兎と杵
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■ショートシナリオ
担当:からた狐
対応レベル:2〜6lv
難易度:普通
成功報酬:1 G 69 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:12月20日〜12月25日
リプレイ公開日:2004年12月30日
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●オープニング
とある小さな山には兎が住んでいる。
兎、と言ってもただの兎では無い。人に化けられる化け兎。近隣の人々とも仲良く暮らし――というか。化け兎の我侭を笑って過ごす事に悟りを開いた付近住人かもしれない――、それなりの生活を送っていたのだが。
「うさの杵ええぇえ〜〜」
冒険者ギルドに実に珍しいお客が現われた。人化けしてるのでそうとは分からぬものの、化け兎である。
しかも入ってくるなり、大声で号泣しだす。外見が子供なだけに、正体を知らぬ者が奇異の目を応対しているギルドの係員に向けていた。
「なんでこんなの連れてきたんだ」
「んな事言ったって‥‥」
その係員がさらに嫌味っぽい目を向けているのは、郵便屋シフールである。そのシフールはといえば、胴を綱でぐるぐる巻きにされて化け兎に捕まっている上、体のあちこちからトリモチが下がっている。‥‥何があったか想像付くような付かないような状態だ。
妖怪とはいえ、一体だけだ。人に化ける以外はほとんど能は無いし、何よりギルドには常に暇な冒険者がごろごろしている。暴れられてもさほど恐くは無いが、営業的に厄介である。
早々穏便に退散願えるならそうしてもらいたいのだが、化け兎は泣いてばかりで話にならない。渋々とシフールが自分の身の上を語りだす。
「つまり、もうじき正月だろ? 餅をつきたいらしいんだけど、ご愛用の杵がどっか行っちゃったらしいんだ。探したいんだけど、自分じゃどうにもならないらしく。で、思い出したのが、以前化け狸追い出すのに近所の老人らが人に頼んでたって事で。その際、おいらがここに来たんだけど、そんな覚えてもいなくていい事覚えてたもんだから道案内に捕まって‥‥」
配達途中でいきなりトリモチを投げつけられたらしい。身動きできない内に縛り上げられ、頼まれた言葉は「虫、案内しろ」の二言。抗議したが、態度を崩さない化け兎に根負けして渋々とここに参った次第であった。
所詮は妖怪の仕業。命を取られるよりマシな待遇と思っても腹立ちは紛れず。無愛想にシフールが係員に告げると、そんな心情などお構い無しに、化け兎はますます泣き出す。
「杵、ぴょこぴょこ動いて、うさの事どかどか叩いた〜。追いかけたらいっぱい杵出て、ぼかぼか殴ってどっかいなくなった〜。お祝いあるのに杵無いと、うさ、お餅つけない〜〜ッ。お餅無いとお祝いできないいい〜〜〜っ。――助けろ!」
「「命令形かいっ!!」」
きっぱりと言い切る化け兎に、シフールと係員の声が唱和する。それでも、化け兎は意に介さず。
係員はやれやれと嘆息すると、手元にあった一つの依頼書に目を向けた。
「とまぁ、そう言う訳だ」
泣き続ける化け兎と捕らわれたままの郵便屋を横に、係員は疲れきった表情で冒険者らを前に経緯を告げていた。
「ありていに言えば。妖怪からという事情を差っ引いても、報酬が提示されて無い以上、化け兎の依頼は不成立。本来受ける必要など無いのだが。丁度、というか関連の依頼が来ている」
