小鬼の寺
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■ショートシナリオ
担当:鏑先黒
対応レベル:2〜6lv
難易度:普通
成功報酬:1 G 69 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:10月13日〜10月18日
リプレイ公開日:2004年10月20日
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●オープニング
「困ったことになりました」
そう年老いた村長が、対応に出てきたギルド員に小さく云う。村長の話では、自分の村は小さな村だという。小さな山の麓にあるごく普通の村だ。そして、その山の山腹には、20年ほど前廃村になったやはり小さな村があるという。
「その村には古い寺がありました。むろん、今ではすっかり荒れてはいますが、最近でも猟師が夜を明かす時に一晩の宿として借りることも多かったのです。ですが、先月の初めひとりの木こりが、山から帰ってこないという事件が起こったのです。当然、村の若者が手分けしてその者を探し、その内の二人が寺へと向かいました」
話を聞いていたギルドの受付が首を傾げた。だが、村長は構わずに続ける。
「そこには、10ほどの小鬼がおったのです。小鬼の姿に驚いた二人は慌てて逃げ帰りました」
受付の者が頷いて、話を遮る。
「はい、そのお話は伺っております。確か、十日ほど前に小鬼退治の依頼を受けた冒険者が6名、向かったはずですが彼らに何かありましたか?」
ギルド員の言葉に、村長は応じる。
「彼らは全員死んだらしいのです。というのも、侍さまの一人が小鬼退治に向かった次の日の朝に、村の近くで事切れているのを発見されたのです。‥‥そして残りの方々は二日待ちましたが、誰も帰ってきていません‥‥。そこで再び、冒険者を派遣してもらおうとここに来たのです。正直、行方不明の木こりのことはもう諦めていますが、あんなにも近くに鬼たちがいては、暮らしがたちゆきません」
村長の言葉にギルド員は深く頷く。
「わかりました。小鬼と聞いていたので、こちらにも油断があったようです。相手が強かったのか、不運が重なったのか‥‥。どちらにせよ、次は必ず依頼を果たしましょう。すぐにも冒険者に向かってもらいます」
その言葉に頷いた村長は立ち上がり、ギルドを出た。それを見送って部屋へと戻ったギルド員は、手元に残った侍の遺品を見る。折れた刀と鎧。鎧には刀傷だけではなく焼けた痕もある。
「どちらにせよ、腕のほうも確かな者達に声を掛けてみるか」
そう呟くと、ギルド員は再び部屋を出た。
●リプレイ本文
依頼のあった村へと着いた冒険者達は一泊することを決めると、各々行動を始めた。夜神十夜(ea2160)はいつもの様にナンパをしようとして、鷲尾天斗(ea2445)に嗜められていた。一方、鷹波穂狼(ea4141)は木こりの事を聞き込んでいた。だが、戦いの訓練をしていなかった事が判り、特に怪しいところも無い以外はたいしたことは判らなかった。南天輝(ea2557)も村で廃村の地図を探したが、村人にその場で稚拙な地図を描いてもらった以外は、手に入れることは出来なかった。
翌朝になって、一行は山へと登った。廃村へは道なりに進めばよいので、迷う心配は無い。一行は廃村から少し離れた場所で休憩し、偵察を送ることにした。偵察に行くことを志願したのは、佐々木慶子(ea1497)とレダ・シリウス(ea5930)だ。レダはその羽でパタパタと飛び、慶子は忍び足で村の中へと入っていった。しかし、すぐに二人は戻ってくる。
「寺が焼けてるじゃん」
冒険者達が村へと入ってみるとレダの言葉通り、寺は全焼していた。焼け跡は、入り口の辺りが特に酷く、寺の中には幾つかの死体があった。
「人の死体が3つに小鬼の死体が3つですね」
神楽聖歌(ea5062)が焼け跡に踏み込みながら言う。
「外にも死体だ。服からして僧侶と侍かな」
アイーダ・ノースフィールド(ea6264)の言葉通り、外には野ざらしになっている死体がある。小鬼の死体もひとつ。
「村で死んだ侍を合わせると六人。先にいった冒険者の人数にピッタリだぜ。構成もギルドで聞いた構成と合ってるじゃん」
