【仮設村】 七夕に願いを
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■ショートシナリオ
担当:からた狐
対応レベル:フリーlv
難易度:易しい
成功報酬:0 G 78 C
参加人数:5人
サポート参加人数:1人
冒険期間:07月07日〜07月12日
リプレイ公開日:2008年07月15日
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●オープニング
比叡山騒動の最中、両方の負傷者を引き受けるべく設立された仮設村。
平織領内近江坂本の南に平織軍は、戦の難を逃れた避難民や非戦闘員を受け入れ、保護された人々は千を越えた。
そこはあくまで一時的な避難所であり、便宜上作られた救護所でしかない。戦が終われば、不要となる場所だった。
が、そうはならなかった。
京都北部及び東部の被害は凄まじく、特に鉄の御所の鬼集団に入り込まれた場所は全くの更地と成り果て、大勢の人が帰る場所を失ったのだ。
勿論、復興支援に都も力を入れるが、瓦礫の撤去から始めて後どのくらいかかるのやら。
行く当てのない人々は、留まる事しかできず、先の見えない仮住まいを余儀無くされる。
意に沿わぬ生活に窮屈するのは当然で、肉体的にも精神的にも疲労は大きい。
加えて、乱続きの京だが、大量の兵に都の中まで入り込まれての乱闘はこれまでに無い。黄泉人の乱は都の前で片がついたし、長州の乱は都内の騒動ではあったが、長州は都の各所を襲っただけで三種の神器を手にするや撤退も早かった。
数千の軍勢が都内で暴れる物々しさ。それを目の当たりにした民の動揺はなかなか治まらなかった。
気を病む人々も多くなり、ちょっとした事で揉め事も起きる。蓄積するだけの疲労と救われぬ現状が、皆の心に重くのしかかっていた。
「このままでは心痛で元気な者も倒れてしまいかねん。事態が事態なので、あまり大仰に騒ぐべきでもないが、気晴らしは必要だろう。丁度七夕の頃合。村民たちの憂いを晴らすべく、何か催してくれないか」
何とも大雑把な話ではあるが、村の運営をしている平織武士も他にやる事が山のようにあり、なかなか手が回らぬようだ。
細かい事含め、騒ぎを起こさぬ限りは何をするか冒険者に任せるとの事だ。
●リプレイ本文
戦火から投げ出された人々。
過去の戦乱、災害、政情不安も合わさって、行き場をなくした人が流れ着き、仮設村は文字通り「村」としての規模を誇る。
が、それはあくまでも見た目だけ。
安定には程遠く、その日暮らしで食い詰める者もまた多い。
せめて、心労を癒すべくささやかな祭でも開いて欲しいとの願いが、冒険者たちに託された。
「まぁ、諍いを仲裁してくれ、なんて話よりはありがたい限りなんだが」
依頼を受けたものの、アリアス・サーレク(ea2699)は苦笑を隠せない。
何せ、七夕祭の手伝いといえば聞こえはいいが、中身は何も決まってない。こちらにまるきり丸投げされている。
それだけ村の運営が立て込んでいるらしいが、外部からはなかなか探れないのも困ったものだ。
ともあれ、任された以上は出来る限りをと、冒険者たちは支度に動き出す。
「父様に‥‥食材や薬草とかと一緒に‥‥お金も持たされましたけどぉ‥‥こんなにいっぱい持っていって‥‥いいんでしょうか‥‥」
白翼寺涼哉から持たされた荷物を抱えて、白翼寺花綾(eb4021)は落ち着かない様子で他の冒険者たちを見上げる。
「障りが無いか聞いてみたが、寄付は大丈夫だ。資金繰りも苦慮しているようで、祭の予算をこっちで工面するのはむしろありがたいらしい。とりあえず、俺からも幾らか出そう」
「私も花綾さんに足しておきますね。これら機軸に、ハレの日の気分にふさわしいように、祭りの献立を一〜二品増やしてみますわ」
アリアスがさらに金を足すと、明王院未楡(eb2404)も財布を取り出す。
「大人数の食料となるとかなりの量だろう。帰りはこいつに乗せれば時間も短縮できる。‥‥そういう訳だから頼むぞ」
琥龍蒼羅(ea1442)が優れたペガサスの首筋を撫でる。
表情も変えず端的な物言いだが、ペガサスは了解したとばかりに翼を広げてみせた。
●
「これが今晩の食材ですから、遅れずに届けて下さいね。奥様方は、折角ですから腕を振るって美味しい御飯にしましょうね」
未楡の呼びかけで、仮設村に身を置く人々からも祭の手伝いに参加する。
「お餅貰ってきたっす〜」
「ふにゅ。うさぎさんが搗いたという‥‥お餅ですか?」
「それが違うっす。新年明けに事件で、兎のお餅は粗方処分したそうっす。だからこれは普通のお餅っす。知り合いの伝頼っていろいろ仕入れてくれたっすよ」
予算に限りがある為、知り合いを回った者もいる。
未楡も花綾と一緒に、懇意の味噌屋などを中心にいろいろと安く仕入れられそうな場所を廻っている。
太丹(eb0334)も知り合いの陰陽師宅で餅を手に入れようとして、「うちは餅屋じゃないぞ」と苦笑された。
輸送に一役買った蒼羅がペガサスで運んだ食料を紐解き、大型の鍋などを使って支度にかかる。
手伝いたちも先々が見えぬ不安で表情は固いが、久方ぶりの楽しい話題に笑顔もちらほらと見えた。
準備が出来始めた頃に、用意されていた笹を立てかける。
