【黄泉人討伐】 陰陽村調査

■ショートシナリオ


担当:からた狐

対応レベル:3〜7lv

難易度:難しい

成功報酬:2 G 45 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:08月06日〜08月11日

リプレイ公開日:2005年08月15日

●オープニング

 陰陽村。
 大和の騒動がまだ死人騒ぎとしか認知されてなかった頃、陰陽頭・安倍晴明が調査を告げた村。
 多くの冒険者が直接あるいは近隣へと探索に赴いたが、そこで彼らが見たのは黄泉人の姿。その後、気にはかけられながらも黄泉人たちの攻勢に手を割かれ、また村自体が黄泉の勢に飲み込まれたこともあり、探索は中途のまま棚上げ状態になっている。
「その村に赴く。ついては冒険者に同行願いたい」
 冒険者ギルドに現れ、轟然とそう言い放ったのは陰陽師・蘆屋道満。
 江戸と京都を結ぶ月道探索で功を上げ、その事後処理に携わっていた彼だが、いつの間にやら京に戻ってきていたらしい。
「しかし‥‥陰陽村ですかい?」
 かねてより取り沙汰されていた名を久々に聞き、ギルドの係員はといえば首を傾げるばかり。
 先の合戦によって、黄泉人たちは大和の南へと退いた。しかし、退いただけで滅んではいない。陰陽村周辺はいまだ黄泉人たちの勢力圏内だ。
 故に、京都守護職・平織虎長が中心となり今度こそ黄泉人たちを討つべく、兵を上げようとしている。
 それに先駆け、斥候による黄泉人たちの調査も行われていた。その関わりで、危険承知で村の様子も見てきた者によれば、一応黄泉人たちは村から退いたようだ。が、撤退の際には破壊活動を行ったらしく村の片鱗は無い。
 村内部では今だ死人憑きがうろついている。また常駐はしてないだけで、付近では黄泉人の姿も目撃している。 
 それは道満も知っているはずだ。今更あのような廃墟に用があるとは到底思えなかった。
 不審な目を向けると、道満は一つ頷き口を開く。
「内情は承知しておる。だが、わしが独自に調べた結果、やはりあの村は黄泉人と何らかの関わりがあるようだ。さらに運良く村の生き残りから詳しい話を聞く事が出来た。いや、聞くというのは少し妙か」
 生き残りというが、村を襲撃された傷が元でその者は死に掛けていた。もはや自力では動く事もままならない状態だったのだ。
「喋る事も出来ない状態だったが、思念で会話する分には問題ない。そして、その者は村の事情をある程度は知っていた」
 曰く、長老宅には古くから伝わる資料やらが残されていた。村が襲撃された際、持って逃げるだけの時間がすでに無いと悟った村人は、村のどこかにそれらを隠した。
「詳しく聞く前にその者は息を引き取ってしまったが。どうやらその資料には黄泉人に関する事が記されていたらしい。
 村の状態からしてすでに失われた可能性は高いし、そも有益な物であるかも分らん。が、放っておく訳にもいくまい」
 黄泉人についての調査は数多く行われたが、その割に現状実入りが少ない。
「死人憑きはまだ多数うろついているし黄泉人もあなどれん。それに村は壊滅状態の上、どこにどうやって隠されているのかなども良く分からん。それで手を借りたい」
 道満の言葉に係員は了承を出す。元より依頼としては問題ない。
 受けるか否か。後は冒険者側の問題である。

●今回の参加者

 ea4870 時羅 亮(29歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 ea8616 百目鬼 女華姫(30歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 eb0524 鷹神 紫由莉(38歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 eb1277 日比岐 鼓太郎(44歳・♂・忍者・ジャイアント・ジャパン)
 eb1795 拍手 阿義流(28歳・♂・陰陽師・人間・ジャパン)
 eb1975 風樹 護(40歳・♂・陰陽師・人間・ジャパン)
 eb2127 字 冬狐(28歳・♀・陰陽師・人間・ジャパン)
 eb2704 乃木坂 雷電(24歳・♂・神聖騎士・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

