イエローゲート漫遊記

■ショートシナリオ


担当:勝元

対応レベル:1〜5lv

難易度:普通

成功報酬:1 G 35 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:02月09日〜02月14日

リプレイ公開日:2005年02月17日

●オープニング

 ――とあるお屋敷。
 杖を片手、真っ白な髭を蓄え、柔和な雰囲気を漂わせた老紳士が、キョロキョロと辺りを見回していた。
「はて‥‥カクさんとスケさんは何処に行ったのですかな」
 人を探しているらしい。
 と、そこに使用人らしき風体の男が現れた。男は老人に目を止めると一礼し、恭しく声をかける。
「旦那様、お食事の支度が‥‥」
「おお、探しましたぞカクさん」
 老人は使用人の姿をみとめると、喜色満面で話しかけた。どうやら探していたのは彼だったようだ。
 そのカクさん、主に対して一言。
「‥‥ええと、そのカクさんとは私の事でしょうか?」
 まるで人違いらしい。
「かっかっか、カクさんも冗談がお好きですな。カクリコンだからカクさんでしょう?」
「いやいや、私はダビドで――」
 ダビドさん、とりあえず名前だけでもと訂正にチャレンジ。
「さて。今日は何処に向かいますかな? 庶民の暮らしぶりは常に把握しておかないといけませんからなあ」
 あ、サクッと無視しやがりましたご老人。
(「また始まった、旦那様の悪い癖が‥‥」)
 男は遠い目で、今日一日は旦那様のお相手でパーだな、と覚悟を決めた。


「――という訳でだな、父の奇行には皆頭を抱えるばかりなのだよ」
 冒険者ギルドを尋ねたその男は、ひとしきり事情を説明すると、嘆くようにこめかみの辺りを抑える。
「はぁ、それは大変ですねぇ‥‥」
 男の話を聞いた受付嬢は、変人の種は世に尽きないな、としみじみ思った。

 簡潔に説明しよう。
 このお父上、ノルマン江戸村とか言う観光地(?)に遊びに行った際に、詩人か何かに吹き込まれた物語がよほどお気に召したらしい。自分はジャパンから来たサムライ「イエローゲート」だと言い出したのである。
 それ以来、ことあるごとに家族や使用人は、やれ庶民の暮らしがどうとか、エチゴヤそちも悪よのうとか、いやいやオダイカーン様には敵いませぬとか意味不明な遊びにつき合わされているのだそうだ。

「最近は更にエスカレートしてきてな、ついには世直しの旅に出ると言い出す始末だ‥‥」
 男は溜息を一つ、話を続ける。
「普段は温厚なのに、頑固で思い込みが激しい人だからな、満足するまでは諦めそうにない。そこでだ。君達冒険者に、父の相手をして貰いたいのだよ」
「つまり‥‥お父上をゴブリンあたりの集落に連れて行って、『世直し』させろと?」
「その通り。後は適当に父の話に合わせてくれれば良い。というか‥‥」
 男は苦笑いを浮かべ、言った。
「父に合わせないと、『世直し』にはならないだろうな」

●今回の参加者

 ea6284 カノン・レイウイング(33歳・♀・バード・人間・イギリス王国)
 ea7983 ワルキュリア・ブルークリスタル(33歳・♀・神聖騎士・エルフ・ノルマン王国)
 ea8167 多嘉村 華宵(29歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea8210 ゾナハ・ゾナカーセ(59歳・♂・レンジャー・エルフ・ビザンチン帝国)
 ea8851 エヴァリィ・スゥ(18歳・♀・バード・ハーフエルフ・ロシア王国)
 ea9150 神木 秋緒(28歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea9643 ステイ・ファル(23歳・♀・ファイター・人間・ノルマン王国)
 eb0754 フォーリィ・クライト(21歳・♀・ファイター・ハーフエルフ・ノルマン王国)

●リプレイ本文

●一幕
 晴れ渡る冬空、名も無き草原。
 枯れた下草を踏み分ける足取りも軽く、歩くは六名の男女。(自称)ジャパンからきたサムライ、イエローゲート一行である。
 歩みにあわせ、流れる軽快な音楽。見事な手並みで掻き鳴らされる竪琴の持ち主は、カノン・レイウイング(ea6284)だ。
(「――楽しいお話にはそれに相応しい音楽があるものですからね♪」)
 そういう訳で彼女は、一行にBGM係として帯同していたのだった。

