罠職人の小屋〜負けるな冒険者!〜
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■ショートシナリオ
担当:戌丸連也
対応レベル:1〜3lv
難易度:普通
成功報酬:0 G 65 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:07月28日〜08月02日
リプレイ公開日:2004年08月05日
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●オープニング
「さてと。これで今回のトラップは完成だな。しかし、実際どの程度効果があるものか判らん。今後の事もあるし、少し費用を投資するか。大掛かりに作った訳だしな」
キャメロットから大体二日ぐらい郊外に在る、或る舘。
その庭の隅に何棟かの石造りの小屋があり、それは彼の工房となっていた。
彼の仕事は罠の開発、設置。
貴族や商人達の金庫や趣味で(!?)設置するのである。
結構いい腕のようで、この舘もそれなりに大きい物であった。
「ゴールデンハンマーはジョークだが、ダストシュートはそれなりに面白い出来になったな。完全な罠は在り得ないが、どのぐらいてこずるか楽しみではある」
にやにや笑いながら彼は、冒険者ギルドの紹介で来た冒険者を庭にある小屋の前に案内する。
見ると、小屋の入り口にトラップの名前なのか札が下がっており、彼の指差すそこにはゴールデンハンマーとダストシュートと書かれていた。
「さて、君達にはこの中にある罠を突破していただきたい。今回は解除できる仕組みは設定していないので、それは考えなくてよろしい。まあ、注意事項としては、一つパーティである事を想定する為、全員が突破すること。二つ現住者がいる場所に設置する事を想定の為、あまり大きな物音を立てないこと。これぐらいかな」
ゴールデンハンマーと書かれた小屋の中には10m四方の平面の部屋。床には床板の無い場所がランダムにあり、奇妙な曲線を描くハンマーが何本もそそりたっている。
そして、ダストシュートと書かれている小屋には幅4m、高さ6m50cm、一段辺りの高さ25cm、26段の階段が設置されていた。
「見ての通りだ。さて、ゴールデンハンマーは向こうのドアに全員が入った時点でクリア、ダストシュートは全員が階段を登り切ったところでクリアとしよう。パーティと言ってもこの人数では多いから、好きな方のトラップ一つを攻略してくれたまえ」
そう言って彼はうししししと笑う。
「試作品だから、あまり手荒に扱わないでくれよ」
そう言って一行を一ヶ所に集めると、男はコホンと一つ咳をして一同の顔を見る。
「判っていると思うがこれは盗賊避けのトラップだ。実際に設置されるかもしれないが、くれぐれも今回の知識を悪用しないように。まあ、冒険者はそう言う者たちではないと言うから今回お願いした訳だからな。それでは、考えがまとまったらよろしく頼む。儂はじっくりとその攻略する様を見ているからな」
そう言って、庭においてあった木の切り株によっこらせと腰をかける彼。
果てさて、どちらを攻略するか‥‥‥‥。
●リプレイ本文
先程、依頼者に弁当を預けたサフィア・ラトグリフ(ea4600)のせいか、妙に和やかな空気に包まれながらのスタート、であった。
●ダストシュート攻略作戦
小屋に一歩入ると、どう考えても罠が仕掛けられているだろう階段がある。
こちらを攻略するのはサフィア、ヴィグ・カノス(ea0294)、高葉龍介(ea1745)、ジョーイ・ジョルディーノ(ea2856)の4名である。
