【播磨・姫路】 解放
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■イベントシナリオ
担当:からた狐
対応レベル:フリーlv
難易度:やや難
成功報酬:0 G 15 C
参加人数:7人
サポート参加人数:-人
冒険期間:01月15日〜01月15日
リプレイ公開日:2010年01月24日
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●オープニング
城から光が飛び、圓教寺が焼けたのが二年前の梅雨の頃となるのか。
直後藩主たちが倒れ、それは寺社からの報復という流言が流れる。
妖怪も跋扈し治まる気配は無く、翻弄される現体制に愛想を尽かし、自ら武装して身を守ろうとする者も増え始めた。
そんな中、黄泉人の侵攻が始まる。
民の矛先はひとまずそちらに向いたが、将が滅び残る黄泉人も撤退すると、それで自信をつけたのか、政に見切りをつけ、暴動を起こした。
城の内部からも賛同者があり、城主池田輝政は城を追われる。
「結局は姫路の混乱はすべて羅刹天が原因という訳か」
藩を追われ、近隣の藩に身を寄せた池田輝政は嘆息を漏らす。
最初、城から飛び出した光は妖怪・長壁姫のせいではある。しかし、それも寺にて密かに復活した羅刹天を警戒しての事。
これを返討ちにしてからは、長壁姫の姿を借りて精霊妖怪どもを集めて手中に収め、一方で流言を広めて民に不信をばら撒く。
城主が倒れたのも結局は羅刹天の術のせい。その後、冒険者により術が解かれ今は快癒したが、長く寝込んだ内に目の届かぬ所が出ていたのは否めない。
黄泉人の戦闘の際も、力を貸す代償に己の信者を増やしていた節がある。
現在姫路藩は、城主不在のまま、各村各人が自治を行っている‥‥といえば聞こえはいいが、それぞれの価値観で身を守り相手を攻撃する無法地帯と化している。
妖怪精霊も大っぴらにその存在を示して力を誇示。
誰もが制限を受けない自由な国、とも言える。
だが、それでは秩序が成り立たない。苦境の城主への同情、黄泉人侵攻時の借りを返すなど聞こえはいいが、諸藩が協力するのも民の自由が自分たちの地位を脅かすからに相違無い。実際、民の反乱は拡大傾向にあった。
いっその事、池田輝政の首をあげ、引き換えにこちらの領土の安全を図ろうかと模索する藩主もいるとかいないとか。
「事情どうあれ諸藩から暴動鎮圧の兵を借り受けたものの、迂闊に乗り込めば羅刹天に取り込まれかねない。能の無い黄泉人とはまた違う。民とて力で対抗する術を覚えた以上、大人しく受け入れるとは思えない」
粗野で無骨な無法者と思えば、巧みに言葉や術で惑わし息を潜めて機を見るのも平気という、こざかしい手も打って来る。結構厄介な相手だった。
「西も東も混乱の最中にある中大変かとは思うが‥‥。今一度姫路の治安の為、力を貸してもらえぬか要請したい」
自国も己で守れず。不甲斐無いと自嘲する輝政を、家臣は不憫そうに見つめ。そのまま、かける言葉無くただ任を果たしに冒険者ギルドを目指す。
●
「神よ。無力な私めにお力を。混迷の時代を生きる術をお与え下さい」
「安易に他者に縋るなよ。まずは己の力を示せ。知恵だろうが力だろうが運だろうが弱い奴が死ぬのは世の摂理だろうが」
崩れた神社で祈る老人に目を留め。羅刹天は鼻で笑う。
「酷い事を、少しぐらい手を差し伸べても良いではないのか?」
そのまま立ち去ろうとした所で、老人が低く嘆息する。その姿を認め、羅刹天が嘆息する。
「なんだ、性空の爺ぃか」
