村の鎮守の神様が

■ショートシナリオ


担当:からた狐

対応レベル:1〜3lv

難易度:やや易

成功報酬:0 G 78 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:06月14日〜06月21日

リプレイ公開日:2004年06月23日

●オープニング

 お江戸の町の片隅に、冒険者達が集う場所がある。
 職業様々、特技も様々。定住する者も旅する者も、集う理由は様々なれど、冒険を求める者ならば必ず寄る場所といってよい。
 そして、そんな彼らの腕を頼りに助けを求めに来る場所でもあった。

「実は私どもの村では最近鬼が出るようになったのです」
 農村から3日程かけてやってきたというその老人も、冒険者達に助けを求めに来た一人。見捨てておけずに、話だけでも聞いておこうと場にいた誰かが老人を席につかせていた。
「3人組の小鬼達――えーと、何やら異国では『ごぶりん』とか呼ばれてるようですな。いや、私もここに来て初めて知りましたが。‥‥それはさておき、その小鬼らは、昼夜を問わずやってきて村の中でいろいろな悪さをしていくんです」
 田畑を掘り返したり、牛馬を暴走させたり。時には動物の屍骸を家に投げ込んだり、子供に棒で殴りかかったりと行動は悪質極まった。
 当然、村人達も黙ってはいない。何とか策を練って自衛に励んだが今一つ効果は上がらず。むしろ、躍起になって追い払おうという村人達をからかうように、その行動は悪質になっていき、
 そして、
「事もあろうに、村の祠から鎮守様を盗んでいってしまったんです」
 鎮守様とは、村で崇めていた木像の事だと言う。子供でも抱えて持ち運びえるような大きさで、いつから村にあるのかは不明。美術的価値は全く無い程ぼろぼろな上、実際にご利益あるのかといえば此度の一件で首をひねらざるを得ないような品物。
 だが、そんな品でも毎日手を合わせていれば愛着も湧くし、信心深くもなる。
 それを盗まれたとあって、ついに村人達の怒りも頂点に達した。その小鬼達を退治しようと、彼らがいつもやってくる山へと踏み込み、捜索を開始し‥‥。
「彼らの溜まり場としている洞窟はすぐに分かりました。ですが、そこにいたのは小鬼達だけではなかったのです」
 小鬼の他に異国でオークと呼ばれている豚鬼が一匹。どうやらそいつが首領らしく、他の小鬼達を取り仕切っていたのだ。
 小鬼だけでも手を焼いているような彼らには豚鬼まで相手にする自信は無い。弱り果てた村人達は結局金を集めて人を雇う事にしたのだ。
「私が村を出た時は、鬼どもはまだ鎮守様を持っていた様子。ですが、この行程の間にどうなった事か。‥‥本当は鎮守様を取り戻して下されと言いたいのだが、壊されている可能性の方が高い。もはや諦めた方がよいだろうの‥‥。
 だが、せめてあの鬼どもがこれ以上村を荒らさぬよう、どなたか退治して下さらぬだろうか」
 金ならある、と、老人は懐から袋を取り出す。提示された額はまぁ妥当な線だ。
「どうかお願いいたします」
 金の為、腕を試す為、義侠心に暇潰し。理由は様々なれど、その場にいた冒険者らの幾人かが名乗りを上げる。

 かくて、冒険者達は旅立ったのである。

●今回の参加者

 ea0319 伊勢 雪花(29歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea1359 シキ・ミズノ(26歳・♀・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea1385 橘 雛姫(27歳・♀・僧侶・人間・ジャパン)
 ea1628 三笠 明信(28歳・♂・パラディン・ジャイアント・ジャパン)
 ea2331 ウェス・コラド(39歳・♂・ウィザード・人間・イギリス王国)
 ea2630 月代 憐慈(36歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea2789 レナン・ハルヴァード(31歳・♂・ファイター・人間・フランク王国)
 ea3128 柳 月風(33歳・♂・武道家・人間・華仙教大国)

