頼んだから。桜舞い散る恋。
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■ショートシナリオ
担当:いずみ風花
対応レベル:フリーlv
難易度:やや易
成功報酬:0 G 65 C
参加人数:6人
サポート参加人数:1人
冒険期間:04月03日〜04月08日
リプレイ公開日:2008年04月13日
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●オープニング
「えーっとですね」
「何や? 心配かけまくった挙句、こないな小さなお願いを聞いてはくれんのかっ?」
「せや! 怪我治ったら、すぐに挨拶に来るんが筋やろがっ!」
「薄情もんやな。こないな薄情もんやとは、思いもせえへんかった」
「‥‥でも、人の恋路を邪魔する奴は、馬に蹴られて死んでしまうんですよ?」
「邪魔やない!」
「せやせや。応援や!」
ふらりと、京の街を歩くのは山南啓助。その目立たない風貌は、人込みに紛れれば、あっという間にわからなくなる。けれども、目端が利き、長い(?)付き合いのある子供達の目は誤魔化されない。瞬く間に袖をつかまれ、裏路地に引っ張り込まれる。
ほんのりと春の香り漂う今日この頃だが、まだ日陰は寒い。
沢山の子供達は、山南を取り囲み、お願いと言う名で友好関係を深くする。実は甘えているだけなのかもしれないが、そのお願い、いつも中々、てこずらされる。
今回は、山南が妙な輩に瀕死の重傷を負わされて、音沙汰が無かったのが酷くご立腹で。
心配していたという気持ちの裏返しなのは、山南も十分承知。
結局は、子供達に押し切られ、しかたがありませんねと、微笑する。
そうなれば、しめたものと、子供等も満面の笑みを浮かべる。
「それでこそ山南はんや」
「頼んだで。山南はん」
「はい。頼まれました」
わらわらと、路地から、子供達が飛び出すのを、何事かと目を丸くする大人達。その後を、ゆっくりと出てくる男が山南だと知れれば、ああ、よろしゅうにと、何事も無く、日常が流れ始める。
京の情勢は、刻一刻と変わる。
新撰組を取り巻く状況は良いとはいえない。
のほほんと京の町を歩いて、子供達と遊んでいるようにしか見えない山南なのだが、その子供達と遊んでいる事から、思わぬ目を拾う事も多い。近藤や土方からしてみれば、悩ましい話しだが、見回りの一環とも取れなくも無く。
「お久し振りですね」
「はい、ご心配おかけしました」
「それで今日は?」
「いつもので」
「いつものですか」
冒険者ギルドの受付も、山南が立ち寄る理由が次第に飲み込めてくる。また、子供達の話しを持ってきたのだろうと。
今回も、他愛の無い話。
小さな恋のおせっかい。
豆腐屋のみよちゃんは、小間物売りの大吉くんが大好き。
みよちゃんは今年で十二歳。大吉君は見習いになったばかりの十一歳。小間物の入った箱を背負って、御用聞きをしてまわる、大吉君は、みよちゃんに一目惚れ。けれども、みよちゃんは豆腐屋の看板娘。入り口には頑固一徹の三十になったばかりのお父さん。お母さんが居ない事もあり、お父さんはみよちゃんを目の中に入れても痛くないほど可愛がっているのは、近所でも評判で。
何とか。
みよちゃんに告白したい。
桜降るよな八坂の角で。
何度も何度も、豆腐屋に行こうと思い、足踏みをしている大吉を、子供等が発見し、何時ものように仔細を聞きまくり、それなら何とかしてやろうと軽く請け負ったのが今回の依頼に繋がるという。
「依頼‥必要っすかね?」
