救いたまえ
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■ショートシナリオ
担当:からた狐
対応レベル:フリーlv
難易度:普通
成功報酬:4
参加人数:6人
サポート参加人数:2人
冒険期間:01月13日〜01月18日
リプレイ公開日:2010年01月23日
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●オープニング
日本は何かと騒々しい国ではあったが、ここ最近はさらに輪をかけて騒動ばかり。
圧政に耐えかね新田義貞が起こした上州反乱から端を発し、一度は追われた源徳家康。機を得て動き出した巻き返しは各方面の思惑も重なり、終わる気配がなかなか見えない。
長引く戦火は国を疲弊させる。流通の変動、物資の徴収、徴兵による働き手の喪失。
生活が窮するぐらいならまだいい。土地が焼かれれば生活も失う。この寒風に投げ出されれば命も危うい。
それでも命があるだけマシとは言われるが、困窮した生活は心を挫く。
生きているから苦しいのか。ならばいっそ、と嘆く声すら聞こえてくるようで。
●
明王院月与は神皇と謁見し、被災者救済の許可を賜った。
精力的にあちこちに働きかけ、ゆっくりとではあるがそれは進み出している。
だが、どうもその活動を政治利害やらを理由に無言の圧力をかけて妨害する輩もいるようで。
それをどうにかできないかと、白翼寺涼哉(ea9502)は大塔宮護良の元を訪ねたが‥‥。
「無理だな」
護良親王の返答は早かった。その反応に涼哉は戸惑う。
「しかし」
「しかしも無い。少し頭を冷やせ。権勢を使う者に権で対抗してどうする。神皇様から直接お言葉を得ているだけでも大したものだのに、更に私が口を挿むのは過剰というもの。過ぎた権は反発も大きい。確かに、表向き大人しくさせるのは容易くなるだろうが、さらに裏で動かれてはどうなるか分からんぞ」
最悪、直接的な手段を用いて何かしてくる可能性もある。
暗に告げられ、涼哉は押し黙る。
「異国の冒険者たちですらこの国の窮状を憂いて動いて下さっているのに。肝心の国に住む者がこの有様では‥‥」
居住まい正して座す涼哉。その手が硬く握られる。
俯く姿を護良親王はじっと見つめる。
「この国に住むからこそ、という考えもある」
「?」
「お言葉を賜る際に、奉行らが反対したのがいい例だ。東国を救う為に畿内の民が飢えて倒れるのでは本末転倒も甚だしい所。他者を助けて自分たちが救われぬのでは意味が無い」
戦は東だけにあらず。
西は黄泉人が復活し、多くの国が滅んだ。そこにはもはや死があるのみ。
その黄泉人を討伐するべく動いたはいいが、遠征には物資も費用もたんとかかる。国を動かしているといって朝廷の蔵も無尽蔵ではない。
その上でさらに負担を強いれば、困窮する民が溢れるだけだ。
「東国の民も神皇様の民でしょうに」
「だから、畿内の民は見捨てよと?」
告げる護良親王に、涼哉は僅かに息を吐いて首を振る。そういう事が言いたい訳でなく、揚げ足を取る護良親王は苦く笑う。
「日の本はどこもそんな調子だろう。救いたくても余力が無い。下手をすれば、己が立ち位置すら崩れかねん。立場を捨てるのは容易いが、それではその権に守られている民が放り出される事になる」
ふと護良親王は目を伏せる。
「商人たちとて同じ事。店が大きい程、抱える奉公人も多い。東は戦続きで、西に至っては長州まで更地になった。大きく店を展開していた者ほど、この喪失は大きい。これ以上損をして店を潰しては、自分たちだけでなく店子も路頭に迷う事になる。決断も鈍るだろう」
言われて、涼哉も思い出す。
