月夜に舞う影

■ショートシナリオ


担当:神楽

対応レベル:1〜3lv

難易度:普通

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:10月17日〜10月22日

リプレイ公開日:2004年10月26日

●オープニング

 季節の花が咲き乱れる花畑。見渡す限り一面に広がっている。
 ここは村の名所となっている。月の光に花が照らされ幻想的な風景が見られることで人気のある場所だ。
 夜中、名所を訪れていた者達が全て帰り、村人達も寝静まった頃、花畑の中を歩く男がいた。
「ふぅ、異常はないな‥‥」
 男は、この花畑の管理を任されている壮年の男だった。
 毎夜誰もいなくなった花畑の見回りをし異常がないか確かめるのが日課で、今日もいつものように見回りをしていた。
「このくらいでいいか‥‥」
 呟き帰ろうとする男。すると何処からか何か鳴き声のようなものが聞こえてくる。
「‥‥ョン‥‥ンチョン‥‥チョンチョン、チョンチョン」
 それは次第に大きくなってきて今やはっきりと聞こえる。
 男が振り向くとそこには複数の顔が浮かんでいるように見えた。
 目を凝らし見てみるとそれは顔によく似た形の胴体を持ち毒キノコの様な極彩色の羽を持つ不気味で巨大な蝶だった。
 男が恐怖のあまり立ちすくんでいると巨大な蝶が飛んできてその腕に噛み付き血を吸い始める。
 その痛みに我に返ると男は滅茶苦茶に腕を振って蝶を振り払い、花畑から村へ逃げ帰った。

「これが数日前にあったことだ。今回はこの不気味な蝶、チョンチョン退治の依頼ってことだ」
 冒険者ギルドの親父が冒険者達に今回の依頼の説明をしていく。
「村は花畑目当ての旅人達で賑わっている。花畑の夜の立ち入りを禁止してるから幸いまだ被害は管理人の男だけなんだが、名物は月夜の花畑の風景なんでこのままじゃ誰も来なくなっちまうってことで、今回依頼がきたんだ」
 親父は冒険者達の顔を見ながら最後に一言加える。
「ま、気合入れて村人達のためにがんばって来い」

●今回の参加者

 ea1930 ヴァルト・グラベセン(34歳・♂・ウィザード・人間・ロシア王国)
 ea3418 ブラッフォード・ブラフォード(37歳・♂・ナイト・ドワーフ・イギリス王国)
 ea5397 リマ・アティール(26歳・♀・僧侶・人間・インドゥーラ国)
 ea5575 梁 暁黒(34歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)
 ea6647 劉 蒼龍(32歳・♂・武道家・シフール・華仙教大国)
 ea7197 緋芽 佐祐李(33歳・♀・忍者・ジャイアント・ジャパン)

●リプレイ本文

 花畑を見に来る旅人達で賑わう村。
 だが、事件のせいで旅人の数が日々減ってきている。
 そんな村の入り口に冒険者達の姿が見えた。早速、花畑の管理人の家に向かう冒険者達。
「ああ、冒険者の皆さんですね。よく来てくださいました。さ、中へどうぞ」
 出てきたのは壮年の男、襲われた管理人本人だ。
「早速だが花畑のどの辺りで現れて、数はどれくらいだったか。後、時間は何時頃だったか教えてもらえるか」
 勧められ椅子に座ったヴァルト・グラベセン(ea1930)が管理人に聞く。
「無理は言わない。覚えている範囲で結構だ」
 ヴァルトは管理人が考え込み始めたの見て補足する。
「はい。確かあれは、いつも通り花畑を見回って帰ろうと思ったときですから‥‥花畑の奥の方にある森の近くでしょうか。数は‥‥二匹‥‥いや、三匹でした。時間的には正確には分かりませんが旅人達が皆帰った後でしたから‥‥日付は変わっていたと思います」
 管理人はあの夜の出来事を思い出しながら質問に答えた。
 冒険者達は話を聞き終わると花畑の下見をすることにし管理人の家を出ようとする。
「あと、夜になるまで寝ておきたいんだけど、寝れそうな所はあるのかな?」
 梁暁黒(ea5575)は家を出る前に仮眠を取るための場所があるか管理人に尋ねる。
「それでしたら、花畑のすぐ側に花畑を見に来た人が仮眠をとるための小屋がありますから、そこを使ってください」
 管理人はそう言い、小屋の場所を教える。今は夜の花畑への立ち入りが禁止されいるので使われていないらしい。
「ああ、あと明かり借りれるか?」
 一応自分も明かりを持っておこうかと思い劉蒼龍(ea6647)が尋ねると小屋に常備されているものがあるので、それを貸してくれるという。
「万が一という事もありますから、今日花畑に行く人達が居るなら事情を説明して引き止めておいてもらえませんか?」
 ブラッフォード・ブラフォード(ea3418)が頼み込むと、管理人は快く承諾し引き止めておくことを約束した。
 冒険者達は管理人に礼を言うと改めて花畑に向かった。

