【寺田屋の台所】 お正月に食べたいの
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■ショートシナリオ
担当:からた狐
対応レベル:フリーlv
難易度:普通
成功報酬:0 G 65 C
参加人数:7人
サポート参加人数:4人
冒険期間:11月29日〜12月04日
リプレイ公開日:2007年12月07日
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●オープニング
それはとある寺田屋での出来事。
食事時も過ぎ、お茶の時間には少し早く。いるのは常連ぐらいのまったりした空気の中、暢気に白湯を啜っていた陰陽師の小町が唐突に口を開く。
「ここって正月用に御節とかお屠蘇とか置かないの?」
「何ですのん? 藪から棒に」
問われた寺田屋の女将・お登勢はといえば、店の仕事も一段落終えた矢先の問いかけに、少々目を丸くする。
「えーだって。毎年お正月も営業してるのに、お品書きは普段と変わった事無かったような」
妙に真剣な顔で突っ込む小町に、お登勢は少し首を傾げる。
「そういうんはお家で食べるもんと違いますやろか? お持ち帰りはともかく、店に食べに来るいうんはあんまり聞きまへんえ」
「でも、家を離れてこの国に来てる人だっているんだし。外国の人向けに日本文化を知らせる為にも置いてみていいんじゃない?」
あくまで食い下がる小町に、お登勢も考え込む。
「そやけどなぁ。店はお休みせぇへんけど、料理人はそうもいきまへん。正月は家族で過ごしたい言うて休む人はいてはりますし、それをあかんとはよう言いません。いつもより人少ないのに、お料理増やす言うんは大変ですよって。御節は手もかかりますし、なおさらどす」
「つまり、お正月に働いてもいいという料理人がいたら、御節出してくれるって訳?」
「‥‥絶対言う訳やおへんけど、考えてもええどすな」
慎重に言葉を選ぶお登勢に対して、小町、言質を得たとにっこり笑う。
「じゃあさ。臨時に人雇えばいいんじゃない? ギルドに依頼出せばすぐよ。冒険者にも料理上手な人はたくさんいるんだし」
戦うだけが冒険者ではない。冒険者ギルドには時に子守や家事代行の依頼だって舞い込んで来る。戦よりもそういう身の回りを得意とする冒険者は多いし、そうでなくても趣味が高じて玄人並の腕を持つ者は珍しくもない。
だが、お登勢は苦笑いで首を横に振る。
「冒険者の方は、いつ出ていかなあかんようなるか分かりまへんから」
源徳背走による東の騒動はまだ収まっていないし、西の長州も話し合いはしたが完全に気を許していいものか。
近くは比叡山の鬼がまたいつ暴れるか分からない。人ならば、めでたい正月ぐらい揉め事を避けるだろうが、物の怪にはそんな事情通じない。
大事が起きれば当然だが、その予兆が察せられた段階でも、京の守りに冒険者ギルドが動いてもらわねば困る。むしろ、前兆かもしれないけど取るに足りない公僕が動く段階ですらない時こそ、ギルドが役に立つというもの。そんな時に、まだ大事は起きてないから店を手伝えなんて言える訳もない。
「確かに、状況ですぐいなくなるかもじゃ雇いづらいわね。とすると、一般の人で盆暮れ正月不休で働いてくれて料理が出来る人を探す必要がある訳ね」
「ただ料理出来るだけやったらあきまへん。うちとこの看板に傷つけん程度の腕前は持っといてもらわんと。けど、師走に入ったらお店も急がしなりますよって、料理人募集してもやって来た人の腕試しにそうそう時間割く訳にはいきまへん」