「七夕過ぎちゃって叶うかどうか分んないけど、短冊をかけてみよう伝説かもしれない笹っす。こういうのは七夕より先に用意して、何日間かやるべきっすよね」
笹を見上げて、丹が首を傾げる。
七夕名目だが、実際の日付は過ぎている。慌しい中で祭まで気が回らなかったらしい。どっちかといえば、慰安の建前に丁度時期だから七夕使っちゃえという感じだ。
とはいえ、用意された笹は立派なもので。何も言わずとも子供らが騒いで飾り付けを手伝ってくる。
つけられていく短冊の願いは、他愛の無い子供の願いも多かったが、今の苦境の脱出や今後への不安の解消などどこか陰を感じる物が多い。
折角なのでと、冒険者も人に混じって短冊を吊るす。
「自分の願い事は‥‥美兎殿の美味しい料理が毎日でも食べられますように、っすね」
「僕は‥‥母様に会えますようにっ!」
笹に捧げる短冊に、何となく丹の顔がほころんで見える。
そちらには目もくれず、花綾は短冊を結ぶと両手も合わせて真摯に祈りまで捧げる。
「皆が幸せと安寧を取戻せますように。そしてそれが末永く続きますように‥‥と」
「そうだな。特に俺自身の願いは無いが。この村に住む人々が無事に元の暮らしに戻れる事は願っておこうか」
さらさらと筆を走らせる未楡に、蒼羅も思い立って短冊を手にする。
青いしなやかな笹は、願い事が少しずつ増えていき、さやさやと涼しげな音と共に、細長い紙が舞っていく。
「一番いいのは依頼なんか出す必要の無いくらい平和である事なんだろうな」
揺れる願いにアリアスが呟く。
その為に何が出来るのか‥‥。
今は頼まれた七夕を成し遂げるだけだ。
●
笹飾りに大勢の願いが託される。
その傍では未楡たちの食料配布も始まった。
「はいどうぞ。熱いから気をつけて下さいね」
「二列に並んで待ってくれ。量はあるから慌てなくていい」
引き続き手伝ってもらっている女性たちに混じって未楡が御椀に装う傍ら、蒼羅は列の整理に声を上げる。
何せ、祭に興味なくても御飯の恩恵に与ろうという人は多い。殺到して押し潰されたり、待つ苛立ちで暴れる者が出ないよう、注意深く目を光らせる。
「こっちは貰ってきたお餅っす。砂糖もちょっととはいえもらってきたので、贅沢して欲しいっす」
食事が始まる頃を見計らって、丹も餅を焼いて配り出す。
砂糖は高級品だけにむしろ量が揃わず、わずかばかりの物だが。思わぬ甘味に歓喜の声も大きい。
もっとも、油断すると当の丹の腹に収まっている。
「んがんぐ」
「何やってるんだ、全く」
途中、喉を詰まらせのたうちまわったのは果たして天罰か。
「それでは‥‥お星様に願いを込めて‥‥歌って踊らせてもらいますぅ」
腹が膨れて気も静まった頃合に、慰安として歌や舞を披露。
ぺこりと頭を下げて花綾が挨拶をすると、ぱらぱらと拍手が起こる。
アリアスがリュート・バリウスで演奏を始めると、蒼羅もローレライの竪琴で合わせていく。
気が晴れるよう、旋律は陽気でノリもよく。
その曲に合わせて、織姫に似た扮装で花綾が歌い踊る。
格好をファンタズムで作ろうとしたが、生み出された幻影は動かない。踊るには不向きな為断念したが、持ち前の技量の高さでそんな事は気にならない。
未楡も彼女の引き立て役として、天の川を表現するように並んで艶やかに舞う。
歌や踊りを即興で合わせるのも難しいと、祭準備の間に練習を行っている。
その甲斐あって。躓く事無く、見事な演奏と舞を披露する。
続けて蒼羅が、七夕に纏わる曲を幾つか奏する。
浮世を忘れる一時。見事な腕前に、見ていた人々たちも自然笑顔で拍手を送っていた。
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束の間とはいえ、人々の憂いを和らげ、七夕夏祭りは無事に終える。
願いの短冊もまた片付けられたが、人々からはありがとうと感謝の声も送られる。
「もっとも、願うだけで何もしないのでは叶わないがな」
「ああ。やはり行動は大事だ」
今後を考え、仮設村を担当する平織の武士に会いにいくアリアス。蒼羅と未楡がそれに従う。
「物資や食料だが、ただ量を増やせとは言わない。都の瓦礫撤去や建て直しの人足として、仮設村の男衆の一部を雇い、労役の代わりに報酬を得てそれを仮設村の運営に充てる。女性にも炊き出しや作物の耕作などの仕事を与え、給金を僅かでも出せるようにならないだろうか」
「他にも、女子供向けに介助とか。仕事で賃金の得られるようとして取り纏められないかしら」
アリアスの話に、未楡も口を添える。
家も物資も仕事も何もかも。無い無い尽くしでは鬱気も溜まる。
収入を得て働ければ不安を紛らわせられると考えるのだが。
「物資や食料は、供給してくれるアテが無い事にはこちらも限界がある。働き口の世話はしているが、その収入は個人のものだな。一部から金を取るのは反発を招きそうな‥‥。かといって、全体から取るなら働けない者をどうするかとかあるな」
避難民としての立場は皆同じ。仮の宿りなので、村の為にという気概も薄い。幾ばくかの金を手にしてアテが出来たらさっさと村を去る者も多い。
それでいいのだが、行動力のある若者から身軽に出て行く為、残るのは年寄りなど働けない者が多くなっていく。今はまだそれ程でもないが、行くアテの無い者をどうすべきかなど課題は多い。
自分だけの裁量でどうこうも出来ぬから上司に報告すると、武士は告げ。
とりあえず、今回はいろいろありがとうと恭しく頭を下げた。