美しき世界〜キャメロット編〜
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■ショートシナリオ
担当:戌丸連也
対応レベル:フリーlv
難易度:易しい
成功報酬:0 G 65 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:11月10日〜11月15日
リプレイ公開日:2004年11月18日
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●オープニング
晩秋のキャメロットの空は、灰色の天蓋を頂いたかの如く、雲に覆われて。
仰ぎ見る女が、一人。
彼女の名前はリーシュ・キャラウェイ。
24歳、独身。彼氏いない歴3年。身長160cm、体重40kg位ってコトで。スリーサイズは上か‥‥‥‥(ええかげんにしろっ!)。と、怒られたので先に進みます。
貴族相手に、物語を紡いで生計を立てている、言わば物書きだ。
「何かこう、ネタが想い浮かばないわねぇ」
彼女の主な持ちネタは恋愛物だったりするのだが、最近あまりいいネタが思い浮かばない。
「こりゃ、少し資本を投下してみますか‥‥‥‥あそこに頼んだらいいネタ作ってくれそうだしね」
彼女が目をつけているのは、なんと冒険者ギルド!
頓に最近、美男美女が集まるようになったあそこであれば何かあるのではないか。四六時中一緒にいるのだから、恋心が芽生えても不思議ではないはず。
「もしそのキャラが結婚までいったりしたら、一本丸々いただいちゃおっと!」
破局しても話になる、かも知れないが‥‥‥‥観察の時間が短すぎる。
今回の試みがうまくいくようなら、何度となく募集をかけてみようと思う。まあ、冒険者なのだから移動もするだろうし、仕事もしているだろう。同じ人間がくる事などあまり期待はできない訳だが。
『求む! 恋愛の被験者!!
今回のお仕事はデートしていただく、ただそれだけです。友達以上、恋人未満な皆様のご参加をお待ちしております(お一人での参加も歓迎しますが‥‥‥‥面白い仕事の日々になってしまうかもなので、できればペアでの参加をよろしくお願いします)。
場所はキャメロット、期間は5日。
尚、毎朝ルートを確認しますので、必ずそのルートにそって行動するようにしてください。あまりルートと外れた場合に最悪その日の給料はカットさせていただきます。
些少ながら報酬も準備させて頂いてますので、皆様のご参加お待ちしております。
なお、奇数でペアからあぶれた場合は私の助手として働いていただきます。基本的に申し込みの最後となった方にお願いしますが、ペアで希望の方はそちらを優先とさせていただきますので、ご了承ください』
‥‥‥‥女と女は書きたくないなあ。綺麗な子達だったら、目の保養って考えたらいいのかな。
男と男がデートって仕事で無理やりってどうなるんだろう?
少し、興味あるかも。
なんてことを考えつつ、ギルドに依頼を出してきたリーシュなのでした。
●リプレイ本文
美しき世界〜キャメロット編〜
●切なさは秋の色
五日間。
ずっと、待ってたんですけど‥‥‥‥。
リト・フェリーユ(ea3441)は、珍しく晴れた今日のキャメロットの空を見て、ため息をついた。
嬉しかったんです。
こういうのって初めてでしたし、異種族恋愛ってどうなのかな、なんて考えてみたりして。
あの方、今頃何してるのかしら?
残念ですけれど、不思議と怒ったり悲しかったりはしなくて。
ただ、こう5日間待ち続けて、空しいかな。
苦笑いを浮かべて空を見上げる。
作ったお弁当をじっと見つめる。5日間、律儀に毎日作って‥‥‥‥毎日ひとりで食べていた。
どこまでも青い空に流れる白い雲。
私、選ばれなかったのでしょうか、あの方の恋愛対象として。
ん?
そっか、依頼ですもんね、これ。
そういうことはあんまり関係無いかもしれません。そしたら、病気でもなさってるのかしら? 別の何かがあってこられないのだとしたら?
吹いた一陣の風が、リトのフードをふわりと後ろに降ろして。
金色の髪が、風に舞って光に透ける。
香る、ミントのさわやかさが何故だか心を締め付けた。
「来られない御事情があるのでしたら、それはそれで構わないのですが。御自身に悪いことは起こっておられませんように」
祈ったリトの双眸に光る雫。
今日の空の青さが何故か目に染みて、切なかった。
●男装の麗人?