その穂狼の言葉に輝も同意する。
「ああ、冒険者は全滅と見て間違いないな。だが、肝心の小鬼が何処にいるかだな」
「村の中を探してみる。皆はここにいてくれ」
慶子とレダが再び、偵察に行く。その間、アイーダ達は焼けた寺で待つことになった。輝などは寺と冒険者の遺体をくわしく調べる。
「ギルドで見た侍の鎧の焼け跡は火事でついたのは間違い無いな。問題は何故寺が火事になったかと、冒険者が逃げられなかったかだな‥‥」
輝の言葉に、天斗は首振りつつ遺体に手を合わせる。
「さあな。ともかく、仇は討つさ。南無阿弥陀仏‥‥」
慶子達は静かに、村の中を探り始めた。すると、すぐに小鬼が扉の前に座っている家を見つけた。だが、表以外には入り口は無い。建物自体はボロボロだったが、人が通れそうな穴は一箇所だけあった。しかし、手をついて通るのがやっとで、中に小鬼がいるとすれば見つからずに入るのは難しいだろう。それでも二人は窓や隙間から中を覗き込んで、少しでも情報を手に入れようとした。
やがて、慶子達は皆の元へと戻る。
「村の家にいるじゃん。一匹見張りがいたのじゃ。中には10匹くらいいたのじゃが、木こりは判らなかったのじゃ」
レダの言葉に、慶子は頷いた。木こりの生死は特に注意したのだが、見つからなかった。かといって、居ないと断言も出来なかった。
ともかく、皆移動を開始した。小鬼の家が見える位置まで来ると、慶子の指示で物陰からそっと覗いた。すると、確かに小鬼が一匹退屈そうに座り込んでいる。
「あいつは弓で倒すとして、出来れば外におびき出したいところだな」
天斗の言葉に、アイーダは弓を手にする。
「では、一矢では倒さないようにするわ。そうすれば、仲間を呼ぶでしょう」
その言葉に、穂狼も頷く。
「罠を探る時間は無くなるけど、それがいいじゃん」
アイーダは矢を番えると、小鬼に向かって矢を放つ。矢は狙い通り、小鬼の足に当たる。小鬼は突然の事に驚き、そして喚き声を撒き散らす。同時に、慶子もライトニングサンダーボルトを放ち、レダはサンレーザーを放つ。雷撃と熱線が小鬼を打ちのめす。その頃には家の中が騒がしくなる。アイーダは家の中へ入ろうとする小鬼の背に、再び矢を放つ。
深い傷を負った小鬼はそのまま倒れ動かなくなる。だが、予想に反して、中からは一向に出てくる気配は無い。
「待ち伏せか罠だな」
輝は断言するが、出てこない以上こちらから行くしかない。木こりの生死が判らない以上、打てる手は限られてくる。
「寺の燃え方からいって、入り口で何か仕掛けてくるはずだ。落とし穴とかの跡は無かったしな」
結局、輝と穂狼が最初に家のへと入る事になった。穂狼は木の枝で入り口の地面を突付くが特に地面にも奥に居るはずの小鬼にも反応は無い。二人が中に入ると、家の奥には7体の小鬼の姿があった中の3体は小鬼戦士らしい。見回しても罠らしいものはない。だが、2体7では流石に厳しい。
「来てくれ!」
その声に応じて、天斗、聖歌、十夜の3人が中へと入る。7対5では小鬼戦士が混じっていても、余裕のはずだ。しかし、その時になって入り口を塞ぐ様に、木材と藁束が落ちてくる。正確には、中天井がそのまま落ちたのだ。罠として準備してあったのだろう、藁束の幾つかには既に炎に包まれていた。火を消すほうに集中しようとすると、背後から攻撃が来るということだろう。同時に小鬼の内、3体が壊れた壁から外に出て行った。
「なるほどな、これをいきなりやられると苦しかったが‥‥。だが、とりあえず中の奴等を全滅させてから、逃げる算段をするか」
十夜の言葉に、天斗も頷く。
「だな、外と分断されたのは痛いが‥‥、中が少ないよりはマシだろう。上にもまだいるみたいだしな。小鬼戦士は確かバーストアタックを使った気をつけろ」
「外に何匹か回ったぜ。気をつけろ、裏手の方だ」
穂狼が、外にいるアイーダ達に注意を促す。戦いが始まる。上から更に降りてきた小鬼を含め6匹。十夜達五人でならば、小鬼戦士が加わっていようとも、さほど苦戦する相手では無いはずだ。
「油断はするな‥‥」
十夜が言葉に出すまでも無く、冒険者達に油断は無い。十夜の前には二匹の小鬼がいる。しかし小鬼の技量は十夜に遠く及ばない。
「我は鬼道を征くが一騎・・・夜神十夜。恨みは無いが、消えて貰うぞ」
