【レミエラ】京都見廻組 〜鬼ごっこ〜

■ショートシナリオ


担当:からた狐

対応レベル:11〜lv

難易度:やや難

成功報酬:8 G 76 C

参加人数:5人

サポート参加人数:1人

冒険期間:08月27日〜09月01日

リプレイ公開日:2009年09月09日

●オープニング

 京の郊外。首が一つ飛び、血が舞った。
「ひ、ひぃぃいいい!」
 腰を抜かして、這い蹲った男を背中から二つに割る。
「やめてやめてやめてお願い何でも言う事を聞くか」
 半狂乱になって涙ながらに訴えた美しい女性の顔に真正面から刃を立てる。
「お、お願い。子供だけは、見逃して」
 親は子供を背に隠そうとする。だが、子供も親に縋って動かない。
 容赦の無い一撃が、まずは子供の肩に落ちた。
 割かれた傷口からは血が噴射する。悲鳴を上げたのは親の方だった。もげそうな首を必死に押さえるが、すでに手遅れなのは明白。
 泣き叫ぶ親を、ひとしきり嘲笑うと親の首を軽々と飛ばした。
 人を斬る度、紋様が浮かび上がり、恐怖に歪む人を照らし出す。

 夜の闇に沈む街道は血で色を変え、その中心には荷馬車が転がっていた。
 その荷馬車を漁っている者がいた。
 全身黒装束の大男だ。体躯の良さからしてジャイアント種族。床に刺さった野太刀は、刀身を適当な布で拭かれていたが、まだ血の痕が残っていた。
「いい気なものね」
 声をかけられ、黒装束の動きが止まった。
 刀に手をかけ、即座に声のした方に構える。
 そこに立っていたのは、美しい女だった。血の海にたってなお映える‥‥さもありなん、頭上には二本の角が伸びていた。
「血の匂いに誘われて来たのか? さすがは鬼って所か。ええ? 茨木さんよ」
 挑発めいた言動に、女――茨木は乗らなかった。
「てっきり東に行ったと思ってたのに。まさか京に来たとはね」
 話にも乗らず、さっさと自分の会話を進める。
「別に戦場じゃなくても、人は殺せる。くだらない事を言うな」
 黒装束の吐き捨てた言葉に、茨木は笑った。肯定を表していた。
「で、何だ? 勝手に抜けたのを捕まえに来たってのかい?」
「少し違うわ。抜けたのは構わない。どこで人を殺そうとも構わない。でも‥‥それは返して頂戴」
 茨木が刀を指す。正確には、その柄に埋め込まれた正八面体のガラス細工。
「断る、と言ったら?」
 大男が肩を揺する。笑ったのだ。
 茨木は動かず。しかし、風の唸る音が男の頭上から響いた。
 男は刀を握ると大きく避けた。後方から忍びよって来ていた熊鬼から、転ぶように距離を開ける。
 立ち上がって身構える大男。その周囲を闇が包み込む。ダークネスだ。
「糞坊主、いたのかよ!」
「いますよ。僕はいつだってね」
 へらっとした声が茨木の背後から聞こえ、同じく黒装束の男が姿を見せる。
 そこで茨木も動いた。手にしていた長刀が引き抜かれると、素早く動かされる。
「ちぃ!!」
 ジャイアント故の頑丈さか。傷は浅い。その事に茨城も顔を顰める。
 視界を塞がれ焦りながらも身構える。茨木も殺意をこめて男を見る。鬼と坊主が茨木の背後で身構える。
「そこまでだ! 大人しく縛に付け!!」
 そして、呼子の甲高い笛の音が届いた。京都見廻組の一段がかけてくる。
 それが合図となって、双方動いた。制止の声などまるで無視だ。
 鬼の姿を見つけて、なお危険を察した見廻組は、刀を抜いた。
「邪魔だ!!」
 飛び込んできた見廻組の一人を大男が蹴倒すと、その体で視界を塞がれた茨木が不快気に斬り捨てる。
「あー。邪魔ですね」
 困った坊主が呪文を唱える。黒い光が飛んでくるや、隊士の腕が砕かれる。


