新撰組四番隊 〜小悪党〜

■ショートシナリオ


担当:からた狐

対応レベル:6〜10lv

難易度:普通

成功報酬:3 G 9 C

参加人数:4人

サポート参加人数:-人

冒険期間:05月27日〜06月01日

リプレイ公開日:2009年06月05日

●オープニング

 京の闇は深い。
 西はイザナミ率いる死人の群れ。東は生者の戦禍が渦を巻く。いずこより来るか、悪魔と呼ばれる物の怪も跋扈し、鉄の御所は依然揺るがず。
 ほんの数年前までは妖怪だ悪党だのの対策に、京の都を様々な組織が息巻き血を降らせていたが、それもどこに消えたのか。新撰組の独壇となるも、かの者たちとて何が原因でひっくりかえるか知れぬ、危うい組織だ。
 変わらぬ日常に見えても、荒む世情は心に染み入る。
 絶望しか見えなくなると、人の本性もまた見えてくる。

「スリを探してくれ」
 冒険者ギルドに現れた新撰組四番隊組長・平山五郎が相変わらずの仏頂面で告げる。
「各所の対応で役所の動きも端々まで行き届かない。そこに付け込み、どうやら抜け荷を働く商家がいる」
 不当な利益で金を溜め込まれれば、この御時世だ、世を操作するのもまた容易い。だが、袖の下やら価格操作やら金に物を言わせて好き勝手されては、いずれ泣くのは世の大勢だ。
「密かに調査させてはいるが、証拠となるようなものをなかなか掴まさない。それで手をこまねいていたが、意外な所で襤褸を出しそうだ」
 商家の主が、表の商談で出かけた際に財布を盗られたらしい。
 盗ったのは子供たち。
 この不安情勢で親を亡くした者も多く、そういった者が下に寄り集まって徒党を組んでいる。その一つだという。
 子供といっても侮れず。
 例えば集団で鬼ごっこでもしているかのように走り寄ってくると、隠していた刃物で袂をばっさりと斬る。
 和服の御仁はそこに物を入れている事も多い。それを素早く拾い集め、慌てた主人が屈んだところで懐の物も失敬。
 後は体躯を生かして狭い路地などに逃げ込んでしまう。路頭に迷う人々が無造作に建てる小屋もあって、京の街も入り組んでいる。その全てを当然のように熟知しており、どんな抜け道を使っているのやら。
「その主もその手でやられた。まぁ、盗られた物など奴らにとっては微々たるものだろうが、その中にどうやら肝心の物があったらしい」
 商談相手か確かめるのに、割符を使う手があるが。
 どうやら密貿易相手の割符を盗られてしまったらしい。
 それが無いと裏家業に関わる。それで密かにごろつきを集め、物を取り返そうと子供のスリらを探しまわっているそうだ。
「割符と密貿易と商家の関わりが分かれば、捕まえるのも容易い。まぁ、子供らにとって割符など腹の足しにもならん。処分している可能性もあるが、その時は、商家がごろつき雇って子供を手酷く狙うのを押さえられたら、それを理由に吐かせられる」
 簡単そうに告げる平山だが、その裏でどれだけ物騒が起こるのか。ちょいと考えると首を傾げたくなるが、賢明なギルドの係員はただ黙って頷く。
「なので、とりあえずそのスリの子供を抑えたい。だが、問題もある。擦った子供の顔が分からないのだ」
 忌々しげに火傷の痕がある左目を細める平山。
 商家は擦られた本人ゆえ、顔を間近に見ている。
 が、擦られた話は聞いていた故それとなく治安目的で新撰組が探りを入れたが、やはり滅多に吐こうとしない。ごろつきを探せればいいが、おいそれとそっちもどこの誰やらか分からないのだから困ったものだ。
「もっとも子供とはいえあれだけ人数のいる集団だ。縄張りもあるだろうし、ある程度の目処は付けられよう。
 ただ、この騒ぎで奴も用心深くなっていて、こちらではなかなか動きづらい。商家自身の内偵もやらねばならんので、手が足りず、故にこちらの力を借りたい」
 平山が告げると、係員は承知したと頷く。断る理由は特に無い。
「この程度に労力を裂くのも何だが、何せ資金不足なのでな。ここらで金子を調達せねば組も立ち行かん」
 とはいえ、さらりとやっぱりひっかかる事を述べる平山。
 都の治安の為にどうすべきかは口をはさむ事でも無いか。