「うーん、そうかぁ。じゃあ、そもからある程度の力量持った人を見つけなきゃなのね」
渋い顔であれやこれやと考え出す小町。
その妙に真剣な態度に、お登勢は疑問を隠せず、不思議そうに尋ねる。
「そやけど、ほんまどないしたん? いきなりそないな事言い出して。お正月用に新しいお品書き考えてくれるんやったら、いつもみたいにお料理紹介してくれたら考えますよって。御節やのうても、冬の料理は仰山あるし、外国の方かてこの時期に食べるもんとかあるんとちゃいます?」
「う‥‥。そういうのも魅力っちゃ魅力なんだけど」
詰め寄られて言葉に詰まる小町。視線彷徨わせて言葉を捜すが、やがて卓に突っ伏し、泣き言を繰り出す。
「うちの正月、今年も白い餅の消費で追われるのが目に見えてるんだもん。せめてここでぐらいきちんとした御節を食べたいのよぉ〜〜」
小町宅の居候・化け兎は餅搗きが好き。正月は縁起物でめでたいぞと日がな一日餅を搗きまくり、相応の餅を生産していく。
小さい割りにやたら元気な妖怪の所業で、周囲の消費が追いつかず。屋敷内が餅に埋もれてとても大変だった昨年。どうやら今年も同じようになりそうらしい。
「まぁ、料理にしろ料理人にしろ。紹介してくれたらうちかて助かりますさかい、元気出してくれやっしゃ」
それでも、最終的に板長たちが気に入らんかったらあきまへんけどね。と、釘を刺すのは忘れない。
ともあれ、一応承諾は得たわけで、その足で小町はギルドの戸を潜る。
「寺田屋で正月返上して調理場手伝ってくれそうな人を探したいのよ。その為の人手貸して♪」
「それは構わんだろうが‥‥。料理人なんてどうやって見つけるんだ?」
さっそく依頼募集の貼り紙作りを始めながら、何気なしにギルドの係員は問いかけるが。
「やーね。それを考える為の人手じゃない」
その問いかけにあっさりと笑って答える小町。
どうやら、案はさっぱり無いらしい。
●リプレイ本文
寺田屋に御節料理を!!!
陰陽師の小町が抱く切なる願いをかなえる為に、冒険者が集められた。
そもそも、そのような願いを抱く原因といえば。
「わ〜い、むーしむし〜♪」
「ちっが〜〜う! ボクは虫じゃないってば!」
巨大な編み籠に閉じ込められて、鈴苺華(ea8896)が大声で抗議している。あの編み籠を手にしてぶんぶんと振り回しているのは、一見普通の子供に見えるが実は化け兎。うさと皆からは呼ばれている。
兎といえば餅搗き。月見は勿論、正月にもその姿が見られるのは微笑ましいが、度を越えた大量供給はやはり妖怪恐るべし。
昨年それで苦労した小町としては、今年はどこかでまともな物を仕込んでおきたいとの事らしい。
「餅に埋もれる正月‥‥。想像してみたら確かに気持ちは分かるかも」
正月といえば餅。誰だって少しは口にするだろうが、四方八方が餅に埋まる景色はさすがにない。元気に苺華を振り回している化け兎と小町を見比べ、同情する沖田光(ea0029)。
「御節ばかりでなく、正月開けの七草粥とかもいるんと違いますか? 金があろうと無かろうと、季節の行事とそれに伴うお食事を用意するんが京都人の嗜みどすえ〜。私らは外国人やけど、周囲は筋金入りの京都陣の本拠地やし、原則原理は守った方がよろしおすな」
「まぁね。そういう辺りはお登勢さんと交渉次第だけど。とにかく今は! 豪華に御節をかき込みたいのよーーーっ!」
ニキ・ラージャンヌ(ea1956)がにこやかに話しかけるも、卓に突っ伏して泣く小町。
「御節について教えてもらったけど、そんな豪快に食べるものなの? 京都限定?」
「ようは知りまへんけど‥‥京都でも京都以外でもちょっと違うんちゃいます?」