確かに救済に協力してくれる大店がいない訳ではないが、個人の方が話が早く纏めやすくはあった。
「権を持つからこそ大きな事が出来る。救わねばならない命があり救える命がある。だが、救えぬ命もまた多い。真ままならぬものだ。神皇様はその際たる地位にいる。だからこそ、自由の効くそなた達に救済を頼んだのではないだろうか」
かく言う護良親王もまた憂いの表情を見せる。
仏の教えに従い、そして俗世に戻った身。世を思うが故に動けぬのは彼とて同じか。
丁重な礼を述べて、涼哉は護良親王の元を後にする。
「日本の窮状はどこも一緒か‥‥。だからといってやめる訳にはいかない」
つまりは国中の人々が救済を待っているとも言える。
「それでもやるしかない」
規模が大きいので、協力者は必須。また、ああはいわれたが、個人の力はやはり限られる。
政治的な利害や立場を捨て、共に苦難を乗り切る知恵や力を貸して下さる奉仕者。そのような者たちも探せば居る筈だ。
●リプレイ本文
西も東も戦だらけ。
そんな中、京都といえばこちらはイザナミの大規模侵攻はおよそ一年前の事。その後大きな混乱も無く、見た目だけは復興している。
他所から流れてくる者の数は減らず、物が不足しがち。結果、生きる為の奪い合いに、治安組織が今日も走り回る。
今は戦争需要が一番か。土地を失い流れて来た者は、この際一旗上げようと京での徴兵に前向きな者も多い。
●
足を運ぶのも何度目か。白翼寺涼哉(ea9502)は大塔宮護良親王を訪ねる。
「義援の活動対象は日本の国全土です。将門屋とも連携し今後の行く末を見据えた上で活動します」
戦災救助の活動を始めてどのくらい経つか。その間の経過や概要を説明するも、話せる事はまだ少ない。
「その流れを受け、明王院月与とチサト・ミョウオウインが救済組織を設立いたします。つきましては、設立の連名を依頼いたしたく」
「何故だ? 先にも告げたが、神皇様から直接お言葉を得ている者がいるのに、更に私が口を挿む必要はあるまい。確かに世間の注目は得られようが、それはその者たちの為にはならんだろう」
伏して願うが、護良親王の返答は素っ気無い。
宮中にも、無名無冠の冒険者が神皇から直接声を賜るのは筋が通らぬ、と反発する声は今だある。実際それは破格の待遇であり、条理にも反しているのだから向こうが正しい。
そこに同じく神皇家の護良親王が関与すれば、反発はますます大きくなるだけ。
それに下手に介入すれば、世は名のある方、すなわち護良親王の功績と見かねない。
元は安祥神皇の声から始まったのに、臣下の自分が差し置くような真似は好かぬ、とも言う。
「目先の利しか見えぬ者に権を与え、私利私欲で政局を動かす事。それが、日本の混沌の原因ではないでしょうか」
率直に涼哉は意見を述べたが、途端に大喝が飛んだ。
「口を慎め!! 権の御決断は神皇様の采配ぞ! それを批判するなど、叛逆の意ありと見るがよいか!!」
延暦寺においてはきっての武道派だった相手。射竦められ、さしもの涼哉も言葉を詰まらせる。
「目先の利しか見えぬと言うが、遠くばかりを見ておっても足元がおぼつかぬぞ」
護良親王の口調は憐れんでいるように思えた。
●
商業街にて。
こちらも対面何度目か。見慣れた顔ぶれはうんざりと顔を曇らせている。
「こうも度々呼び出されては、商いに身が入りまへん。話は手っ取り早くすませてもらいましょか?」
大店になる程、番頭や店子に店を任せ、主は宣伝活動や情報収集で遊び歩くのが普通。
嫌味な台詞を諌める声もついぞ無く。
結局それが自分の現状かと、明王院月与(eb3600)は腹を括る。
「まず。この度実妹・チサトと連名で救援の為の組織を新設いたします事を御挨拶させていただきます」
