【寺田屋の台所】 月と胡瓜と七夕と

■ショートシナリオ


担当:からた狐

対応レベル:フリーlv

難易度:易しい

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:8人

サポート参加人数:5人

冒険期間:06月29日〜07月04日

リプレイ公開日:2006年07月07日

●オープニング

 冒険者御用達の酒場・寺田屋では、今日も今日とて冒険者が集う。
「‥‥亀が増えたーー!!」
「うんまぁ、そだね」
 陽気な店内を覗いた化け兎・うさ。 開口一番そう叫ぶのを陰陽師・小町が頭を抱える。
 うさは暦とした妖怪だが、子供に化ける以外は特に無害。いろいろあって、小町の家に潜り込み、そして、お月様普及活動に熱を入れている。
 店内にいるのは冒険者たち。その中に、最近頻繁に姿を見せるようになった河童たちがいる。
 うさは彼らを亀と称して止まない。――まぁ、その他の種族にしてもヒューマンタイプはすべからく爺・婆。シフールにいたっては虫なので、これはもう諦めるしかないのか?
「でも、あの亀たちはいい亀たち」
「何で?」
「お月様な食事しているもん」
 以前に冒険者の協力を得て作られたお月様な食事の数々。まぁ、お品書きにあるのだから、注文しても不思議ではないし、頼んだ当人たちはそんな裏事情などちっとも考えては無いだろう。
 だが、うさとしてはそれで御満悦なようだ。
「皆、お月様な食事一杯してるから、お月様好きになったよねー? な訳で、うさは考えた! お月様をもっと好きになってもらう為に今度はお月様な飲み物を考えるのだ!! という訳で、手伝えーー!!」
 冒険者ギルドに向けて、小町の手を引き喜び勇んで跳ねてくうさ。
 かくて、冒険者ギルドにお月様な飲み物開発依頼が出され‥‥る前に、
「そうはさせるか!!」
 その一人と一匹の行く手を阻む緑の影が!!
「あー、あんたは!」
「悪亀!!」
「誰が亀じゃあーーー!!」
 わめく河童は、見覚えのある知り合い。元は江戸に住み、そこで出会ったうさの亀呼ばわりに腹を立てて勝負を挑み、見事勝ったはいいけど遺恨を残して以来何かと犬猿の仲。そのまま何だか京都までやってきてうさと対決‥‥するかと思いきや妙な成り行きでイギリスに行ってしまった河童である。
「だって、亀は亀なのに、亀じゃないって嘘つくんだぁーー! 嘘つくのは悪い亀!!」
「だあああーーーー! 亀じゃねぇー。河童じゃと言っとるだろがーーっ!!」
 往来ど真ん中。駄々こねる子供とむきになって罵る河童。目立つ事この上ない。
「で? 今回何しに来た訳?」
 不毛な争いを止めるべく、小町が横から口を挟む。
「うむ。つまり俺はイギリスへと渡り、見事エロガッパと呼ぶ輩に制裁を加えようとした。しかーし、言語が分からない事に気付いて立ち往生してしまい、どうしようも無く霧の中を彷徨っていた所、空から一本の葱が降ってきた!!」
「「葱?」」
 不可解さに首を傾げる小町とうさ。しかし、喋ってる亀はそんなの気にせず恍惚と続ける。
「その葱を掴んだ時、俺に神が降りた!! すなわち、俺の使命はエロガッパ訂正ではなく! 馬鹿兎の野望を止める事だと!!」
「‥‥神が降りたと言うより、そもの目的を思い出しただけなんじゃない?」
 それがいい事か悪い事かは知らないが。
「なので俺は帰ってきた! そして、馬鹿兎の野望を打ち砕くべく、俺はここに新たな計画を立ち上げる!! 題して! 寺田屋に胡瓜料理を御推薦計画開始だーー!!」
「むー! そんな邪悪な事は許せないもん!!」
 冒険者ギルドに勇んで走る悪亀の後を、負けじとうさが全力で追いかける。