室川太一郎から事前に料理について指導してもらったチップ・エイオータ(ea0061)だが、聞いた内容から想像するものと違い、首を傾げる。まぁ、それだけ食べたい気持ちが強いのだろう。
「しかし、料理人探しと言われても、難しいところですね。寺田屋の口に適わねばならないとなるとなおさらに」
御神楽澄華(ea6526)が軽く天を見つめる。この広い空の下、条件に見合う者たちが果たしてどれだけいるのか。いや、いるにはいるだろうが、向こうとて都合がある。正月も働けとなると易々応じてくれるものか。
「年末年始は確かに店の人だって休みたいわよねぇ。というか、いつでも営業している店って考えてみればすごくえらい人たちなのかも」
いつも利用していると却ってそういう事が気付きにくい。一体いつ休みを取るのか。ステラ・デュナミス(eb2099)は頭が下がる思いで寺田屋を見つめる。
「ひとまず、チラシを持って探してみるとしましょう。待遇は悪くないみたいですから、考える人もいるでしょう。これに小町さんから餅をつけるというのはいかがでしょう?」
藍月花(ea8904)が積み上がった紙の山を手にする。安値の紙には求人内容や面接時間などが丁寧に書き込まれていた。
「うーん、妖怪の餅だし嫌がる人のが多いかもね。前にも御餅料理でお登勢さんには頼んでみたけど、結局駄目だったみたいだし」
妖怪が作ったとて、ただの餅だ。ただ、物の怪を薄気味悪く思う者は少なくないし、それが作った物となるとなんでもなくても勘繰ってしまうのは仕方ない。寺田屋とて一般客が来たりもするし、料理人もまたそうなのだ。
チラシ用の紙はチップに頼まれライル・フォレストが用意してきた。ちなみに、資金は「がんばってもらうんだしー」と小町の支払い。
一枚、二枚では仕方が無い。澄華や月花、ニキたちも手伝って十分な量を用意し、各々それを持って料理人探しに出発する。
「虫、がんばろー♪」
「だ〜か〜ら〜虫じゃなぁ〜いっ! もう、本当に相変わらずだなぁ」
主旨を何処まで理解しているのか。とにかく楽しんでいるうさに、苺華は頬を膨らませる。怒ったふりをするが、本気ではない。うさが江戸に移って久しく。変わらぬその態度は苦笑するしかない。
「じゃあ、行くよ。あ〜と、いーくつ寝〜る〜と♪」
「おしょーがつには餅搗いて〜、も〜ちをこねて〜、もち食べて〜♪」
繁華街に向かう大通り。行き交う人の前で苺華が歌って踊り出すと、負けじとうさも声を上げて跳ね回る。小さな二人――というか、一人と一体――の微笑ましい舞踊に目を向けぬ者はなく、一人二人と足を止める。
「ふっふ〜ん。僕の歌と踊りはエラ〜イ人たちが上手だって誉めてくれる程なんだから」
「むー。お月様が誉めてくれてる歌踊りは負けないもんっ!」
えへんと山が寂しい胸を張るシフールに、対抗意思を燃やしてはりきるうさ。集まった人々の数に、そろそろか、と苺華は高く舞い上がる。
「ねぇねぇ。今、お正月にも働いてくれる腕のいい料理人を探してるんだけど、誰か知らない?」
突然の申し出に、人だかりは各々で顔を見合わせざわつき出す。
「興味のある方、また持ちそうな人をお知りの方はこちらを御覧下さい」
笑顔でチップがチラシを渡して回ると、首を傾げながらも受け取っていく。
「失礼いたします。こちらに貼り紙をさせていただいてもよろしいでしょうか?」
配るだけでなく、目に止まりそうな場所には貼り紙も。無断で貼っては心証も悪かろうと、澄華は家の者にきちんと挨拶をして許可を求める。
「そういう事ですので、ここにある事をこちら様からも口コミで広めてもらえるよう御協力お願いします」