物陰から飛び出してきた白狼天狗二体が、羅刹天を押さえる。しかし、それをただ羅刹天は平然と受け止める。
「これ、止めなさい」
「いいぜ、別に。力付くってのは嫌いじゃねぇ」
羅刹天がにやりと哂う。その姿に、今度は性空が嘆息する。
「そう力任せでは解決したとてしこりが残ろう。力が余るなら、世の為平和に向けて動いてみるのも良いのではないか」
性空の言葉に羅刹天が爆笑する。
「はっ、秩序を乱す害虫退治に勤しめってか。冗談じゃねぇや。大体、平和を望むなら全て死ね。何も無くなれば争いなんざ起こんねぇよ」
そんなのつまんねぇがな、と羅刹天。
「死ぬなら生を謳歌した末に死ね。やりたい事やればいいんだよ。そうあるように作ったのが神じゃねぇのか?」
言うや、羅刹天が動いた。押さえつけた二人を蹴り飛ばすと、さっさと上空に逃れる。
そして、その姿が消えた。
「待て!」
白狼天狗の顔が怒りで歪む。攻撃をかけようとした素振りをさっし、静かに性空が止める。
「話を聞いてくれんかのぉ?」
「やなこった。お前の話はタルいんだよ」
のんびり告げる性空に、吐き捨てる羅刹天の声。
その気配はすぐに遠ざかって言った。
●リプレイ本文
姫路の暴動鎮圧に乗り出そうとする藩主池田輝政だが、羅刹天の存在が影を落とす。
手をこまねいていた輝政の元に、イリアス・ラミュウズ(eb4890)が謁見する。
「まず、我ら冒険者で民の暴動を鎮圧します。羅刹天が出てきたなら、これを討伐。しかる後に、池田殿が悪の冒険者から民を解放するため挙兵とすれば、後の統治回復も速やかになるのではと考えます」
「しかし、‥‥それでよいのか?」
悪党をのさばらせない態度を示す、というのはいいかもしれない。
だが、その案のままに取ると、冒険者が悪党として白い目で見られる事になる。冒険者としての活動が阻害されかねないと懸念するが、それには及ばないとイリアスは笑う。
「勿論、俺たちも冒険者と名乗りを上げて乗り込む訳ではありません。きちんと身は隠させていただきます」
どの道、羅刹天誘き寄せの為に変装は必要なのだ。
それを説明すると、険しい表情のまま「頼む」と輝政は告げる。
芝居で民を騙すような感も受けるが、これも致し方あるまい。
羅刹天をどうにかする事。それが出来ねば、民の暴動は煽られるままだ。
●
播磨は五畿に入らぬ田舎と見られるが、西への交通の要所でもある。
ただ、その西への流通が今は無い。西国のほとんどが黄泉人によって消え失せたからだ。
活気無く、市井の喧騒もほとんど無く静かな限り。互いを牽制しあう事で動きは止まっていた。
反面、これまで闇に潜んでいた者たちは活気付き、頭角を現している。
悪党たちは街を襲って搾取し、妖怪たちは力を誇示。どちらも人前に現れ、己の力を振るう。
そして、民もまた誰も当てに出来ぬと自ら武装し、時には先制して攻撃にも出る。
そんな中で。とある街に目をつけた妖怪たちと、そこを守ろうとする人間たちがいた。
殺気だった沈黙を破るように、騒ぎは派手に起きる。
「マイヤ、ディブラ。構いません。不埒な妖怪たちは片端からなぎ倒してしまいなさい!」
不自然にそぼ降る雨雲を連れ。
ムーンドラゴンとヴォルケイドドラゴンに向けて、指揮するのはこの地の妖怪を統べる長壁姫であった。
「ギギ、あいつは死んだ筈?」
「よく見ロ! あれハ姫の姿ニ化けタ偽者ダ!」
「だが、一度死んだと聞き、また辺境に現れたとも聞くぞ?」
「何ブヒッ? 結局どっちブヒなのだブヒッ」
影に日向に。人を襲おうと目論み蠢いていた物の怪たちは、その姿に動揺を隠せない。
「この地の主が戻られたというのに、どいつもこいつも頭が高い!!」