●今回の参加者

 ea2445 鷲尾 天斗(36歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 ea9689 カノン・リュフトヒェン(30歳・♀・神聖騎士・ハーフエルフ・フランク王国)
 eb1645 将門 雅(34歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ec4507 齋部 玲瓏(30歳・♀・陰陽師・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

 世が乱れれば悪党蔓延る。
 なかなか尻尾を掴まさない相手に、手をこまねいていた新撰組四番隊。
 ひょんな事で好機が訪れたが、子供探しまでする余裕が無いとギルドに依頼を申し出る。
「商家の事やったら一言声掛けてくれてもええのに〜。あっ、高つくからあかんか」
「全くだ。お前の店ほど高くつく所は無い」
「うわなんかものごっつう真顔で言われたがな。うちとこはいつでもニコニコ良心価格やで」
 御無沙汰してたと挨拶がてら軽口叩く将門雅(eb1645)だが、四番隊組長平山五郎は素っ気無い。
 すでに聞く耳無しと言いたげに別の方を向いている。
「子供ばかりのスリ集団‥‥。掏った財布が悪党の証拠とは‥‥。捕縛の為に、その子を探して捕まえる。四番隊組長さまのお話はごもっともですが、お子たちもそのままで良いことは決して無いはず」
 齋部玲瓏(ec4507)は憂いの表情を見せる。
 子供たちとて好き好んでスリ集団という境遇に堕ちた訳ではない。幸せに暮らせるなら、それが一番いい筈だ。
 思う事はいろいろあるが、それも子供らを見つけて事件の糸口を見つけられねば始まらない。
「盗られた財布の特徴は分かっているのでしょうか? あるいは、その商家さまがどのような風体でいらしたかなど」
 玲瓏の問いに、しかし平山は微妙に眉を潜めた。
 風体については周囲の目撃例があるので、簡単に知れる。
 けれど、財布に関しては、とっとと子供らが持ち去ってしまいあまりはっきりしない。商家からも話は聞いているが、向こうは組が見つけたら困る品。嘘をついている可能性は高かった。
「禍に紛れて私腹を肥やす、火事場泥棒などもはや珍しくもない。叩いてもキリはないが、叩かなければ世が淀む‥‥。ならば、くさらず何度でも叩き続けるのみ」
 財布は商家にとって今後に関わる大切な物。その為ごろつきを雇って、向こうも子供らを捜そうとしている。
 もし、先に見付けられればこの機会を闇に葬りかねない。
 見逃すなどは到底出来ず、カノン・リュフトヒェン(ea9689)が強気の姿勢を見せる。
「悪を挫くが俺たちの務め。手がかり少なかろうが見つけ出して見せるさ。‥‥ちょっと気に触る懸念もあるがね」
 新撰組一番隊の組長代理の鷲尾天斗(ea2445)。一見人好きのする笑顔を向けているが、その目はあまり陽気とはいえない。
 むしろ怪訝な眼差しを平山に向けるが、相手は素知らぬ風。
「では、後は頼んだ」
 素っ気無く告げると自身の仕事に戻っていった。