 かくて、冒険者ギルドにお月様な飲み物開発依頼と、お月様阻止の胡瓜料理開発が依頼される。
「っていうかねー。河童の方も増えたから胡瓜料理も結構だし、お月様な飲み物開発もいいんだけど。‥‥ほら、もうじき七夕でしょ? だから、それにちなんだお品書きが欲しいって事もお登勢さん言ってたのよ。そこらも考慮してくれるとありがたいわね」
 冒険者ギルドで、顔つき合わせていがみ合う兎と亀。その様を横で見ながら小町は苦笑を漏らしていた。

●今回の参加者

 ea0085 天螺月 律吏(36歳・♀・侍・人間・ジャパン)
 ea0213 ティーレリア・ユビキダス(29歳・♀・ウィザード・人間・ビザンチン帝国)
 ea1956 ニキ・ラージャンヌ(28歳・♂・僧侶・人間・インドゥーラ国)
 ea6526 御神楽 澄華(29歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea8904 藍 月花(26歳・♀・武道家・ハーフエルフ・華仙教大国)
 eb1655 所所楽 苺(26歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 eb2064 ミラ・ダイモス(30歳・♀・ナイト・ジャイアント・ビザンチン帝国)
 eb3983 花東沖 総樹(35歳・♀・浪人・人間・ジャパン)

●サポート参加者

里見 夏沙(ea2700)/ イチイ・カーライル(ea3377)/ エリーヌ・フレイア(ea7950)/ 所所楽 柊(eb2919)/ 所所楽 銀杏(eb2963

●リプレイ本文

「うささん、おひさしぶりですー♪」
「むーー♪♪」
 笑顔で両手を広げるティーレリア・ユビキダス(ea0213)に、喜び勇んで飛び込むのは化け兎・うさ。子供に化けられる妖怪なのだが、ちゃんと気持ちを汲んでいるのか、兎形態のまま。ティーレリアに頭を撫でられて嬉しそうに長い耳を上下させている。
「小町さんも久しぶりです。かっぱさんははじめまして‥‥きゃあ!!」
 化け兎の依頼人、陰陽師・小町と、月料理撲滅に闘志を燃やす冒険者の河童にティーレリアが丁寧に御挨拶。
 途端、うさの長い耳が跳ね上がると、ティーレリアの手を跳ね除けて地面に降り立つ。皆の目の前、子供の姿に化けると、河童を睨みつけてびしりと指差し、そして一言。
「亀!」
「亀じゃねぇええーー! 河童だああああ!!!」
 途端に抗議の声を上げる亀、もとい河童。それを呆れながら藍月花(ea8904)が見つめる。
「‥‥爺でも婆でも虫でも亀でも。自分は自分だと思えばそれでいいのは?」
「自分は亀だとは思えーーーん!!」
「亀はー、緑で甲羅だから亀なのだああーー!!」
 駄々をこねて地面に転がる亀の隣で、うさも同じように転がる。
「喧嘩してるのかじゃれあいなのか‥‥。本当にイギリスに行ったと聞いて大物かとも思いましたが、そうは見えませんね‥‥」
 ま、平和が一番。顔は笑みでも胸中複雑に御神楽澄華(ea6526)はそう納得。
「でも、爺婆とか一まとめに呼ぶ割りには。うさは河童個人はちゃんと固体識別してるんよね」
 言い争う一人と一匹を感心しながら見つめていたニキ・ラージャンヌ(ea1956)だったが、それが聞こえたのだろう。うさは亀をあっさり捨てると、ニキの服を掴む。
「お婆もちゃんと分かってるよ? 色黒いし」
「‥‥ありがとうと言うときますわ」
 真摯に訴えてくるうさに、苦笑交じりでニキが告げる。うさは頭を撫でられ嬉しそうにしていた。
「でも、亀さんが戻ったとなると、兎さんとの対決で店の雰囲気を壊しかねませんね。女将にそれとなく胡瓜料理を影料理に据えた上で賃金値上げしてもらい、密かに胡瓜派抑制にかかる方が‥‥」
「うーん、でもそうなったらお登勢さんは河童たちの味方しそうな気がするのよね」
 憂えて画策を考えるミラ・ダイモス(eb2064)に、小町は軽く否定を入れる。
「何故です?」
「だって、化け兎はお金落とさないけど、河童はお金持ってるもの」
 寺田屋も客商売。お金落としてくれなきゃ困ってしまう。
「それにいくらおとなしいと言っても妖怪だしね。迷惑かけてどうしようも無いなら処分って事になるだろうし、そうなった時の為に冒険者と仲良くしておく方が損は無いと考えるものよ。
 ま、そう簡単にはそんな事させないけどね。どこぞの馬鹿化け狸だってぶっ飛ばされるだけなんだから」
 からからと笑う小町に、複雑な顔を向けるミラ。うさは意味が分かってないのか、一緒になって笑ってるだけだった。

