羅城門の鬼
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■ショートシナリオ
担当:からた狐
対応レベル:8〜14lv
難易度:やや難
成功報酬:4 G 98 C
参加人数:6人
サポート参加人数:4人
冒険期間:02月26日〜03月03日
リプレイ公開日:2006年03月06日
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●オープニング
京都南方・羅城門。都に入る為の正面玄関であり、交通の要所。
そこに鬼が出るようになったのはさていつからか。
狙われるのは女に子供。
鬼は暗がりから暗がりへ。物陰に静かに潜み、都に入る者、あるいは出る者が人の群れからふと逸れた隙を見つけ、たちまちの内に掻っ攫って連れて行く。
後に子供は食われ、女は犯された姿で発見される。大概はすでに死しており、生き残った者もその時の恐怖に耐え切れず、じきに狂死してしまう。
都の入り口に鬼が出るなどと噂が諸国に広まれば、京都の権威は下がる。
何より民の安全を図る為に、京都見廻組がその鬼の討伐に向かった。
仲間の女を囮にすると、鬼は彼女をさらって逃げた。それをすかさず追いかける見廻組。
走って走って。やがて逃げ切れぬと悟ったか、鬼は立ち止まり向き直った。‥‥その姿は、
「馬頭鬼か!!」
苦々しく告げた者は果たして誰だったか。
それは小鬼などとは比べ物にならぬ戦鬼。けして油断の出来ぬ相手であり、かつ野放しにしていい相手でもなかった。
相手は一体のみ。揃った面々を思えば、多少てこずるだろうが、仕留められる確信はあった。オーラを、魔法を使用して見廻組は牛頭鬼と向き合う。
「後ろにまだいるぞ!!」
そこで、誰かがはっとして声を荒げた。緊迫して振り返ると、そこにはもう一体の鬼が差し迫っていた。
鼻息荒く突進してくる雄牛。否、それは頭だけで身体は人――いや、筋骨隆々の鬼の姿。
「牛頭鬼!」
隊列に飛び込む遮二無二に斧を振り回す相手に、誰かが悲鳴を上げる。
それも馬頭鬼と双璧をなす鬼。同じく小物とは言いがたい相手。
門に現れる鬼は一体のみ。だから、その鬼一体だけを相手にするのだと思い込んでしまっていた見廻組たちは、思わぬ伏兵に浮き足立つ。
「結局、討伐はならず。向こうに多少の手傷は負わせたものの、こちらもまた被害を被り、逃げられてしまった」
冒険者ギルドに現れた京都見廻組・渡辺綱はその時の事を思い出してか、苦渋に顔を歪ませる。
「それ以来、羅城門では姿を見せなくなった。恐らく、どこかで傷を癒しているのだろう」
ふっと綱は息を吐く。
「これまでの痕跡から考察していくに、ここから一日程離れた山の中に巣穴があるのだと思う。実際、現地の猟師たちも鬼が出るといって踏み込まぬ山がある。だが、そのどこら辺に奴らが潜んでいるのかは皆目見当つかない。仲間達の怪我も浅くは無い上、この件ばかりに構っていられないのが京の実情だ。だから人手も足りない」
何せ事件続きの京の都。加えて事件だけでなく、組織関係のいざこざから思うように動けなくなる時だってある。
「だからといって手をこまねいている場合では無い。奴らが動き出すようになれば、また人が食われる。なので、急ぎ奴らを探し出して討伐したいので、手を貸してもらいたい」
言って、綱は真摯に頭を下げたのだった。
●リプレイ本文
羅城門で人を襲い苦しめた鬼。京都見廻組が一度は追い詰めたと思ったが、もう一体を失念し、取り逃がしてしまう。
その足跡を追い、住処があるとされる山までは限定できた。が、その奥、どこに身を潜ませたか。
「駄目でござる。猟師たちに話を聞いてみたでござるが、鬼がいるという山は忌み山で誰も入らぬとの事。中の様子は見当付かぬ」
「しかし、前々から鬼の叫ぶ声が聞こえるそうだ。ここ数日も聞いたという話を得たから山にいるのは確かだろうぜ」
山にいる前に情報収集に走った滋藤柾鷹(ea0858)と堀田左之介(ea5973)だったが、結果は芳しくなく。
「やはり山に入って、目で探すしかないか」
