【ケンブリッジ奪還】白い襲撃者達
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■ショートシナリオ担当：戌丸連也 対応レベル：1〜3ｌｖ 難易度：普通 成功報酬：0 G 65 C 参加人数：8人 サポート参加人数：-人 冒険期間：09月20日〜09月25日 リプレイ公開日：2004年09月27日 |
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●オープニング
「なに？ モンスターがケンブリッジに！？」円卓を囲むアーサー王は、騎士からの報告に瞳を研ぎ澄ませた。突然の事態に言葉を呑み込んだままの王に、円卓の騎士は、それぞれに口を開く。
「ケンブリッジといえば、学問を広げている町ですな」
「しかし、魔法も騎士道も学んでいる筈だ。何ゆえモンスターの侵入を許したのか？」
「まだ実戦を経験していない者達だ。怖気づいたのだろう」
「しかも、多くの若者がモンスターの襲来に統率が取れるとは思えんな」
「何という事だ！ 今月の下旬には学園祭が開催される予定だというのにッ！！」
「ではモンスター討伐に行きますかな？ アーサー王」
「それはどうかのぅ？」
円卓の騎士が一斉に腰を上げようとした時。室内に飛び込んで来たのは、老人のような口調であるが、鈴を転がしたような少女の声だ。聞き覚えのある声に、アーサーと円卓の騎士は視線を流す。視界に映ったのは、白の装束を身に纏った、金髪の少女であった。細い華奢な手には、杖が携われている。どこか神秘的な雰囲気を若さの中に漂わしていた。
「何か考えがあるのか？」
「騎士団が動くのは好ましくないじゃろう？ キャメロットの民に不安を抱かせるし‥‥もし、これが陽動だったとしたらどうじゃ？」
「では、どうしろと？」
彼女はアーサーの父、ウーゼル・ペンドラゴン時代から相談役として度々助言と共に導いて来たのである。若き王も例外ではない。彼は少女に縋るような視線を向けた。
「冒険者に依頼を出すのじゃ。ギルドに一斉に依頼を出し、彼等に任せるのじゃよ♪ さすれば、騎士団は不意の事態に対処できよう」
こうして冒険者ギルドに依頼が公開された――――
●占領者達
その日の数多くの事件の内、脅威が少ない割には非情に腹立たしい事件も珍しかったのではないか、とこのコレッジの学生は後に語る。
このコレッジの特徴的な建物は校門で通称『双子の塔』、と呼ばれる物だ。学内で一番高いこの建物は、賢智と深慮の塔と言われ‥‥‥‥ているが、学生達はジョンとペーターと呼んでいる。
ジョンとペーターの双子の中には中庭、そしてそれを囲むように校舎と聖堂が建っており、小さいながらもイギリス伝統的な石造りの建物と整備された庭が美しい。
が、その光景も、一陣の白い影によって、阿鼻叫喚の地獄と化していた！
「や、や、やめろ！」
生徒の一人がその白い影に石を投げつけようとしたその時！
ひゅーいーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん
「いけませんっ。神の家の前で生き物を傷つけようとするなんて」
「だけど‥‥‥‥シスターマーガレット！ うわあああああああ‥‥‥‥！！！」
びちゃびちゃびちゃびちゃびちゃびちゃびちゃびちゃびちゃびちゃびちゃびちゃびちゃびちゃ
一面が白く、そして異様な臭いに包まれる！！
白い影の正体、それは鴎の群で。
３０匹はいるだろうか、あの独特な鳴き声を挙げながら一斉に糞を落してきたのだ！
「畜生っ、こんな事をされてもまだ殺しちゃいけないんですか、シスター！」
「神は‥‥‥‥それをお認めになりません」
何個かの糞が着弾（？）したフードを降ろすと、シスターマーガレットは集まり始めた教授たちが駆除を叫ぶ前に一言けん制の言葉を発した。