「また探しものか。道満さんは探し物が好きな人だね」
 以前にも、月道探索にて同行した事がある。なので、軽く告げた時羅亮(ea4870)なのだが、
「仕事だ。仕方あるまい」
 蘆屋道満は短く憮然と答えただけ。ま、そういう事だ。
「陰陽村内部の地図はこちらに用意してますのでどうぞ」
 字冬狐(eb2127)が地図を配る。紙などは今回戦に絡むとあって出してもらえたが、問題はそれを複写する手間隙である。情報が多くなる分、それを写すのは大変だった。
 道満が聞いた情報の他、冒険者たちも各人、生き残りを探して情報を探っていた。村の生き残りはほとんどいなかったが、それでも村内部の様子を知るに足るだけの情報は集まった。
 もっとも、それも今ではどれだけ変わっている事か。
「魔法や経巻を利用して、ウォールホールで地の中に隠すという事も考えられますが‥‥。バーニングマップがございましたら、探し物には便利ですよね」
「無理だな」
 告げる冬狐に、道満はあっさりと否定を入れる。
「バーニングマップは幾ら探す物の情報を集めようと、肝心の場所の情報が無くては意味が無い。その場所が分からないから探すのだし、場所が分かった頃には、恐らくはそこにいて資料とやらを見つけているだろうからな。
 それに村人が魔法や経巻を使えたとも思えん。日本の精霊魔法は神皇家の秘であり、管理が厳しい。何か含みがあるとはいえ、一地方の小さな村が伝えているなどとは考えづらい」
 精霊魔術は神皇家の威信の一つである以上、おいそれと振舞うことは無い。神皇家の為に働く者にしか伝えないのもそのせいだ。
「では、どこに隠されてると?」
「それが分からぬから探すのだろうが」
 尋ね返した亮に、ふんと道満は鼻息荒げに一瞥くれる。
「‥‥弟が道満さんと会いたがってましたけど。案外、会えなくて正解だったかもしれませんね」
 ずんずんと先に進む道満の後に続きながら、拍手阿義流(eb1795)は密かに天を見上げた。


 先の合戦により、大和には幾許かの平和が訪れていた。とはいえ、その爪痕は酷い。
 さらに南に下るにつれ、死人憑きを目にする事が多くなる。
 幸い、黄泉人との遭遇は無かったので何とかなったが、やり過ごしたり、時には戦闘したりと移動だけでも緊張を強いられる。
 それでも、どうにか陰陽村の近くまでたどり着く事が出来た。
「酷いものだね。ほとんどの家屋が潰されている」
 日比岐鼓太郎(eb1277)が村の光景に、青い顔して唇を噛む。
 村に入るに先立ち、彼がまず上空から大凧で中の様子を探っていた。なので、内部の様子は事前にある程度分かってはいたが、それでも間近で見るとまた赴きが違う。
 家屋は潰され放置され、比較的無事なモノも長い月日ですっかり荒れ果てている。
 道を行きかうのは生者ではなく、死人の群れ。彼らが彷徨う村としては確かにふさわしい景色ではあったが。
「死人は村中に散っていて数も多いが、個々の群れはせいぜい多くて六人ぐらい。迂闊に囲まれなければ何とかなるだろう。黄泉人の姿は無かったように思うが、油断は禁物、だね」
 目にした光景に沈んでいた鼓太郎が、気合を入れなおす。
「どこに隠してるか分からない以上、手分けするしかないわね。それでも二班に分かれるのがせいぜいかしら?」
 鷹神紫由莉(eb0524)が告げると、百目鬼女華姫(ea8616)が頷く。
「戦闘を考えると、前衛と後衛を考えて分かれた方がいいわよね」
 とはいえ、具体的に班分けが決まった訳でも無く。目的地によって何となく分かれるような形になった。 
「はぐれた時の合言葉は絶対に忘れないでちょうだいよ。黄泉人に紛れ込まれるのは厄介なんだから」
 女華姫が念を押す。
 黄泉人は人に化ける。そうして人の中に紛れ込んで、大きな被害をもたらしたのだ。
 中には、すでにいる人間と成り代わったという話もある。油断は全く出来なかった。

