【水無月会議】 鬼がいる間に
|
■ショートシナリオ
担当:からた狐
対応レベル:1〜5lv
難易度:普通
成功報酬:1 G 35 C
参加人数:6人
サポート参加人数:1人
冒険期間:07月03日〜07月08日
リプレイ公開日:2007年07月11日
|
●オープニング
京の今後、長州との関係を如何にするかを決める水無月会議。
その会議の最中、比叡山の一角に構える鉄の御所から都の神皇が坐す御所まで手勢を連れて酒呑童子が攻め上ってきた。
人食鬼始め各種の鬼、果ては鵺まで連れた突然の襲撃に迎撃は整わず。どうにか京を守護する各種部隊・諸藩が集結し御所前にて決戦。退けはしたが、酒呑童子の首を取るには至らず、多勢の犠牲も出した。
新撰組局長・近藤勇が迎撃の意志を明白にしているが、すぐに動ける状態でも無かった。
「酒呑童子は去ったものの、周辺被害が消えた訳でない。状況を調べて対処もしているが、ちと困った話が舞い込んでいる」
冒険者ギルドは、今なお人の出入りが激しい。その慌しさにせかされるように、ギルドの係員が口早に依頼を説明していく。
「酒呑童子の動きに便乗してか、近くの村で小鬼どもの襲撃があった。村で保管してあった食料を奪い去っていったそうだ」
数は十数体。御所を狙った酒呑童子に比べると数も目的も小さいものだが、襲われた村にしてみればいい迷惑だ。
幸いこちらに死者は無い。負傷者はいるがさほど酷いものでもない。
しかし、奪われた食料は相当量になる。これからの季節、畑の収穫を見込めはするが、生活費を稼ぐ事や京の世情不安を思えば貯えは必要。何より、村人達が汗水流して貯えたのは、タダで小鬼たちにくれてやる為ではない!
「小鬼たちは山にある小屋に居を構えて奪ったものを貯えている。盗った物に手をつけた気配は無いが、移動する気らしく、小屋で荷物を作り出している。小鬼がどこぞに行くのは構わんが、食料を持っていかれるのは村人たちも困る。なので、小鬼がいる間に奪われた物を取り返してきて欲しい」
とはいえ、奪われた食料も結構な量になる。小鬼を払う事が必要になるだろう。
●リプレイ本文
鬼というのは人の身近にいて、かつ非常に厄介な者である。
都を襲撃した酒呑童子は言うに及ばず、下っ端の小鬼においてですら現れては人を引っ掻き回す。
「どうしても大きい事件があるとそっちに目が向きがちになっちゃいますけど、明るみになっていないだけでこの村みたいに困ってる人は多いんでしょうね」
小鬼たちに奪われた食料を取り返して欲しい。その依頼があり、訪れた冒険者は五名。出た小鬼たちはその三倍であり、村人たちの表情には少々不安の色があった。
だが、それ以上にすがるような目で救援を求めてくる。そんな彼らを見つめ、ツバメ・クレメント(ec2526)は胸が痛む思いがする。
「周辺地形は事前調査どおりですね。特に崖や川が傍にある訳でも無く。風向きも一定で吹き荒れる事も滅多に無いようですよ」
タケシ・ダイワが報告してくれた事を改めて確認し、護堂万時(eb5301)は皆に伝える。
「ただし、小鬼の数は述べたとおりに十五体。まともにやると面倒ですよ」
加えて、経巻を使ってテレスコープで窺がった小鬼たちについても告げる。
問題の山小屋に小鬼たちはいたが、述べた通りに数は多い。それらが集まって、溜め込んだ食料を移動させやすいように纏めている。もっともその纏め方も適当で、あっちを縛ればこっちが崩れるなんて事を繰り返している。
「二手に分かれ、一方が小鬼を誘導している隙に、もう一方が食料を回収すると言うことでいいな? 村まで一気に運び出すのは無理だが、どこか一時的に動かせる場所はあるのか?」
