館に響く声

■ショートシナリオ


担当:神楽

対応レベル:1〜3lv

難易度:普通

成功報酬:0 G 52 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:09月19日〜09月24日

リプレイ公開日:2004年09月29日

●オープニング

「依頼するのはここでいいんですか?」
 冒険者ギルドの受付にきたのは線の細い壮年の男。
「はい、ここでいいんですよ。どうしましたか」
 受付が尋ねると男は話し出した。
 男はある村の代表で依頼しに来たという。その村は普通の村で特徴といえば村はずれの森に小さな館があるくらいのもの。
 館はすでに廃墟になっていて、出入り禁止にしているが村の子供達がよく忍び込んでしまう。
 事件はこの館で起こった。夜中、子供達が館に忍び込んだ時に複数の人影を見たというのだ。子供達は怖くなり家に逃げ帰り親に館で見たことを泣きながら伝えた。
 親達は子供に館に忍び込んだことを叱ったあと寝かしつけ、次の日に館を調べることしその日は眠りについた。
 次の日の昼、親達が館に行ってみるとそこは子供達が忍び込んだ後はあるが他には人がいたような形跡はなかった。幻覚だったということでこの話は終わるはずだった。
 数日後、今度は若者が動く人影に出会ったというのだ。村のはずれの森に木の実を採りにいっていたが、友人達と飯を食べる約束を思い出し、急いで村に帰ろうと近道するために館の壊れた壁の前を通り過ぎようとしたときにそれと出会った。
 それは、体の所々が腐り落ちていていきなり襲い掛かってきた。若者は悲鳴を上げ村に転がるように逃げ帰り、村人達にそのことを伝えた。
 今度は幻覚じゃない。その日から扉を閉め家の中で恐怖に震える日々を村人達は送っている。
「お願いです。いつ館から村にやってくるか心配で夜も眠れません。化け物を退治してください」
 男が真剣な目で言う。
「わかりました。依頼書を張り出しておきます」
 受付は概要を書きながら答えた。
「どうかよろしくお願いします」
 そう言うと男は冒険者ギルドを出て行った。

●今回の参加者

 ea1382 シュヴェルヴァー・ヒューペリオン(28歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea3245 ギリアム・バルセイド(32歳・♂・ファイター・ジャイアント・イスパニア王国)
 ea3839 ノエル・シドレー(20歳・♀・クレリック・エルフ・イギリス王国)
 ea5876 ギルス・シャハウ(29歳・♂・クレリック・シフール・イギリス王国)
 ea6862 北条 彩(34歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea6954 翼 天翔(33歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)

●リプレイ本文

●準備
 その村はまだ昼間だというのに閑散としている。戸も窓も締め切って外には誰も出歩いてはいない。
 冒険者達はまずは依頼者の家に挨拶に行くことにした。戸を叩くと少し戸が開き、その間から青白い顔の男がこちらを窺っている。
「あなた達は、誰ですか?」
 こちらを探るように見ながら、小さな声で聞いてきた。
「俺達は依頼を受けた者だ」
 ギリアム・バルセイド(ea3245)が、男に向かいそう言う。
「おお、貴方達が‥‥さ、中へどうぞ」
 男はそう言うと冒険者達を中へ招きいれた。
「よく来てくれました。これからすぐ向かうのですか?」
「いや、少し用意がしたい。火窯があれば貸していただきたい‥‥なければ釜戸でかまわないが」
 男が聞くとシュヴェルヴァー・ヒューペリオン(ea1382)は装備の点検や軽い修繕をしたいという。
「火窯は無理ですが、釜戸なら私の家のをどうぞ」
「ありがとう、あんたらもそれぞれ装備を出してくれ‥‥軽く打ち直しておく」
 男に礼を言うとシュヴェルヴァーは振り返り皆に装備を出すように言う。
 冒険者達はシュヴェルヴァーが装備の修繕をしている間に、それぞれ準備をしつつ英気を養う。
「では行きましょうか」
 夕暮れ時、装備の修繕も済み準備が整うと、ノエル・シドレー(ea3839)は微笑みながら皆を促す。
「持てない荷物は貸してくれ、俺の馬に載せるから」
 シュヴェルヴァーがそう言うとギルス・シャハウ(ea5876)が自分の荷物を渡す。
「わ〜い、楽ちん楽ちん」
 ギルスは皆の周りを飛び回りながら嬉しそうに言う。
「ちょっとまって!」
 さて、出発しようという時に村の入り口の方から呼び止められる。振り返るとそこには翼天翔(ea6954)がこちらに駆けてくるところだった。
「遅れてごめんなさい。依頼は受けたけど、御客さんがタフで出遅れたわ。‥‥さて、行きましょうか。おかげで気力は充実してるしね」
 軽く息を整えながら遅れたことを謝る天翔。
「では、全員そろった事ですし向かいましょうか」
 北条彩(ea6862)が皆を促す。
「どうかよろしくお願いします」
 館へ向かおうとする冒険者達に男は頭を下げた。
「大丈夫、僕達に任せて下さいね」
 ギルスは男に安心するよう言うと、冒険者達は歩き出した。