「隠したとなれば、死人憑きや黄泉人が近付かないような場所でしょうか」
「不浄が嫌う祠や地蔵、及びその周辺。後は、桃の樹を苦手としているなんて話もあったな。‥‥どうやら確からしいが」
 阿義流に、乃木坂雷電(eb2704)が見渡す。
 黄泉人は桃を嫌う。
 先の合戦でそう言われた事もあり、事前調査でその場所を聞いていた冒険者も多い。
 だが、実際現場に来てみれば、それらはただの一つも見当たらない。木があるとされた場所、桃の木が使われたとされる建物は、確かにそれらしい痕跡は残っていたが、綺麗さっぱり失せている。
 その他の破壊の跡――寺社などもこっちに含む――に比べても、極端に破壊が徹底されているのは素人目でも分かる。
「桃の木周辺というのは無いわね。仮に隠してたとしても、もう黄泉人たちに見つかってるでしょうし」
 少し肩を竦めて見せる女華姫。
「黄泉人が桃を苦手にしてても死人憑きはそうでも無いんだし。邪魔なら奴らに片付けさせればいいって事かな」
 鼓太郎が目を遣った先には、やむなく原型を留めぬ程に切り伏せられた死人憑きが転がっている。
 それら一体一体は非力でも、それを何十と使役すれば確かに問題では無いだろう。
 なんにせよ。他を当たるしかない。

「祠や寺社も探して行ってみたが、どうやら無いっぽいな」
 雷電が軽く頭を掻く。村を一周してみた結果、怪しい場所は見当たらない。
「破壊された跡はあっても、掘り返したりしたような後は見つけられなかったし」
 亮も低く唸る。
 もっとも、隠したとすると数ヶ月前。その後、黄泉人たちが荒らしに荒らしまわっているのでどの程度痕跡が残るかは疑問だが。少なくとも、彼らの目にはそれ以上怪しいと判ずる場所は無かった。
「とすると、今怪しいのはここぐらいか」
 風樹護(eb1975)が見たのは、長老の家。やはり事前調査で分かっていたし、近くまで来れば他の家に比べて家も立派で蔵まであるしで、人目でそれと分かる。
 ただし柱が折られたのだろう。家は完全につぶれて屋根が足元にある。
 自然は一幅の絵、と護は俯瞰して見回してみれば、何とはなしに破壊の跡が他の家屋に比べると激しい気もする。そういう目で見るから余計にそう見えるのかも、と思う程度だが。
「井戸は見ましたが、特に何もありませんね」
 首を横に振る紫由莉。その顔には焦りも大きい。
 日はすでに傾いている。日暮れまでにどうにかしなければ夜間の捜索は危険すぎる。
「隠す時間的余裕は無かったんじゃないの?」
 女華姫が尋ねると、道満が苦い顔で頷く。
「少なくとも腰を落ち着けてじっくりととはいかなかった筈。なれば、やはり別の場所に隠されているのか、あるいはもはや奴らに‥‥」
「あ!」
 話の腰は、唐突に冬狐の声で遮られた。
「ここ、家の下に空間があるみたいです。結構深そうですね」
 クリエイトウォーターの経巻で作り上げた水により、あたりは水浸しとなっている。その水が低い所へと流れ、深い水音を響かせていた。
「地下室ですか! やはり瓦礫に埋もれていた可能性もあったですね」
 思わず護の顔に笑みが浮かぶ。
「時間も無いし、確かめに掘り起こしてみるか」
 荷からスコップを取り出すと、鼓太郎は早速とばかりに邪魔な瓦礫や土砂を取り除いていく。
 他の者も協力する事しばし。ほどなくして地下への入り口が開く。
 道満が松明をつけて中に入ると、何人かがそれに従う。
 石で囲まれた狭くはあるが頑丈な地下室。だが、そこはがらんどうで、崩れ落ちていた家の一部が転がる以外には何も無かった。
「何かを置いていたような跡はあるな。‥‥見つかった後か?」
「待って下さい。まだ水は落ちています?」
 苦々しく告げる道満に、冬狐は足元を指し閉めす。石畳の隙間に向けて、先程の水が跡を作っていた。試しに鼓太郎がそれを取り除くと、果たして、そこには箱が埋まっていた。
「ほぉ‥‥。これは」
 箱の中には木簡が詰められていた。厳重に埋まっていた所からしてどうやら貴重品ではあるようだが‥‥。
 松明を置くと、道満はその一つに目を通し始める。
 道満の顔つきが険しくなる。読み始めてしばし、そして――いきなり、大爆笑したのだった。