曰く、タテクリカエシが街道に出るようになったのでこれを退治してもらいたい、と。
「タテクリカエシは杵に憑く妖怪だ。まぁ、傘に憑く傘化けと同種と見ていい。夜道を行く者を集団で殴って死に至らしめる嫌な相手だ。‥‥この街道と化け兎の住処は近いし、さっきの話からして化け兎の杵もこの中に混じっているのだろう」
言って、ちらりと化け兎を見た後。係員は手招きして冒険者らを手近に寄せ、声を潜める。
「先も言ったが、化け兎の依頼は不成立、だ。本来なら気にせず、妖怪退治に精を出してもらって構わない。数が多いらしいが、それ程難しい話ではないだろう。
が、あの化け兎。杵が見つかるまでここからどうにも動こうとしなさそうで。下手に断って暴れられたらまた面倒だし。このままじゃ業務に関わるので出来りゃ何とかして欲しい」
ほとほと弱り果てた様子で係員は深くため息をつく。
「杵を返せば済むんだろうけど、退治したら原型留めてないのがほとんどだし、手元に戻る訳無い。とはいえそれを素直に伝えても聞き入れそうに無いし。‥‥ま、何だったらこのまま杵を取り返したとだまくらかして外に連れ出した上で兎鍋にしてもらっても‥‥ぎゃあああああーーーー!!」
最後の言葉はしっかり耳に入ったらしく。むっとした表情になると化け兎は係員を思いっきり蹴飛ばしていた。
●リプレイ本文
「うさの杵ぇえ〜」
えぐえぐと泣きつづける子供一人。その正体は化け兎。愛用の杵がタテクリカエシとなり、それを取り返して欲しいとの事。
共に杵を取り返そうと、ギルドから連れ出せはしたものの、道中もずっと泣き続けている。その頭を火乃瀬紅葉(ea8917)が優しく撫でる。
「紅葉が一緒に行ってあげますから、落ち着いてくださいませ」
「うん。おばば、お願い。うさの杵、返せ」
じっと見つめてくる化け兎に、紅葉の顔が強張る。性別を間違われるのはよくあるので、この際目を瞑る。しかし、おばばと呼ばれてはさすがに笑顔も凍りつく。
「あのね、兎さん。そんないい方をしていると、他の方は助けてくれなくなりますよ」
困ったように頭を掻きながら、リュカ・リィズ(ea0957)は化け兎に告げる。化け兎はきょとんとリュカを眺めて首を傾げた。
「喋り方を改めておかないと、今後お爺さん達やお友達を助けたいと思って行動しても、誰も助けてくれない可能性も出てきてしまいます。杵さんだってあなたが我侭ばかり言ってるから、妖怪になったのかも‥‥」
「ま、助けろ、って言われたら確かに助けるしか無い訳だけどね」
苦笑する浦添羽儀(ea8109)に、リュカは慌ててしっと口に人差し指を当てて、静かにするよう告げる。
「いいですか? 人にお願いする時は、まず最初に『助けて下さい』ですよ」
「‥‥虫、うるさい」
「虫じゃないですーーーーっっ! 何言うんですか!!」
ぼそっと呟く化け兎に、リュカ、両手を振り上げて大いに怒る。それを見ていた竜太猛(ea6321)もまた、頭を抱える。
「リュカ殿の言う事は至極当然。人に物を頼む時に命令調で横柄な態度はないだろう。頼み事をする際は相手にそれなりの礼を尽くすのが世の理じゃ。そのままでは彼女の言うように、誰も話を聞いてくれなくなるぞ」
告げる太猛に、化け兎はいじけたように顎を引く。
「そう。それに、もう少し言葉遣いに気を付ける良い子になるべきだな。異国ではこの時期、悪い事をすると『さたんころす』なる者に袋叩きにされると聞く。‥‥危険な所だったのだぞ?」
「うさ、いい子だもん!! 悪いの、杵!!」
