●リプレイ本文
何処にでもあるようなそんな平凡な村。ある晴れた日の午後、その村の入り口に冒険者達の姿が見えた。
早速、依頼人の家に向かう。扉をノックすると中からひょろっと背の高い男が出てきた。
「はい、どちら様ですか?」
「依頼を受けさせていただいたものです」
風御飛沫(ea9272)がそう男に告げる。
「ああ、よく来てくださいました。ささ、どうぞ中へ」
男はそういうと冒険者達を家の中へと招き入れた。
「早速ですが、ブレスレットを落した具体的な場所を教えてくださいますか?」
ミオ・ストール(ea4327)がすすめられた椅子に座ると男に聞いた。
「具体的な場所ですか‥‥おそらくですが池で釣りをしていた場所に落ちていると思います。森を抜けたときにはもう無かったので」
冒険者達にお茶を出しながら男は答えた。
「その日通った道を教えてくれるかな? あと、何か特徴的な岩とか、植物だとかがあればそれも教えてくれるかな?」
男の答えを聞き、梁暁黒(ea5575)が続いて質問する。
「えっと、通った道はこの村の西からのびている道を行くと森の中を通るんですが、その森の中で奥に続いてる獣道を行くと池に着きます。獣道は人の背丈ほどの岩の横にありますので分かると思います。釣りをしてた場所は池のそばの同じくらいの大きさの三つの岩が並んでいる所です」
「ブレスレットの形状をもうちっと詳しく教えてくれるか」
フードを被り後ろの方で控えていたレックス・エウカリス(ea8893)がサヤ・シェルナーグ(ea1894)に通訳しながら目的のブレスレットについて聞く。
「銀色で全体に花の模様が彫りこんでありました。‥‥あっ、もう日が暮れ始めましたね」
男の言葉どおり村は夕日で染まり始めていた。
「今日のところは探しに行くのはやめてウチに泊まっていってください。狭いですがなんとかなりますから」
冒険者達はその好意に甘え、泊まっていくことにした。
翌日、冒険者達が男の家を出発しようとしていた。
「ぜったい、ぜーったい見つけるからね♪」
サヤがそう言うがラテン語だったので男は分からなかったがレックスがそれを通訳して男に伝えた。
「ありがとうございます。どうかよろしくお願いします」
男はサヤの言葉に感謝し、改めて冒険者達に頭を下げた。
男の家を出て、ブレスレットを落としたと思われる池を目指していた。
「ここが依頼主が言っていた目印でござるな」
山岡忠信(ea9436)が男が言っていた岩を見つけるとその横にある獣道を進んでいき、仲間達もその後を追う。
獣道に苦労しながらしばらく進むと池が見えてきた。
池の周りには植物が生え、所々岩がある。冒険者達は男が言ったように三つの岩が並んでいる所を探し始めた。
三つの岩は獣道からそう離れていない所にあった。
早速、ブレスレットの捜索を始める。
ミオはグリーンワードを唱えると、草むら周辺に落ちたかどうか聞いてみた。
「最近あなた達の上に金属製の輪が落ちませんでしたか?」
「落ちてきた」
草むらの答えを聞くと冒険者達はその周辺を探し始めた。
サヤはクレバスセンサーを使って穴や岩の割れ目の有無を確認しながらじっくりと探している。
レックスはその横で杖で草をかき分けながら地道に探している。
その周りで飛沫と暁黒の二人が周囲を警戒しながら探し、忠信は皆が目に届くよう岩の上で警戒している。
「ん?」
捜索を開始してから少しすると忠信が森の奥にゴブリンの影が見えた。すぐに皆に知らせ、皆は態勢を整える。
四匹のゴブリンの姿が見える。まだこちらには気付いていないようだ。
レックスにバーニングソードをかけてもらった忠信はゴブリンに接近するといきなりのことに戸惑っているゴブリンを斬りつける。
「大地に住まう精霊達よ、見えざる拳で我が敵を打て‥‥グラビティーキャノン!」
続いて忠信が駆け出すのと同時に唱え始めていたミオのグラビティーキャノンが襲い止めを刺し、その直線上にいた二匹を巻き込み転倒させる。
「これ以上いかせません」
飛沫は大ガマを呼び出して壁にして、残った一匹の攻撃が後衛に行かないようにしつつ自分もダガーで切りつける。
転倒していたゴブリンが起き上がるとほぼ同時に暁黒の二連撃が炸裂しゴブリンは吹き飛び息絶える。
「そんな攻撃当たらないよ!」
暁黒が起き上がってきたもう一匹のゴブリンの攻撃をかわしながら叫ぶと、側面に回り込みながら蹴りを放つ。ゴブリンが怯んだところで殴り飛ばし止めを刺す。
同じ頃、飛沫が相手していたゴブリンの背後から忠信が切り捨てた。
「ふむ、持ってないでござるな」
倒したゴブリンの持ち物を探してみたがそれらしいブレスレットは持っていなかった。
「こっちも持ってないよ」
暁黒もゴブリンの懐を探ってみたが持っていなかった。
ゴブリンを退け捜索を再開する冒険者達。
日も暮れ始め、そろそろランタンの準備を始めようかと思い始めた頃、池のすぐそばで探していたサヤが池のほとりで鈍く光るものを見つけた。
それは少し汚れてはいたが確かに花の模様がある銀色のブレスレットだった。
冒険者達はそのブレスレットを持って依頼人の待つ村へと戻っていった。
日が沈み暗くなった頃、村の入り口では依頼人の男が待っていた。
「どうですか? 見つかりましたか?」
男は冒険者達を見つけると駆け寄り聞いてきた。
「ブレスレット、これからはもっと大切にしてくださいね。想い出と一緒にお母様の想いもいつもあなたの傍にいますわ」
ミオはそう言いながら男に見つけてきたブレスレットを渡した。
男はブレスレットを胸に抱きしめると涙を流しながら頷いた。
「襲われたとはいえ大事な物を落とすのは隙があるからでござる。二度と無くさぬよう注意するでござるよ」
「はい、二度と落とさないようにします。皆さんお疲れでしょう。良かったらもう一晩泊まっていってください」
忠信の言葉に男は泣き止むとその言葉を真摯に受け止め、冒険者達を家へと案内する。
冒険者達はその言葉に甘え男の家へと入っていった。