「ええ、大丈夫です」
九印雪人(ea4522)が確認を入れると、これにも万時は頷いてみせる。
「荷物持ちってつまんなさそうなんだけどー。まぁ、いっかって感じぃ?」
少々不満を漏らしながらも、マアヤ・エンリケ(ec2494)はやる気は見せる。
「この一件がほんの氷山の一角にしかならなくても。自分たちで倒せる一角を切り崩してしていくのが大事なんです。頑張っていきましょ〜」
「んー、でもやっぱ面倒? ってか面倒って感じ?」
おー、とやる気十分に腕を振り上げるツバメに、マアヤはやっぱり首を傾げていた。
現場は完全な山の中。猟師も最近は使う者がないらしく、少々付近も荒れ始めている。だからこそ、小鬼たちが一時的にせよ住み着いたのだろう。
「万力、行って下さい!」
「慶翁、お願いね」
けしかけると、万時の戦闘馬と仔神傀竜(ea1309)のボーダーコリーが一斉に走り出す。煙で燻り出す事も考えたが、万一の消火を考えると、安全なのはこっちだろう。
ともあれ、二匹は主人の命に忠実に従い、小鬼たちの中に突っ込む。作業に悪戦苦闘だか興じて遊んでるだかしていた小鬼たちは、暴れる獣たちの不意の登場に驚きを隠せない。
『襲撃だ! 逃げろ、こっちだ!!』
「ゴブゴブゴ!!」
「ゴブゴー!!」
機を見計らって、万時がテレパシーで告げる。それが誰の声なのか、おそらく向こうは気付いていないだろう。ただ、襲撃と聞いて混乱しながらも武器を構え出す。追い討ちをかけるようにムーンアローを放てば、嫌が応にも彼らの態度が戦闘のそれに変わった。
「それじゃ、突撃します!!」
霞小太刀を両手に構えると、ツバメは敵を見定めようと突出していた小鬼に向けて、名の通り燕の如く軽やかに飛来する。
躱せず、斬られた小鬼が悲鳴を上げる。盛大に泣き叫ぶその姿に他の小鬼たちがはっとツバメへと注目する。
一斉に目を向けられ、さすがにツバメも演技ではなくどきりと身を怯ませる。それが呼び水になったか、小鬼たちがいきり立ち、声を荒げると斧を振り上げツバメへと集団で襲い掛かってきた。
「ひええええ〜〜」
半分演技、半分本気でツバメは悲鳴を上げると即座にそこから飛び去る。その後を小鬼の集団が追いかけていく。
「向かってくるなら仕方ないわよね」
傀竜も錫杖・破戒を手にすると、振り上げられる斧を躱し、その脳天に振り下ろす。重い音がしてのけぞるも、まだまだ小鬼は元気。他に仲間がいる分強気で、ますます鼻息荒く襲い掛かってくる。
その熱気を冷ますように、一匹がいきなり凍り付く。万時のアイスコフィンである。
『適うと思っているのですか? 無駄な事はせずに退散しなさい』
いきなり凍りついた仲間に、目を白黒させている小鬼たちへ、万時はテレパシーで警告する。その身はレビテーションで浮遊し、上空から威圧している。
が、猿頭の小鬼たち。魔法効果に驚きはしたものの、何が起こったのかまではうまく理解できていない様子。ただ攻撃されたのは分かったようで、声を荒げると宙に浮かぶ万時目掛けて斧を投げつける。
「わわわ。助けてくださーい」
レビテーションでは上手く動けず。助けを叫ぶ万時に、応えてツバメが小鬼の手を斬りつける。
「数が多いですから、囲まれないよう気をつけて!!」
「でも、これであそこに残っているのは、いても少し‥‥よね?」
ぎゃあぎゃあ騒ぎながら斧を振り回す小鬼たちを躱したり、背中を見せて追わせたりして、山小屋から引き離す。単純な小鬼たちは計略とも知らずに、怒りのままに一同を追い掛け回していた。