居住まいを正し、挨拶を述べる月与を気の無さそうに商人たちは見ている。
「運営資金を含めた土台作りの為、商業活動のようになるのも否めません。でも、私たちはあくまで支援を重きに考えてます。一般的な商業活動や医療活動とは一線を引き、商業ギルドや医療関係者と直接的に利権関係でぶつからない様配慮する所存です」
チサト・ミョウオウイン(eb3601)も横に並び礼を述べる。
「京は、不死軍を始め大規模な決戦を控えており、そのままでは働き手を多数失いかねない状況。救済活動の筋道を立て、一人でも多くの働き手が無事に帰ってくれば、田畑が荒れる事も減り、地場産業の衰退も抑えられ、ひいては商行為への影響も減るのではないですか」
だが、月与の説明に商人たちが首を傾げる。
「そらまぁ一理ありよりますけど。人がおっても戦に負けよったら商売どころやあらへん。勝ってもらうには、馬やら武器やらいろいろ必要や。全部ひっくるめて用意しよ思たら将にぽんと味方する方が早いよって」
「うちらかて、死人憑きなんて訳の分からんもんに来られるんは迷惑や。そういう事情やったら何ぼでも協力しまっせ」
「ただ、人の戦はむつかしおすなぁ。大坂で秀吉はんに睨まれたら商売できまへん」
「京はもっと難しい。当面は秀吉公びいきでかましまへんけど、最近は平織の動きも気になるよって」
話題は世の情勢に移る。
月与たちにはもう関心が無いのか、口を挿む隙を与えない。
その態度に、一つ嘆息つくと。将門雅(eb1645)は座したまま床を叩き、目の前の御仁らを睨み付ける。
目を丸くし注視されたところを、すかさず改まって口を開いた。
「まずは先だっての事。誤解を招いたようやから謝罪するわ。申し訳ありませんでした」
深々と頭を下げる。
ここで時を許しては、また何を喋り出すか分からない。
面を上げると、威圧するように商人たちを見る。
自分は神皇家御用達でもなく、尾張もお市の方に共感してるだけでの取引と説明した上で、話を始める。
「うちがこの活動を支援してるんは、売名行為もある」
商売人なら嘘の一つもつけねば大成は出来ない。
しかし、本音で喋られねばならぬ時もある。
立ち直った時、施した相手が客になると率直に訴え、商売は疎かにせず、余裕のある部分でいいから手を貸して欲しいと頼む。
「その余裕もお金やなくてええねん。知識や経験、行動力とかいろいろ出来る事はあるやん。そもそも、その場しのぎの無償奉仕は長続きせぇへん。
被災者に一番近いんは商い等で生計を立てて普通に生活してる人やない? 戦や暗躍なんかで国獲り合戦しよるどこかの家臣らより役に立つと思うんやけどね」
話が終わっても、商人たちは渋い顔のまま口を開かない。
仕方無しに、リンデンバウム・カイル・ウィーネ(ec5210)が進み出る。
「嬢ちゃんたちも困窮者らを減らしたい一心でかなり無茶をしたからのぅ。それは重ねてお詫びする。また、楽市楽座や月道交易もこの機に実績を積み重ね応える事も出来るかと、提案させて頂いたが。いやはや、時期を逸した提案で騒がせてしまい、本当に失礼つかまつった」
やっぱり平に頭を下げるリンデンバウム。
「親征物資調達への協力も、仲介者とで手違いがあったようで伝わらずだったとは。色々とご迷惑をお掛けしている中ではありますが、今後の商売の種に、余力の範囲で何かしらのご助力を頂ければ幸いと」
丁重に告げるリンデンバウムだが、ここで長く、長く商人たちは息を吐いた。
「あんさんらが何しようと、止める手立てはうちらにはありまへん。ただ、売り手の無いまま書いて増えれば品物がのうなるんは当然や」
物流が狂えば、物価も狂う。小さなつまずきが大きな波紋となりかねない程、この国は危うい。
