いんちき?辻占い師
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■ショートシナリオ
担当:いずみ風花
対応レベル:フリーlv
難易度:やや易
成功報酬:0 G 65 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:12月10日〜12月15日
リプレイ公開日:2006年12月18日
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●オープニング
四十を超えた年代であろうか。白髪交じりの、人当たりの良い、目と体の細い男性が、女性の手を取り、水晶玉を覗き込み、ふむふむと頷く。
長い指は程よく油も抜けており、女性達も違和感無く手をとらせている。
簡単な生い立ちを聞かれ、名前を聞かれ、最近の悩みを聞く。
「ああ、大丈夫ですよ」
穏やかな声が、また女性の心を落ち着かせるようで。
「これをお持ちなさい。全て上手くいきますとも」
女性の手には、小さなお守り袋が握らされ。
街角には、時々様々な芸人が現れる。
それは、蝦蟇の油売りだったり、軽業師だったり。主に、祭りに合わせて現れるのだが、今回冒険者ギルドへと苦情と依頼を持ち込んだ女性達からすると、それは辻占い師だという。
「それは、ご愁傷様です」
占いをして、恋愛成就のお守りを結構な値段で売りつけられたと、冒険者ギルドへ数人の女性が現れた。
どうして騙されるのかなと、ギルドの受付は、ほんのちょっぴり思ったが、それを口に出す愚かさは無かった。
「ですが、これを依頼とするには‥」
「隣町に移動したっていうの。隣町に行くまでには、街道を通らなくちゃいけないわ!」
街道には、時折、小鬼が現れる。
寒くなってきた為、山から降りる頻度も上がっている。
冒険者ギルドの受付は、小さく溜息を吐いた。
「隣町へ行った占い師から、お金を取り戻す‥‥。これでよろしいですか?」
小気味好い音を立てて、女性達は、つき返してちょうだいと、お守り袋を受付に叩きつけて言った。
「何だか自業自得って感じの依頼ですよ」
がっくりと肩を落とした受付に、お守り袋を持って、声をかける女性が居た。
「あの‥‥」
「貴女も、返金希望ですか?」
「いえ‥‥出来れば、その占い師さんに御礼を伝えて頂けませんか?」
「はぃ?」
「私、この度、結婚が決まりまして、その。このお守りを持っていたおかげかなと、これがあるから、勇気を出して気持ちを伝えましたら、その‥両思いでございました」
顔を真っ赤に染めてうつむく少女の愛らしさ。
やっぱり、自業自得かも。と、叩きつけられた住所と名前の書付とお守りの山を見て、ギルドの受付は思うのだった。
辻占い師を捕まえて、返金処理をお願いします。
そうして、可愛らしい女性からの御礼の言葉を伝えて上げて下さい。
占って貰うのも良いかもしれません。
●リプレイ本文
●辻占いをした女性
占いは、人の気持ちをお金に換える。なんとやっかいな商売であろう。
長い指が、ギルドの受付に積み上げられた、お守り袋の影にある住所の書付に手を伸ばした。ブロード・イオノ(eb5480)は、豪奢な金髪を緩く揺らすと、ほうと小さく溜息を吐いた。
「被害者‥の方にお会いしたいと思いますわ」
受付に何枚かの近場の住所を借り受けると、また、ちいさく溜息を吐く。
どういう状態で占いが行われているのか、まずは占って貰った女性達に詳しい話を聞きたかった。
「これはまた、たくさんのお守りですね」
背は高いのだが、ふうわりとした質量をあまり感じさせない動きをし、陰陽師の陰守清十郎(eb7708)がブロードから書付を一枚貰った。
「占いは、あまり信じてはいないのですが」
教師の伊勢誠一(eb9659)も、ブロードから、住所の書付を貰う。そもそも、占いは他人を勇気づけたり、本人の決断を促す程度のものと考えているので、そこから銭金が発生する事事態をあまり好ましいとは考えない。ただ、相場という物までも否定しようとは思わなかった。それを生業にしているのなら、それなりに。ただ、詐欺のような金額ならば問題なのだろうと、ひとり頷く。