「‥‥以上が、ここの所京郊外で起きている辻斬り強盗事件の顛末だ」
 冒険者ギルドにて。静かに不機嫌を示す表情で、渡辺綱が事件を語る。
「以前から、殺害目的の辻斬りが横行していた故、周辺の警備を増やしていたが。まさか茨木まで出張ってきていたとはな。結局、犯人と鬼と我らの三つ巴で死者こそ無いが重傷者多数だ」
 混戦になり、これでは埒が明かないと鬼・犯人共に退いた。見廻組はそうはいかない。二手に分かれてさらに増員して探したが、徒に怪我人を増やしただけで結局逃げられてしまった。
 後から来た見廻組には、両者が何故争っていたのかよく分からなかったが、襲われた荷馬車の中に、ずっと息を潜ませ隠れていた生存者が全て見ていた。
「あの大男は以前茨木と手を組んでいた奴だろう。何があったかは分からないが、どうやら茨木の元から物を持ち出して逃亡し、茨木はそれを追ってきたようだ」
 その事件以降も、大男による凶行は続いている。強盗は二の次、人殺しが好きらしい。駆けつけた見廻組たちとも幾度も交戦しては、巧みに足を使って逃げていく。
「さらに、一件以来、界隈を鬼の動向が激しい。茨木があの男を探している、というのもあるようだが、ちょっと違う動きも見られる。‥‥まぁ、そちらは金時に任せるとして」
 ちらりと視線を動かした先。パラの隊士・坂田金時が足をぶらつかせている。不満そうにしているが、抗議はしない。
「とりあえず、俺たちはその大男を取り押さえる。だが、押さえようとすると、鬼たちが男の持ち物を狙って邪魔に現れる。それもあってこれまで逃がしてしまったが、いい加減捕まえないと被害が増すばかりだ」
「なるほど。だが、これまでの捕り物で被害者も多い。だからうちに手を借りに来たって訳か」
 ギルドの係員の言葉に、綱が頷く。
「承知した。だが、確かめるべき点がまだあるな」
「‥‥男が盗み、茨木が追ってきたものだろう」
 綱が告げると、係員はあっさり頷く。
「話からして、その刀に嵌まっているのはレミエラだろう。察しは付くが‥‥」
「詳しく検分した訳ではないが‥‥おそらくヒューマンスレイヤーだ」
 どこからともなく流通したレミエラ。その効果は実に様々。利点の多い効果はどういう訳か、作り上げるのが難しいのだが、中でも人に対して殺傷力を高めるそれは、おいそれと手に入るものではない。
 以前、平織軍が大量に用意した事で世間の注目を浴びたが、あれ程の数をどうやって集めたか。さすがは尾張とその時は感嘆したのだが‥‥。
「人斬りが欲しがる一品な訳だ」
「笑い事じゃない」
 体を揺する係員に、綱がますます不機嫌になる。
「もう一つ。茨木は放っておくのか?」
「それがどういう訳か。一件以来姿を見せない。出てくるのは雑魚の小鬼ばかりだ。もちろん、探させるが、差し迫っての問題を解決するのが先だ」
 大男を放っておいては凶行が広がるばかり。
 係員は了承すると、貼り紙作成に取り掛かった。

●今回の参加者

 ea1966 物部 義護(35歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea9150 神木 秋緒(28歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea9502 白翼寺 涼哉(39歳・♂・僧侶・人間・ジャパン)
 eb2099 ステラ・デュナミス(29歳・♀・志士・エルフ・イギリス王国)
 eb3824 備前 響耶(38歳・♂・浪人・人間・ジャパン)