「まあ、そうなんですけれど、子供達の面子もありますし」
「いっぺん潰してやったら良いんですよ」
「‥その後の、報復、お考えになりました?」
「あー。嫌ですねー。座った場所に蛙が居たり、弁当開けたら空だったとか」
冒険者ギルドの受付は、見てきたように、語って溜息を吐く。
「ま、何方か見えれば御の字という事で」
「お願いします」
小さな恋の手助けと。降る桜の下で、花見などいかがですかと、依頼? と、首を傾げる依頼が張り出されるのだった。
●リプレイ本文
「これはまた‥」
すらりとした長身の所所楽柳(eb2918)は、小さな大吉が唇を引き結んで、こっそり豆腐屋を覗いている姿を見て、くすりと笑う。小間物屋さんと、声をかければ、飛び上がるように振り向かれ、品を見せてくれないかなと、微笑んだ。
豆腐屋から、少し離れた茶屋の長椅子に腰掛けると、柳は、笛の手入れとかに、何かあるかと問えば、汚れ落し用の可愛らしい綿の布と、絹の袱紗を並べられ。つくりの良い品に、うんと、頷けば、大吉が調子に乗って、色々説明する姿が微笑ましい事だと思う。一生懸命話し、自分の仕事は大事にしているのだなと知れる。悪い子じゃあないなと、柳の笑みが深くなる。
「そうだね、では、紅白粉や、簪とかを見せてくれないか?」
「贈り物ですか?」
まんまるの目を向けた大吉が、自分の事を男性だと思い込んでいるのを見て、そこいらの選択眼はもう少しかと、心の内で笑う。だが、しかし、今回は好都合。
「ああ、僕はとんと疎くてね。君が好きな子に選ぶつもりで選んでくれるかい? 自分の気持ちと、相手に似合うかどうか、相手がそれを気に入るかどうか‥って相手の事まで考えた結果なら、君にとって『絶対』で『おススメ』の品になるだろ?」
その言葉に、ぽっと、大吉の頬に朱が走る。
柳の目論見通り、大吉は、みよの事を思い出したようである。さあて、どうなるかなと、少し引いた心の場所で、柳はくすりとまた微笑んだ。好きは、好きでしか無い。その先の事まで思いを馳せる事が出来れば、大吉の態度にもきっと良い変化が出るに違いない。
(「‥ちょっと遠まわしだけど、伝わったね」)
最後の所は、本人次第。けれども、こうした僅かな言葉が、大事な時もある。好きの先さえも考えられない小さな恋なら尚の事。
わさわさと集団で動く子供達に、大吉とみよの話しを聞き込んでいるのは、明王院未楡(eb2404)だ。未楡に微笑まれて、ぽーっとなり、しどろもどろになりつつある、悪がき‥もとい。子供達に、将門雅(eb1645)は、からりと笑う。
「ところで大吉はんの仕事っぷりはどう思う?」
また、いろいろ世話焼いてるんだねと、頷けば、せや。と、いつもの調子が帰ってくる。
「覗き見時間は、ほんのちょっと。後は真面目に御用聞きしとるよ。せやけど、ぼーっとしとるな」
「まあ、大吉はんの素がええから、お得意さんも心配してるっちゅうか、楽しんどるっちゅうか」
「みよさんは、どうなのかしら?」
未楡が首を傾げれば、子供達は、いっせいに唸る。
「微妙や」
「せやな、微妙や」
「微妙?」
「あんな、気になりはじめって、そんなもんやろ? 一目で恋に落ちましたっちゅうんもあるやろけど、覗いてるだけの大吉が、どんだけええ男でも、あれは何っ? て思うやんか」
「仕事振り見てくれたりとか、話できたら、ええ奴てわかるのにな」
口々に、溜息交じりで大吉を心配する子供達に、未楡は、可愛らしいものだと、思い、微笑む。頼んだから〜っと、走っていく子等を見送る。
「優しい子達‥ですね」
「口悪いけどな」
「何とかしましょう?」