京都見廻組・渡辺綱は眉間に皺寄せて唸る。鬼の領域に踏み込むとなると、地の利は向こうにある。雪山で無いだけマシかもしれない。
「見通し悪そうな山だな。上空からも探してみるが、上手く見つけられるかどうか」
山の外見を眺めながら、環連十郎(ea3363)も苦虫を潰した表情を作る。
誰も山に入らない以上、手入れをする人も無く。うっそうと茂った山の木々は冬だというのに視界を狭くしていた。
「知り合いに馬頭鬼や牛頭鬼の情報を仕入れてもらったが。力自慢ではあるが、別に魔法が使えたり妙な能力を持ってたりはしないようでござる」
「その力自慢ってのが問題なんだがな。結構動けるようだし、面倒そうな相手だな」
柾鷹に乃木坂雷電(eb2704)が軽く肩を竦めながら、注意を促した。
「こちらの失態を押し付けてすまん。だが、これを逃せばまた京に被害が出かねない。改めて協力お願いする」
「そんなに畏まらないでよ。勿論、放っておけないからね。そんな人に仇為す悪い鬼は、神皇様に代わってお仕置きよ!」」
頭を下げる綱に、楠木麻(ea8087)は笑いながらも真剣な眼差しで鬼たちのいる方を睨みつけた。
鬼がいる山だと思うからだろうか。どこかそこいらの山に比べて、荒れ果てた感じがした。道もあるのは獣道で、進めそうな場所を選んで足を運ぶ。
リトルフライで移動していた連十郎はそうした苦労こそ無かったが、それでも目の前を阻んでくる小枝などで多少の苦戦は余儀なくされる。
そうして奥地へ進む事しばし。
「待ったでござる」
声をかけたのは柾鷹だった。音を立てぬよう指示して、そっと移動する。
鬼を見つけたのではない。見つけたのは別の物。だが、それは十分物騒な代物だといえる。無言で指し示した
「鹿の死骸か。そんなに古くも無いな」
「少なくとも、ここら辺が狩場なのでござろうな」
頭を寄せて、綱と柾鷹がそれを確かめ合う。
鹿は頭があらぬ方向に折られた上に、足も引き千切られていた。その上で中身がごっそりと失われていた。グリフォンの伐折羅が惹かれたか近付こうとするのを、主人である麻は怖い顔で制する。
「傷の程度はさほど深く無いんだろ?」
訊ねる左之介に、不承不承と綱が頷く。
「ああ。道中でも言ったが、深手と言える傷は与えられていない。鬼の回復力がいかほどかは知らないが、日数的に見ても、そろそろ回復に向かっていておかしく無い頃合だ」
「だが、病み上がりとすればそう遠出もしまい。存外、巣穴は近いかもしれない」
キサラ・ブレンファード(ea5796)が意見を述べると、綱も頷く。
それからさらに慎重に進むと、確かに鬼のいた痕跡はそこかしこで見付かった。
最初に気付いたのは、野性の勘か伐折羅だった。全身の毛を逆立てて威嚇するそれの視線を手繰り、連十郎が声を荒げる。
「いたぞ! そこの茂みの奥だ!!」
声と同時に冒険者達が一斉に得物を手にした。
そして、茂みが揺れるとその奥から巨躯が疾駆してくるのがまた同時。
詠唱の隙を突き、飛び込んできたのは気妙な牛の影。勢いそのままに突撃されて、左之介の体が吹き飛ぶ。角にかけられて負わされた深手。地に散る血の後から見てもけして軽くは無い怪我。
「ったく。怪我の回復は良好ってか」
その成果に雄叫びを上げるそいつに、左之介は毒づく。
牡牛の頭に鬼の体。草食動物の頭をしながらも、けしてそいつはそんな生易しいものではない。手にした斧を振りかざし、鼻息も荒く冒険者たちへと飢えた眼差しを向けてくる。
「まずは牛頭か。‥‥ならば馬頭は!!」
反射的に、綱が背後を振り向いた。
牛頭鬼が飛び出してきたのとは全く逆の方向。茂みが揺れると馬が飛び出てきた。
否。馬の頭をした鬼――馬頭鬼。太い腕に斧を掲げると、間近にいた柾鷹に頭上から一気に振り下ろす。躱しきれずに受けた刃は、確実に柾鷹を傷つける。
「向こうから来てくれるとはね。ありがたい事だ」
戦闘の緊張感に身を浸し、笑みを見せつつキサラが馬頭鬼に相対する。
「全く。罠をしかける時間もないでござるか」
呟き、柾鷹が素早く距離を開けるも、相手はすかさず縮めてくる。弱った獲物を引き裂かんとその腕を伸ばしてくるが、