 子供らを見つける為に動く冒険者三名。
 とは別に。ごろつきの方から見つけ出そうとカノンは一人で動き回る。
 京の都も表向きは整って見えるが、一歩裏に回れば投げ出された人々が徒党を組んでいるのも珍しくなくなってきていた。
 子供らはそういう場所に逃げ込もうとする。ならば探し回る方もそういう所から当たる筈。
 そう踏んで、カノンはそんな吹き溜まりの場所を回っていた。
 なるべく周囲に溶け込むよう、髪を乱して襤褸の服を纏いなどしたが、女と分かるやいきなり暗がりに引き込まれそうになったり、値段を聞かれたりとなかなか気が抜けない。
「異人さんも可哀想にねぇ。京も前はもうちょっといい所だったのに‥‥」
 それでも話せば分かる人もいる。お互い様だと食料を渡せば、さらに上機嫌で話を合わせてくる。
「そういえば、最近やけに柄の悪いのが動き回って人捜しをしているようだが、なんだろうな」
「女衒だろう。嬢ちゃんも気をつけろよ」
「いや、それが探す相手は決まっていて、しかも子供らしい」
「ああ、それなら知ってるよ」
 ぺろりと口を出してきた親父に、カノンは内心で喜ぶ。
 そんな感情は表には一切出さず。興味本位を装ってさらに情報を聞きだす。
 ごろつきの行動・風体は元より捜す子供らの人相なども聞き出せば
「子供はちょっと行った辺りでよく見る顔だったんで、そう教えたんだが。なんか物騒だし、忠告してやった方がよいかねぇ」
「やめておけ。妙な気起こして巻き込まれるのも面倒だろう」
 下手な手出しは返って危険。
 ごろつきに話したと不安がる親父に、カノンはさらりと告げる。
 それもそうだな、と相手は卑屈に笑う。
 親切心よりまず保身。悪い事ではないが、出来る事すら放棄しようとしてしまうのは‥‥やはり心の荒みだろうか。
 

 子供らを捜す残り三名。
 掏られた現場も調書に残っている。そこを中心にまずは探索の手を広げる。
「こんにちは。ちょっといいですか?」
 遊んでいる子らを見つけ、玲瓏が優しく微笑む。
 不信そうにはされたが、上品な態度がよかったのか、露骨に逃げたりはされなかった。
「えっとですね。親御さんを亡くした子たちが集まっている所とか知らないですか?」
 笑みを向けたのに、子供らはむっとした表情で睨みつけてくる。
「あいつらとは遊んじゃダメってお母たちが言ってるんだ」
 素性が知れぬ、素行が悪いとなれば倦厭するのも世の常。親からみれば、遊び半分で妙な事に巻き込まれるのもたまらない。
 親の言いつけを聞くいい子ら、とも言えるが、しかし、その中で不安そうにさっと目を逸らす子供がいたのを、玲瓏は見逃さなかった。
「そうですか。この間、ここら辺で大人が財布を盗られた事件を知ってますか? 実はその人が恐〜い人に頼んで犯人を探しているらしいのです。間違えられても困りますので、お友達にも注意するよう伝えていってもらえないでしょうか」
 困ったように告げると、話の内容から子供らもおっかなびっくりに頷く。
 そのまま分かれ、別の場所に行ったフリをして物陰で見ていると、子供たちはまた遊び始めるが、どうも玲瓏の話が気になる様子。
 その内、先ほど目を逸らした子が何かを告げて、遊びの輪から抜けた。
「では行きましょうか。場所が分かれば、三笠様、連絡役をお願いします」
 人化け中の三笠大蛇が歌って返事しかけたのを慌てて止めると、玲瓏は気を取り直してその子供を尾行し始めた。