「ただの言葉巧みな占師なのか、わたくしの様な術を使用できるものなのかを、確認しておかないといけませんね」
ブロードのような術師は冒険者に多いが、一般人とて使わないという保障は無い。魔法というものがある。その中には人の気持ちを左右させるに充分な魔法があるのだ。
三人は三様に占い師の行状を聞きだすべく、町に散って行った。
●占い師と冒険者
その占い師は、丁度町の入り口に陣取って、小さな卓を出していた。聞き込んだ風貌と寸分違い無く、寒風を避けるかのように辻の奥でひっそりと座っていた。流行っている訳でも無さそうである。
「さて、逃走経路はどうなるかね」
前髪をかき上げると、風斬乱(ea7394)は占い師から離れ、町の地形を調べるつもりであった。うっかり逃げられましたでは済まない。街道沿いの普通の町ではあるが、どんな抜け道があるか知れたものでは無い。空は幸い晴れている。うっかり雨でも降れば、また場所の移動になってしまうが、その辺りは大丈夫だろうと、念入りに調査を始めた。
極楽火花(eb8813)は、こっそりと気が付かれないように、占い師を監視する。仲間たちが来るまで、この占い師が逃亡とかしないようにとじっと息を潜める。
師走の忙しい時期でもある。町行く人はどの人も小走りで、年越しの仕度が終わるまで、占い師に構っている余裕など無いのかもしれない。
踊るような足取りで、瀞蓮(eb8219)が占い師の前に立った。
占い師は、糸のような細い眼で、ほうと微笑んだ。何となく、その笑顔につられるように、蓮は占いの卓のある前の椅子に腰掛けた。圧倒するでも無く、惹きつけるでも無い顔におやという思いもある。
「姉さん、恋占いかぃ?あまり悩んでいそうでも無いけどねぇ」
「‥自分で認めるのは、いささか癪ではあるが‥」
蓮は、少しだけ自分の気持ちを織り交ぜて占い師の読み取れない目を覗き込む。
「姉さんは、充分今のままでええんじゃないかね。姉さんが好きな人が出来たら、きっと上手くいくよ。でも今は姉さんそんな気無いじゃろ?」
これは、依頼である。当たらずとも遠からずの答えに、蓮は何となく居心地が悪くなる。しかし、本音も入っているので、否とも言えず。
「‥そんな事は無い。そもそも、いまだに生涯を共にする殿方と巡り会えん‥」
「さてさて。そんなら、恋愛成就のお守りがあるんだけど、要るかい?」
「それで相手が見つかるのか」
「姉さんさえ見つける気なら」
「‥‥」
「気になるんなら、持っていな?そうでないなら、止めときな」
思わせぶりな言葉である。すっと、目の前に出されたお守り袋が仕舞われると、何となく損をしたような気にもなる。ああ、これかと、蓮は思った。
多少迷いがあるだけで、意外とお守りが惜しい気になる。これが、迷っている最中だったら。何が何でも手にしたいと思う心が芽生えるのかもしれない。
「ええとさ。ここ、儲かる?」
しゃらしゃらと衣擦れの音をさせてリフィーティア・レリス(ea4927)が近寄る。綺麗な布をふんだんに使った女装をし、同業者候の顔をして占い師を覗き込む。
「儲かるっていやあ儲かるし、儲からんっていやあ儲からん」
「えっと?」
「そりゃ、神秘的だな。人気が出そうだ。綺麗な光球連れて、何を占うんだね」
「うっと」
綺麗な長い銀髪に、少女と見まごうばかりの顔立ちのリフィーティアは、本来、占い自体もあまり上手くは無い。そうして、実の所は女装もあまり好きでは無い。素直では無い事と、正直かどうかということはまた別物である。狐のレティスはともかく、ティルナを隠すのを忘れていたのだ。何となくバツが悪くなって唇を引き結ぶ。そこに、乱が美しい水の妖精水蓮を伴って現れた。
「じいさん、よく当たるらしいね」
「‥さてはてそりゃ何処の話ですかいな」
水晶玉を挟んで、乱と占い師が睨み合う。とぼける占い師に、乱はぐっと迫った。前を塞いで、商売物の水晶玉を取れないようにしてしまえば占い師は逃亡する事など出来ないだろうと思うのだ。
「巷で評判だ、隣町で占って貰った者が感謝の言葉を言いたいらしい‥一つ一緒に同行を願いたい」
「どうも今朝から様子がおかしいと思ったら、冒険者の皆様ですかい」
「何、抵抗しなければ手荒な真似はしないさ」