●サポート参加者

セピア・オーレリィ(eb3797

●リプレイ本文

 京の都は血塗られている。
 度々起こる戦に、襲撃を繰り返す悪鬼妖怪。兎角物騒ではあるが、それでも治安を保とうと多くの者が尽力している。
 それをあざ笑うように、凶行が繰り返される。
 ただ、血を求めて彷徨う犯人に、京都見廻組も奔走する日々。
「よし、出来た。もう大丈夫だ」
 任務途中で傷を負った者を、白翼寺涼哉(ea9502)が診る。
 そうして治療してもらったのも束の間、隊士たちはまた任務に戻る。
「怪我をしてる方がゆっくりできたな」
 軽い皮肉を言いながらも、丁重な礼と共に出て行く。
「こういう情勢でもなければ、もう少し人数をかけれるんだが‥‥」
 出て行く同僚の姿に、備前響耶(eb3824)は表情に陰を落す。
 北からのイザナミは今だ脅威。酒呑童子も彼らと手を組んでいる。
 また東の情勢も思わしくなく、それに絡んで京の治安維持に貢献していた新撰組は分裂の末に京を去った。
 西の長州は、黄泉人に押されて動けずにいるが、だからといってまるきり無視していい存在でも無い。このまま妙な気を起こさないよう祈るばかりだ。 
 問題ばかりが取り残され、解決する糸口どころか新たな問題が増えるばかり。せめて自分たちだけはと奔走するも、手が足りないのは否めない。
「新撰組が抜け、京の治安は大幅に精彩を欠いた。なのに、混乱は相変らず。より細かい差配が行きにくい状況だ。戦地で虐殺を繰り返し、両陣営から追われる身となるよりも、凶行を繰り返すには都合が良かったのかもな」
「そこまで分かっていて京の地を現場に選んだか? ‥‥忌々しい。舐めた真似を」
 これまでの黒頭巾が起こした事件の場所と、警備状況。地図を広げて考え込む物部義護(ea1966)に、響耶も頷く。
「鬼と組んでいた大男が今度は単独で辻斬りね。それにしても奴が持っているというレミエラは、茨木の所から持ち出したようだけど、どうして鬼がそんなものを?」
 ふと神木秋緒(ea9150)が眉を潜める。
 だが、すぐにその思考を振り払う。今考えても詮無い事。それより為すべき事は先にある。
「鬼の動向も気になるが、今は目先の問題を解決するのが先だ。放っておいていい被害ではない」
 その思いを捕らえたかのように、疲れた表情で吐き出す渡辺綱。
「‥‥過労死なんて真似はするなよ」
 新撰組が抜けた分、彼らが担っていた仕事も請け負わねばならない。黒虎部隊も他の組織も今は休む暇無く走り回る。四六時中動き回る彼らに、涼哉は心配して声をかけるも、軽い笑みだけが返された。