「なんか最近物騒やねぇ。スリが多いって聞いたけど? なんでも子供ら言うやん」
「まぁねぇ。この間もどこかの商人が袖切りにあって大慌てしてねぇ」
 御近所の商店中心に歩き回るのは雅。商売口調で問えば、相手は何とも無い風に肩を竦める。
「怖いもんやね。うちも気をつけにゃあかんわ」
 適当な品を見繕って、金子を払う。わざと重そうな財布を巾着から出すと、店の者もさすがに、早く仕舞え、と忠告する。
 口では礼を言う雅だが、実の所、この財布が重要。要は掏りを呼ぶ囮なのだ。
 道には人通りは多いとは言えないが、少ないとも言えない。遊び回る子供らの姿も目につく。
 さて、次はどの店に行こうかと辺りを見回していると、不意に後ろから追突された。
「うわっ!」
 勢い余って転びそうになるのを踏みとどまる。が、前のめりになった先でふと手の感覚が軽くなった。
 あっと思う間も無く。裂かれた巾着から、ぼたりと財布が落ちた。素早く手を出したのはぶつかってきた子供だ。
「こらーっ!!」
 拾う親切心ではなく。子供は財布を懐にしまうと路地裏へと逃げてしまった。
「見事な手際だなぁ」
「感心しとらんと。はよ追っかけるで!」
 若旦那風に装って、雅の傍にいた天斗は当然一部始終を見ていた。
 暢気な彼を窘めて、雅はさっさと追いかけようとする。
「お前さんの忍犬も追いかけているし、帰る場所もおおよそ見当ついてるから心配するな。だが、早くしろというのは事実だな。ゴロツキ猫に掠め取られたら意味無いからねぇ」
 きな臭く顔を顰める天斗の後ろでは、カノンと、三笠さまの姿があった。


 親を失くして生活するのは並大抵な事ではない。
 郊外に近い古い御堂は雨風凌ぐのがやっとな感じ。そこに十人ほどの子供らが群れていた。
 その中にいきなり二匹の柴犬が飛び込んでくれば、たちまち甲高い声が響き渡る。
 そちらに乗り込んだのは、雅と玲瓏の二人。
「止めや! ほんでボクはこれ、返してもらうで」
 二匹が押さえこんだ一人の少年。にやり笑って雅はその懐から財布を抜き取る。
「返せよ! 俺んだぞ!!」
「違うやろ。巾着には香焚いてあって、これにもよう匂いが移っとる。干将、莫耶もその匂いを追ってあんたに辿り付いたんや。‥‥巾着かて安う無いねんで。えらい出費や」
 じろりと雅が睨むと、少年は不満げにそっぽを向いた。
 他の子供たちはじっと雅らを睨みつけている。助けるか逃げるか、その機会を覗う強い目は子供の物とは思えない程鋭い。
「おい、そいつ離せよ。お前らが狙ってんのは俺だろ」
 冒険者たちも手荒な真似には出たくなく、お堂から声がかけられた。
 出てきたのは十代半ばぐらいの少年。彼が出てきた途端、他の子らの態度が変わった所からして彼がまとめ役という所か。
 そして、彼について出てきた彼らに比べて身なりのいい子は、玲瓏の顔を見て身を硬くした。
「ごめんなさいね。何か知ってそうだから貴方の後をつけたの。でも、勘違いはしないで。その子を探している怖い人がいるのは本当なの」
 皆には内緒で遊ぶ事もあったのだろう。玲瓏の話で不信な態度を見せたその子は、あの後まっすぐここに忠告しに来ていた。
 子供の人数は合うし、スリまで働いたとなれば、探していた集団と見ていい。
「実はこの間の商人から掏った財布に、悪事に関わる品が入っていたのです。それで、危害を加えられる恐れがあるから、一緒に四番隊まで来てもらえないですか? その品を持っていけばお手柄で褒美だってもらえますよ」
 褒美、の一言に皆は目を輝かせたが、大将は顔を顰めた。
「役人の世話になんてなるものか。大体、その怖い奴らの話もどこまで本当だよ」
「あいにく全部だ。目先の危険は摘んだが、大元を断たねば何度でも来るぞ」
 重そうに両手に荷物を引き摺って現れたのは天斗とカノンだった。
 両手に一人ずつ、悪い人相をさらにぼこぼこに歪ませられた男たちを引き摺り、子供らの前に投げ捨てる。
 子供らを狙うごろつきは四名。カノンの捜索で面まで割れた。
 しかし、向こうもすでにこのお堂まで調べ上げ、乗り込む機を狙うばかり。
 放っておいては子供らに余計な危害を加えかねないと、二人は彼らを先に叩きに回っていた。
「てんで話にならん連中だったな。まぁ、大の大人が寄ってたかって子供を苛めるのを恥ずかしいとも思ってないような奴らなら、当然かもな」
 呆れ果てている天斗に、柴犬の太助君も気の無い返事をする。
「て‥‥てめぇ‥‥!!!!」
 いつから気付いていたのか、ゴミが喋った。
 唸りを上げるや、身を起こし、怒りの形相露わに天斗を狙う。
 子供らが悲鳴を上げ、すかさず雅と玲瓏が間に入って庇う。
 当の天斗は涼しい顔で。掴みかかってきたごろつきを十手・兜割りで難なく止めると、そのまま素早く急所を叩く。
 たちまちにごろつきは再び地に眠った。
「まったく、死にたい奴はかかってこいと言っただろう。奥義出さなかっただけでもありがたく思え」
 鼻息荒く、若旦那装束の上から羽織った至誠の羽織を正す天斗。
「何なんだよ、アンタら‥‥?」
 一連の流れに、大将はぽかんと口を開ける。
「ま、通りすがりの正義の味方って所か」
 好奇と羨望の眼差しで見つめられ、天斗は軽くそう告げた。