狐顔の兵士が惑う妖怪を睨みつけると、容赦無く弓に矢を番える。
姫と兵士の正体は、ゼルス・ウィンディ(ea1661)と天城烈閃(ea0629)。ゼルスのミミクリーにて形状を変えたのだ。
それというのも‥‥。
「南方より反応多数。‥‥あの鴉たち!」
遠巻きに、妖怪たちの争いを見ていた野卑な男が叫ぶ。
と同時に、烈閃が病みたる白き弓から矢を放つ。
一羽を明確に射抜く。他の鴉たちはさっと散ったが、遠くに逃げもせずに身構え、ゼルスたちを睨む。
「奴の替え玉。何体いるかと見に来てみれば‥‥」
鴉たちの姿が歪み、羅刹天と従うデビルたちが正体を現す。
彼らの姿を見て、色めき立つ妖怪たち。
そして、何気に遠巻きに妖怪たちの動きを見ていた無頼漢たちが羅刹天らを取り囲む。
「狙いは俺か? 見かけで襤褸を装っても、物騒でいい得物を携えてるようだな」
いや、衣装を変えて変装し、面を被ってそう見せているだけ。その正体は冒険者たちである。
見抜いた羅刹天が鼻で笑う。
「私も大いなる父の教えを学ぶもの。力を良しとする貴方の考えも分からなくありません。ですが、弱いということが、排除すべき愚かなものだとは思いません。‥‥父の教えが向上を美徳とするは何故か。大事なのは力ではなく心のあり方!」
ゼルスがヘブンリィライトニングを唱える。レミエラが輝き、作られた雨雲からの落雷は羅刹天を撃つ。
しかし、羅刹天に変化は無い。
「不自然に雲が出てりゃ、警戒ぐらいはするに決まってるだろう」
「では、これは!?」
雀尾嵐淡(ec0843)はニュートラルマジックを仕掛ける。
白い光が羅刹天の身を包む。
すかさず、ゼルスが二撃目を唱えた。だが間髪入れずに、羅刹天の身が黒い光で包まれ、防がれる。
三回使うと雨雲は消えてしまう。そうなっても攻撃手段はまだあるが、無駄撃ちも面白くない。
次を躊躇ったゼルスを軽く笑う羅刹天だったが、はっと表情を変えると後方に剣を抜いた。
堅い音がして剣は弾かれ、腕が奇妙に歪む。
「外されたか」
「てめ‥‥」
何も無い空間から声がした。
いや、よく見れば景色が歪曲している。
纏うミラージュコートの力で姿を消したアラン・ハリファックス(ea4295)がミョルニルを構える。
「そういう手で来るかい。おもしれぇじゃねぇか。受けて立つぜ!!」
言うや、羅刹天の姿も消える。
姿を消されるのは厄介ではあるが、魔法で無い以上、特殊能力にニュートラルマジックは効かない。ならば居場所は失わぬよう、嵐淡はまずはデティクトアンデットで位置の把握に努める。
「上空に飛んだ。そのまま直進して来る!!」
「ちっ!」
アランの声と、武器の交わる音だけが響く。
姿を消されるのは厄介ではあるが、魔法で無い以上、特殊能力にニュートラルマジックは効果が無い。ならば居場所は失わぬよう、嵐淡はデティクトアンデットで位置の把握に努める。
デビルやアンデッドの攻撃は、彼のレジストデビルにより、軽減される。
しかし、その場にいるのはそういった不死者ばかりではない。
「雑魚たちは、引っ込んでいてもらいましょう!」
羅刹天の出現を受け、混乱していた妖怪精霊たちが活気付く。
冒険者を排除しようとする有象無象に向けて、山王牙(ea1774)はテンペストで斬りかかった。強力な破壊の力を秘めた剣は、相手が何であろうともその威力を見せ付ける。
ゼルスも姿を消した羅刹天を無理には追わず、バーニングソードやストーンアーマーなど皆の強化を優先する。
「集団で来るなら、それもまた好都合ですよ」
ファング・ダイモス(ea7482)は飛び交う魔法や息をウィングシールドで防ぎ、避け。間が開くや争いの赤き剣を振るう。