●館で
 村はずれの森の中を歩いていると館が見えてきた。
 館に着くとギルスは館の周りを飛びながら、目撃のあった所などでデティクトアンデットを唱えた。
 すると目撃された壊れた壁のすぐ奥にある部屋に三体いることが分かる。この他にはいない様だ。
 皆の所まで戻ると発見したことを報告し、壊れた壁の前まで皆を誘導する。
 奥に進む冒険者達。入ったすぐに部屋の入り口がある。
「いる、いる、いるよ〜」
 先行していたギルスがデティクトアンデットを再度使い、部屋の奥を指差しながら小声で知らせてくる。
 入り口の前で天翔はオーラパワーを自らの手足を使い、ノエルがシュヴェルヴァー、ギリアム、彩、天翔の前衛四人にグットラックをかける。他の皆も戦闘態勢をとり、頷きあう。
 部屋に踏み込むと、部屋は広くはなく瓦礫が散乱している。その部屋の奥に動く影が三つ、ズゥンビだ。こちらにゆっくりと近づいてくる。
 ズゥンビが向かってくると前衛四人は駆け出し、ノエルは魔法の詠唱に入る。ギルスは後方上空で待機しながら、リカバーの詠唱をして怪我人に備える。
「私の名は北条彩! 我が主君の命により、あなた達を討ちに参上しました!」
 そう叫ぶと近くのズゥンビに向かい駆け出しダブルアタックを叩き込む。ズゥンビは一瞬動きを止めるが反撃してくる。
「そんな動きでは私を捕らえることはできませんよ」
 彩は言いながら攻撃を避ける。
「ズゥンビ如きに遅れは取らん!」
 彩を攻撃し動きが止まっているズゥンビにギリアムが斬りつける。斬りつけられ動きの止まったズゥンビにノエルのピュアリファイが命中しズゥンビが白い光に包まれ消滅する。
「腐った顔を近づけないでくれる? 臭い男は嫌われるわよ?」
 天翔は冗談交じりにズゥンビ言いながらオーラを込めたその拳や足での4連撃し吹き飛ばす。ズゥンビが起き上がる前に間合いを取り構える。
「早くきなさい、最後まで相手してあげるから」
 色っぽく言い微笑みながら手招きをする。
「亡者が偉そうに生者の領域を闊歩するな。昼にも夜にも、お前達の寝床など在りはしない」
 シュヴェルヴァーはそう言い捨てるとズゥンビの首に狙いを定め攻撃し、頭を切り落とすことには成功するがズゥンビの動きは止まらない。
「くっ、ならば!」
 今度は手数で何とかしようと攻撃するが倒しきる事はできない。そこにズゥンビの一撃が襲い掛かりシュヴェルヴァーは傷を負ってしまう。
「神様がじ〜っと見ていますよ。頑張ってくださいね」
 天井付近にいたギルスが降りてきて励ましながらリカバーをシュヴェルヴァーにかける。
「こっちです!」
 彩がシュヴェルヴァーに向かおうとするズゥンビに背後からダブルアタックをくらわせる。
「とどめだ!」
 傷の癒えたシュヴェルヴァーがレイピアで一撃を加え倒す。
 彩が周りを見渡すと天翔がその蹴りでズゥンビを倒したところだった。
「終わりみたいだな」
「‥‥うん、もう反応はないよ〜」
 ギリアムが言うとギルスはデティクトアンデットで確認し返した。
 すべて倒したことを確認するとノエルが跪きズゥンビたちが安らかに眠れるよう祈りを捧げる。
「主よ、彼らの御霊に安らぎが訪れん事を‥‥」
「じゃあ、村に戻るか」
 ノエルが祈り終わったのを確認するとギリアムが言い、皆は館から出て村に向かう。

●帰還
「あーもぅ、服も体も臭くなっちゃったわ。帰りに水浴びか湯浴みでもしたいくらいだわ‥‥」
 ちょっと苦笑混じりの口調でそう言いながら歩く天翔。そう言っているうちに村に着いた。
 村に戻り、依頼者の家に行くと依頼者と村人達が家の前にいる。
「おお、戻られましたか。で、無事退治できましたか?」
 男は冒険者達の姿を見つけるなり駆け寄ってきてそう聞いてきた。
 無事退治したことを伝えると依頼者は頭を下げ礼をいうと村人達の方へ駆け出そうとする。
「ちょっと聞きたいんだけど、この辺りで水浴びできる所って知らないかしら?」
 天翔が聞くとそれなら依頼者の家の裏にある井戸を使ってくれればいいという。
「男性陣で誰か一緒に行くかしら?」
 天翔は井戸に向かう前に妖艶な笑みで聞いてくる。男性陣は顔を赤くしながら首を横に振る。それを見るとクスッと笑い井戸に向かう天翔。
「神様はいつでも、あなた達をじ〜っと見守っていますからね。じ〜っと」
 ギルスはいつの間にか村の子供達を集めニッコリ笑いながらそう言っている。
 村人達の喜びの声が聞こえてくる。村には本来の活気がすぐに戻ってくるだろう。
 こうして今回の依頼は終了したのだった。