「さて、今回のお題はお月さまな飲み物、胡瓜、そして七夕‥‥ね。お店に出すなら、見た目もほんわか楽しくなるものがいいわ」
 腕がなるわ、と花東沖総樹(eb3983)が張り切って調理にかかる。
「でも、どうして河童さんは胡瓜が好きなのだー?」
「それは胡瓜に聞いとくれよ‥‥。あの瑞々しさ、口の中でふわりと広がる草原の味。もぎたての棘の痛みもまた格別で‥‥」
 素朴な疑問に首を傾ける所所楽苺(eb1655)に、恍惚とした表情で語りだす亀。
「はいはい。こっちは置いといて、お料理よろしくね。あ、買出しの手伝いに来られた御二人にも、礼を言っておいてね」
「承知したのだー」
 それを聞いてる時間も惜しいと、笑顔で促す小町に苺も元気に返事する。
「胡瓜よりお月さまがいー。お月さまー」
「ええい、馬鹿兎が! あのすばらしさを理解しえぬとはやはり愚か千万!!」
「はいはい。そこなうさぎに亀よ」
「亀じゃねぇ!!」
 またもや険悪になりかけた兎と亀の間に、天螺月律吏(ea0085)が割って入る。
「それはさておき。食べ物で仲違いは良くないぞ。――そこで今回目指すは、ズバリ、胡瓜とお月様の融合! まずは取り出だしたりますこの胡瓜!! これを形を崩さぬように皮を剥き」
「‥‥もうちょっと肩の力抜いたらどうだ?」
 ぎこちない手つきで胡瓜を削る律吏に、亀が心配そうに口を出す。
「大丈夫。刃物は得意なはずだし、ちゃんと優秀な先生二人を呼んで事前に指導してもらったからな。後片付けまでバッチリだ。――そして、剥けた胡瓜を今度は厚めに切る! 切る!! 斬ーーる!!!」
「まな板は斬っちゃ駄目よー」
 包丁で木を打ちつける迫力に、うさが怯えて小町に登り、小町も乾いた笑みを向けている。
「最後はこれに黒蜜、蜂蜜を塗り‥‥これで完成!! 題して『白黒お月さん 異国風』!!」
 皿に盛り付け、自信満々に胸を張る律吏。いい仕事をしたという満足感がその顔には浮かんでいた。
「胡瓜って味噌と食べるものじゃないのですか? 他にも食べ方があるのですか〜」
 斬新な胡瓜にティーレリアは素直に感心している。その肩を苦笑しながら小町が軽く叩いて諭す。
「ま。お手軽料理でいいかもね」
「甘くて美味いし、悪かねぇよな」
 さっそく試食している亀が感想を漏らす。そして、うさはといえば。
「お月さま‥‥胡瓜な白いお月様‥‥。お月様が白くて、黄色でまん丸ででも胡瓜‥‥??」
 何か思考の迷路に入ったようだ。