「彼等に立ち退いて貰うのは私も賛成です。しかし、生きる為でもなく傷つけたり殺すのは断固として反対します！ 受け入れていただけないのなら‥‥‥‥私はこの学校を去りますっ！！」
‥‥‥‥此れが普通のシスターなら、まあ、他に成り手を捜すのだが、彼女を手放したくない理由があった。それは、このコレッジの学食‥‥‥‥他に比べて数段美味しいと呼ばれる物‥‥‥‥は彼女の手によって作られていたのだ。
食べ物に興味が無い振りをするのが上品な振る舞いであるとは言え、実際他のコレッジの学食では様々な悲喜劇（！？）があると言われている。
まともなご飯の為か、彼女の発言力は絶大だったのだ！！
「うわっ、第二波がきたぞ、逃げろーーーーー！！」
蟻を追い散らすかのように逃げていく者たち。
９月２７日はケンブリッジの学園祭が開催される予定でした。
この調子では学園祭を開く事など到底不可能で。この塔を何故か占領している鴎達をどうにか追い散らしたいのだ！
学園祭が開催されるも否も、全てはケンブリッジ奪還に懸かっている。
キャメロットの冒険者よ！ 今こそ立ち上がる時なのだ！！
●今回の参加者
ea0037 カッツェ・ツァーン（31歳・♀・ウィザード・人間・ノルマン王国）ea0258 ロソギヌス・ジブリーノレ（32歳・♀・レンジャー・人間・エジプト）
ea0862 ディン・オーファ（32歳・♂・レンジャー・人間・ビザンチン帝国）
ea4435 萌月 鈴音（22歳・♀・浪人・人間・ジャパン）
ea6382 イェーガー・ラタイン（29歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国）
ea6597 真 慧琉（22歳・♀・武道家・シフール・華仙教大国）
ea6724 トール・ヘルバイター（30歳・♂・ウィザード・シフール・イギリス王国）
ea7000 エルネーズ・ソワレ（35歳・♀・ファイター・人間・イギリス王国）
●リプレイ本文
●ジョニ−奪回作戦闇に紛れて中庭を抜けると、一行は二手に別れて行動を開始する。
両方とも調べるつもりだったロソギヌス・ジブリーノレ（ea0258）はペーターを調べたいと言う者たちが４人となったのでジョニーから調べる事にする。
人見知りの萌月鈴音（ea4435）は後を追って。向こうが４人と言う事で。
「私、ムーン家メイド、エルネーズ・ソワレ（ea7000）と申します、皆様宜しくお願致します」
残るトール・ヘルバイター（ea6724）は驢馬のヘンリーの背で寝ていたが、動き始めたのを見て起き上がる。
ジョニーの中には特に目に付く物は何もなく、あっという間に四階に着く、が。
「これ‥‥‥‥屋根の上には登れませんね！？」
思わずエルネーズはそう呟いていた。
そう、屋根に用が無ければ、梯子を設けよう訳も無く。梯子が屋根まで続いている事を想像していたのか、対策が練られていなかった。
この時点でジョニ−奪回作戦は暗礁に乗り上げてしまった‥‥‥‥。
「とりあえず私、窓の修繕をしておきますね」
●ペーター奪回作戦
ペーターが怪しいと睨んだのはカッツェ・ツァーン（ea0037）とイェーガー・ラタイン（ea6382）。
そして、フォードがどちらにいるか判らなかったので、とりあえず多い方にしたディン・オーファ（ea0862）。何か別な狙いがありそうな真慧琉（ea6597）。
「アミィさま、戦闘できないのに他の戦闘する依頼に行っちゃったけど大丈夫かな」
一階から三階まではやはり何も無い。
そして、一行は四階に登ると今までの部屋には無かった、中央を分ける壁。しっかりと鍵のかかった扉、がそこにあった。
「試してみましょうか」