眦をきりリとあげて、というか吊り上げて。梁明峰(ea8234)は脇にくっ付いてるアクア・ラインボルト(ea8316)に対して、ため息をついていた。
「だから、くっ付かないでって言ってんでしょーが」
「だって、そういう依頼じゃない? くっつくのって恋人同士として実に自然だと思うんだけど。それから口調が女言葉よ。男役なんだから、ね」
「ね。じゃないよ!」
そんな調子では始まった二人の恋愛ごっこでございましたが、明峰はその辺のキャメロットぴーぽーよりもぜんぜん美形な訳で、道行く女性はちらちらと明峰に視線をくれてみたり、アクアを羨望と嫉妬の眼差しで睨んだり。
「たまんないわぁ、この優越感!」
「たまんないよ、このちくちく感」
正直そんな視線を楽しむ余裕など、明峰にはない訳で。
そして、それは四日間しっかり続き、ご飯食べたり散策したりしてる間、ずっと続いたわけでございまして。
そして、五日目。
昼のパブの庭で軽食を取るお二人さん。
「何気にツライ。この依頼‥‥‥‥」
「楽しいと思うけどなー。はい、あーん(はぁと)」
アクアはモルトビネガー味のフィッシュフライをウッドピンで明峰の口元に持っていくが、口を真一文字に結んで開こうとしない。
「明峰さーん、お仕事。お・し・ご・と♪」
仕事といわれていやいや口を開けると、アツアツのフライで目を白黒させる明峰。
「あちっ‥‥‥っ!?」
「出しちゃ、だめっ」
そう言って開きかけた唇を人差し指で抑えるアクア。そして、左手で木のコップに注がれた炭酸水を差し出した。
「そんな事っ、しなくても」
「みっともないでしょ? だしちゃったりしたら。でも、やっぱ男じゃないんだなあ」
突然そんな事を言われ、状況を掴めないできょとんとする明峰にいたずらっぽい笑顔で顔を覗き込むアクア。
「唇柔らかっ。気持ちよかったよー、指が」
「アクアぁっっ!!」
振り上げた拳もアクアの一言で下ろさざるを得なくなった。
「男は女殴ったら、だめでしょ?」
空しく響くわたる魂の叫び声。
『もうっ!! なんて仕事なのおっ〜〜〜〜!!!』
●美しき兄妹愛
立派な騎士。
そして、理想の男性像。
大好きな人。
だけど‥‥‥‥いつもいつも。
騎士のつとめを果たすため東奔西走されてる兄様の時間を独占するなんて叶わない事、なんて思っていたのですけれど、こんなお仕事があるなんて。
兄様もおっしゃってましたけれど、覗き見は美しくないですけれど、こんなこと滅多に無いのですから。チャンスです!この機に兄様のハートをゲットしてみせます!