「見廻組にはこれまで通りの警戒を続けてもらい、その上で出てくる可能性が高い箇所を張りましょう」
 黒虎部隊と合わせて、ステラ・デュナミス(eb2099)は警備状況を確認する。
 とはいえ、広い京都全てに隈なく目を行き届かせるのも難しい現状。
 次に出没しそうな場所に幾つか目処を付けると、情報を得ようとまずは個々に散る。
 逃げやすいようにか、犯行は京郊外がほとんど。警備状況もある程度は慎重に読んでいる気配がある。だが、少人数の見廻りだと奇襲で殺り合う事もしばしば報告されている。
「さあ、そういう男は来てないけどねぇ」
「そうですか」
 欲に忠実な男なので、その他も無節操なのかと秋緒は色街を巡ったが、返事は芳しくない。
 もっとも、色街は口が固い。ふらりと遣って来た犯人が格式高い嶋原などに入れるとは思えないが、怪しげな裏を持ち合わせるような所は、そもそもあまり協力的でない。
 しれっとした顔で告げる言葉はどこまで本当か。秋緒としても慎重に見極める必要があったが、今回ばかりはどうも嘘では無さそうだ。
 形は大きいのですぐに見付かるかとも思えたが、そこは自覚しているのかうまく隠れている。人に聞いても駄目ならばと、遺留品から犬に匂いを追わせてみる者もいるが、そもそもの発端を嗅ぎ付けられずこちらも苦戦。
 だが、聞ける相手は他にもいる。
「きゃあ、誰か来ておくれ!!」
 都をうろつき、叫びを聞いたのは何度目か。
 駆けつければ、我が物顔で悪さに興じる小鬼たちと、怯える人たちに遭遇する。小鬼たちの対処は、見廻組でも行っているが、どうにも手が足りてない。
「やりたい放題ね。まったく」
 店舗に群がり、商品をめちゃくちゃにしている小鬼三体。子供の児戯のようだが、被害が大きすぎる。
 腹を立てて箒を振り回す店主を、危ないからと周囲が止める。それを小馬鹿な態度で見ている小鬼たちに向けて、ステラは魔法を詠唱する。威力抑えて初級で繰り出すウォーターボムが小鬼を叩く。
「ギャ、ギャア?」
 攻撃されて驚きながらも身構える小鬼に、ステラは魔法で牽制。川姫のリリーが一体に近付いたのを見て、
小鬼に質問を投げかける。
「今、大男の居場所を把握してるの?」
『答えろ』
 リリーが言霊を発動する。
「シラナイヨ」
「茨木童子はどうしてるか」
「シラナイヨ」
 きょとんとしている小鬼たち。‥‥どうやらあまり詳しく知らされて無いらしい。のみならず、言われた事より自分たちの悪戯を優先していたようで。
「使えないわね! 邪魔なんだからさっさと都から出て行きなさい!!」
 ステラが思わず喝を入れると、よほど驚いたのか小鬼は慌てて逃げて行った。


「小鬼のやる事は無駄が多すぎる」
 呆れて告げるのは綱だが、誰も否定しなかった。
 大男を探す素振りを見せてはいるが、ともすれば自分の楽しみである悪戯を率先して脱線する者も多い。捕まえても本来の目的を忘れ果てている者すらいた。
 おかげであちこち騒ぎが拡大し、大変な事になっているが、それはもう他の連中に任せる。
 そんな彼らでも、手がかりらしきものを残してくれる。
「ここら一帯、騒ぎが妙に静かだ。だが、鬼がいない訳ではない」
 気配を感じてか、柴犬たちが緊張している。
「他が陽動‥‥って訳じゃないな。単に、この辺の奴らだけが身を潜めようとしているだけで」
 響耶の影牙と陰牙が牽制で周囲に目を光らせれば、慌てて飛び出した小鬼を涼哉の子龍が取り押さえる。
「‥‥で、どうなんだ? 奴の居所は分かったのか?」
「シラナイ、シラナイ。デモ、見タ言ウ仲間イタ。ダカラ探ストコ」
 押さえられたまま、牙を剥く犬にギャアギャアと泣きながら、小鬼が必死に弁明する。
 と、犬たちが、ぴん、と耳を立てるといきなり走り出した。小鬼は逃げ出したが、一同最早そちらには構わず。走り出した犬の後を追う。
 しかし、幾らかすると犬たちの足が止まった。軽快に走っていた足取りから一転、怯えたように退く。
 どうした、と思う間も無く、建物の陰から黒頭巾の男が飛び出してきた。
 先に狙いをつけていたのだろう。止まらない。そのまま、抜いた刃はステラに向けられている。
「そう易々殺されると思わないで!!」
 向かってくるなら好都合。距離が縮まる前に、ステラはアグライベイションを仕掛ける。高速一瞬。相手の動きが鈍った。
「ちっ!」
 覆面の奥で、目だけが怒りと悔しさに歪む。しかし、なお動きは止まらない。
「させるか!」
 凶刃が届く前に、響耶が割って入る。変化をつけた動きで、抜いた名刀・獅子王を掠める。だが、重い唸りは既の事で躱された。
 すかさず響耶が相手の足を蹴り上げた。それは目が行かなかったのか、まともに喰らいようやく相手は動きを止めた。
 秋緒が近寄るや否やの抜刀。日本刀・無明が一閃を描くも、相手はさらに躱し大きく後退した。
「‥‥だから魔法野郎は嫌なんだよ。直に討ち合うのが面白いってのによ」
 ちっ、と小さく吐き捨てるとそのまま路地裏に消えようとする。そこまで計算して身を退いたというのか。
「逃がすな、扶桑!」
 義護に答えて、空から風精龍が飛ぶ。ウインドスラッシュが、黒尽くめに小さな傷を作るが、
「邪魔だ!!」
 走る勢いは止まらず。恫喝するように勢いで野太刀を振るい付けると、風精龍が凄惨な声を上げて地に落ちる。
 だが、それで最後。動きが止まる。涼哉のコアギュレイトだ。
「だから魔法野郎は嫌なんだよ」
 もう一度そう告げるような嫌悪を込めた目で、涼哉とステラを睨みつける。
「身柄の拘束と‥‥これは預からせてもらう」
 注意深く綱が近寄ると、野太刀を――ついたレミエラを預かる。殺気にも似た視線が飛ぶが、相手は動けないまま。
「! 気をつけろ、何かある!!」
 ヴォーロスの指輪に熱を感じて、涼哉が叫ぶと同時に、屋根の上から小鬼たちが降ってきた。
「漁夫の利でも狙う気か!? 猪口才な!!」
 扶桑の容態を見ていた義護が霊刀・ホムラで蹴散らしにかかる。しかし、斬ったその後方からさらに小鬼が沸く。数に物言わせて攻め寄り、レミエラを強奪する気か。
「ゴブ、ゴブブ?」
 もっとも、それは果たせなかった。涼哉の張ったホーリーフィールドで近寄る事すら出来なかったのだ。聖女の祈りで耐久も増しており、小鬼程度では早々打ち破れない。
 さらに、川姫の放った咆哮が小鬼たちを呪縛する。動かぬ仲間と暴れる仲間が混在し小鬼たちは大混乱。数が多いが統率が無い。
「ゴブゴブゴー!」
 一体が鬼の言葉で叫んで逃げ出すと、後は潮が引くように消えていく。
「さて、残った奴らも質問だ。狙うレミエラについて、知ってる事を洗いざらい吐いて貰おう」
「ブゴ、シラナイ。取リ返スヨウ言ワレタダケ」
 涼哉が詰め寄るも、小鬼は慌てて首を横に振るだけ。