イェーガーはその鍵に取り組み始めて暫くすると、乾いた音を立てて、鍵が開いた。 その中は嵐の為か無茶苦茶になっている倉庫らしき部屋。
古びた箱が床に散乱し、箱が壊れて中身が飛び出ている物もある。
風でがたがたと言う戸が何とも煩いが、この部屋の物は頑丈そうで、鴎達が飛んでくるような事も無い。
どれもどうやら魔法の道具と言う訳でも無く。
「これ、鳥の卵みてぇだな」
ディンが、そう言って箱の中から出ていたその卵を手にとってしげしげと見つめる。
「‥‥‥‥けど、これは石だ。卵にしちゃ重すぎんな」
「ですか。では、俺は屋根に登れるよう、ロープを取り付けてきますね」
「じゃあ、あたいがサポートするねっ♪」
そう言って慧琉は嬉しそうにぱたぱたと先に窓から外に飛び出すと、続いてイェーガーがその技術を生かしてごつごつした壁をゆっくりと登っていった。
●真夜中の奇襲
さて。
トールがジョニ−の方からパタパタとペーターの最上階に向けて飛んできた。
そして窓に降り立つと、おもむろにカッツェの顔の前に飛んでいく。
「何か用かな？」
「一寸、向こうにきてくれないか、と。それと誰かロープを貸して欲しい、と」
今登っているイェーガーの方を見て、自分が何をさせられようとしているか、はっきり想像するカッツェ。
「ロープならこれを使えばいい」
差し出されたディンのロープをカッツェは受け取ると、ぽんっと梯子に手を掛け下りていった。
で。
塔の下に到着したカッツェはリトルフライを唱えて塔の屋根ギリギリまで飛ぶと、ロープを結んで、地面に向けてゆっくり下りていく。
「‥‥‥‥捕まえにいきましょう‥‥‥‥」
ボソっと鈴音はそうロソギヌスに話し掛ける。
「ええっ、行くの？ じゃあ‥‥‥‥」
そう言ってちろーりとエルネーズの方を見る、が。
「私、最後に参りますわ（にっこり）」
と、満面の笑みでそう返してきた。
「はいはい。じゃあ、行きましょうか」
上に登って見ると鴎達は丸くなり、すやすや（と、聞こえる訳ではないが）寝ていた。
そして、フォードと思しき鴎に手を伸ばす鈴音。
払暁に撒く物を撒く、というディンとイェーガーのプランに乗っていこうと言う事だったが。
ディンは苦笑して、戻ってきたカッツェを見る。
「どうやら、始まるな〜」
その様子はイェーガーの上で飛び回る慧琉の目にも映っていた。
「向こう、始めるみたいだよ！！」
二人の耳に鴎の甲高い声が飛び込んできた。
「天空を満たす光、一条に集いて、赫怒の稲妻となれ！」
強烈な音と閃光煌いて、闇を切り裂く稲妻が中庭の岩に炸裂する。
空を飛ぶ鴎達は四分五裂となって右往左往‥‥‥‥しない！
「なっ！？？」
機を待っていたトールだったが、これには些かあっけにとられてしまう。
その時、影が群の中に飛び込んでいったのが視界の端に見えた。
「戻ってきたばっかで悪いんだけどなァ、これ 向こうの屋根に撒いてくれないか？」
そう言ってディンは灰の入った袋と木酢液の入った皮袋をカッツェに託す。
「もしかして、もう飛んでいった方が良いとか言う！？」
「任せた」
飛んでいったら格好の的であるが、もう始まるのであるから下を経由していくよりリトルフライを使った方が早い。意を決してカッツェは空を飛んでいく。
戦端を開いたジョニーの上で。
鏃を外した矢を放ち、果敢に応戦するロソギヌス。空を飛ぶ鴎には文字通り手も足も出ないので、その陰に隠れる鈴音。そして、空を仰いで小さく首を振るエルネーズ。
「来ます！ 鴎の群が！！」
急降下、そして一撃離脱！
その攻撃が終わった瞬間、空から何かが降ってきた‥‥‥‥そう、あれだ！！
「あたいについてこれるかしら？負けたら、あたいが此処のボスってことでいいよね」
ついにフォードと思しき鴎を見つけ、その横を並んで飛ぶ慧琉。