「な、なんですか?」
 笑い声は外にも響いた。目を丸くする護が中を覗き込む。
 雷電がはっと顔を上げる。だが、それは地下の出来事が起因ではない。
「急げ! 周囲を囲んできている!!」
 バイブレーションセンサーが振動を掴んでいた。四方から輪を縮めるように、多数の者が近付いてきている。
 今の村で、そんな事をする存在は知れている。そして、そんな知恵を出すような奴も限られていた。
「引くぞ。これが見つかっただけでも重畳というものだ!」
 笑みを隠さないまま、道満が高らかに告げる。
 言われるまでもなく、即座に冒険者たちは村から出ようと走りだす。
「逃がすな! 追え!!」
 家屋の陰から躍り出ると、一体の死体が声高に叫ぶ。
 いや、一見すれば干からびた死人憑きだが、その声にも態度にも明確な意思が宿っている。
「黄泉人!」
 紫由莉が声を荒げる。
 さらにもう一体、別の方向から死人たちを率いて姿を現す。
「囲まれましたか」
 護が小さく舌打ちをした。虚ろな眼差しが四方から注がれる。
「何か村の方で凧なんて飛んでたから妙だと思ってたら‥‥よくここまで来れたもんだな」
「ああ、だがここまでだ。のこのこと出向いて来た事。後悔しやがれ!!」
 黄泉人が号令を発する。途端に死人の群れがのろのろと襲い掛かってきた。が、その前に突然地面から壁がせり出し、一部の歩みを妨げた。冬狐の経巻によるストーンウォールだった。
「ここはこちらの方がいいですね」
 一対象しかない魔法よりもと判断すると、阿義流が鳴弦の弓を手にして、弦を掻き鳴らす。か細い音が鳴り響くや、死人たちの動作が緩慢になる。
 さらに道満がシャドウボムを発動させた。その一撃で明らかに輪の一角が弱り崩れる。
「行きますわよ!」
「妨げるなら容赦はしない! 全て薙ぎ倒す!!」
 その崩れた一角に紫由莉と雷電が飛び込む。紫由莉が太刀・三条宗近を振り下ろして死人を切り捨てると、雷電もまた日本刀で死人の群れを薙ぎ払う。
 とはいえ、数の差がありすぎた。せっかくの退路もすぐに別の死人憑きが押し寄せてきている。
「これは流石に対処できそうにもないし‥‥急いで!!」
 亮がそうして出来た退路を保持すべく、掴みこんでくる汚い手を十手で受けると、日本刀で切り返す。どちらもオーラパワーが付与されている。アンデッドには効果がばつぐんだ。
 そうして出来た道に冒険者たちをすかさず駆け抜ける。
「逃がすか!」
「バカ、よせ!!」
 逃げられる、と判断した黄泉人が迫ってくる。何故かもう一体は慌てた様子で押しとめていた。
 最後尾を守っていた鼓太郎に近付くとすかさず爪を振るってきた。だが、その爪はたやすく逃れる事が出来た。
(「遅い?」)
 見ていた誰もがそれを訝る。黄泉人の動きは明らかに遅く、周りの死人憑きとさほど変わらない。
 阿義流の鳴弦はアンデッドの動きを抑制する。が、走っている今は使っていない。にもかかわらずだ。
 苦々しく顔を歪ませる黄泉人に、お返しと鼓太郎は両手の愛刀を叩き込む。その両方ともを黄泉人は躱せなかった。
「ぎゃああ!!」
 顔を歪ませる黄泉人。Gパニッシャーでつけた傷以上に桃の木刀での傷の方が大きかった。それは、同じ木刀で死人憑きを斬った傷跡と比べても、明らかに差が出来ている程酷い。
「その木刀かあああ!」
「これが弱点か!!」
 得たりと笑うと、鼓太郎は桃の木刀を突き立てた。背後からも魔法の援護が飛ぶ。
 周囲を震わす絶叫の後に黄泉人は倒れた。ほっとする間も無く、鼓太郎の真横に護のムーンアローが飛んだ。死人憑きが迫ってきていたのだ。
 気付けば、もう一体の黄泉人の姿は失せている。援軍を呼びに行ったのかもしれない。
 死人憑きたちは倒れた黄泉人を気にする事なく踏みつけ、生きている者たちへと近付いてくる。
「長居は無用ね」
 他の冒険者を逃がすべく、ひとしきり死人の群れ相手に暴れた後、女華姫もまた早々と陰陽村を後にしていた。