罠を一見して、とりあえず一番手が二階に上がってロープを垂らせばいいのではないかと言う事で、ジョーイとヴィグのロープを繋ぐと、階段下のガタガタ言う床を確認して。
「ここに乗っていたら、きっと全滅だな」
呟く龍介に頷く一行。
と。
じぃっとヴィグのショートスピアを見つめるジョーイ。
「それで階段を調べながら行ったらいいんじゃないか?」
しばし無言で考え込むヴィグ。いいアイディアである事には間違いない。
「‥‥‥‥‥‥‥‥判った、貸そう。だが、つっかえ棒にするなよ? それから刃が曲がっても困るから、穂先を上にして柄で調べてくれ。いいか?」
「O.K」
簡単な打ち合わせの結果、ジョーイが一番先に登り、ヴィグ、サフィア、そして龍介の順に登っていく事と決まった。
と、ロープをしっかりと身体に巻きつけて、ショートスピアを手に階段に足をかけようとするジョーイ。
「一段目から罠ならば、笑い話だな」
龍介の呟きが耳に入ったのか、空中で足をぴたりと止めるジョーイ。
「嫌な事を言うなあ」
だが、この時彼等は重大な見落としをしているという事にこの時気付く由も無く、ジョーイが階段をスピアでチェックしながら登っていくのを見守る。
「これでうまくいきゃいいけど、そう旨く行くか?」
「行かなかった時の為にこうしてロープ持っているんだ。何とかなるだろう」
と、会話しているサフィアとヴィグ。龍介はと言うと、登っていくジョーイをただ見つめていた。
(「俺、何をやってるんだろうなあ」)
あくまで注意はジョーイのほうに向けつつも、そんな事が心の中に過っていた。
さて、下でそんな事を言われてるとは知らず、というか構ってられずに慎重ににスピアの柄で段を叩きつつ、慎重に歩を進める。
「ここも大丈夫っぽいよな。いや、違う? いやいや同じの筈。同じだ」
途中気がついたのだが、どの段も体重をかけると微妙に沈むようだ。つまり、全ての段が罠となりうるのではないか。冷や汗が一筋、頬を滑り落ちた。
15段目。
音の変化は無い。
足を掛けて、体重を‥‥‥‥乗せた。
「う、うおおおおおおおおおっ!!!」
突然全ての階段の段がフラットになり、階段は急勾配の坂道と化した。
下に視線を配るジョーイ。
同時に現われるかと思われた、落とし穴はそこにはない!
「ええい、ままよっ!!」
下で見ている一同のロープを持つ手に力が入る。
「集中だ! 体重全部受けるつもりで!」
ウィグの叫びに頷くサフィアと龍介。
こうなる事は予想の範疇だったジョーイ。体を回転させて階下方向を向くと、バランスを崩しながらも何とか着地の態勢を取って床に着地する‥‥‥‥しかし!
「うわあぁああぁああ!」
階下床板の向こう側が外れて、体が斜めに傾いたと思った瞬間、嫌な浮遊感が再びジョーイに襲い掛かる!!
「ひっぱれ!!!」
サフィアの掛け声とともにロープがひかれる、が。
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥ぐ、ぐえっ」
衝撃音とともにジョーイの断末魔が聞こえてきた。
「人を勝手に殺すな!! って、ロープ巻いてるのに何故!?」
要するに、落ちた『階段の高さ−(落とし穴の深さ+引っ張りあげたロープの長さ)で余りが出てしまったと言う事であって。足から落ちたのであれば兎も角、斜めに落ちた為に顔面から着地と相成った訳である。
胴についたロープで引っ張りあげると、一つ、息をつく。
「失敗したようだな。が、もう一度チャンスをやろう」
階段下の小部屋からそう声がすると、段が元に戻り、何事も無かったかのように再び冒険者達を見下ろしていた。
ジョーイの落ちた穴はそのままであったが。
「探知棒、は役に立たないとなると‥‥‥‥」
