【五条の布令】京都見廻組募集 猛鳥来襲

■ショートシナリオ


担当:からた狐

対応レベル:7〜13lv

難易度:普通

成功報酬:4 G 55 C

参加人数:6人

サポート参加人数:4人

冒険期間:05月05日〜05月10日

リプレイ公開日:2006年05月13日

●オープニング

 京都守護職・平織虎長が暗殺されて早幾日。空位だった守護職もようやく後任が決まる。
 新しく守護職となった五条の宮は若いながらも才覚に優れ、神皇家の血筋と申し分無く。祖父の代で色々あった為に今まで権力とは無縁でいたが、それが却って源徳・平織・藤豊の三大権力に属さない全くの中立という立場をもたらした。
 これまで平織方優勢で動いてきた‥‥動かされてきた都市警備体制もそれにより真白の状態になり。加えて、着任早々、冒険者たちも動かしての取り締まりに動き出し、治安回復に向けて力を尽くしている。
 
「にしても‥‥。着任早々えらい勢いで仕事されてるよな。疲れないのかね」
 賛美というより呆れた口調で、京都見廻組・占部季武はそう評価した。
「京都がそれだけ大変だという事なんだろうね。檄も飛んできたし、俺らもがんばらねぇと。
 という事で、人材募集だ。こうも張り切られるとなかなかあちこちに手が回らなくなってな。入りたい奴は言ってくれ。そいでもって今回の件で様子見て推挙させてもらうさ」
 あっさりと態度を切り替えると、季武は揃った面子を見遣る。
「そいで今回の仕事だけどな。京都は混乱が激しく、それに乗じていろんな悪党が横行している。そん中に鳥を使って子供を攫う奴がいるんだ」
 鳥と云っても雀や鶏のような可愛い物ではない。大きさはジャイアントすら上回り、空を自在に駆け抜け鋭い鉤爪で人すらも容易く餌食にする巨鳥・大白鷲。
 山奥に生息するこの生き物を飼い馴らし、空から狙って捕まえた子供をどこか遠くで売り飛ばす。そいつはそうやって金を稼いでいる。
「以前に見つけて追いかけた事があるんだが、使い手自体は普通の男だ。逃げ足は速いけどな。が、そいつを捕まえようとしたら、その大白鷲に邪魔をされてな」
 そのときに懲りたか姿を眩ましていたが、春になってまたぞろ動き出したという。
 襲撃された村や町から鑑みて。その中心にある、とある人里離れて連なる山々。そのどこかに隠れ住んでるだろう事は推測つくが、詳しい場所の特定には至ってない。 
「大体の居場所は分かってるし、大白鷲は目立つからまぁ注意して探せばすぐに見つけられるだろうが。子供が攫われた際に大白鷲の後を追う事が出来ればすぐに居場所も分かるんだろうが。向こうも慣れたもんで、大きく迂回しながら飛び回った挙句に、住処に近付くと低く飛んで戻る」
 あちこち飛び回る間に追っ手を引き離し。低く飛べば物陰に隠れやすくなり、どこに降りたか分かりづらくなる。
「すでに被害は出ている。攫われた子供は主に乳幼児だ。すぐに売り飛ばされ、下手すりゃその場で鳥の餌だ。‥‥取り戻せねぇのは悔しいが、これ以上、可哀想な親子を作らないよう、尽力あるのみだ」
 言って、季武は力強く拳を握った。

●今回の参加者

 ea1966 物部 義護(35歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea2630 月代 憐慈(36歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea3220 九十九 嵐童(33歳・♂・忍者・パラ・ジャパン)
 ea9150 神木 秋緒(28歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 eb0451 レベッカ・オルガノン(31歳・♀・ジプシー・人間・エジプト)
 eb3824 備前 響耶(38歳・♂・浪人・人間・ジャパン)