 ――でっででででっででででっででででででででで♪

 ‥‥えー、どことなく竪琴には無理がある曲調だが気にしないように。皆の心に流れる音楽さえ合っていれば、それでいいのだ。
 ほら、ミスシルバーことエヴァリィ・スゥ(ea8851)も音楽に合わせて歌ってるし。
「じ〜ん?い〜6ありゃ9〜もあるさ〜♪」
 ‥‥意味不明だが、とりあえず楽しそうで何より。意味不明なお陰で記録係も安心である。
 そんな一行からやや離れて、つかず離れずの距離を保ちながら歩く行商人らしき姿も見える。旅のポーション売りは仮の姿、その正体はスリングのヤシーチェ――ゾナハ・ゾナカーセ(ea8210)だ。
『ドレスタットの置きポーション』などと言うのぼり片手に歩くその姿は如何にも目立ちまくりだが、本人は人知れず後を付けているつもりだったりして微笑ましい。
 という訳で、一行は世直し(という設定でゴブリン退治)の旅に出ているのである。因みにこの報告書、心の綺麗な人は括弧内が読めない魔法がかけてあるので読めた者は要注意である(嘘)。
「そうそう。ご隠居、アレが無いとお話になりません」
 と振り返ったのは、一行の先頭を歩いていた多嘉村華宵(ea8167)。
「お持ちですよね? 印籠」
「インロー? ひょっとしてこれですかな、カクさん」
 ご隠居と呼ばれた老人が、懐から小さな木箱を取り出した。
 本家ジャパン出身のカクさん(華宵)、面白半分でご隠居に怪情報を吹き込んでたりする。ちなみに芸名(?)はカクノショウだそうだ。
「実はこれ、食べ物の入れ物なんですよ」
「な、なんですと!」
「入れておけば、保存食も安心ってワケですね」
 適当な事を言いながら木箱を受け取り、保存食をギュウギュウに詰め込むカクさん(華宵)だ。
「知りませんでしたなぁ‥‥」
「ですよね、スケさん♪」
 カクさんが同意を求め、ご隠居の隣を歩くステイ・ファル(ea9643)に声をかける。
「‥‥え? あ、はい!」
 あ、イキナリ素だ。どうやらアドリブはあまり利かないらしい。
「わた‥‥あわわ、お、俺の名はスケアクロウ! よろしく頼む!」
 慌てたスケさん(ステイ)、とりあえず名乗って誤魔化してみたり。
「もちろん頼りにしてますよ、スケちゃん」
 老人は目を細め、一見少年に見える、孫ほど歳の離れた少女を眺めた。細かい事は気にしてないようだ。ちゃん付けはどうかと思わないでもないが。
「確かゴールドさんのお話では‥‥」
「『護武林』ですね。近頃、世間を騒がせている悪党の集団だとか‥‥物騒な世の中になったものです」
 老人に代わって答えたのは、自称遊び人のミスゴールド――神木秋緒(ea9150)である。因みにエヴァリィがシルバーと名乗っているので、一行は金銀揃い踏みだったりする。
「その『護武林』、首領はアクダイカーンと言うらしいですよ」
 おっと、ここでカクさんの怪情報が再発動。
「正規より高い年貢で私腹を肥やし、納められぬ者は娘を差し出せという鬼のような輩だとか‥‥」
 いや実際に鬼なんですが。と言うか単なるゴブリンだし。
「夜毎『良いではないか』と帯くるくる‥‥嗚呼、これ以上は私の口からはっ」
「ジャパンの伝統と言うヤツですか。いけませんなぁ」
 カクさんの怪情報をまるまる信じて、ご隠居は納得しきり。
(「また、ジャパンに対して妙な誤解を‥‥困った人たちね」)
 ミスゴールド(秋緒)は人知れず小さな溜息を吐くと、これも仕事だと自分に言い聞かせるのだった。