「もちろんや」
雅とふたり、笑いあう。どうやら、大吉の完全な片思いのようである。
「幼い恋心の行方‥‥何とか良い方向に導いてあげたいものですね」
長寿院文淳(eb0711)が、艶やかに笑う。かなりの身長なのだが、その仕草は柔らかい。黙って立っていれば、別嬪さんである。
ちらりと、覗いてきた豆腐屋は、まさに、頑固一徹。そんな姿の店主が、きびきびと働いていた。あの人が、父親だとすれば、近寄り、話しをする事も難しいだろう。
「どう、声をかけるよう持って行きましょうか‥」
やはり、世間話ですかねと、歩き出す。
「下準備は万全ですのよ」
くすりと文淳に未楡は笑いかける。未楡が豆腐屋の近くに寄れば、同じように買いに出た奥さん連が、わらわらと寄って来る。豆腐屋の主人も、愛想良く、声をかけた。
前日に、買い物に来ていたようだ。穏やかな人柄と、卓抜した対話は人の心を容易に掴んでいた。
少し時は遡る。
大吉を取り囲むのは、雅に頴娃文乃(eb6553)と橘菊(ec4697)。
一体何が起こったかと、目を見開いている大吉だったが、菊は、笑みを絶やさない顔で覗き込んだ。
「茶屋にでも行かないか?」
自分達は、子供達と子供達に頼まれた、山南某という方が頼んだ依頼で来ていると、大吉に噛んで含めるように事訳をする。まだ、ほんの子供だ。その子供の初めての恋。それは、真実、恋なのか。菊は確認をしたかった。
「さて、大吉殿。大吉殿は、みよ殿を好きなのかな? それとも、ただ憧れて見ているだけなのかな?」
大吉のお茶を飲む手が止まって、下を向く。真っ赤な顔で、消え入るような好きという言葉が聞けて、菊はなるほどと、頷いた。
「好きならば、何故伝えないのかな? 全てはそこからでは無いか」
赤みの消えない顔を、ふるふると、横に振る大吉は、近くに行くだけで、どうして良いかわからなくなってしまうからと、眉を八の字に寄せると、震える声でつぶやく。
「本気だったら‥どんな障害も乗り越えて、告白出来るのでは無いのか? ただ見ているのは、大吉殿の気持ちがそこまでのものなのだろう」
「ちがっ!」
「ならば、伝えてみるが良い。全ては、そこからしか始まらない」
菊は、確かめたかった。
揺らぐ気持ちが、本物かどうか。
あえてきつい物言いで問えば、大吉は、ぱっと、顔を上げた。子供っぽいその顔に、芯のある事を見届けると、ひとつ頷き、微笑んで立ち上がった。それが聞ければ良いと。
「うちは万屋『将門屋』店主の雅や。うちから言える事は‥。まぁ動かな話にならんって事やな。あんさんの仕事と一緒や。御用を聞きに動くから商いが始まる。みよはんとこに行くのも同じや。仕事しよったら恐いおいちゃんとかおるやろ?そんなんも相手せんとあかんのんやしな」
立ち去る菊の背中を見ていた大吉に、くすりと笑いながら、雅が言葉を繋げる。商売に例えられれば、大吉もわかりやすいだろうという配慮は、確かに伝わっているようで、こくりと頷く、小さな顔を、文乃がにっこりと艶やかに微笑んで覗き込む。
何とも、くすぐったい恋だろうか。
惚れた腫れたの域には程遠い、微笑ましいこの初恋の、力になれれば良いのだけれど。
「いざっていう時に勇気を出さないと誰かに取られちゃうし、そうなったら死ぬまで後悔すると思うけどね」
軽く片目を瞑って見せれば、大吉が、目を丸くする。
言って後悔する事と、言わないで後悔する事。どちらが後を引きずるかと言えば、言わないままの不完全燃焼の心を抱えている方が、ずっと後悔するのだから。
さあ、どうすると、言わんばかりに、文乃は微笑む。