「そういつまでも感心してはいられませんね。こちらも始めるとしましょう。――私は棒棒鳥でも作りますか。それだけでは、お腹も足りそうにないので麺も足しましょうか」
「麺って中華麺ですやろか。出来ます?」
「え? うどんや蕎麦とは違うの?」
 食材用意する月花に、ニキが首を傾げ、さらに興味深そうに小町が首を突っ込む。
「うん、水がちょっと‥‥。打てん事も無いやろけど」
「ま、駄目なら駄目で他を考えてもいいですし。主力は、鳥の方ですからね」
 難しい顔をするニキに、月花は即決すると調理にかかる。
「私は無難に、ところてんで行かせてもらいます。そういえば、あのところてん押し出す奴って誰か頼んでましたやろか?」
「大丈夫、用意できてますよ」
 機材を探すニキに、今度は月花が答える。 
「ごめんなさい、こっちにも天突器。後でお願いね」
 やはりところてんを使う総樹が声を上げる。今はその上を飾る煉切を作るのに、忙しく手を動かしていた。
「そうそう、小町さん。氷はどうしてます?」
「ちゃんと保存してるわ。亀さん、よろしく持って来てねー☆」
 夏と言う事で冷やす料理を考えている者も多い。とはいえ、普通に冷やすというのはなかなか難しい。なので、先日の内に、月花の知人がアイスコフィンを仕掛けて氷を用意していた。
 寺田屋ではさすがにそれも無理だろうから、その際には井戸水でもとは月花の談。
「亀じゃねぇ! そして、何で俺が!?」
「だって、重いし男手足りないもん。料理中のニキさんに頼むわけにも行かないしー。料理作ってもらってるんだから、手伝いなさい」
 何気に命令口調の小町に連れられ、亀が氷を取りに行く。
「と言いますか。アイスコフィンなら私も使えるですよー。何か冷やすのなら言ってくださいませませー」
 言いつつ、ティーレリアが葛を入れた薄茶を冷やしていたりする。
「こっちは完成なのだー。誰かのお手伝いするのだ♪」
「そう? じゃ、こっちをお願い。もう少しなの」
「あいあいさーなのだ☆ 星の形にすればいいのだ?」
 総樹に呼ばれて、苺が煉切に手を出す。
「こっちはこんなものですか? 半熟の卵を入れて完成です」
 味を調えると、試食用に器を並べるミラ。
「やっぱり卵を使う人は多いですね。で、あえて外してみましたけど‥‥うささん、どう思います?」
 順に完成されていく他の人の料理を見ながら、澄華が不安そうに作ったすまし汁の感想を求める。
「うん。お月さまだねー」
 それに嬉しそうに答えるうさ。本当に分かってるのか今ひとつ不安ではあったが、ま、うさが喜んでくれてるならいいだろう。