「伐折羅、行って!!」
麻の号令がかかるや否や、伐折羅が飛び掛った。奇妙な獣は翼を空打つや、獰猛に鬼たちに襲い掛かる。
初めて見る獣に飛び掛られ鬼たちは驚くも、慌てる事無くむしろいきり立って西洋の鷲獅子に飛び掛っていった。
その隙に、各々詠唱を開始し、治せる傷は治すと、装備を整え改めて鬼たちと向き合う。
「楠木殿!!」
綱に言われるまでも無く、麻は伐折羅を退かせる。巨大な獣と鬼が争う中に、飛び込むのは危険極まりなく。
命にしたがう獣に追い討ちかけんと牛頭鬼が向かったが、それは麻がグラビティーキャノンで打ち止めた。一直線に伸びる重力波。牛頭鬼の足が浮かぶが、そこはさすがというべきか、足を踏ん張らせて転倒は避けた。
「ウモオオオオオオオーーー!!!」
よくもやったなと言わんばかりに、牛頭鬼が吼える。大地を蹴って突進してこようとした牛頭鬼だが、その体に枝が巻きつき出すと、荒れ狂う動きを奪っていく。
「まずは、一頭ずつ! 牛から屠るぞ」
雷電のプラントコントロール。絡み付く束縛を牛頭鬼は無理矢理引き千切っていく。
「さっきのお返しだ!!」
だが、自由を取り戻す前に左之介がその身を掌で打った。見えない気がその肉体へと叩き込まれて、牛頭鬼が奇妙な声を上げる。
そこへすかさず、柾鷹が両手の得物で切りかかる。左手の小太刀はともかく、右手の金時の鉞は鬼にはまた格別の効果をもたらす。さらにオーラパワーも加えての連撃。武器の重さも過分に加えたその殺傷力は、鬼の身が朱に染まる事で確証される。
「はああ!!」
ここで終わりにする。その気迫と共に綱もまた刃を打ち込む。瞬く間に牛頭鬼は血に濡れ、雄叫びは悲鳴に変わった。
その間にも雷電はアグライベイションでさらに動きの抑制を図るが、抵抗されてなかなか上手くいかない。
残る馬頭鬼も勿論放ってはいない。
「おーい。こっちだこっち」
連十郎が浮かんだまま挑発し、合流を阻止する。しかし、離れすぎるとこっちに興味を持ってくれない。近付きすぎると、浮かんだままでは戦闘が出来ない為に相手の得物の餌食になる。その微妙な距離を保ちながら連十郎は関心を引き付ける。
「にゃー♪」
目線が交わり、キサラもまた挑発の声を上げる。とはいえ、猫を手本の色仕掛けは鬼にどれほど効果があったのか。馬顔の表情はよく分からないが、兎角、こっちに飛び掛ってきてくれたのは確か。
そして、キサラが素早く間合いを詰めて一撃を加え、また距離を離す。離しながら、ついでに牛頭鬼との距離も引き離すよう誘導する。
踏み込みや刀の切り出しに変化をつけて相手の隙を誘いながら、素早く刃を掠めて斬りつけ。
馬頭鬼はやはり小鬼などとは格が違う。それでも技量は確実にこちらが上。といって油断すると、唸りを上げて斧が振り下ろされる。耳の横で風を切った音にひやりとしながらも、次に繰り出された重い一撃をリュートベイルで受けて捌き、また踏み込み霞刀を入れる。
牛頭鬼の方も、朱に染まりながらも戦意は衰える事は知らない。むしろ、目障りな蝿を叩き潰さんとばかりに斧を振り回す。
鬼の振るう斧にややも苦戦しながら、それでも確実に冒険者達は鬼たちを葬っていた。
牛頭鬼を倒し、それから馬頭鬼へと倒しにかかる。地に伏して動かなくなった奴らを、念の為にと綱が頭と胴を切り離してようやく仕事は完了した。
後方から魔法で攻撃していた雷電と麻はさほどの傷は無いものの、前衛で戦った者たちはそれなりの傷を負い、魔法薬で癒す。ついでに、というのも悪いが、麻は同じく傷ついた伐折羅にも飲ませてみたり。
しばしの休息の後。連十郎の先達で鬼たちの住処を探してみる。
そう遠くは無いだろうとふんでみると、やはり近くにあった。洞窟を利用して住み着いた粗末な住処は、しかし、奥に踏み込めば骸骨の山。獣の物も混じってはいたが、そのほとんどが人間で、しかも大半が子供の者だった。
「やだねぇ。乱暴な事しか出来ないモノってのは」
嫌そうに告げると連十郎は骨を拾う。麓できちんと供養してもらう為だ。
「弔う事しか出来ないか。無力な者だな、我らも‥‥」
それを手伝いながら、綱が首を横に振る。京の治安はまだ平穏には程遠い。