真剣に告げる天羽朽葉(ea7514)に、きぃっ、と歯を剥いて暴れる化け兎。周囲が宥めて落ち着きはしたが、それでも機嫌は直ってない。
そんな化け兎に朽葉はにこりとあやすように笑いかける。
「人に交わって暮らすのならば、人の作法も知っておかねばな。少なくとも損にはならないだろう」
「はい。それでは改めて、今回の件で皆さんにお願いして御覧なさい。そのお願いの仕方によっては、皆さん、あなたの杵を何とかして‥‥」
途中でリュカの声が途切れた。
化け兎は見るからに不機嫌そうに頬を膨らませている。不満げに口を尖らせるや、突然、その姿が歪んだ。しばし後、そこに立っていたのは着物を着て二本足で立つ兎が一匹。長い耳を苛立たしげに上下させると、ふいっとそっぽを向いた。
化け兎は人化けすると人と話が出来る。すなわち、元の兎の状態では話せない――お話ししたくない、と云う事だ。
「こらっ! いつまでもそのような事をしていると、化け兎の里から鬼兎教官が来て、何ヶ月もみっちりと教育されてしまうかもしれませんよ‥‥って、ちゃんと聞きなさい! 本当に皆で帰りますよ!!」
ひらりと化け兎の前に舞い飛び、指を振りながらリュカが叱るが、それを振り払うように化け兎は頭を振り、背を向ける。
「おやおや。この程度ですねちまうとは、ずいぶん根性が無いねぇ。どこぞの化け狸の方がよっぽど気骨があったよ」
御堂鼎(ea2454)が呆れて告げると、化け兎はやはり嫌そうに耳とヒゲを垂れさせて器用に鼻しわを作る。
「そういや、山寺にいる化け狸らと因縁があるそうだね。あいつら、いつかお礼参りに来たいって言ってたよ」
どんなお礼をしてくれるんだろうね、と、鼎がにやりと笑う。お礼云々は鼎の創作だが、そうとは知らない化け兎は耳をぱたぱた上下させて苛立たしげに地団太踏んでいる。
「まぁまぁ。今から杵退治に行くのですし。‥‥化け兎さんも落ち着いて下さいね」
紅葉が頭を撫でると、嬉しそうに化け兎は目を細める。
「うむ。ギルドを出る際、大人しく邪魔をせぬというなら一緒に、と言うたな? で、どうするのじゃ? もうやめにするのかな?」
太猛が問うと、化け兎はすねたように顎をひく。だが、それも束の間、ひょいひょいと飛び跳ねると冒険者らの側へと擦り寄ってきた。紅葉が笑って化け兎と手を繋ぐと、さらに上機嫌で飛び跳ねる。
「話せなくなったからと言って、聞こえない訳じゃないんだろ? おーい。うちは餅が食べたいねぇ。どこかに恵んでくれる人はいないかねぇ」
耳をつまんで鼎が告げると、嫌そうに耳を上下させてその手を振り払う。
「確かにそうですよね。とにかく言葉遣いは直してくれませんと。現場につくまで、とくと授業させてもらいますよ」
リュカが動く耳を捕まえると、わざと恐い顔で告げる。途端、化け兎の耳がへにゃりと垂れた。
タテクリカエシ。夜道に現われ集団で犠牲者を叩きのめす妖怪である。化け兎の件が無くても放置できる存在ではない。
出ると云う街道を冒険者たちは歩く。暗い夜道にともした灯りは、周囲を明るく照らしているが逆に向こうからもこちらが目立つ。
どこから来るかもわからぬ相手に、一同、緊張しながら周囲を警戒する。
と。リュカの講義に、ずっと耳を伏せていた化け兎が、突然その耳をピンと跳ね上げる。背筋を伸ばして立ち上がり、鼻をひくひくとさせて辺りを見回すや、いきなり猛然と走り出した。
急な行動に唖然とする間もなく。化け兎が飛び出した方角で、草木の踏まれる音が一定調子に聞こえてくる。
「来たのじゃ!!」
太猛が声をかけるや、冒険者たちは一斉に動いた。二手に分かれ、まずは数名が音のする方向へと走り出す。