●リプレイ本文

●道中
 老人の願いに答え、総勢八名の冒険者が小鬼退治の旅路を取った。
「小鬼‥‥ゴブリン退治か。こんな東の果ての島国まで来て、こんな依頼を目にするとは。奴らはどこにでもいて、どこでも同じ事をしているのだな」
「本当に。私も鬼達の被害はいろいろ話に聞いてましたが、外国にもいるとは思いもしませんでしたよ。そんな輩が私達の村にやってこようとは‥‥」
 村へと向かう道すがら、深く感心したように告げるウェス・コラド(ea2331)に、依頼を頼んだ老人も弱り果てた表情で相槌を打つ。
「それにしても蒸すな。雨でも来るのだろうか」
 ふと天気が気になり、ウェスは天を見上げた。雲は多いが、一応晴れている。ただ、吹く風がどこか湿っぽい。
「今は梅雨だからな。この時期の雨はじとじととやたら日数かけて降ってヤなもんだ。道具も体も湿気て重くてかなわない」
 うんざりとしているウェスに、月代憐慈(ea2630)がしたり顔で告げる。
「天の恵みですからいたし方ないですね。けど、この程度なら多分降らずに済むのではないでしょうかねぇ」
 くつくつと笑いながら老人が答えるのを見、ウェスは感心して頷く。
 ジャパンに来てから日の浅いウェスにとって、道中、目新しい物が多い。
 何かと尋ねてくるウェスに老人は懇切に答え、そこに憐慈がちょくちょく口を挟んで混ぜっ返している。話が専門的な事に及べば首を傾げるウェスに、さらにその説明を追加しだして‥‥、と、いささか賑やかな旅路となった。
 その一方にて。
(「何話してるのか、さっぱりだな」)
 陽気な彼らを見ながら、レナン・ハルヴァード(ea2789)は困惑を隠せない。フランク出身の彼はあいにくジャパン語には精通してなかった。他にもそういう面々はいて、何とはなしに目線を交わらせる。
 江戸にいる時はシフール通訳もあって何とかなったが、冒険先まで通訳は無い。そして、江戸から離れるにつれ公共の店や宿でも外国語が通用せぬようになる為、どうしても不便が出てくる。
 さらに今回のレナンのように、同行者の中にも通じる言語を覚えている者がいないと、仲間内の会話ですら身振り手振りに頼らざるを得なくなる。
 一応、個人でシフール通訳を雇う事も出来る。ただ、その相場は依頼報酬額の約4倍が目安な上に、必ず同行してくれる通訳者が見つかるとも限らない。確実を期するなら、やはり自分で覚えるのが一番だろう。
 危険で難しい依頼になれば、その場に応じた連携も必要。その連絡に遅れを取る事で失敗したり、最悪死を招く可能性すらあるのだ。
(「さほど難しい依頼ではなさそうだし、大丈夫だろうとは思うが‥‥」)
 一抹の不安がレナンの胸中にはあるものの、その分、返って身が入る。
 