「そうだといいんですけどねぇ」
傀竜の疑問に、万時は避難して登った木の上から答える。
結構な数がついてきているが、入り乱れている中で、数を数えるのは難しく。ついでにその暇もない。ツバメや傀竜が食い止める小鬼たちに向けて万時も必死に援護を入れていた。
大多数が感情の赴くままに追いかけて行っても、団体行動をとらない奴もいて、そいつらはさっさと逃亡しようと荷物をせっせと纏めて担ぎ上げる。
「いらん手間をかけさせるな」
しかし、山小屋が静かになったのを見計らい、雪人は両手に刃携えて荷造りしている小鬼に斬りかかる。右の手に明王彫の剣、左には日本刀。オーラパワーを付与し切れ味も上げて叩き伏せれば、あっという間に小鬼一体が血に塗れる。
「あははは、当たったらちょー痛いよぉ!」
マアヤもウォーターボムを詠唱。青い魔法光が彼女の身を包むと、翳したその手から水の塊が飛ばされる。専門ではまだ詠唱失敗の方が多く、初級では威力がやや低め。それでも、雪人の剣で切り伏せられた後とあっては十分脅威である。
荷物整理の邪魔をされたことよりも、攻撃された事に驚き、残る小鬼は早々と退散していく。
「今の内に食料を移動させよう」
「うわぁ、マジ地味作業〜」
静かになったとはいえ、戻ってくる可能性もある。さっそく食料を運び出す雪人に、嫌そうな顔しながらもマアヤはそれに倣う。
だが、やはりというべきか。全てを運び出す前に独特の鳴き声が辺りを騒がせる。
「ゴブ! ゴブゴブゴブ!!」
荷物を運んでいる雪人たちに気付いた小鬼が騒ぎ出したのだ。途端に、散っていた小鬼たちが荷物求めてまた帰ってくる。
「ちっ、面倒な!」
「きゃはははは。でも、こっちのが楽しいよねぇ〜」
運んでいた荷物を一旦置くと、再び小鬼たちに向けて構える。
荷物を返せと逆恨みに燃える小鬼の斧が腹の辺りを薙ぐ。痛みを堪えながら雪人は剣を相手に突きたてる。
「ちょっとちょっと! あなたたちの相手はこっちですってば!」
「逃げる者まで追う必要は無いのに。さっさとどこかに行ってくれないかしら」
帰ってきた小鬼たちを追って、ツバメと傀竜もまた戻り、それぞれ手にした得物で小鬼を蹴散らす。
「いやはや、しつこいですねぇ」
「でも、荷物持ちって退屈だしぃ〜。やっぱ楽しい方がいいよね〜」
後方からは万時とマアヤが、機を見て魔法を飛ばし、小鬼たちの動きを止める。
そも、分断されていた際に傷を負っていた小鬼たち。荷物を奪われた(実際は、取り返したに過ぎないのだが)事もあって、勝ち目が無さそうだと判断すると、一匹、また一匹と端からこそこそ離脱していく。
頭に血が昇って攻め上っていた数匹が、我に返った時にはもう自分たちだけ。それでは勝ち目も到底無く、どうしたらいいのかうろたえ出す。
「さ、どうするの? 後はあなたたちだけよ?」
傀竜が錫杖突きつけ問いただせば、言葉が分かったか単に威圧されたか、後ろを向いて這這の体で逃げ出していく。
「えぇ、もう終わりぃ? まだ魔力はいけそうなのにぃ」
「終わりじゃないですよ。これから奪われた食料を村に戻す大切な作業が待ってます」
きっぱりと胸を張って告げるツバメに、マアヤはがっくりと肩を落とす。
小鬼たちが用意していたらしき荷車に食料を積み上げ、万時の万力に曳かせれば、さほど苦労も無く荷物を村まで運ぶことが出来た。
多少喰われてしまったようだがそれは仕方ない。大半は無傷のままなので、村人たちはほっと胸を撫で下ろす。
元の通りの共有倉庫に収めると、村人たちは感謝の言葉を告げて頭を下げる。
依頼報酬を受け取ると、冒険者たちは都へとまた戻っていった。