「ああ、分かった。伝えておくよ」
けれども民衆の識字率はけして高くない。チラシが読めなくても耳に入るよう、光は市場を中心に話を広めてもらうよう頼んで回る。
貼り紙で募集する以外でも、直接交渉すべく方々を巡る者もいる。
「新年は田舎に戻ったりするからねぇ。他を当たってくんな」
「そうですか。ありがとうございました」
すまなそうに頭を下げる店主に、ステラもお手数取らせたと頭を下げる。
料理人なら飲食店。そう思って足を運ぶが、成果はなかなか。
向上心のありそうな若い人を狙ってみるが、正月でなければと渋る声も多い。年の初めは妻子と一緒にとか、元気な姿で親孝行とか、親戚づきあいやご近所とか村ぐるみの習慣などの縛りも大きい。
「お腹が苦しくなる前に、せめて一件はいい返事聞きたいわね」
交渉できそうか様子見の為に、まずは客として店に入ってみるが。そうすると飲食店である以上、何も頼まずはまずい。軽めの物を頼んではいるが、数を重ねては段々と厳しくなってくる。体重増加もやや不安。
「えーい、次よ次。数射りゃその内当たるわ」
それら不安を纏めて吹き飛ばすように、ステラは元気良く店を後にする。乗り気でないのに粘っても時間の無駄だし、下手すれば寺田屋の評判に響く。踏ん切りをつけるのは早めに、その分多くを回ろうと次の店に急ぐ。
「ふーん、寺田屋さんがねぇ。まぁ腕試しにもなるし、向こうさんがいいなら若いのを助っ人にやってもいいんじゃないか?」
「本当ですか?」
断られる方が多いけれども、数を頼りにするのは間違いでなく。たまにはそう言ってくれる店もあった。
寺田屋から伝を頼って、店に声をかけていた月花。まじまじとチラシを舐めるように見ていた店主がやがて顔をあげて告げた言葉に、喜びの声を上げる。
日をかけてあちこちに駆け回ると、十名足らずの料理人が集まった。探す側からすればもう少しと思わなくも無いが、条件などを思えば案外こんなものかもしれない。
「噂を元に伝説の料理人も探してみましたが。さすが伝説だけあって、すでに鬼籍に入られていたり、食を求めて旅に出て行方不明になっていたりしておりました。実に残念です」
心の底から悔しさを吐き出すように嘆息付く光。
「いや、別にそんなすごい人を呼んでくれなくても‥‥。そりゃ来てくれたらありがたいけどね。それより、その抱えた食材は何?」
「市場を回っておりましたら、試食を糸口にどんどん勧められまして。気付けば何やらこのように懐も軽く」
「あ〜。まぁ、この後の料理に使えるし。準備ありがとうって訳ね」
集まった食材を確認しながら、ご苦労様、と呆れ半分で小町は労う。
「この後は、手の隙具合や時間を見て、入れ替わりに仕事してもらえばよろしおすな」
「その前に、彼らの腕前拝見といきますけどね」
ニキの言葉に、小町がにやりと笑う。いくら料理が出来ても、それが寺田屋に合わねば双方ともに苦労する。
腕前の披露は、寺田屋の空いた時間を見計らって厨房を借りる事になった。
すると、女将のお登勢は勿論、板場の面子も腕を確認の為に顔を出す。実質面接本番となった大仰さに、料理人たちも緊張した面持ちで厨房に立った。
「じゃあ、御節の中から一品、作ってもらおっか」
チップが開始を告げたと同時、各人きびきび動き出す。店を持たない者は腕を揮う機会だし、送り出された者は自分の店の評判の為にも気合が入る。
「は〜、見事な包丁捌きだよね。こっちの方が勉強させられちゃうよ」
調理に心得のあるチップは技巧にもしっかり目を留めている。