 そうして、冒険者達は問題の村へとたどり着いた。

●洞窟
「どうかよろしくお願いします」
 言って、総出で頭を下げる村人に照れたり身を引き締めたり。そんな村人達に見送られて、さらに冒険者達は小鬼がいるという洞窟に向かった。
 洞窟の場所は村人でも分かっただけあって、簡単な説明であっさりとたどり着く事が出来た。茂みから洞窟の動向を探っていると、出入りする影がちらほらと見える。
「いるな。小鬼達だ。どうやら奥で豚鬼もご在宅のよう」
 目の効く憐慈がしっかりとその姿を捉える。出かける気は無いのか、入り口をうろつくだけで外には出てこようとはしない。 
「揃っているなら丁度いいですね。さっそくおびき出しに行ってきます」
 伊勢雪花(ea0319)は唾を飲み込むと、日本酒・どぶろくを抱える。
 気をつけろ、と言葉をかけてきた仲間に気丈に微笑むと、何気ない風を装って洞窟の前まで近付いていった。
 日の加減。洞窟の奥までは暗くてよく見えない。が、いるのは確認済みだし、なにより気配がする。洞窟の前をわざと横切ってみると、中の気配が不自然に止んだ。
 そのまま気付かぬふりでうろうろとしていると、じわりと気配が動く。
 そして、
(「来ましたか!」)
 気配が殺気に変わったのを感じて、雪花は身構えた。
「ゴブー。ゴブゴブ」
「ゴゴゴギギギギ!!」
「ゴリャア!」
 洞窟から三匹の小鬼が、飛び出してくる。各々どこで拾ってきたのかも分からない斧や刀を片手に携えて、奇声と共に雪花へと襲いかかってきた。
 豚鬼はいない。まずは手下から、という訳か。
 一匹ずつ来ないかと期待していた雪花だが、そも小鬼は集団で弱い者をいたぶるような奴らだ。若い女一人、格好の獲物と見られたのだろう。
「くっ!」
 型もなく、やたらに振り回されるだけの武器だが、それでも危険に変わりない。囲まれる前に雪花が逃げ出すと、図に乗ったか小鬼は簡単に追いかけてきた。
「来たな。では、足止めさせてもらおうか」     
 隠れていたウェスが片手で印を結ぶと詠唱に入る。プラントコントロールを発動させると、動かした草が雪花を追いかけていた小鬼達に絡みつき、足を止めた。
「ゴブ?! ゴブゴ、ゴブゴブブ??!!」
 追う事に夢中になっていたか、突然の事態に小鬼達は動転した声をあげる。
「全く。わたくしの図体でじっと隠れているのは窮屈なんですよ」
 得た機会を逃す事無く、三笠明信(ea1628)が躍り出ると、素早く背後に忍び寄った。
 周囲は山。ジャイアントの明信でも隠れる所はある事にはある。が、人間の大きさに比べればやはりたやすい事で無いのは確か。初依頼という緊張もあって、ただ待つ間がどれ程大変だったか。
 その想いを晴らすかのように、草や枝に捕らわれ騒ぐ小鬼一体に日本刀を浴びせた。 
 切られた小鬼が悲鳴を上げる。それでようやく、他の小鬼も自分達が謀られた事を悟った。絡み付く草木を振り払い、あるいは切り払いながら、小鬼達は怒りに満ちた目を冒険者達に向ける。
『まともにやりあうような度胸も無い癖に! 噂の通り、姑息な輩だな!!』
 怒りを込めてレナンがロングソードを振り下ろす。
 気合の一閃。かろうじて小鬼は手持ちの刀で受けたものの、その刀をぱっきりと砕け散ってなおその身に深い傷を刻んだ。
 小鬼達の顔が青ざめた。目を見張ると、形も何も無く無茶苦茶に武器を振り回す。冒険者達を近付けさえまいとする意図、それはそれなりに効果を上げたようだが。
「無駄な事です!!」
 暴れる小鬼の間合いの外。詠唱の邪魔になった重い日本刀を放り出すと、雪花はグラビティーキャノンを発動させた。直線状に黒い帯が伸びるや、狙い違わず小鬼一体に直撃。派手に転倒した小鬼に、明信が止めと刀を振り下ろした。 
 それで矜持など吹き飛んだのだろう。あからさまに身を震わせると、恐慌状態で小鬼達は持っていた武器を雪花目掛けて投げつける。が、投げられた武器は素早く明信が払い落とした。
 元より攻撃するのが意図ではなかった。飛んだ武器に冒険者達の目がいった隙に、小鬼達は一目散に洞窟へと逃げ帰っていく。
「ったく。女性に贈るのは別の物の方が喜ばれるぞ。ま、お礼のお返しはしないとな」 
 こんな時でも軽口を告げる憐慈が続けざまに詠唱する。逃げる小鬼にウィングスラッシュ。向けた掌から放たれた真空の刃は小鬼に傷をつける。
「ゴブー、ゴブゴブゴブーーっ!!!」
 それにも負けずに小鬼は洞窟へ向けて走ると、大声で叫んだ。いや、呼んだ、という方が正しいだろう。
「オオー?」
 そして。
 声に応えて、のそり、と洞窟から豚鬼が出てきた。明信と互角の体躯に、一同、一瞬だけ身を強張らせる。が、すぐに気を取り直し、改めて構えを見せた。
 小鬼達は、媚びるように豚鬼に近付き、素早くその背後に隠れる。
『出てきたか。呼び寄せるまでもなかったな』
 鬼達が好物だという生肉も用意していたレナンだが、それを残念がる事も無く、出てきた相手にソードを向ける。
「オク、オオオオーー!!」
 手にした槌を振り上げて、豚鬼が冒険者達へと走った。重量のある一撃をレナンに向けて振り下ろすも、大振りなそれをレナンはかろうじて避ける。体制を崩したレナンに、続けて槌を振り下ろす豚鬼。その腕に横手から近付いた明信が、ばさりと切りつける。
 後方からは、雪花がグラビティーキャノンを放ち、ウェスもプラントコントロールで豚鬼を拘束する。
 激しい戦い。その隙に、小鬼達は洞窟へと駆け込もうとする。だが、
――バヂバヂバヂバヂヂ
 先行して洞窟へ踏み込もうとした小鬼が、ただの地面しかない場所で電気に襲われた。強力な雷に小鬼はいびつな悲鳴を上げると倒れ付し、そして、動かなくなった。
「悪ぃ。ちょっと先回りさせてもらったさ」
 にっと笑ったのは憐慈。ライトニングトラップである。 
「ゴ‥‥、ゴブゴブゴブーーーっ!!」
 倒れた仲間を見て、もはやなりふりかまわず逃げだした小鬼に、気付いたウェスがプラントコントロールで足止めすると、レナンがそのまま止めを刺した。
「オオ、オオォオーク????!!!」
 手下の小鬼三体、全てやられたのを悟り、慌てる豚鬼。動揺している隙をつき、冒険者達は一気に手をかける。
 豚鬼がいかに強かろうと、多勢に無勢。あっという間に豚鬼の体が血にまみれる。
「オオ、オオオォークォ」
 仲間の一人が止めを刺そうとした時、豚鬼が武器を下ろすと両手を合わせた。涙目で命乞いをするその切実な態度に、一瞬、雪花は心を揺らしたものの、
「グ、オオオオオォォッォーーーッ!!!」
 そのゆれを嗅ぎ取ったか、素早く槌を構えると豚鬼は雪花へとそれを振り下ろす。
 だが、その前に仲間が割り込むと槌を阻み、豚鬼の腕を薙ぎ落とす。
「本当に、どうしようも無い奴らなんですね‥‥」
 憐れみすら覚えて雪花がグラビティーキャノンを放った。重力波が豚鬼の重い巨体を弾き飛ばす。
 血沫を吹いて倒れる豚鬼。何とか起き上がろうともがいたが、重く揚げた腕がはたりと地に落ちると、そのまま二度と動く事は無かった。