大げさに溜息を吐く占い師に、人の悪い笑みを浮かべた乱が止めとばかりに言葉を返す。
軽い地響きと共に、ゴーレムの黙静と美しい蝶の羽根を持つ妖精の各務を連れて現れたのはマハ・セプト(ea9249)道中の小鬼は、この姿だけで逃げ散っており、街道の安全に一役かっていた。
次々と占い師に辿り着く冒険者達。
頃合かと、潜んでいた花火も顔を出す。とぼけた顔した占い師に、やれやれといった感じで腰に手を当てて溜息を吐く。
「まあ、おっさんの占いの捉え方は人それぞれだろうけど。上手くいかなかった人のお守り代はかえしてもらうかな」
花火は、なんだかなと、黄色い嘴をぱりぱりと掻いた。
陽はぼちぼち暮れかかり、長い影を冒険者達に落としていた。
●当たるも当たらぬも
叩き返された分のお守りを回収すると、占い師は綺麗に清算をした。多少、神社仏閣で売られているお守りよりも割高であったのは認めたが、もともと、これはおまけの売り上げだからと悪びれず笑う顔に悪意は無い。
清十郎が、穏やかに笑いながら、結婚が決まった女性のお礼の言葉を伝える。
聞き込みをしてみれば、お守りを叩き返した女性達は、聞き込みに来たブロード、清十郎、誠一に、これ幸いとばかりにお茶を出し、延々と話をし続けた。どうやら話を聞いて欲しかったようであり。
「そういえばある女性からは御礼を伝えて貰いたいと言うのもありました。占いを信じて告白できたそうです」
ああ、そりゃ良かったと微笑む占い師が、悪い人では無かったと、冒険者達は胸を撫で下ろす。
「それでは、わたくしの結婚運など見てもらいたいですわ。とりあえず、良いお方と何時頃出逢えるのか」
微笑むブロードの前に水晶を置くと、占い師はにっこりと微笑返す。
「貴女が思った時期に、思った人と」
それはまるで謎かけのようで。しか。とした日時が出て来ないのが歯がゆいが、そういう物かと納得してしまいそうで、ブロードはあらまあと微笑を深くする。
「自分は、今は教師を生業としているが、どの様な形であれ人を導くのは難しい、上手くいけば本人の努力、失敗したら恨まれる。難しいものです。だが、それでも少しでも多くの人を、うまいこと導いてやれればいい、そう思うんですがどうでしょう」
「導かなくても良いんじゃないかね。その人が良いと思った事が、一番心残りの無い事じゃと思うし」
落ち着いた誠一の言葉に、占い師は悪事は別じゃがなと笑い返す。放免となった占い師に、何となく思うところもあり、もう少し話してもいいかなという気にもなり、誠一は、手でお猪口を持つ格好をしてみせる。
「最近は冷え込みます、良ければ一献いかがですか?」
喜んでと笑う占い師に、微笑んで頷くと、誠一は、占いとは正に、人の気持ちをつまびらかにするものに他ならないと、思うのだった。
一方、返金処理を請け負ったマハは、女性達の集中砲火を浴びていた。
文句の為に文句を言うというか、誰かに気持ちを聞いて貰いたいというか。怒涛のがぶり寄りではあったが、マハは穏やかに笑いかける。
「そんなに怒るものではないのう、笑顔が大事じゃよ。それに占い師の言葉に勇気が出たであろう?『求めよ、さらば与えられん』占いというのは迷いを晴らす勇気を少し与えるものじゃ」
そう言われてみれば、占いをしたその瞬間は、とても気持ちが良かったわと、女性達は返金して貰いながら呟いた。
得たりとばかりに、マハは頷くと、各務に手招きをする。
「各務よ祝福の舞を彼女達に舞ってあげておくれ。『お姉様方に幸あれなのじゃ』」
「お姉様方に幸あれなのじゃ」
マハの言葉を繰り返し、ふわりと女性達の頭上を飛ぶ蝶の羽を持つ妖精に、祝福を、確かに貰ったかのように思った女性達は、とても幸せそうに冒険者ギルドを後にした。
「当たるも、当たらぬも占いというものなのじゃろうな」
蓮が女性達を遠巻きに見ながら呟くと、リフィーティアも軽く肩を竦めた。
「まあな。占いっていうのはちょっとしたきっかけみたいなもんなんだよな。不安に思うからこそ誰かに何か言って欲しいみたいな部分があるし。それで上手くいくかいかないかは本人の努力次第だろ。やって後悔するのとやらないで後悔するのとでは大きく違うからな」
そう、占いで人生が決まる事など無い。決断するのは自分自身なのだから。