●サポート参加者

マナウス・ドラッケン(ea0021)/ 鷲尾 天斗(ea2445)/ 逢莉笛 鈴那(ea6065)/ リノルディア・カインハーツ(eb0862

●リプレイ本文

 京の都の闇深く。大悪党の影に隠れて小悪党がこすからい知恵を巡らせる。 
「よりにもよって赤子を狙うなんて‥‥。そんな奴、一刻も早くひっ捕まえて裁きの場に叩き込んでやるわ」
 一見冷静を装いながらも、京都見廻組の神木秋緒(ea9150)は殺気立った気配を振りまいている。その声にも此度の一件の思いが込められていた。
「そうだね。それに新人さんもたくさん入るみたいだし、私も張り切らなきゃ!」
「正確にはまだ希望者だけどな」
 今回は見廻組四名に、入隊希望者が三名と言う構成。気合を入れている同じく見廻組のレベッカ・オルガノン(eb0451)に、占部季武と備前響耶(eb3824)が軽く笑った。
「そういう事だ。よろしく頼む」
 物部義護(ea1966)が頭を下げる。
「しかし、大白鷲を使って人攫いか。それも二匹。‥‥人に懐くものなのだな。それだけ調教出来るなら真っ当に生きる道もあったろうに」
「卵の頃から飼うとかしてたんだろ。それにしても大したもんだがな」
 感心と残念をあわせて響耶が低く唸ると、季武もそれに同意して頷く。
 大白鷲、洋名・ホワイトイーグル。野生で出会えば人間にも襲い掛かる獰猛な鳥だ。それを飼い主から離れてもきちんと細かい命令まで聞かせるよう飼い慣らせたのなら、確かに大したものだろう。
「最善を尽くす。その為には鷲を見つけるのが先と言いたいが‥‥山中の捕縛劇は場慣れしてないこちらには最悪の環境だな」
「それでも、見逃す訳にはいかんだろ」
 少しだけ広げた扇を音を立てて閉ざしながら、月代憐慈(ea2630)が眉を顰める。季武が何でもない事のように言ってのけると、扇を広げて同意するように口元を隠した。
 その様を見て、九十九嵐童(ea3220)も軽い笑みを作っていたが、ふと思い立って腕を組む。
「それにしても、五条の宮さまの動きは素早いな。市井にとってはありがたい事だが、何かを焦っているようにも見える」
「そういう話はよく耳にするな。だが、功を焦っているのなら自分たちが功を立てて、その焦りを掻き消せばいい。それだけの事」
 不敵に響耶が笑う。
「そういう事か。まぁ、受けた依頼はきっちりこなさせてもらうがな」
 それを見た嵐童も、納得したように頷いていた。

「攫われた子の行方を捜してもらったけど、手がかりなし。やっぱり一朝一夕じゃ情報も集まらないかぁ〜」
 がくりと肩を落として、レベッカは告げる。
 露見すれば確実にお縄になる行為。関係者はそう簡単に口を割らぬし、周辺もとばっちりを警戒して係わり合いを嫌う。それに、売り買いしてすぐにいい値がつくのはある程度年を得た者。赤子はまだまだ手間がかかる上、使い道も限られる。それを売買するとなると相当えぐい裏がある。口の堅さも並以上だ。
「占いでは油断大敵、高所に注意って事だね。当たるも八卦、当たらぬも八卦だけど」
 広げた神秘のタロットを見つめながら、レベッカは軽く肩を竦める。
「鳥が相手だからな。大白鷲の話も聞いて回ってもらったが、うん、油断大敵だな」
 言って、嵐童が知人に調べてもらった大白鷲の話や、その飼い主がいると思しき地帯の話も告げる。
「こちらも同じくだな。最近になって山に入った猟師たちが襲われる事がままあったそうだし」
 憐慈も知人との話をあわせて、情報を語る。とかく大型で凶暴な鳥が巣食っているのだ。熊を相手にする方がましだと別の狩場に流れる猟師も少なくなかった。退治してくれるなら、御の字とかなり詳しい情報を聞くことが出来たが、それでもどこら辺にいるかは掴めなかった。よほど用心深いのか、臆病な相手なのか。
「鳥は鳥目だというからな。だからだろう、犯行は昼の内がほとんど。まぁ、夜に出歩く奴が少ないのも理由の一つかもしれないが」
 言って、響耶は空を見上げる。
 空高く。景色は晴れ。こんな時でも無ければ、長閑な雰囲気を楽しめただろうに。
「あれがそうじゃないか?」
 その空を監視していた嵐童が、空の一点を指差す。
 悠々と舞う一羽の白き鷲。気流に乗って旋回していたかと思うや、一直線に地上に向かって降り立った。
 しばし後にまた上昇する姿が見えた。その足にはしっかりと何かが掴まれている。悠々と風に乗るとまたどこかへと消え去っていった。
「来た方角も去っていった方角も、犯人がいると思しき辺りとはまるで違う方向ね。よほど、仕込まれているのかしら」
 秋緒が悔しそうに唇を噛む。
「とりあえず、かなり遠くにいってるらしいよ。巣に戻るならまた近付いて来るだろうし」
 金子を取り出して、レベッカはサンワードを唱える。漠然とした距離しか教えてくれないが、それでも徐々にこの場から離れている事は分かる。
「ブレスセンサーでは遠すぎて感知できないね。もう少し近くなるまでどうにかしないと」
 扇でため息を隠して憐慈が告げる。
「それまであの子、無事だといいんだけど‥‥」
 不安げに秋緒が見上げる。もはやそこには鳥の一羽も見当たらなかった。