だが、喋れる訳でもなく、ただ、慧琉を馬鹿にしたように笑う‥‥‥‥と笑われたように見えただけなのだが。力一杯無視して、高度をどんどん上げていくフォード。
そんな乱戦の元、まずはペーターの上に登ったディンがその上に灰を散らす事に成功する。
だが、一方のジョニーの上では一撃離脱する鴎達から鈴音を抱いて庇ったロソギヌスとエルネーズがあれの被害にあっていた。幸いな事にエルネーズは立っていた為無事だったが‥‥‥‥庇おうと抱いた時バランスを崩して倒れたのが仇となり、マントが頭の方にめくれてしまったロソギヌス。
気付くとお尻が真っ白だ！
「‥‥‥‥ロソ子さん‥‥‥‥泣いてる？」
「しくしくしくしくしくしくしく。いいんです、いーんです。どうせどうにかなる事は予想してました！」
先天性自滅症候群の面目躍如と言った所だろうか。
そして、後一人。灰と木酢液を持って飛んできたカッツェはそれをマントの開いた部分から食らっておりまして。偶然を伴った一発がちらりと出ていた髪の毛にべったしと。
「い〜〜〜や〜〜〜〜っっっ！！」
さて、それは兎も角（って言うのも酷いけど）、ディンと入れ替わりで一人ペーターの中に戻ってきたイェーガーは、さっきの倉庫で物が出ていたのはあの卵のような石だけだった事に気付き、再び倉庫の中に戻っていた。
「これ、ひょっとして‥‥‥‥？」
再び走る雷鳴！！
卵を持ったまま、戦況の確認に窓辺へ歩みよっていった。
高度を上げたフォードと群の間を幾度となく、雷が切り裂いて。
混乱は予想していたよりも無かったが、その攻撃は徐々に二つの間を引き離していく。
「勝負から逃げるの？ 意気地無しっ！ くずっ！ ○○の○○○男〜（○の中に好きな字を入れて見ましょう）」
涼しい顔で飛び続けるフォードだったが、何と、一転して急降下！
群れ飛ぶ鴎達がブラインドとなっていたが突然フォードが目の前に飛びこんできた！！
誰の目の前？ そう、イェーガー！！
その手にもった石をフォードは奪い取ると、上空に飛び上がっていった。
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
響き渡るフォードの声。
塔周辺を飛んでいた鴎たちは一斉に空目指して飛んでいって。
そして何時しか見えなくなっていた。
その数秒後。ぱふんっと言う音と共にフォードの胸に飛び込んできた物が。
突然の終息。
煌く星が一つ、流れた。
●帰途
誰とは言わないが糞を浴びたレディ達は水浴を済ませ、シスターマーガレット作る所の朝食に一同ありついていた。今日の朝食はチーズオムレツにキャロットパン、ハーブのサラダと豆のスープ。
その辺の飯屋で食べるよりよっぽど美味しい食事を終えて。
取り敢えずは依頼は完遂したのだろう。鴎達は戻ってくる様子は無い。
「イェーガー！ あの時あたいの胸触ったよねっ！！ 責任とって〜〜♪」
「い、いや！？ 覚えてないって言いますか、触ってないですし！」
帰り際、追いかけっこしている二人を見て、思わずディンは溜息をついた。
「そうか、あいつそんな趣味だったのか‥‥‥‥ま、平和でいいねえ」
「愛があればいいんですけれど」
そう、任務中ずっと崩さなかったエルネーズはにっこりと笑う。
「鈴音さん、匂わないです？」
「‥‥‥‥‥‥‥‥大丈夫、です」
服はシスターに変えてもらったそれを着ているし、ちゃんと洗ったから臭くない、臭くないはづと呟きながら歩くロソギヌスと、曖昧な笑顔でそれに和す鈴音。
「鴎の焼鳥、売りたかったな。と」
「あんだけ雷落したら満足でしょ？ 飛んでて生きた心地しなかったんだから」
ぽてぽて歩くヘンリーの上で寝そべるトールに苦笑いと共に言葉を返すカッツェ。
次第に遠くなっていく学校。
一行は振り返りもせず、キャメロットへ向けての帰途についていた。
「だから触ってないですってばあっ！！」