その上で、ちらりと寺田屋たちの方を見れば、皆が無言で厳しい眼差しを向けている。これは本当に邪魔をしちゃまずいと、元々隅でおとなしくしていたのを、さらに目立たぬよう物陰へ移動。そこから作業を見守る事にする。
「それでは出来た物から試食させていただきま〜す。味見ぐらいなら、私でもできますね」
卓の上に、料理が並べられていく。技巧を凝らしても客が満足せねばこれまた意味無し。いただきます、と手を合わせると、ステラはおもむろに箸を手に取る。
「うささんも御節はいかがですか? 美味しいですよ?」
「あいよ〜」
外で、小町から御守りを押し付けられた苺華を追いかけていたうさは、澄華に手招かれて試食の輪の中に入る。
得意料理をとあって、選んだ品目様々。さながら、すでに正月を迎えたようだ。
「小町さん、今の内にお正月気分味っておけばどうかしら」
「そうかもね。ああでも、そんな事言わずにお正月にお正月がしたいわよ」
どうせ今だけだし、と告げる月花に涙する小町。そのお正月に嫌が応無くお正月をさせてくれる元凶はといえば、試食だというのに遠慮無しに頬張っていた。
「これで御節は美味しいと思えば、餅尽くしの正月は避けられるのでは?」
「あ、ま〜い。うさは美味しいから餅を搗くんじゃないの。目出度いから搗くのよ。後は趣味」
幾ばくかの期待を込める澄華だが、即座に小町は否定。食べる以前の問題で、故に消費も何も考えずにひたすら目出度いと餅を搗くのだ。
試食には寺田屋の面々も箸をつける。全員の料理に口を運ぶと、雇うかどうかの結論は後日改めて各人に連絡を入れると約束し、それぞれ帰す。
「いい機会言うんも変な言葉どすけど、品書きに欲しい料理あれば今の内に意見聞いておきますえ」
そうこうする内に、店の方もまた客が入りだして厨房は慌しくなる。
お登勢も接待に忙しそうにしてたが、その合い間を縫うように皆を労い、声をかける。
「はいは〜い。先生から大根の味噌煮付けを置いてもらいたいって伝言を頼まれてたんだ」
「そうですね。御節でも紅白蒲鉾、出汁巻き卵、黒豆、田作り、昆布巻きは別品でもいいので欲しいですね。柚子餅でもいいですが、蜜柑餅もまた食べたいです。きなこ餅と海苔醤油餅を合わせて欲しいですね。そうそう、飲み物に飴湯があればさらにいいのですが」
「煮しめ黒豆昆布巻きとか手ぇかかるもんはお持ち帰りで売ったら、それなりに需要あるんとちゃいますやろか。後は‥‥さっきもお粥とか言うてたんどすけど。挨拶廻りやお参りの人用に雑煮や汁粉を炊きだしてしたらよろしいんとちゃいますか? 雑煮は京風白味噌、汁粉は‥‥何やったら私作りましょうか」
「いや、それはさすがにまずいわよ。という訳で、ひたすら御節お願いっ!!」
賑やかに出てきた意見を、お登勢は丁寧に書き留める。あんまり期待せんといて下さい、とはんなり笑うと、また店の仕事へと戻っていった。
冒険者達は一服してから、本格的に混み出す前に店を後にする。
「連れて来た人、何人ぐらい雇ってもらえるんだろうね」
「さあ。実際どうするかは寺田屋さんの決断次第ですからね」
苺華の疑問に、ステラは静かに首を横に振る。そう酷い人物がいた訳ではなかったが、専門の料理人たちの目に適ったかは、さすがに分からない。
「別に誰も雇われなくてもいいのよ。寺田屋さんががんばって御節を置いてくれるようになりさえすれば!!」
「いや、それはさすがに酷い話ですよというか、僕らの行動も意味無しじゃないですか」
真剣に寺田屋に向けて手を合わせる小町に、光は顔を引き攣らせて窘める。
ただ、小町にしてみればそれだけ大変なわけで。
うさはそんな胸中知らず、冬の月を見上げて辺りを跳ね回っていた。