そんなことを思っているのは ミオ・ストール(ea4327)で、想われている兄はクロノ・ストール(ea2634)であった。
一日目は夜の更けるのも忘れるほどに話し込んで早く寝なさいと言われてみたり、二日目は冒険者ギルドで今までの冒険のお話をしてみたり。
三日目、四日目はキャメロット市街でデート♪
ほんと、過ぎていく時間が早すぎて嫌になっちゃいます。
そして、五日目。
祈りの世界。教会のしんとした空間。
今の時間は定例礼拝の時間ではないのでひっそりと静まり返っていました。怪我の処置やその他のことはもう少し進んだ奥の部屋で行うようです。
そんな教会の冷たい椅子に二人で腰をかけて
「兄様‥‥その‥‥今回の依頼の事本当にごめんなさい。その‥‥私‥‥兄様と一緒に過ごしたくて‥‥本当にごめんなさい‥‥」
この日は教会に入るまで口を聞いてくれなかった兄様の顔に微笑がみえて。
「それに私は何時までもお前の兄だ。甘えたい時は何時でも‥‥では困るが、甘えに来るといい。
‥我が妹ミオへの愛はこの胸に永久に消える事は無いのだからな」
そう言って、頭をなでてくれて。
永久に消えることは無いだなんて、嬉しいですっ。
思わず緩んだ涙腺を、押さえつけるかのようにごしごしって顔を拭いたら、兄様が一輪の白薔薇を私に手渡してくれて。
「立派なレディへ。謝ってくれて嬉しかった。信じていたけれど、な」
刺が丁寧に抜かれた白薔薇の茎をぎゅっと握り締めて。
兄様は私だけのものって‥‥今は思いたいです。そんな、私の思いを知ってか知らずか、にっこり微笑まれる兄様。
そんな微笑の中でクロノは何を考えていたのかというと。
『依頼主リーシュ殿のご期待に添えたかは判らないが‥‥‥‥これだけ長い時間一緒にいて、いろいろな話をできた物だな。ミオもすっかり一人前、とまではまだ言えぬもしれぬが、立派なレディへの階段を登っている。兄として、一人の騎士として。五日間エスコート、そして見守る事ができてよかった、のであろうな』
●喧騒を抜けて。
キャメロット。
ここはアーサー王の居城のあるイギリスの心臓とも呼べる都市で。
その為、他の地方都市では見る事のできないような物が様々に市に並んでいた。
この二人は普通に大人のデート。
ケンイチ・ヤマモト(ea0760)&セレス・ブリッジ(ea4471)はその市をゆっくりと見て回る。馬鹿みたいに買うだけが能ではない訳で。
「デートも久しぶりですわね」
そう言って腕に抱きついたセレスににっこりと微笑を投げかけるケンイチ。
「今日は良い物が並んでいるようですが、あの髪飾りはいかがでしょう?」
磨き上げた樫の板に透かし彫りを施した髪飾り。それはセレスの使う呪文の属性に合わせてのチョイスなのかどうかはケンイチしか知らない訳だが。
「今日は見るだけにしておきます。いいなって言ったら買ってくださるおつもりでしょう? 経費は出ませんもの、このお仕事」
「遠慮する事はないのに」
そう言ったケンイチの腕をぎゅっと抱きしめて頬を摺り寄せる。
「遠慮しないでみました」
えへへ、と笑うセレスの頬がかすかに染まって。人ごみの中で甘えてみせるのにはやっぱりちょっと恥ずかしさもあるのであろう。
それに対して、ケンイチはやんわりと頭を撫ぜて。
「昼食をとってからそう時間がたっていませんし、あまり人ごみの中にいても疲れるだけですから、少し川辺を散歩しましょうか」
そんな感じで川辺まで歩き、水面に写る二人の影を見つめる。
「傍目から見ても恋人同士にみえるでしょうか?」
「リーシュさんもどっかで見てるんですかね」
そう言ってケンイチはキョロキョロと辺りを見渡すが、その頬に手を当てて、セレスはケンイチの顔をまっすぐ自分のほうへと向かせた。
「今は‥‥‥‥私だけ見てくれなきゃ嫌です」
リーシュがいようがいまいが関係無いじゃない、と言った感じでそう言うセレスに、何か愛おしさを感じ、目を細めて見つめた。
‥‥‥‥ゆっくりと近づく顔と顔。
吐息が、かすかに肌に触れて。
暖かな体温が空気を伝わって、そして。
唇の触れ合った瞬間、ほんの少しだけセレスは体を硬くする。
ほんの少しだけ上げた顔。
腰を引き寄せられて、柔らかな感触が溶け合って。
世界が一瞬だけ刻を止めたかのように思われたその瞬間を、愛しむかのようにゆっくりと唇を離して。
恥ずかしかったのか潤んだ瞳を隠すかのように俯くセレス。
「順番逆になっちゃったいましたが‥‥‥‥好きです、セレスさん」
きゅっと握った拳でぽんっとケンイチの胸を叩く。
「じゃないのにしたら、だめなんですからね」
もう一度、交わる影。
暫くの間‥‥‥‥‥‥‥‥傾きかけた陽を受けて。