「それで、一体何が書かれていたのでしょう」
 死人に追われながら大和の地を逃れ、京を目前にしてようやく冒険者たちは息をついた。
 しばしの休息。阿義流がふと思い立ち、道満に尋ねる。
「全てを詳しく見た訳ではないが。どうやら歴史書だ」
 傲慢な笑みを浮かべながら、道満は持ち出した木簡を見遣る。
「遥か昔。とある地方の豪族が恨みを抱いて死んだ。そして、黄泉の国の人間と共に当時の都を脅かした。時の神皇家はこれを討伐し、黄泉の人間たちを封印した。――恐らく、黄泉人の京‥‥というより神皇家に対する恨みはコレに起因するのだろう。
 一方で、この事件は実は神皇家にとってあまり嬉しくない事件であったようだ。よって、事件に関する資料や伝承を意図的に破棄し、どさくさで黄泉人たちに関する記述も消え去った、という所か。――都で資料を探ろうとしてもみつからないはずだ。都合の悪い物を膝元にばら撒いてる訳が無い」
 くつくつと道満が笑う。
「勿論、陰陽村の事も書いてあった。そも村は黄泉の封印を見守る為に作られたらしい。昔の事ゆえ、今では役目などすっかり忘れ去られていたようだが。‥‥いや、この資料が意図的に隠された事を見ると、一部には伝わっていたのかも知れん」
「黄泉人自体に対する手がかりは書かれてませんの」
 紫由莉が尋ねる。
「さあな。しかし、我らが次に目指す場所は分かる」
 はっと冒険者たちが顔を上げる。それをたっぷりと眺めた後に、勿体ぶるように道満は告げる。
「石舞台古墳だ。その地下に、根の国に至る黄泉比良坂が隠されているらしい。恐らくは黄泉大神もそこだ」
 それは飛鳥の山中にある古墳。古代王の墓の一つと噂されているが、真偽は分からない。
 平和を勝ち取った大和の地を振り返る。しかし、結局は未だ死人は横行している。黄泉人もまた。
「さて。これから鬼が出るか蛇が出るか‥‥。楽しみですね」 
 その大和を振り返り、護が嗤う。
 確かに何が出るかは分からない。だが、今度こそは確かな終焉を迎えられるはずだ。