まいど。と、明るい雅の声に、豆腐屋の親父は、顔を上げる。事、商売の話しになれば、雅の言葉を聴かない商売人はめったな事では居ないだろう。世間話をしつつ、大きな揚げを買い求める雅の横から、未楡が現れ、豆腐を買い求める隙に、雅は後ろ手に、みよに手紙を渡す。商売人の子だから、なんとか文章は読めるようだ。
開いた文には『御用聞きの男の子が話があるようや。親父さんは引き付けるから話を聞いてあげてな』と、したためられていた。
とっさに外に飛び出して、きょろきょろするみよに、ゆったりと近寄った柳が、どうしたのと、声をかける。うっすらと化粧している柳は、ぱっと見には女性にしか見えない。きょとんとするみよにだけ聞こえるように、さりげなく耳打ちをする。
「そんなに外が気になるなら、自分から近くに寄るなり、呼ぶなりの理由を作ってみてもいいんじゃないかな? わからない事も、近くならわかる事だってあるかもしれないよ」
ぽかんと、柳の顔を見たみよだが、流石商売人の娘さんである。状況はなんと無しに飲み込めているようだ。
自分の名を呼ぶ父親を、ちらりと見ると、ちょっと出てくるから、すぐ戻るからと、言い、走り出す。前々から、大吉を警戒していた父親である。みよの手に握られた文を見て、ぴんとくる。そうなれば、話は早い。ちょっと失礼しますと、お客さんに断って、みよを追いかけようと、走り出す‥はずだったのだが。
「あら〜。つまづいちゃったわ〜っ」
文乃が、たたらを踏んで、親父さんの目の前に現れ、さり気なく進行を妨害する。ゆさりと揺れる魅惑の谷間に、頑固一徹の親父さんだが、くらりと揺れる。しめたと、文乃は、コケたつもりで、親父さんに寄りかかる。
「私も、同じ年頃の娘が居ますし‥お気持ちは判りますわ。でも‥余り箱入りが過ぎると、免疫がなくて騙され易くなってしまいますよ」
くすくすと、笑い、未楡が、親父さんに声をかければ、何かあったら遅いじゃありませんかと、うろたえ気味の返事が帰る。こっちに度胸出して顔も見せれない野郎に、なびいたら目も当てられないと、文乃をそっと避けると、また走り出しそうになる。
「その子なら‥働き者の好青年と評判ですから、良い御友達になりますよ。この年頃の淡く、甘酸っぱい想い出に覚えはありませんか? 子供を信じて、そっと見守ってあげるのも親の優しさ‥ですよ」
まだ、お互いに小さいのですから、いきなり何がどう転ぶわけでもありませんでしょうと、また微笑むと、どうやら、同じ親としての面子にひっかかったようだ。
未楡の隣で、豆腐を選んでいた文淳が、何気なしに聞いてしまった風を装って、くすりと、笑う。
「確かに、子を‥‥特に娘子を持つ親としては、男子を近付けたくないものでしょう。男手一つで育てられたのなら、尚更かも知れません。ただ、それも行き過ぎれば、『束縛』という圧力となって、親子関係に悪影響を及ぼしかねないのではないでしょうか? 相手の事は兎も角、先ずは娘さんの気持ちは酌んであげられては如何でしょう」
うう。とか、むう。とか、豆腐屋の親父が唸るのを見て、独り者の意見ですみませんと、文淳は微笑んだ。
男親は特に理不尽なものである。
頭では理解していても、行動や感情がついていかない。
───しかし。
大吉と、みよが、豆腐屋からすこし離れた角で、何やら話している。
真っ赤になった大吉が言う言葉に、みよは、少し小首を傾げ、それでも、嬉しそうに頷いた。
これから先は、また変わっていくのだろうけれど、とりあえず、最初のとっかかりは出来たようである。
真実の恋になるか、淡い初恋で消えるのか、それはこの後のお楽しみといった所。