「月道交易による救済物資の事なら、あれはあくまで緊急処置。先方の国へも負担が大きいだけに、国が落ち着き次第、手を引きます」
「国が落ちつくんていつまでや? 大和の死人騒ぎからすればかれこれ何年。今から同じ年月続けられたら、その前に貿易を止められかねまへん」
月与が訴えるが、怖いものを聞いたと商人たちは身を震わせる。
「買いこむんもよろしやろけど。物価を上げられたり、関税を重くされるんはわてらも困ります」
海外であっても、日本からの大量の買い込みがあれば向こうの物価が上がる。流出を防ぐ為、輸出を止められては生活に関わる商家も多かった。
また、そうやって仕入れた品を格安で振舞われては、地元の商家で買わなくなる。金の流れがそこで途絶え、商家にとっては迷惑な話だ。
「なんかあんさんらと話しとると、商売人は戦に影響無く金もあって悠々としているのが当たり前みたいに聞こえますんやなぁ。そうやあらへんのは将門屋さんもよう知ってますやろ」
商売してようが百姓だろうが、家が無くなったら投げ出されるのは同じ。そうやって消えた商家も数多い。
無事に残った商家も取引先がなくなって今まで通りに行かず。民が消えれば消費も消える。消費が消えれば当然見入りも無くなる。多くの人を抱える大店になる程、養う為に必死になる。
彼らとて戦渦からは逃れられないのだ。
「先物取引は危険やろ。いずれ見返りになるて、それはいつの話や。ほんまにうちらの見入りになりよるんか? 遠い土地に支援したかて、そこでどうやってうっとこの品を買うてくれるようになります?」
じろりと睨まれ、一同怯む。
各地を動きまわるのは冒険者ぐらいで、普通その土地から離れるものでない。
縁の無い土地で評判が上がっても、それが実になる気配は遠い。
「では、こちらが必要とする時、必要物資や関連物資の調達などを依頼などはいかがでしょうか?」
「大口の顧客は歓迎しまひょ。商品買うてくれるんはうちらもありがたい事や。ただし、さらに大口の顧客があったらそっちを優先させてもらいまっせ」
「もっとも、何百両もの物をぽんと買い込まれては、土地の者が買う分ものうなってしまいますやろけどな」
チサトが告げるが、こちらも素っ気無い。
「ま、空いた手でええんやったら多少の便宜は図りましょ。ただし、訳の分からん事に手ぇ貸して上から睨まれるんはごめんやし、そもそも実体の無いもんに手貸す気はありまへん。あんさんらの実績も、きちんと見せてもらわな困りますな。それとうちらの商いは大坂や京都が主や。手が届くんもそこら辺りが限度どす」
そっけなく告げると、それで話は終わったとばかりにさっさと立ち去る。
「一応、手を貸してくれるという事でいいのかな?」
「どうだろう? 商いの邪魔だから監視しておきたいって所もありそうだ」
首を傾げる月与に、リンデンバウムは軽く肩を竦める。
「それに便宜言うても、いざ頼むと何だかんだで逃げられそうやしねぇ」
緊張した体をほぐすように雅は大きく伸びをする。
範囲も限定される。江戸なら大都市だし少しは手を貸してくれそうだが、その他の地域は無理だろう。その土地の商人と新たに交渉をしていかねばなるまい。
ついでにいろいろ条件もあったが、まぁ、それは今後のがんばりを見るという事か。
大規模な協力をとりつけるには、まだまだ時間がかかりそうだ。
●
救護体制を整える為に救護所を設置。‥‥これも楽な話ではなかった。
候補に上げた地の一つ、東寺。
破壊されても寺社の領地。烏哭蓮が交渉に赴くも、再建中の今は工事作業で人も物も大量に行き交い危ない。
一応許可は取り付けたが、後に妨げとなるなら立ち退かねばならない。
仮説村に至ってはさらに大変。ここは近江藩の領地であり、まるで管轄が違う。
建物も壊され、今は植えられた桜が揺れるだけの土地。