●再び江戸へ
「特にどうという事はない。ただのボロ木だな」
 戦闘が終わって、冒険者の一人が洞窟の奥から見つけて来た木像をウェスは繁々と見つめる。
 村人が執着していた品だ。何かあるのだろうといたのだが‥‥何かあるどころではない。木像と称するのすら結構おこがましいのではないかという程、ただの木だった。
「鰯の頭も信心からってな。形より心が大事って奴だろ」
 首を捻りながら納得いかずになおも検分しているウェスへと、憐慈が苦笑交じりでそう告げる。
「しかし、木像が無事だったのは重畳でしたね。こちらの被害もさほどでなく。無事に済んでよかったです」
 ほっとしたように告げる明信。無傷、とまではいかないものの、歩いて動けぬ怪我も無い。
 木像を手に村へと帰る冒険者達。仔細を報告して木像を渡すと、鬼退治の上に鎮守様が無事に戻った、と村人達は歓喜の笑顔を見せた。
 さしたる礼は出来ないものの、という前置きの後、旅費や寺院での治療代なども工面する事を約束され、心づくしの食事が振舞われる。
「喜んでもらえてよかったですね」
『やはり、喜ばれるのはいいものだな』
 雪花が告げると、レナンが頷く。言葉が通じずとも、こういう雰囲気は世界共通。二人、顔を見合わせるとどちらからとも無く笑いたてた。
  
 軽い休息をとった後、喜色満面の村人達に別れを告げて、冒険者達は村を離れて再び江戸へと舞い戻る。
 かくて、一つの冒険譚は無事終幕を迎えたのである。