もし振られたら。そう菊は考えていたのだが、誰か他に好きな子がいるような子ならともかく、そこそこ身なりの良い男の子に、好きだといわれて、いきなり断る女の子はめったにいないものなのだ。
上手くいって良かったと、こっそり、菊は思う。細部に気を配ってた事は、きっと表には出さないのだろう。
そんなふたりを見て、冒険者達は、さあ、恋は見届けたから、今度は花見だと、歩き出す。
懐に入れてある笛を押さえ、柳はくすりと笑う。どんな恋でも、その調べは鮮やかな情感を音色に乗せるのだろうと。手を振って待っている山南を見て、出掛けに、柳がキエフ土産を手渡した渡所所楽柊がぽつりと言った言葉を思い出す。家族の話をしつつ、見送る柊は、子供の依頼を受けるのは、自分の隊長だけかと思っていたが、意外と新撰組内にはそういう人物が他にも居るものだと。
桜咲く。
京の町にも、ふうわりとした空気が流れている。
淡い色の小さな花の固まりは、遠くから見ると花霞のようだ。
角を曲がって、不意に目にする、鮮やかさ。
その花は、美しいだけでなく、儚くて。
冒険者達が桜を愛でながら歩く道は、清水寺から始まり、円山公園をのんびりとまわり、八坂神社の桜を背にすれば、次第に日も暮れてくる。祇園に入れば、山南に、あちらこちらから声が掛かる。
花は花でも、簪に揺れる桜の花が、白粉の香りと共に冒険者達の間を笑いながら通り過ぎる。
そして、辿り着いたのは、鴨川のほとり。
「良いものをお持ちしましたわ」
さあどうぞと、未楡が手際良く茣蓙を敷く。丸山公園まで一緒に歩いて来た子供達を、家まで送り届けるついでに、用意してきたようだ。
鴨川の並びの料理屋や、茶屋の灯りが、川沿いの桜の花を夜の闇に淡く浮き立たせる。
川の流れる音と、料理屋などから聞こえてくる、お囃子や、唄いの声。三味線の音。行き交う客達の笑い声が、かすかに耳に届く。
菊が、酒を取り出した。鮮やかな赤い色をしたその酒は、珍しいものだ。ワイン。葡萄の芳香がかすかに立つ。こっそりと山南が報酬に同じものを紛れ込ませていたのは、後の話し。飲み食いするものは、よほどでなければ、山南が補填していたようだ。
お弁当の中身は、出汁巻き玉子に、鰆の白みそ焼き、鳥の甘いつくね。菜の花の胡麻和えに、筍の煮物。桜色したご飯が、桜の形に抜かれており、その中心には桜の塩漬けがちょこんと乗っている。蓬、白、桜色した三色団子が、折りの端で主張する。
「どうぞ、一献」
「綺麗ねぇ」
桜も、この酒もと、文乃が呟くと、では、演奏をと、文淳が、竪琴を取り出した。軽く爪弾けば、それならばと、柳が、ひとさし仕舞いましょうと、微笑み、その身を淡く炎の色に光らせる。手にする鉄笛に、焔が灯る。何所のお座敷にも負けないような、音曲と踊りが、炎と僅かにこぼれる灯りに浮かび上がる。
はらり、はらりと花弁が、踊る柳の焔に巻かれ、飛んで行く。
あの小さな恋が、桜のように花開く事を願う文淳の音色は、暖かく、穏やかだ。
「雅さん‥痛い」
「あの子等もやけど心配したんやで。これはその罰や」
山南の額に、軽く手刀を入れた雅は、軽く笑った。本気では無いからこそ、綺麗に決まった手刀である。ほぼ一年。山南の動く先には、必ず雅が居た。
言おうとして、会えなかった思いも込めて、そっと、山南だけに聞こえるように告げる言葉に、山南も、雅にだけ聞こえるように、はい。と答えた。変わらず多くは語らなかったが‥‥。
はらり、はらりと、桜の花弁が舞う。
鴨川のほとりで、音曲とざわめきが、一時の平和を形作っていた。