巻き起こる剣風は扇状に広がり、群がる魑魅魍魎を切り裂く。
元より争いたくて争っている訳ではない。所詮ほとんどが小物。力の差を見て、多くは距離を置き牽制する。
「観客も不要だ。お引取り願う!!」
そこへ容赦無く、烈閃は祈りを捧げた槍を投げ込む。
遠巻きに見ていた妖怪たちはさっとその軌道から逃げたが、真・ゲイボルグは地に刺さるや周囲に激しい雷を撒き散らした。
「ガアアーッ!!」
喚き惑う妖怪たち。さらに輪は遠のき、逃げ出す者すら出る。
構わず突っ込んでくるのは力量を悟らぬ者、その力を試したい者、そして、
「くっ」
飛んできた矢を牙は躱す。撃って来たのは、遠巻きに成り行きを見ていた人間だった。
逃げ出す妖怪たちを不安そうに見送っていたが、やがてきっとまだ居残る妖怪や悪党たる冒険者に睨みを効かす。
「妖怪だろうが強盗だろうが‥‥、私たちの棲家は私たちで守るんだ!!」
そして弦を引く。下手な矢ではあったが、数が揃えば面倒には変わりない。
「この御時世、力があれば何でも出来るってやつかい!」
わざと殺気漲らせ、人間たちを睨みすえると、容赦なく牙はその武器をたたき斬っていく。
しかし武器を失っても、魔法を詠唱する者もいる。
飛来する黒い炎。デビルの魔法に表情を暗くすると、烈閃は矢を番え、唱えた人物の防具を壊し士気を殺ぐ。
「力の差を見せ付けるような奴が口にする言葉じゃねぇな」
羅刹天の揶揄が響くが、相変わらず正体は見せない。位置を知らせる嵐淡が頼りになるが、それを阻むようにデビルたちが彼に群がる。
「近寄れると思わないで下さいよ」
しかし、オーラエリベイションで高めた士気もあって、ファングの動きは淀みが無い。
接近してくる相手には容赦なく武器ごとその身を斬り落とし、離れた敵にはソニックブームやソードボンバーで放つ。
「邪魔だ!!」
視界を塞いだ妖怪を、アランは払いのける。押されて訳も分からず踏鞴を踏んだ妖怪の腕に、朱の筋が入った。
とっさに下がると、剣が居た場所を薙いだ気配があった。
互いに姿を消し、透明度の違いはあれど条件はさほど変わらない筈。魔法で居場所を知らされても、そこにどんな体制で構えられてるか見破るには、結局己の五感に頼るしかない。
向こうはこちらの動きに合わせて、巧みに周囲の妖怪を盾にして死角を作らないようにしているの面倒。
「アラン、下がれ!」
鋭いイリアスの声を聞き、アランはその場から一時離れた。
そして、間断無くグリフォンに騎乗して上空からイリアスが強弓・十人張で矢を降らす。
空を行く妖怪たちが落ち、矢の一部が不自然に弾かれる。
「そこ!」
ゼルスがストームを起こす。矢と共に妖怪たちが吹き飛ばされ、そこだけ奇妙に空間が開く。
「位置そのまま!!」
嵐淡が告げる。
アランが邪魔の無い空間を一気に詰める。目を凝らし、ただ歪みのみに意識を集中する。
「貴様の死に場所は‥‥ここだぁぁっっ!!」
戦神の槌を叩き付ける。鈍い感触と、くぐもった羅刹天の声が伝わる。
「へっ、やりやがったな、今畜生がぁ!!」
湿った地面に倒れる音。そして、羅刹天が透明化を解く。
派手に頭を陥没させた羅刹天は、その無残な姿とは裏腹に酷く愉快げに歪んだ笑みを見せる。
そして、嵐淡が解呪を唱えると、ゼルスが雷を落とす。イリアスと烈閃が矢を放ち、
「「これまで!!」」
牙とファングが刃をつき立てる。
邪悪な哄笑が途切れる。
その身は霧散し薄れ、そして羅刹天は地獄に還った。
●
戦いは済んだ、と安堵している暇は無かった。