 ごろつきを締め上げると、今回の誘拐未遂については簡単に白状した。
 警戒はまだあるが、それでも命を助けてもらったと、子供らも出来る協力は申し出る。
 割符は捨てられていた可能性もあったが、何か不思議な模様が書かれているので符と思ったらしく、粗末にしては罰があるかもと恐々と仕舞われていた。
「御苦労。これで奴らを片付けられる」
 それらを持って平山の元に向かえば、一応ねぎらいの言葉はかけてもらえた。
「商いってただ金儲けすればええんとちゃう。商いし始めた頃の気持ちを忘れる程金の魔力は怖いんやけどねぇ」
 下準備が整った以上、四番隊も本格的に動き出すのだろう。
 新撰組を敵に回す事になった商家の運命。一歩間違えれば明日は我が身。雅は、初心忘るべからずと改めて胸に刻む。
「ところで、平山はん、あの子らになんか仕事ない?」
 ふと思い出して雅が尋ねる。しかし、新撰組としての仕事は守秘や危険も多く、あまり子供の手が入りそうに無い。
「そもそもあの子たちがどう言うか‥‥。お寺や施設、かような子たちを見て下さる場所はありますのに」
 玲瓏も困惑して告げる。
 投げ出される子も多い昨今。受け入れる場所も多い。が、それらを拒んだが故にあの場所にいるとも考えられる。
 依頼はひとまず解決したが、京の治安はなお暗い。
 晴れる日は来るのかと思いつつもそれは口にせず、冒険者らは家路につく。

「で? その割符をどうするつもりで。よもや、それをネタに持ち主から資金を出してもらおうって腹じゃ無いでしょうね」
 帰らなかったのは天斗。新撰組として、四番隊の動向は気にかかる事が多い。
 雑談のように笑って告げたが、その実、目は笑っていない。
「理想だけでは食っていけない。ただ、強請りをしたら悪党と一緒になっちまう。俺達は人斬りであっても悪党じゃない」
 答えぬ相手に天斗の声も硬くなる。だが、平山はそんな天斗に笑い返す。
「当然だ。神皇さまの御世、京の治安を守るのが新撰組だ。それは曲がらない」
 ただし、こちらも目は笑っていない。
「泥舟に乗る商家なんぞ知った事か。割符が分かれば取引先も判明しやすい。裏取引の現場を押さえれば、財産差押えだ。組の功労として、その差し押さえ分を活動資金に回すぐらい上も文句あるまい」
 さらりと告げた言葉に、天斗は唖然とする。
 そちらにはもう目もくれず。平山は四番隊隊士と共に行動を開始していた。