罰当たり大決戦 〜京の桜は何故に降る〜

■ショートシナリオ


担当:からた狐

対応レベル:1〜5lv

難易度:普通

成功報酬:1 G 35 C

参加人数:7人

サポート参加人数:2人

冒険期間:04月16日〜04月21日

リプレイ公開日:2009年05月01日

●オープニング

 黄泉大神・イザナミの侵攻。
 無数の死者を引き連れ、京に入らんとした彼女の行動は、大勢の活躍により阻まれた。
 しかし。
 彼女が引き寄せた多くの災い。その余波は当分晴れる事は無い。


「このようなゆゆしき事態、あっていい筈がない!」
 京の一角、陰陽師の小町邸。素っ裸の美少年たち四名が、非常に緊迫した面持ちで声を張り上げる。
 いや、人に見えても人でない。人に化けているだけで、その正体は妖怪・化け狸。‥‥よく知る者は馬鹿狸と呼ぶ。
「春は桜。酒に踊りに歌、悲鳴! あらゆる楽しみが奴らのせいで台無しだ!」
「愚民どもの嘆きはどうでもよい! だが、我らの娯楽を奪った事は万死に値する!」
「だが、あのようなぐろむちゃれのずるずるプンプンになった人間などに、尊き我らが直接手を下す間でも無い!!」
「「「「なので、兄さん。スカッと一発やっつけてやって下さい!!」」」」
「俺を巻き込むな」
 なぜか自信満々に土下座して頼む化け狸たちに、小町邸の居候妖怪・山猫獣人の猫が一発ずつ頭を叩いて答える。
「‥‥つまり。あんたたちが花見をしようと思ってたら、そこに死人がいて、やっつけるのは気持ち悪いからどうにかしてくれと猫に泣きつきに来たと」
 傍で聞いていた小町が呆れて告げる。
「「「「ふっ、下賎な言葉で語ればそうなるな!!」」」」
「俺に押し付けるな」
 威張る狸たちがまた殴られ。
 それはどうでもいいが、死人がうろついてるという情報は、確かに気になる。
「イザナミが連れてきた雑魚や、瘴気にあてられた起き上がりとかがまだまだ多いのよね‥‥。統率が無い分、どこにどう潜んでるかも分からないし、どれだけいるかも‥‥ね。少しずつ見つけて片付けている所だけど、いつまでかかるのやら」
 憂鬱そうに肩を落とす小町。陰陽寮勤務の身だけあって、その手の情報は事欠かず。
 京の防衛には成功したが、防衛に当たった軍もまた相当数が壊滅的被害を受けている。
 また、江戸からは伊達政宗公じきじきの援軍に来てくれたが、その為江戸の防衛力が低下した事は否めない。
 この一戦だけで、東も西も大きく軍事力が損なわれてしまったのもまた実情だ。
 さらに、京ではイザナミの残り香に惹かれたか、低級アンデッドたちがあちこちで活発に蠢いている。
 生き残った者たちだけで、戦の後始末、被害からの復興、都の防衛とあらゆる事をこなさねばならない。
 まだまだ、戦は終わったとは言いがたい。
「とにかく、馬鹿たちの花見はともかく、聞いた以上は奴らをそのままにしておけないわ。ギルドに話は通しておくわね」
「「「「はーっはっは、我らの花見の為。思う存分働くがいい!!」」」」
「あんたたちの為じゃないってんでしょ!!」
 笑う化け狸たちに、小町が八つ当たりちゃぶ台返し。重い木の卓に、四匹纏めて潰される。
「あーでも、結果的にはそうなっちゃうのかもね。気分悪いけど。‥‥で、現場はどこよ」
 死人を退治しても、桜まで倒す必要はない。安全になった場所を化け狸らがどう使おうと、人に迷惑をかけないならさほど問題にならない。
「うむ、昨年見つけた素晴らしい場所だ」
「しかし、愚民たちが愚かにも我らを追放し、苦渋を飲むしかなかった」
「今年こそはと赴いてみれば、先住者も一緒になってすでに盛りあがってるとはけしからん!」
「我らが遠慮し、人が来ぬからと目をつけておったのに! 死んでまでワシらに迷惑かけるとはまっこと人間は無粋なり!!!」
 告げる化け狸たちに、即行、鬼の形相で小町からサンレーザーが飛んだ。 
「去年の話って、聞いてるわよ! あんたたち、墓場でまた花見する気かーっ!!」
 吹っ飛んだ狸たちにとどめのように蹴りつけるが。 
「あー、げしげし踏みつけるのはいいが‥‥その程度じゃ、そいつら喜ぶだけだぞ?」
「「「「あは〜ん。我らの野望はくじけやせぬぞ♪ 今年こそはお花見じゃ〜〜〜♪」」」」
 何かハァハァ言いながら笑う狸たちに、猫もただ呆れる。