闇の中から飛び出してきたのは杵だった。古ぼけた杵がどういう原理か自身で飛び跳ね、集団でこちらへと向かってくる。
「兎さん! ダメよ、止まりなさい!!」
羽儀の制止も聞かず、化け兎はその中に脇目も振らずに飛び込むと、他よりも明らかに小さな杵に素早く飛びついた。それが化け兎の杵なのは明白だった。
だが、飛び込んだ化け兎へと周囲のタテクリカエシが即座に殴りかかる。応戦はしているものの、化け兎は杵を捕まえているのでさほど自由が利かない。すぐに囲まれて慌てて逃げようとしているが、捕まえている杵が言う事を聞かない。挙句、するりと化け兎の手から逃げ出すと他のタテクリカエシ同様、化け兎を叩き出す。
「やめぬか! 無抵抗な者を集団で襲うなど許されん事じゃ!!」
拳に力を溜めると、太猛は暴れるタテクリカエシを殴りつける。その一撃だけでタテクリカエシはパキリと折れて倒れ、のろのろと緩慢な動きに変わる。
襲い掛かってくるタテクリカエシを振り払い、地面を蹴る柄に足払いをして転倒させると、素早く化け兎を引き釣り出した。
目を回している化け兎をリュカに任せると、改めてタテクリカエシの群れと向き合う。
「これ以上余計な事を起こす訳にはいかない。‥‥一丁やるか!!」
打ってきたタテクリカエシに西中島導仁(ea2741)が、日本刀を突き返す。両手に構えた二本刀を、タテクリカエシたちは躱す事無く傷ついていく。
「弱いねぇ! 全然効かないよ!!」
タテクリカエシが襲い掛かってくる中を、鼎は悠然と長巻を振るう。着込んだ大鎧始めとする防具の数々で、生半な攻撃ではわずかな傷しか受ける事は無い。重量が増す分動きが鈍るのが難だが、タテクリカエシの攻撃も遅い事もあって、囲まれても脅威とは言い難い。
どかんどかんと殴りつけてくるのにも構わず、長巻の重量に任せて思い切り振るうと、それだけで古い杵はさらにボロと化した。
「夜道を行く人の安全が脅かされるのを黙っては見ておられません。街道の安全の為、消えてもらいます!!」
紅葉の身が赤い淡い光に包まれるや、やや離れた場所から突如マグマが吹き上がる。炎よりも質量を持った熱い柱はその場にいたタテクリカエシを纏めて包み込む。
手ごわい相手らに、しかし、タテクリカエシたちは怯む事も無く、逆に新たな獲物を見つけたのを喜ぶかのように襲い掛かってくる。
応戦する冒険者らをあっという間にタテクリカエシたちは囲い込んだ。
そこへ、新たに隠れていた残りが躍り出る。群れの内側と外側、両方からの挟み撃ちにたちまち現場は混乱した。
「‥‥とはいえ。案外初手の面々だけでも何とかなったんじゃないでしょうかね」
目の前に飛び出してきたタテクリカエシを殴りつけて、李雷龍(ea2756)は苦笑する。そんな余裕さえあった。
移動こそ確かにタテクリカエシの方が早いが、攻撃の動作自体は遅い。雷龍が見越した通り、腕に覚えのある面々。雷龍自身、纏うオーラが攻撃を阻み、無傷とまではいかないが、さほどの傷を受けずにいる。
そんな中での不安材料はと言えば。
「兎さん。無茶しちゃダメですよ。危ないですから」
目を覚ますや、またしても自身の杵に特攻しようとする化け兎を、リュカが必死に留める。手足をばたつかせて飛び出そうとする化け兎の首根っこを必死の形相で引っ捕まえていた。
「早い所、杵を取り返させた方がいいですね」
飛び出していかないか気になり、おちおち詠唱にも集中も出来ず、紅葉は化け兎の杵を探す。
幸い、小さな杵はまだ無事だった。が、それは元気に跳ね回っていると云う事。