●二幕
「‥‥もし、道行かれる旅のお方」
 目的地へと向かう道すがら、ワルキュリア・ブルークリスタル(ea7983)が一行に声をかけた。すかさずカノンがBGMをチェンジ、女の雰囲気に合わせて場の空気を変える。ついでとばかりにメロディーも発動しようと思ったが、歌詞が浮かばなかったので断念したのは内緒だ。
「失礼いたします、ご同行の方々はずいぶんと腕が立つ方々とお見受けいたしましたが‥‥さては名のある方々でございましょうか?」
「いかにも。此方におわすお方はイエローゲート公、世直しの旅の最中だ。俺は供のスケアクロウ」
 スケちゃん、今度はスムーズに台詞が言えた模様。
「同じく、お供のカクノショウです」
 インローに詰めた保存食をボリボリ齧りながらカクさんが自己紹介。ご隠居が羨ましそうに見ているが、動悸がするからあげませんとか言って独り占めである。
「‥‥クールで理知的、ミスシルバー。担当はお色気」
 えー外見年齢13歳の少女へのツッコミは後ほど。とりあえず彼女の芸人度(何ソレ)が高いのは確かだ。
「そして謎の遊び人、ミスゴールドよ」
 言うやゴールドはシルバー(エヴァリィ)に目配せ。どちらかといえば彼女の方がシルバーっぽいのだがそれは言わないお約束である。
「ゴールドは18歳」
「シルバーは13歳」
『双子じゃないですからー残念っ』
 ‥‥いや、もうネタ混じりすぎでワケ判らないし。
 更にポロン♪ とカノンが竪琴の音色でアピール。なかなかに芸が細かい。
「あーまあとにかく」
 駆けつけ三杯どころか十杯飲んでも追いつけない一行のテンションに圧倒されつつ、女は言葉を続けた。このまま付き合っていたら日が暮れてしまいそうだ。
「実はしばし先にゴブリンたちが居り、困っている者があるという話。力になりたくとも、私1人ではどうにもし難く、ここで思案していた次第でございます」
 と、ワルキュリアは訴えかけるように視線を投げかける。何処となく遠い目なのは気にしないこと。
「それは奇遇だな。俺たちもその、『護武林』退治に行く所だったんだ」
「ご同道願いましょうか、ご隠居?」
「そうですな。旅は道連れ、世は情けといいますからなぁ。かっかっか」
 と言うわけでワルキュリアを仲間に加えた一行は、旅を続けるのであった。

(「楽しそうだな‥‥」)
 ヤシーチェ(ゾナハ)は一人、和気藹々と歩く一同を眺めていた。
 役柄上、皆に混じって自己紹介できなかったんだから仕方ない。頑張れ、泣くなっ。出番は近いぞっ。

●三幕
「そろそろ、ですね‥‥」
 歩みを止め、ミスゴールドが呟いた。予め、それっぽい情報を入手しておいたのである。
「この辺りは既に『護武林』の活動地域。気を引き締めましょう」
 と、
「おや?」
 不意にスケちゃんが首をかしげる。
「‥‥ミスシルバーの姿が見えないな」
 言われてみれば、確かにシルバーの姿が見えなかった。
「先行して偵察してくるそうです。流石はクノイチですなぁ」
「まぁ、お約束ですしねぇ」
 うんうん、と頷きあうご隠居とカクさんである。
「‥‥よし、では俺も辺りを見てこよう!」
 言ってスケちゃんが歩き出すと、
「待って、1人じゃ危ないわ‥‥私も行きましょう」
 ミスゴールドはその後を追い、場を離れていった。
「さて、堅物のスケちゃんもいないのがもっけの幸い。‥‥ちょっとだけ、カクさん」
「‥‥ご隠居も(物)好きですねぇ」
 カクさんは小さく苦笑いすると、ご隠居と二人、繁みの向こうに消えていった。

 ――ちゃぽん。ぱしゃん。
 周囲に小さく響く水音。
 一糸纏わぬ小柄な肢体は、何を隠そうミスシルバー(暦年齢27歳)だ。
 そう御待ちかね、お約束シーンである。まあ喜ぶのは一部の特殊な人達だけかもしれないが。
 少女は水面に肩までつかり、上機嫌そうに鼻歌をカチカチと鳴らしていた。
 ‥‥カチカチ?
「‥‥つ、つべだい‥‥てかイタイ‥‥」
 わー鼻歌じゃない、思いっきり歯の音だっ。
 本来の予定では温泉美少女湯煙サービスショットだったのだが、温泉なんて物がある筈が無い。仕方無しにミスシルバー、真冬の行水敢行である。見上げた芸人根性に、記録係も涙が止まらない。と言うか普通死ぬぞっ。
 と、草むらからその姿を見つめる二つの影。
 ‥‥ご隠居とカクさんだった。ちょっとだけって覗きかっ。
「ほほぅ、まだ頑張る気ですか。流石ですなぁ」
「‥‥体張ってますねぇ‥‥」
 なんだか我慢大会を見物しているような気分の二人である。
 カノンとワルキュリアは、その二人を更に後ろから眺めていた。二人が勝手にずんずん行ってしまうので、否応無しに後を付いてきたのだ。
「‥‥」
 流石のカノンも、この局面に合うBGMが思い浮かばない。むしろ覗きのテーマ曲があったら教えて頂きたい所である。
「‥‥殿方は何時まで経っても、少年の夢を忘れないと言う事でしょうか」
「そんな少年の夢、嫌すぎ‥‥」
 全くもって同感だ。
 と。