 それからも、度々大白鷲は姿を表しあちらこちらから子供を連れ去る。その度に見廻組たちは走り回るが、空を行く相手に苦戦しがちだった。
 単純に五感に頼る他、魔法の助けも借りて追いかけるもそれには限界がある。レベッカは一度鷹のハックを大白鷲に嗾け時間を稼ぐも、体格差が優に五倍ほどある相手。力量の差も歴然で、ハックはあっさりと手酷い傷を負わされて逃げ帰ってきた。今は麓の村で傷ついた身を休めている。
 それでも、少しずつ当たりをつけて範囲を区切り、ゆっくりとながら犯人がいると思しき場所を特定していく。
「‥‥いるな。大型の者が」
 山に分け入り、彷徨う事どれだけか。憐慈自身、肩の荷を降ろした様に安堵の息を付きながらそう告げた。
 嵐童とレベッカが隠身の勾玉で気配を消すと、先行して回り込む。彼らの位置を息で探りながら確認すると、残る者たちもまた逃げられないよう注意しながら追い込む。
 木々の隙間から見える巨大な白。間近で見るとひときわ大きく見える。
「あー、よしよし。今日の獲物は無しか。まぁ、それも仕方が無いさ。ゆっくり休め」
 その大白鷲二羽の前に男が一人。大白鷲の半分程しかない上、品疎な体は、今にも大白鷲の餌にされそうな印象を受けた。が、それに反して大白鷲たちはピィピィと甘えた声を上げる。男もまたそんな大白鷲たちを愛おしそうに撫でていた。
「あいつだ」
 小声ながらも苦渋を滲ませて、季武が告げる。一度逃げられた上に、その後の凶行でもたくさんの罪無き者が巻き込まれている。悔しさもひとしおだろう。
 さらに近付こうとすると、気配に感づいたか大白鷲たちが騒ぎ出した。
「何だ?! どうした?」
 飼い主の方は事態に気付いていない。逃げ出される前にと、一同は飛び出す。
「京都見廻組だ! 幼児誘拐の件で捕縛する!!」
「ひっ、え。うわっ!?」
 奇妙な声を上げて、男は狼狽しながらも彼らが出てきた方向から逃げようとする。
「逃がすかよ!!」
 すかさず後を追おうとしたが。それを主の危機とみなした大白鷲たちが甲高い声を上げた。
 ばさりとその翼を広げると、空に舞い上がり、見廻組たちに鋭い鉤爪をつき立ててこようとする。
「お相手はこちらでするわよ!!」
 長槍を振り回した秋緒が、大白鷲と対峙する。突き出された鉤爪と長槍が交差する。槍の穂先は大白鷲の身を傷をつけたが、同時、繰り出した蹴りが秋緒の身を傷つける。
「気をつけて、動きが早いわ!」
「分かってる。――喰らえ!! 黒影刃」
 急降下して迫る相手を、急所に当たらぬよう身で受け止めると、即座に響耶は野太刀を叩き返す。羽毛と共に赤い物が散らばるが、それでもまだ動き回る。
 そして、憐慈がライトニングサンダーボルトを叩き込む。轟く雷鳴は怖がりそうだと大概の動物は嫌がって逃げるのに、それすらも気にせず主の敵に挑みかからんとする。むしろ、傍で待機させてる憐慈の鷹の方が落ちつかなげに翼を振るわせる。
 大白鷲は両足二撃入れると、早々とまた羽ばたき、また急降下して爪を蹴りいれて来る。入れ替わり立ち代り、襲い掛かる相手に後ろを取られぬよう、木を背後に取りながら秋緒は懸命に大白鷲を食い止めている。
 そして、その戦いもそこそこに、主の方は逃げようとしている。
「どこに行くつもりだ!」
 義護がすぐに後を追いかけようとしたが、その間に大白鷲が割って入る。その蹴りを、割って入った季武が刀で受け止めた隙に、義護は詠唱。緑の輝きがその身を包むや、その手から真空の刃が飛んだ。
 見えぬ刃は大白鷲の羽毛を細やかに切り裂く。が、それだけ。ほんのわずかな傷で、大白鷲の方も動じた気配は無い。
「貴様も人の子だろう! それなら親が子を失う苦しみ、子が親を知らぬ悲しみ、少しは理解できぬか!?」
「義理人情で腹が膨れるか!! 恨むんならこんな世にしたお上に言えよ!!」
 走り去る飼い主に向かって義護は声を張り上げる。が、返ってきた答えは怒りすら孕んでいた。
「銀星、行け! あいつを逃がすな!!」
 憐慈が声をかけるや、鷹が素早く飛び上がる。どちらかといえば、ここから離れられる事を良しとしているようにも見えた。
「伏姫、行け!」
「ラクスもお願い」
 待機していた嵐童とレベッカもまたそれぞれに柴犬、ボーダーコリーを嗾ける。
「うわ、何だこいつらは!!」
 三匹に纏わり付かれて、さすがの男もその足を止めて振り払おうとする。
 それに気付いた大白鷲たちが即座に、手向かっていた面子を捨て去り、そちらに向かおうとする。
「こら! 行かせるか!!」
 一体を憐慈が雷で撃つと、それまでの傷もあいまってかさすがに巨体を傾け地に落ちた。
 残る一体。敵意をむき出しにする巨鳥に、慌てる三匹。その前にレベッカが立つと、軍配で止めようとし‥‥、その腕を掴まれ引きずられる。
「この! やってくれるじゃない!!」
 食い込んだ爪痕から流れる血。それを振り払うと、レベッカは再び迫る機を合わせて、大脇差・一文字を薙ぐ。素早く掠めるその動きを、大白鷲は避けようとしたが躱しきれず刃を喰らう。
 甲高い声を上げて、こちらもまた地に落ちる。が、あちこちに傷を負いながらもまだ羽ばたこうと翼を動かし続けていた。
 それを横目で見ながら、そろそろと飼い主は足を運ぶ。
「可愛がっていた動物を見捨てて逃げるとは、主人の風上にも置けないな」
 周囲に気付かぬように離れかけていた男の前に、さらに巧みな忍び足で近付いた嵐童が回り込む。鬼神の小柄を思いっきり叩き付けると、実にあっさりと男は気を失って倒れたのだった。