周囲に群れるタテクリカエシを羽儀が日本刀で薙ぎ払う。近付いた鼎に即座に小杵が襲い掛かるも、鼎は手盾を使って押し返し、転倒させる。そこに出来た隙をついて導仁が小杵に縄をかけた。
「さて、これでもう逃げ出せないだろ。始末は他のが片付いてからだ」
近くの木に括りつけ、動き出さないようにする。
「これで、後は他の杵に取り憑かせるなりで、元の杵に戻せればいいのだが‥‥」
ちらりと視線を自身の荷の方に動かした朽葉だが、そのまま思わず目を見開いてしまい、繰り出した鬼神ノ小柄がむなしく宙を切った。
視線の先、とてんとてんと杵が跳ねる。何となく見覚えがあるのは、来る前に自分らが探して譲り受けた物だからだ。
「‥‥取り憑かせる前に、他のに入られるとはね」
そう嘆息する羽儀も廃品探しをした一人。
思わず天を仰ぐ朽葉。周囲に目をやれば、あらかたのタテクリカエシに片が付いている。一つ息を吐くと、気を取り直し、朽葉はオーラソードを手にした。
すべてのタテクリカエシを片付けるのにさほどの手間と時間はかからなかった。
「色々と不満もあったんだろうけど。これで素直に成仏しとくれ」
受けた傷を癒したりしている仲間を横目に、鼎は戦闘でゴミ屑になった杵を拾い集めると、持ってきた酒をかける。
これにてギルドからの依頼は無事終了。なのだが。
むしろ手間だったのは、それからとも言える。
何せ化け兎の杵を取り戻さねばならぬ。絶対ではないが、出来ればその方がいい。
まだ比較的綺麗な古杵に取り憑きなおすよう、油をかけて火で脅したりもしたが、杵に変化は一向に表れない。ただひたすら冒険者らに襲い掛かろうとじたばたもがくのみ。
「傘化けと同種という事はアンデッドですからね。知性の程もさもありなんでしょう」
肩を竦める雷龍にリュカも頷く。
それでも。朽葉がオーラソードで斬りつけると、何とか原型を留めたままでタテクリカエシはただの杵と化した。
ほっとして喜んだのも束の間、元の古さが祟ったか、跳ね回ったのが悪かったのか、それとも戦闘ですでに傷が入っていたのか。その全てかもしれない。とにかく、化け兎が元気に振り回すと何の前触れも無くばきりと折れた。
「泣かないで下さいな。紅葉から贈り物です。今回はこれで勘弁してくださいませ」
地面に突っ伏して泣く化け兎に、紅葉は購入していた杵を渡す。店で買ったばかりで新しく、タテクリカエシとして動く気配は無い。
にこりと笑って手渡すと、現金なもので化け兎は喜んで飛び跳ねる。嬉しそうにもらったばかりの杵を振り回して、周囲を大いに慌てさせた。
そして。
江戸に戻り、次の依頼に出向く前に休息していた一同へ、ギルドの方からお呼びがかかる。出向けば、ぐったりと疲れているギルドの係員の前に、人化けした化け兎がにこにこと立っていた。
「あんねぇ、お餅ついたの♪ 助けてくれたからお礼持ってきた」
「よしよし。よく分かってるねぇ」
「依頼とは本来対価が必要なもの。――後出しではありますが、いいだろう」
やや乱暴に鼎が化け兎を撫でると、朽葉が生真面目に頷く。
はい、と差し出された箱の中には、餅もあるが干し柿やら魚やらいろいろと詰め合わさっている。
「あらまぁ。お餅でも嫌とか言われるかと思ってたのに」
内容の豊富さに、羽儀は呆れたように告げる。なま物も多いのですぐに食べてしまわねばならないだろうが、保存食も多少混じっていた。
「それで兎さん? 言葉遣いはきちんと直せましたか?」
リュカがにこりと問いかけると、化け兎はちょっと首を傾げて係員を見上げる。
見つめられた係員はあからさまに目線をそらす。気力の失せた表情が答えそのものだった。