更に仮設村は、長い生活の末治安が悪化し貧民街と化した事から再建には周囲の心象も悪い。
平織になんとか掛け合い許可は取り付けた。しかし、ここでは近江の難民を先とする条件が課された。都から遠く、無節操に人の行き来があっては治安に関わるのでこれは当然か。
尾張は戦の準備があり動けず、近江も京ほどではないといえ西から来る難民の対処に追われて一箇所ばかりに構っておれず。支援は期待できそうに無い。
救護所と言っても、今の京に傷病人は多く無い。
風邪引きなどはいるが、寺社も多い京都は僧侶も多いので、どうにかなっている。
それより問題なのは増える難民に見合うだけの物資と食、住まう所、それに金や職か。
皆が持ち寄った資金およそ三千両。大金ではあるが、あれこれ使い出すと数日待たずに無くなる額でもある。
後は持ち寄った物資が少々か。
拠点を決める一方で、将門夕凪(eb3581)は涼哉の手伝いに来ていたサントス・ティラナと共に救護所の運営手本を作成。
地獄で戦った時の経験を元に、日本でも使えるよう編纂する。
「天界人の医療関係も載せたいが‥‥難しいな」
設営教本を書きながら、涼哉も弱る。
主な内容は一般人でも活用できる環境整備・道具の使い方などなど。天界人の技術は役に立とうが、如何せん、涼哉にその知識が無い。聞き覚えの知識では生兵法になる。
それでもどうにか手本が作ると、今度はそれを手にして夕凪とチサトは協力者を探して回る。
「上の人は年賀の宴とかされていますが、今はそんな事をしている状況ではありません。西のイザナミを放置し、東の戦乱を長引かせたのにも関わらず、被災者に対し何もされません。一人一人の力は微力かも知れませんが、皆様が力を合わせれば大きな力に成りえます。無理しない程度で構いません。お力をお貸し下さい」
政治批判も交えた過激な言動に眉を潜める者も多かったが、夕凪の訴えを聞く者もいた。もっとも、それは今暇だから手を貸す程度。永続的な雇用は見込めそうに無い。
「人を集めるのも、大変ですよね」
あちこち歩き回り、チサトは一つ息をつく。
商人との交渉はあいかわらずのらりくらりと躱される。
町医は探してみるも、こっちもなかなか難しい。
医者は誰でも勝手に名乗れる職業。評判の町医に会ってみれば、顔だけというのも珍しく無い。
困窮者に無償で治療するような医者であっても、義捐活動が顧客確保に繋がると説得すると、患者は客ではないと憤慨されたりもする。
医者が納得しても、評判医に何かあっては自分たちが困ると周囲が訴える時もあった。
「もっとも、各国も何もしてない訳ではないのな。烏の話では寺社は個々に救済活動を進めている。戦場となった国も、民の救済は進めてはいるようだ」
涼哉が肩を竦める。戦時中であれば、戦況に注視しがちなのでそういう情報はどうしても陰に隠れる。
もっとも焼失の補填にしても、戦の最中であれば軽微であったり、場合によってはやはり無い所もある。そこに関わった将の性格や蓄財、現状などで変わってしまうのは否めない。
「丹後は復興が進んでいるって。ただ、大和は先日も藩主が討たれ、まだ‥‥」
各地に照会を求めていた月与は、少しだけ憂い顔を見せた。
「この活動も、当面冒険者が代表で実績とこつを蓄積していきますが、将来的には一般人でも永続的な活動が可能な所までいけるといいのですけど」
チサトが理想を案じる。
けれど、実現にはどれほどかかるか。今は、いささか空回りしている気配もある。
「ともあれ、腹が減ってはですよ。皆の為に炊き出しを致しましょう」
用意した金子で材料をそろえると、夕凪は貧民街にて振舞う。
互いに手に手を取り合い、窮地を打開する力とする。そうなる事を信じて、今は一歩を踏み出す。