「いや、役に立たないという事は無いんじゃないか。全ての段が沈む以上何らかの仕掛けがしているはずであって。ただ、発動条件が体重を掛けるということであれば、もっと大きな音を立ててもいいような気はする」
サフィアの呟きに落ちたジョーイがそう答える。
「俺のスピア、あんまり乱暴に扱わないでくれよ?」
「ああ、判っているさ」
そして、今度は21段目に仕掛けられた罠であったが、大きな音を立てた結果全員で音を判断できる結果となり、今度はそれを探知して突破する事が出来たのだった。
さて、最後に登りつつしみじみ呟く龍介。
「異国の地で、こんなことをするハメになろうとは‥‥」
●ゴールデンハンマー攻略作戦
「なんか、嫌な感じがするぜェ」
呟くルカ・レッドロウ(ea0127)。そして、ほかにこのトラップに挑むのはリッカ・セントラルドール(ea0136)、アーウィン・ラグレス(ea0780)、イフェリア・アイランズ(ea2890)である。
ぶっちゃけた話、イフェリアはシフールなので。
「飛んでいったら早いやんなぁ」
と、言う訳であるが依頼の達成条件を満たせないのでとりあえず最後まで様子を見る事にする。
「ゴールデンハンマー‥‥‥‥の割には鉄製のハンマーなのね」
そう、リッカは呟く。その脇でハンマーの湾曲ぶりを見て暫く考え込んでいたルカが頭を抱えてうずくまった。
「何てこったィ。危険すぎるだろ依頼者さんよおっ! ゴールデンを狙うハンマーだなんて‥‥‥‥」
その言葉に何かに感づいたのか、ア−ウィンの口元が引きつる。
「まさか‥‥‥‥マジかよ」
「なになに? 何やねんなぁ‥‥‥‥って、ああ!!」
暫くルカとア−ウィンの顔を覗き込みつつぱたぱたと飛んでいたイフェリアだったが、何かに気付いたようだ。
「ああ、そう言う事か!」
一つ大きく溜息をつくと、うずくまるルカの肩をポンと叩く。
「御愁傷様や」
「ま、まて。まだ俺がイケニエになるって決まった訳じゃないだろォ?」
さて、少しの間シンキングタイム。
あーでもないこーでもないとの議論の結果、各自の作戦で罠に挑む事になった。
「さぁて、とっととクリアしちまおうか? んじゃ、行くぜぇ!!」
まず、アーウィンは床板のある部分に慎重に足を乗せる。
‥‥‥‥しーん。
次に靴に釣糸を結んで、罠の発動しそうな部分に投げつけてみるルカ。
‥‥‥‥しーん。
ハンマーのまん前であったが、別に何の反応も無く。
「よしよし、あそこは安全ってワケだ」
「まずは一歩目は大丈夫だったみたいね。じゃ、あたしも」
こんこんっ‥‥‥‥しーん。
杖で叩きつつ慎重に前進のリッカ。
中盤まで、順調と思われたが。
‥‥‥‥その瞬間は唐突にやってきた。
ガシャン、と言う作動音とともに左足1つ入る分の板を踏み抜いた反動でハンマーのある板が浮き上がり。
ちーん。
過たず、彼の股間を直撃する『ゴールデンハンマー』。
響き渡る鈍痛。歪む世界。終わりを告げる歌が頭の片隅に流れてきたような気がした。
「う、ぐっ‥‥‥‥うぅぅぅぅ。馬鹿‥‥‥‥な」
彼の名はアーウィン・ラグレス。
ハンマーは空白部分に振り下ろされる訳ではなかったようだ。それも、思いっきり跳躍してそこを踏んだものだからその反動もついて強烈な勢いで狙い打たれたのだ!
蹲ったまま、一歩も動けない。
「あ、あんた大丈夫!?」
「‥‥‥‥腰をとんとんキックしてやってくれ‥‥‥‥」
ぱたぱたと動けないアーウィンの元へ飛ぶイフェリア。そして彼女にそう声をかけるルカ。
男にしか判らない痛みである。思わず自分の股間を見て、そしてハンマーを見つめる。
「頼むぜェ‥‥‥‥」
さて、アーウィンだが、とっさの判断で腰を引いた為かやや衝撃は流せた物の、飛び降りた瞬間の出来事である。態勢を整える間もなかったのだ。
痛い空気が小屋の中に流れた。
その時!!
