還する。
「艦長、このあとのグリフィンの行動だが、どういう方針なんだ?、」
 ブリッジで市川がそう艦長に訪ねる。
「実験艦グリフィンは今の所、工房からロールアウトされるゴーレム機器の実験、及び遊撃任務が基本。間もなくグリフィンは実験艦より『特務艦グリフィン』に変わる。そこから先は、まあいろいろとな‥‥」
 と告げる艦長に、市川はなにか強い意志を感じる。

「‥‥これはこれで‥‥いいですね‥‥」
 イーグルドラグーンの制御胞で、ジャクリーンがそう告げる。
 帰還の賽に、レイ以外のメンバーもドラグーン搭乗許可が艦長からも出た。
 レイ自身も、他の大勢がドラグーンに馴染むチャンスはそうそうないと考え、乗れるメンバー全員でドラグーンの訓練を開始。
 そして‥‥。
「ええっと‥‥同調はした筈だから、姿勢制御はこっちで‥‥」
 オラースが甲板で、レイからグライダー操縦のレクチャーを受けている。
「まずは同調をしっかりと。で、そこで少しずつ加速‥‥」
──フワッ
 少しだけ機体が浮ぶ。が、すぐさま甲板に着地する。
「ふぅ‥‥たったこれだけで、凄い汗がでる‥‥」
 額から溢れる汗を拭いつつ、そう呟くオラース。
──キィィィィン
 と、すぐ近くでジャクリーンのイーグルが帰還。
──パチーーン 
 と、ハイタッチでパイロットはライナスに交代、すぐさま飛び出すライナス。
「ハアハアハアハア‥‥かなり疲れますね。副隊長でも、イーグルはつらいですか?」
 そのジャクリーンの問いに、レイは静かに肯く。
「ウィングよりもじゃじゃ馬ですね。その分、パワーがあると考えると、頼もしい機体です」
「この機体、量産体勢にはいるのでしょうか‥‥」
 レイの言葉のすぐ後で、瑠璃がそう呟く。
「それはまだ解らないでしょう? このイーグル1台作るのにも、予算だけで確か80万G以上。製作日数は150日。試作でここまでが限界っすよ。これから報告書が提出されて、そして会議に出される。必要となると、今度はゴーレムニストとナーガ、工房、素材の調達‥‥ウイングドラグーンと違って、生産ラインがまだ一定でないので、きついっすよ」
 というシゲーオさんの言葉に、ハァ‥‥と溜め息一つの瑠璃であった。


 そして一通りの訓練が終ると、一行はいよいよフォロ分国に到着。
 長い任務が終ったのである。

──Fin