 花畑にやってきた冒険者達。
「夜の花畑にチョンチョンですか‥‥出来れば会いたくない相手ですね」
 リマ・アティール(ea5397)は憂鬱そうに呟く。
「やはり区画整理はされて無いか。戦闘行為をすれば荒れるが可能な限り最小限の被害で済ますようにしないと、名所が台無しになるな」
 ブラッフォードは花畑を見回しながら呟く。
 緋芽佐祐李(ea7197)はチョンチョンが出た場所の周辺を見渡すと花が生えていない野原のような場所を見つける。佐祐李は上空を飛んでいた蒼龍を手招きし呼ぶとシフール語でなにやら伝える。
「お〜い、佐祐李さんが戦いやすいところを見つけたってよ」
 蒼龍は花畑を下見していた他の仲間達の元へ行くと伝えられたことを通訳する。蒼龍が指差す方を見ると佐祐李が微笑みながら手を振っている。
 その場所は適度に広く戦うのには都合がよさそうなのでその場所で戦闘することに決めた冒険者達は近くの小屋に戻り、夜の戦いに備えて仮眠をとることにした。
 やがて、すっかり暗くなり空に月がのぼり花畑を照し結構明るい。冒険者達は花畑に出て戦闘準備を始めた。
 佐祐李は、灯りを近くの木の枝に吊るすと持って来た強烈な匂いの保存食をチョンチョンを誘きよせるために置いておく。
「さて、これで少しは楽になるだろう」
 そう言いながらヴァルトは蒼龍の足と佐祐李の武器にバーニングソードを付与し、チョンチョンが現れるのを待つ。
 しばらくすると鳴き声と共にチョンチョンがその姿を現す。
 人の顔によく似た胴体を持つ巨大で不気味な蝶。全部で三匹。
「ふむ、これはたしかに不気味な面容をしている」
「大した事ないな。俺がぱっぱっぱ〜〜〜っと退治してやるぜ!」
 ヴァルトは感心したかのように呟き、蒼龍はチョンチョンの姿が見えると啖呵を切り、一匹に向かい飛んでいき蹴り飛ばし、それを合図に冒険者達が動き出す。
 ブラッフォードに向かいチョンチョンが襲い掛かってくる。噛み付こうとするチョンチョンをロングソードで受け止めるブラッフォード、そのまま押し返すと斬りつける。チョンチョンは斬りつけられたがそのまま襲い掛かってくる。
「くっ」
 隙をつかれ腕を噛まれるがとっさに振り払う。しかし傷を負ってしまう。
「敵はあまり強くはありませんが、油断なさらないように」
 リマがすかさずリカバーで回復しながら自分への戒めも込めてブラッフォードへ言う。
 その言葉に頷くとブラッフォードはチョンチョンにロングソードを振り下ろし真っ二つにする。
 蒼龍が空中でチョンチョンにバーニングソードを付与した足で蹴りを放ち弾き飛ばすとリマがホーリーを放ちチョンチョンが白く淡い光に包まれる。
「食らえ!! 今日の必殺技『地龍昇天蹴』」
 ホーリーをくらい動きの止まったチョンチョンに蒼龍が叫びながらストライクを使用し下から上に向けて蹴り上げると、チョンチョンは力尽き地面に落下する。
 残りの一匹を佐祐李がバーニングソードかけてもらったトライデントで叩き落すと暁黒が犬嗅拳を炸裂させ、佐祐李の方へ蹴り飛ばす。飛んできたチョンチョンをトライデントで突き刺し止めを刺す。
「これで終わりだね」
 暁黒が周りを見渡すと仲間達がそれぞれ倒し終わったところだった。戦闘が終わり少し花畑が荒れてしまっているが大したことはない。
「なあ、佐祐李さんが一応、巣や卵があるかもしれないから周辺を探索しとこうってさ」
 仲間達がそう言った蒼龍の方を見ると佐祐李がチョンチョンが現れた方を微笑みながら指差している。
 冒険者達はその提案を受け入れ周辺を探索したが幸いまだ卵は産み付けておらず冒険者達の心配は杞憂に終わった。
「うわぁ〜‥‥」
 暁黒が花畑を改めて見て感嘆する。
 それは幻想的な光景だった。色とりどりの花が夜露に濡れ、月の光が反射してキラキラと輝いている。
「これは、皆が見に来るのも分かるな‥‥」
 ヴァルトがその光景に目を奪われながら呟くと仲間達も頷く。
 冒険者達は花畑を荒らさずに済んだことを喜びつつ、いつまでもその光景を見つめていた。