暴れる妖怪たちはまだ残っている。そして、それを掃討せんと、民たちもまた押し寄せる。
「怯むな! 賊や妖怪の好きになんかさせられっか!! 逆に身包み剥いじまえ」
上げる声は勇ましい限り。それが治安に向いてくれるのなら喜ばしいが、野盗と変わらない表情をされては歓迎できない。
「身の程知らずが! 死ぬか! 消えるか! 土下座してでも生き延びるのか!! 好きなのを選べ!!」
嵐淡のリカバーで治療を受けると、アランはやはり姿を消したまま、怒鳴りつける。
構える民たちの武器が折られ、それでも向かってこようという者には烈閃が容赦なく防具を射抜き壊す。
「クハハ、他愛も無い!」
狐面のまま敢えて非道な笑いを浮かべる烈閃。
妖怪たちは逃げるモノは逃がし、立ち向かって来るモノだけに対処する。
その奮闘振りは目を瞠るものがある。
民たちは悔しそうに顔をゆがめるが、歯が立たないのは事実。悪党・妖怪たちを睨みつけて次の手を考えてるようだが、動かないのはつまり案が無いからだろう。
ただ、このままにしておくと破れかぶれで何をしでかしてくれるかも分からない。
どうしたものかと、内心悩む冒険者たち。
「誰か来るぞ! あれは‥‥姫路の役人どもだ! 殿様も一緒だ!!」
なので、上空でイリアスが旗を見つけた時は、心底ほっとする。
「あいつらなんぞ、蹴散らしてくれる!!」
姿を現したアランが槌を構える。
馬で駆けつけた藩士たちと向き合うが、そのまま槍で突かれ、槌が大きく空を飛ぶ。
「何と! ‥‥撤退です!! あなたたち、命拾いしましたねぇ」
まごつく民にそれとなく言い聞かせ、牙は控える藩主に目を向ける。険しく敵に臨む表情であったが、ほんの一瞬目を伏せる。
「覚えてろ!!」
武器を拾い、ベタな捨て台詞を残すと、悪党も妖怪も方々に散っていく。
「逃がすな、追え!!」
輝政指示の元、幾人か捕縛、あるいは討伐せんと追いかけてきた。
必死で逃げて、逃げて。
人里から離れた所でまた一同落ち合う。
「御協力感謝いたす。以後の平和に向けての尽力を堅くお約束すると、殿から言付かって参りました」
追いかけてきた役人たちも当然事情は知る。
馬上から降りると、丁重な礼を冒険者らに述べる。
民たちの説得に妖怪残党の処理。藩主としてやらねばならぬ事は山積している。姫路に戻ったばかりの今、迅速に動かねばまたいらぬ騒動を起こされかねない。
その為、冒険者らと直に会う時間も取れない詫びも伝えるが、冒険者らにしてもそれはさほど気にしていない。
元凶は取り除いたのだ。後は藩主の力量に任せ、報酬を受けると、そのまま京都への帰路を急ぐ。
「‥‥羅刹天は去ったか」
その途中で。冒険者らの前に姿を見せる性空。どこか無念そうに見えるのは、気のせいでは無さそうだ。
「力だけが世の全てでないと、藩主と共に民に説いて欲しいのだが‥‥気乗りしないようですね」
烈閃の頼みに、性空はふと息を吐く。
「そうでもない。間違った行いは正さねばなるまい。だが、聖が言うから正しく、邪が言うから悪い、と云うモノでもなかろう」
問われて、一同目を丸くする。
「真実、何をすべきかは人自ら気付かねばなるまい。仲間たちは、だから導くべきと説くが、わしは少し懐疑に思う。それで良いなら、羅刹天がした事も変わりなかろうて。鵜呑みにされるのでは意味が無い上に、そこからの思考を妨げてしまう」
そして、性空は白き翼を広げる。
「以前にもそう考え、故にわしは世から離れただ見守る事にしたのだよ。人が己で気付くまで」
だから仲間内でも変わり者と言われるのだろう、と笑い、飛び去る。
姫路の空に消える性空を見届け、冒険者たちは播磨を去った。