「せっかく作ったんだし。皆で試食しあったらどうかしら?」
 とは総樹の言葉。なので、出来上がった品々がずらりと卓に並べられる。
「で、私は白黒おつきさん異国風だな。おかわりも手軽に出来るぞ」
 自信満々に出される律吏の蜜かけ胡瓜。確かに単純ではあるが、亀も言った通りに味は悪くない。
「おいらの作品はこれなのだ。料理名は笹飾りなのだー」
 敷かれた笹の上に胡瓜・炒めた人参・大根。それを甘酢と味噌酢(ちなみに、もう一つは幻の品を使う為作れず)でそれぞれ和え、最後は錦糸卵を散らす。彩りも鮮やかな一品に亀は勿論、うさも目を輝かせているのは人参があるから。
「うささん、人参もお好きですからね。かっぱさんも人参持参で話すと少しは早くなるかもですよ? ‥‥すごく遅くなる可能性もあるかもですけど」
「俺は後者だと思うな」
 何だか人参を一人締めしようと小町に抑えられているうさを見て、ティーレリアと亀がたらりと冷や汗を流す。
 そのティーレリアの作ったのは、葛でとろみを付けた薄茶に、小さく丸めた黄色い餡に笹を模した煉切を添える。本人、果たして飲み物か気にしていたが、薄茶味の葛湯なら飲み物で構わないだろう。
「味噌汁やすまし汁の方が、飲み物とするには微妙かもしれませんしね」
 苦笑いを浮かべる澄華。柚子朧とつけたすまし汁は、刻んだ柚子の果肉がそこに沈み、月のような円を作る。黒い盃のような器に盛られ、さらに黄色が映える。
 ただ季節的に今は青柚子。黄柚子を使うにはもう少し時期を待つか、いっそ別の柑橘類に変える必要があるかも。
 味噌汁を作ったのはミラ。半熟卵を落とした水無月汁。
「とはいえ、それだけではありませんよ? お酒、大丈夫でしたよね?」
 言って差し出す卵酒ならぬ月見酒。酒の温度と卵の凝固に気をつけただけあって、美味しく出来ている。甘味と生姜で程よい口当たりになっていた。
 ただ、他の人の料理でもそうだが。卵は結構高いので、そこら辺がどう取られるかが問題と言えば問題。
「こちらの飲み物は、柑橘類を絞った果汁を蜂蜜で整えてみました。後、飴湯に生姜を入れたものを。それと棒棒鳥ですね。冷たい内にどうぞ」
 月花が品物を並べる。棒棒鳥は苺が用意した笹を敷いた器に麺を置き、茹でた鶏肉に長葱生姜を乗せ、千切りや星型にきった胡瓜を散らす。茹で汁から作ったタレ汁と絡めて、喉越しもなかなか。二種の飲み物も簡単ながらさっぱりしていて飲み安く。
「私はところてんとお茶ね。題して『七夕の夜』と、『香り茶』よ」
 七夕の夜は黒蜜の中にところてんを揃えて流し、五色の星型の煉切を乗せて夜空を象っている。五色の桃と紫は桑の実の汁を加減して、黄色は梔子、緑は抹茶、残る一つは白である。
 薄荷を入れた香り茶は独特の澄んだ香りを醸し、嗅覚からも楽しめる。
「私もところてんですやね。後、お月さんで冷製の汁粉をこしらえてみました。味も見てもろてますさかい、そんな外してへんとは思うんやけど」
 ニキも冷やしたところてん。わかめに胡瓜、椎茸、海老に和辛子少々加えて、しいたけや海老で取った出しで作ったタレをかけている。
 冷製汁粉は、汁粉に黄色い餡に葛を包んだ水饅頭を浮かべた一品。
「ところてんにタレをかけるって発想がおもしろいわよねー。甘くないし」
「何でさ! ところてんにゃ、普通酢醤油だろ? 甘くしてどうすんだよ?!」
 ニキの料理に感心する小町がいれば、総樹の一品に目を丸くする河童もいる。
 意見が割れるのはジャパンの東西食事情。それには興味無いとばかりにうさは黙々と人参を食べている。
「まぁまぁ。落ち着いて。せっかく七夕なんだし、言い争いは無しね。そうそう、せっかく笹もあるし、お願い事するのもいいかも」
「おっし、必勝寺田屋に胡瓜だな!!」
 宥める総樹に、亀が胡瓜握って宣言する。
「そんな事、させませんよ。ね、うささん?」
「むー」
 ミラとうさが顔を見合わせ、頷きあう。
「何はともあれ。今は料理に舌鼓を打ちましょうよ」
 ぱんと手を打ち合わせて空気を変えると、小町が笑顔で告げる。
 それぞれの腕前の差もあり、苦労の跡が見える物、細かい工夫が利いた物など実に様々。ただ、大事に作られた料理が美味しく無い訳も無く、騒々しい会話を交えながら、どの皿も瞬く間に空になる。
 後の問題は、寺田屋さんに気に入ってもらえるかだが‥‥。それは女将に聞かねば分からない。