ちーん。
「は、はう●×▼凸凹っっ!?! オ、オイシくなんか、ないねェ‥‥‥‥」
「ルカ!?」
イフェリアの視線も、リッカの視線も蹲って動けないアーウィンの元に行っていたのだが。
焦りを感じたルカは、今までと同じ様に靴を投げてチェックしていたのだが‥‥‥‥。
反応は無かったのにハンマーはゴールデンを打ち抜い‥‥‥‥いや、抜いたら困るので打ったのである。
そして、進退窮まったのはリッカ。
この罠の床板の無い部分は、踏むと抜ける。
それを避けた時に足をつくと思われる部分に効果的にハンマーが仕掛けられているのだ。安全なルートと言った物の、かなりバランスの悪い状況で抜けなければならない。
ハンマーの発動する床も踏むと抜ける床板がセットされているので、発動条件にはある程度の重さがいるようだ。
コンコンと叩いてみたリッカには微妙な音の違いはわかる様な気がしたものの。
「ここを背負って突破するって、あたしに出来るかしら、イフェリア?」
「男って大変やねぇ。うちらだけやったらクリアできそうなんやけどね」
二つの溜息。
そして、リッカは何とか無事に、イフェリアは余裕でその罠をクリアすると、ぴくぴくと震える男二人を見て苦笑いを浮かべた。
そして、虫の息のアーウィンとルカはというと。
「う、ぃ‥‥‥‥お笑いにゃならねーぞ! く‥‥‥‥く‥‥‥‥」
「っーか、笑えねェ」
その時、入口に現われた依頼人。
「あ〜。取りあえず時間切れだな。屋内の仕掛けのつもりなんでな、そんなに倒れてたら誰か来てしまうからな」
しれっと終了を告げる依頼者。だが、次の言葉の方が男二人には辛かったかもしれない。
「あ、この罠解除とかないから。お嬢さん方は裏口から出ればいいが、君達は自力で戻ってきてくれ。じゃ、そゆことで」
「そゆことで、じゃねぇっ!! っててっ」
「嘘だろォ。嘘だと言ってくれェ‥‥‥‥ぇ」
と、言う訳で。何十分か後までお話は早送りいたしまして。
●結果発表!!
「えー、さて。本日二つの罠を試して貰った訳だが‥‥‥‥ダストシュートはおまけでクリア。ゴールデンハンマーは‥‥‥‥くっくく」
へたり込んでいるアーウィンとルカを見て笑いをかみ殺す依頼者。対して、仏頂面のアーウィンとへたばってるルカ。
「さて、ダストシュート組にはおまけだがクリアしたって事でボーナス50cp。そして、ゴールデンハンマーだが‥‥‥‥お嬢さん方には悪いが儂も男なものでな。そのいたみはいよーっく判る。だから、見舞金として25cp贈らせて貰おう」
流れる空気は何か微妙で。
ダストシュート班は成功した物の、一度失敗した訳ではあるし。
ゴールデンハンマー班に至ってはミッション失敗な訳であるし。
そんな雰囲気の中、ルカは何か違和感を覚え、開けて中身を覗き込んで見る。
「当たり? もう一個くれるのかい?」
袋の中から当たりと書かれた木片を取り出すと、依頼者に示すルカ。
一応、お金の事であるから全員の注目が依頼者に集まる、と。
「いやーーーーー、君かアーウィン君に当たるように入れておいたんだがね。おめでとう、称号を授けよう。ゴールデンハンマー、と」
「い、いらねェーーーーーーーーーーーーーっ!」
全員の苦笑いを浴びながら、弧を描いて後ろに倒れこむルカ。
寝転がった地面。
空に広がる青が、妙に眩しくて。
「やっぱ、イケメン組はイケメンと言う事で」
「良かったなぁ、当たりだけに当たったやんな」
「気を取り直してランチでもどう? あ、称号貰えて良かった、ならお祝いだね?」
「見舞金に称号か。考えてみれば不幸中の幸い、なのか?」
「金の金槌って、縁起がよさそうな名前だな」
「大丈夫? 後でエールでも飲みに行きましょ。お疲れ代って事で二人にはおごるから」
「お疲れ。お互い大変だった、な‥‥‥‥が、俺は断じてお笑いじゃないぜ!」
さて、誰がどの声をかけたかは置いて、とりあえずは依頼終了。
またこの依頼主。妙な物でも考えるのか‥‥‥‥それはまた別の機会に。