 ともあれ、冒険者ギルドに死人退治の依頼が入る。いるのは死人憑きばかりで、数は十数体ほど。そう難しい依頼ではない。
 面倒臭いのは、死人憑きを退治後に、その後で化け狸たちが墓場で花見をしだす事だろうか。まぁ、道徳がどうとかいった所で、所詮は妖怪のやる事だし、人間であっても価値観それぞれ。
 問題無しと思うなら、別に放っておいても構いはしない。
 依頼人の小町も、状況把握を兼ねて同行はするようだが‥‥。
「なんで、うさも準備してるの?」
「むー? 馬鹿狸ボコリ大会なら、うさも行くぞ?」
 小町宅の居座り妖怪・化け兎のうさ。話聞きつけて、狸成敗に向かう気満々。
「‥‥猫はどうするの?」
「‥‥ま、見物ぐらいには行くか?」
 どうしたものかと頭を押さえる小町に、実に生真面目に猫は告げた。

●今回の参加者

 ea1956 ニキ・ラージャンヌ(28歳・♂・僧侶・人間・インドゥーラ国)
 ea3891 山本 建一(38歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 eb0334 太 丹(30歳・♂・武道家・ジャイアント・華仙教大国)
 eb0764 サントス・ティラナ(65歳・♂・ジプシー・パラ・イスパニア王国)
 ec6200 ユーア・クルージオ(29歳・♀・僧侶・エルフ・インドゥーラ国)
 ec6340 チェザレ・ボルボ(53歳・♂・神聖騎士・人間・神聖ローマ帝国)
 ec6357 チェルッカ(32歳・♀・チュプオンカミクル・パラ・蝦夷)