そういうと、十夜は小太刀を握り、小鬼に切りかかる。血飛沫が上がり、小鬼が悲鳴を上げる。しかも十夜は間髪を入れず続けざまに切りかかった。連続した攻撃に小鬼も手に持った斧で受けようとするのだが、無駄なあがきとなっている。二条の傷を受け、小鬼は完全に及び腰だ。
聖歌はその身にオーラを纏って駆け出した。
「私の刀、受けてみよ!」
十夜の横では、聖歌が掛け声とともに小鬼に打ちかかる。小鬼はその剣を受けようと凝視するが、聖歌の刀筋は幻惑するように動く。小鬼は聖歌の一撃をまともに受け、叫び声をあげる。オーラ魔法で強化された刀は小鬼に痛打を与える。
一方、輝は小鬼戦士へと向かうと、一気に距離を詰める。そして間合いに入った瞬間、刀を鞘から抜くと、一気に小鬼戦士の手首に叩きつける。刀のあまりの速さに、小鬼戦士は反応することも出来ない。
「攻撃に関しては俺は意外と器用だぜ、俺の剣が見えるかな」
笑みを見せて小鬼戦士を威圧する。散々に斬り付けられた小鬼たちは、逃げたそうなそぶりをするが、壁の穴は小鬼ですら屈まねば通れない大きさだ。背を向けて一目散というわけにはいかない。
穂狼は残った小鬼戦士の前に進み出る。その手にもった一刀が、小鬼戦士の胴を切り裂き同時に繰り出された小太刀が小鬼戦士の息の根を止めた。
次々と倒れていく仲間たちにあせった小鬼戦士は、手にした槍で天斗に付きかかる天斗は十手で受け止めると、すかさず刀で切り返す。ざっくりと、胴を切り裂かれた小鬼戦士は背を向けて逃げ出したが、天斗は更に踏み込んでとどめをさす。
「俺の名は外道を狩る双刀の猛禽、鷲尾天斗。あの世に逝く餞別にこの名を持って逝きな」
五人の攻撃に小鬼たちは一匹も逃げる事が出来ず、床に倒れることとなった。だが、その時には入り口の火勢は手がつけられないものになっていた。
「さて、入り口は駄目だな。とすると、この裂け目からだが‥‥」
穂狼が屈んで見るが、ジャイアントでは手をついても通れそうに無い。
「それよりも、外のアイーダ達だな。無事ならいいが」
「外に何匹か回ったぜ。気をつけろ、裏手の方だ」
先ほどの穂狼の声を聞いたアイーダ達は、裏手に回ろうとする。すると、表に回ってこようとしていた小鬼と鉢合わせする。三体ともただの小鬼の様だったが、弓や魔法を得意とする三人だけでは戦いづらい数ではある。その中で、慶子が無言で前に出て野太刀を抜き放つ。
「援護は任せるのじゃ」
レダはそう言って高く飛び上がると、サンレーザーの為に集中を始める。
「助かる」
アイーダも短く慶子に礼を言って、弓に矢をつがえる。二人とも接近されては、慶子以上に苦しい。慶子は野太刀で小鬼に切りかかる。小鬼は手斧でそれを受けようとするが、慶子の一撃は小鬼に受け止められるものでは無かった。手ごたえとともに、小鬼が後ろへと叩き飛ばされる。小鬼はなんとか立ち上がったが、傷は深くとても戦えそうにはない。アイーダは二本の矢を番えると、残る二匹の小鬼にそれぞれ矢を放つ。矢は狙ったとおり、二匹の小鬼へと突き刺さる。
傷ついた小鬼は慶子へと切りかかるが、傷つき動きが鈍くなった攻撃を慶子は易々とかわす。そこにレダがサンレーザーを放つ。集中された太陽光線が小鬼をさらに傷つける。三匹の小鬼は背を向けて逃げ出そうとするが、慶子はそれを許さず背後から切りかかった。小鬼は呻き声とともに地に伏した。アイーダも背を向けた小鬼の背に矢を放つ。よく狙われた一撃は、小鬼の背に深く突き立った。
それでも逃げようとする小鬼には、更にサンレーザーや矢、慶子のライトニングサンダーボルトが放たれ、逃がすことは無かった。
十夜達が小鬼の持っていた斧などで、穴を広げていると、外から声が掛かった。
「聖歌達かい?」
「慶子さん?」
「ええ、外に出てきたのは倒したから。そっちは?」
「こっちも全部倒したから、後は出るだけ」
互いの無事を知り、双方の言葉に笑みが混じる。
結局、廃村の家が一軒焼失したが、それ以上の被害は無かった。冒険者達は小鬼たちを全滅した事を告げ、依頼を完了した。全滅させたことで、特別に報酬が加えられる。木こりは結局見つからなかったが、小鬼がいなくなった山を村人たちが探すそうだ。彼が見つかるといいと思いながら、冒険者たちは村を後にした。