 黒尽くめを捕縛し、ついでに小鬼たちも詰所に運ぶ。小鬼たちはともかく、黒尽くめの尋問は困難を極めた。言いたい事は言わず、隙を見せれば死さえ厭わず暴れる。何かを隠匿するのではなく、単に自分の性分で――ただ暴れたいだけなのだから性質が悪い。

 その中で、秋緒はレミエラを陰陽寮に運んでいた。
「失敗作、ですか?」
「ええ、恐らくは」
 レミエラを鑑定した報告を、陰陽寮頭・安倍晴明が告げる。
「複数の効果を持たせようと試行錯誤したようですね。もっとも、スレイヤー以外はあまり益となるものは付いてません。とはいえ、そのヒューマンスレイヤー自体に価値がありますからね。茨木の所有ならそう簡単に諦める品とも思えませんが‥‥」
 怪訝そうに晴明が告げる。
「やはり、ヒューマンスレイヤーか‥‥。とすると、裏に尾張が?」
 ヒューマンスレイヤーを最初に世に知らしめたのは平織虎長だ。涼哉が危惧するのも当然。
 しかし、これに晴明は苦笑する。
「さあ、どうでしょう? あれ以降、他国も制作に熱を入れていましたからね。そもそも『レミエラ』を作り出したのが誰なのか定かでなく。他に制作方法を知る者がいてもおかしくは無いでしょう」
 虎長の元からは門外不出だろうが、あるという事は世に知れ渡っている。製作方法が分からずとも、それに辿り着くべく研究を重ねる時間はあった。
 状況は変わり続ける。
 良しにつれ、悪しにつれ。今は激動の時代だ。