●サポート参加者

白翼寺 涼哉(ea9502)/ 陽 小娘(eb2975

●リプレイ本文

イザナミ侵攻の影響。
 各地に蠢く死人憑きたちを退治するのは、当然の事。放っておけば、生者にどんな被害が出るか分からない。

 ‥‥というのは分かるのだが‥‥。

「敵影発見! お墓に死人がいるのは当たり前っすけど、動かれたくないっすね〜‥‥」
 死臭漂う墓地をうろつく死人憑きたち。舞い散る桜の美しさが、その異様さをより際立たせるかのよう。
 妖しい景色に太丹(eb0334)は身震いし、魔よけのお札を強く握り締める。
「桜やお墓などは荒らさないよう注意して。その上で、死人憑きはカルキと一緒にちゃっちゃと片してしましょ」
 ややうんざりげにニキ・ラージャンヌ(ea1956)は愛馬ペガサスの首を叩く。いや、気落ちしているのは死人憑きらが原因ではなく。
「私は前衛に出ましょう」
「じゃあ、自分、オーラパワーかけるっす」
 すらりと抜かれた山本建一(ea3891)の日本刀・水無月に、丹は自身のオーラをかける。
「「「「ふっ、方針は決まったな。とくと働け、愚民たち! 我らの花見はお前らにかかっている」」」」
「五月蝿いわよ」
 緊張する冒険者らからさらに遠く後ろに引き下がり、なぜか胸を張っている狸四匹。即座に小町が荷物を投げつけ黙らせる。
「悪霊退散とは厄介ネ〜。何故、ポンポコ〜ズのために戦わなきゃならないネ〜」
「「「「はっはっは〜、それが我らの人徳というもの!!」」」」
 いつもの特徴的な笑みはそのままだが。どこか悲劇的に嘆いているサントス・ティラナ(eb0764)に自信満々で答える狸たち。
 死人憑き退治が終われば、そのまま花見する気満々。罰当たりは今に限った事でないものの、それを笑って見過ごすにはちと場所が悪すぎる。
「‥‥どうでもいいが。なんで一匹青狸なんだ?」
 何とも言いたげな冒険者たちをさらに傍観していた猫が、狸の一匹を指差す。
 人間形体で素っ裸の化け狸たちだが、一匹はさらに青い塗料を塗りたくられている。ちなみに、そいつが狸形体になると毛剃りされててやっぱり素っ裸だったりする。
「マヰスタの仕事ネ〜。こうすると、ポンポコ〜ズがミーの仲間に見えると言ってましたが、ボーズになろうがブルーになろうがミーの様なイケメンには程遠いネ〜?」
 白翼寺涼哉がわざわざコアギュレイトかましてまで、仕上げたとの事。
 最後、微妙に問いかけの口調でサントスは小町たちを見る。
 頷くか、否か。言外に答えを迫られたが、
「そ、そんな事よりとにかくはあの死人憑き退治よ。四人しか来てないけど、あなた達の実力なら楽勝よね♪」
「そうだな、ま、がんばれ」
「おう、マイワーイフより微妙な反応あるネー」
 小町たち、目線を死人憑きに向けると勢い良く指示を出す。


 うろつく死人憑きは十三体。所在無げに、墓地をうろつく。
「ムーフーフー。ミーのシャイニングパワ〜を見せてあげるネー」
 丹からやはりオーラパワーをかけてもらって、ダズリングアーマーをかける。
 死人憑きたちへと飛び出していけば、気付いた奴らが虚ろな目を向けてきた。
 握りきった目に、その輝きはどう映ったか。それを確かめる前に、サントスは蹴散らしにかかる。
「こちらも行きます!」
 建一も間合いを詰め、死人憑きたちを斬る。威力の上がった刀は、易々とアンデッドを切り裂く。
「気持ち悪いっす。でも、怯んでられないっすね」
 気合を入れなおすと、死人憑きに丹は拳を叩き付ける。
 両手に構えるホーリーナックル。力を溜め込み繰り出せば相手の腹には穴が開き、投げ飛ばせば腕がもげ、強く踏み込み打ち付ければ相手は骨ごと腐汁を撒き散らす!
「‥‥吐きそうっす」
「ドンマイ、ドンマイ。その程度でめげないで」
「「「「そうだ! すべては花見の為に!!」」」」
 ちょっと鬱になりかける丹に、外野からは無責任な応援が飛ぶ。狸は勿論、小町も安全圏から応援している辺り、ちゃっかりしている。
「数多いんが面倒ですわなぁ」
 攻撃一辺倒。あちこち腐れかけの身体とはいえ、一応人並みには動いてくる。下手に囲まれるとニキとしては不利。
 なので、カルキとあわせ、なるべく遠距離から魔法を仕掛けて接近を阻止。
 ホーリー、ブラックホーリー。聖なる輝きを前に、死人憑きたちは抵抗できずに浄化される。
「ムーフーフー。こちらも負けてられないアルネー」
 サントスが詠唱すると、屈折した太陽光が死人憑きたちを射抜く。