 大白鷲たちは主人が倒れても気付かず、なおも彼を助けようと首を擡げる。けなげなその姿は見ている者の心を打ったが、だからといって放り出すにも危なすぎて。結局、季武がその首を落とす。
「どの道、人の血の味を覚えてるんじゃ、誰かに飼って貰おうにも危険すぎるさな」
「そっか。そうだね」
 弁解じみた季武の言葉に、レベッカは寂しそうに笑う。
「せめて、来世ではよい上官に巡り合え」
 男を一瞥すると、名残とばかりに落ちた頭を撫でながら響耶はそう祈りを捧げる。
 男を縛り上げて付近を捜索すれば、住処と思しき庵があった。
「この子たちも、家に帰りたかったでしょうに」
 庵の裏手には、大白鷲の餌と思しき骨の山。鹿や大猿、熊といったものから、果ては鬼族の類の骨すらも見られる。それらに混じって小さな子供の物も‥‥。
 丁寧に秋緒はより分けると、庵から形見と思しき品も見つけて一つにまとめる。親を探すのは難しくても、麓の寺で供養する事ぐらいは出来る。

 そして、男を連行して京へと戻る。
 牢にぶち込んで、終わりの面々もいればそうでない者もいる。
「さて、入隊の件だが。物部義護と月代憐慈は問題無しで、これからもよろしくと云う事で。‥‥で」
 申し訳なさそうに季武は嵐童に頭を下げる。
「えっとだな。江戸の組織に関わってるって事がちょっとまずいらしい。京都は今微妙なんでな、すまん」
「まぁ、しょうがない。駄目ならすっぱり諦めるさ」
 両手を合わせて頭を下げる季武に、嵐童は苦笑して告げる。
 かくて、すべての案件が片付き、各々解散となる。
(そういえば、安祥神皇さま以外の神皇家血筋の人間が要職についた訳か。‥‥下手すりゃこれは荒れるか?)
 ふと去り際に詰め所を見上げて、嵐童はそんな事を思い出す。が、すぐに考えすぎだと自嘲して家路につく。
 それが本当に当たりか外れか。京の行く末はまだ闇に包まれたままだった。