 戦闘自体は苦戦も無く。慌てず騒がず十三体を元の死人に還す。
「それでも少し荒れてしまいましたなぁ。迷わんと、成仏してくんなまし」
 墓石についた肉片を落とし、出来うる限り遺体も整え、ニキは手を合わせる。
 化け狸たちも、いそいそと遺体の手入れを手伝っている。ただ扱いはかなり雑。その目的はといえば、
「よぉし! それではお花見だー♪」
「「「おお、ぽん作! 待ってたぞ」」」
 片付けた敷地の上に、ばっと広げる玉敷物。いそいそと値札付きの酒や食い物を運び込む辺り、気分はすでにお花見全開。
「とぅ!」
 そこへ、ひょいと出てきたのはうさ。それまでずっと大人しく見学していたが、もういいだろうとばかりに化け狸に杵を振り下ろす。
「「「「何をするか! 花見を邪魔するとは無粋なアホ兎め!」」」」
「むー! 綺麗なお花に悪狸は似合わないの! 大人しくどっか行っちゃえー!」
 たちまち辺りはまた騒々しくなる。
「こら、ぽん殿! お花見するならまずきちんと片付けてからっす! うさ殿も今日のところは、ぽん殿と協力して片付けっすよ。それが終わったら餅つきでもして、お花見っす。
 小町殿も妖怪たちをちゃんと監督するっすよ。一応保護者なんすから」
「狸どもとはただの知り合い! ってか、そいつらとは縁切りたいんだけどねぇ」
 丹の小言に、小町は即座に訂正。
「「「はーっはっは! 今日の我らは一味違う! お前らなど恐れはしないぞ。なぁぽん来!」」」
「その通り! 見よ、この青さ! そこのハゲが似てるだと!? たわけ! 我らの究極至高に追いつけるものか!!」
 青狸。何も気にせず胸を張る。
「ヌヌヌ! ユーはミーを怒らせた! かくなる上は猫鍋ならぬ狸汁ネ〜! トゥ!」
 あまりの暴言に顔を真っ赤にするサントス。天高く飛び上がると、そのまま衣服脱ぎすて漢の褌一丁で着地!
「仏罰戦士ボーズゴ〜ルド参上アル! 華国四千年に伝わるミーの根義裁きとくとご覧アレヨ〜? シャオニャン特製マジックスパイスもあるヨ〜♪」
 根義という名の特注葱を両手に握り、化け狸たちに向かって宣戦布告。
「「「「出たな! ボーズマンめ! 今日こそは目に物見せてくれるわ!!」」」」
「むー! 目に物言うのは馬鹿狸たち!!」
 身構える四匹に、不愉快至極とうさは杵を振り回す。
 まさに一触即発。戦いの嚆矢は放たれようとしたが、
「お墓で騒ぐんは罰当たりますえ」
 ニキがため息一つ。ディスカリッジを唱えると、化け狸たちが陰鬱に落ち込む。
「ふ‥‥明日という字は‥‥明るい日‥‥」
「希望は僕らの旗印〜‥‥」
「泣くな! 多分いい事なんて‥‥あるわけ無いさ‥‥」
「期待しなけりゃ‥‥嘆かない〜」
「うるさいっ!」
 思い思いにぶつぶつと嘆く狸たちに、うさが容赦なく杵の鉄槌。弾かれた狸たちが地面に着地するや、穴が開いて土砂が舞い、縄にぶら下がって岩が落ちる。
「ムーフーフー。そういえば、マイワイフが罠張ったと行っていたアルネー」
 目を回している狸たちをサントスは何でもない事の様に笑う。罠を張ってもここまで綺麗に決まるか。案外、馬鹿に対する陽小娘の怒りが呼んだのかもしれない。


「じゃ、こいつら和尚の所に放り込んでくるわ」
 気絶している狸たちの首に縄かけて、猫が一応の宿主の所まで届けに行く。
「いいんですか? あれ」
「いいんじゃない? こっちの調査もおかげで捗ったし」
 首を傾げる建一に、小町はあっさりと告げる。
「ご遺体の方もきちんと埋葬させてもらいましたし。せっかく桜も綺麗なんやから、ほんまにどこかでお花見していくんもよろしおすな。うさにはに」
 人参もある。と、告げる前に、ニキの手からさっさと獲物をもぎ取るうさ。素早い動きに、ニキは苦笑するしかない。
「ムーフーフー。働いた後の花見サイコーネー。馬乳酒と雛あられは差し入れするヨー」
「あらいいわよ。馬鹿たちの件もあったし。ご苦労様で奢るわよ」
 笑うサントスに、小町も笑顔を見せる。

 静けさを取り戻した墓地に桜が降る。
 ただ、その静寂も花の宴も、明けぬ戦禍に出来たほんの一休止でしかない。