 ――シュッ。

 突然カクさんの視界に、一つの石が飛び込んできた。見る見るうちに大きくなる。つか真っ直ぐ此方に飛んできてる。
 咄嗟の事に反応が遅れ‥‥

 ――ごすっ。

 カクさんの頭をギリギリ掠め、すぐ傍の木の幹にめり込んだ。
 その石をよく見れば、小さな文字でチマチマと
『悪党すぐ近く――卍』
 などと書いてあるではないか。
「ほほぅ、ヤシーチェからのメッセージですな‥‥」
「‥‥こ、殺す気ですかあの人はっ」
「なにぶん無口(な設定)ですからねぇ」
 生きた心地のしないカクさんに、しみじみ感心するご隠居だ。
 すると泉の向こう、繁みの奥からガサガサと音が聞こえ、姿を見せたのは醜悪な影‥‥そう、ゴブリンである。
 ゴブリンは泉の中でブルブル震えるシルバーを見つけると、
「ゲゲッゲッゲッゲッゲギャ」
 なにやら意味不明の奇声を上げた。
「あ、多分『わしもそっちへ参るぞ』って言ってますね」
「成る程ぉ」
 シルバーの危機を差し置いて、再び怪情報を吹き込むカクさん。雰囲気に合わせ、カノンも緊迫感溢れるBGMを奏でた。
 通常ならこの辺でシルバーは姿を消している所だが、あまりの寒さに固まってたりする。危ないシルバー、乙女のピンチ♪
 すると、そこに――

●四幕
 ――いつの間にか、一本の木陰に一人の戦士が佇み、名乗りを上げた。
「ひとーつ、聞け、人の生き血をすする小鬼どもっ。
 ふたーつ、ふらちな悪行三昧、許すまじっ。
 みっつ、醜い小鬼を倒せと天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶっ。
 あたしの名はクリムゾンファイター、フォーリィ・クライトッ!」
 そう。フォーリィ・クライト(eb0754)、満を持しての登場である。
 その言葉にゴブリンは振り向くと、更に奇声を発した。
『ギギギィィ!』
 召集の合図だったのだろうか、手下のゴブリンがぞろぞろと現れた。
 と、そこに。
「神妙にしなさい悪党ども!」
 更に現れる一人の少女――ミスゴールドだ。
「このミスゴールドの桜吹雪‥‥」
 言うが速いか羽織ったマントを投げ捨てると、そこに現れるは桜の花柄模様(手書き)の旅装束。妙にファンシーだが、それは言わないお約束だ。
「散らせるものなら散らせてみなさい!」
 その姿も可憐に凛々しく、ビシっと決めポーズ。
「うぅぉぉぉぉくぅたぁばぁれぇぇぇ!」
 と、そこでフォーリィが雄叫びを上げて突撃。滅多矢鱈と剣を振り回して大暴れである。
「泣けッ喚けッ跪けッ! 月を見る度思い出せッ!!」
「あー、目が景気よくイッちゃってますね‥‥」
 カクさんが遠い目でフォーリィを眺める。どうやら戦闘の緊迫感で狂化したっぽい。
 これにはゴブリン達も仰天。まぁ美少女が突然、赤い眼光爛々と髪逆立てて襲ってきたら誰でも驚くってものだが。
「冷たかったでしょう‥‥大丈夫?」
 その隙を突いてワルキュリアが泉からシルバーを引っ張り出し、手早く毛布で包んだが‥‥
「‥‥わぁ、ご馳走がいっぱい‥‥」
 拙い、あの世に逝きかけである。まだ間に合うぞ、戻ってこいっ。
「うわぁ、スゴイ事になってるね‥‥」
 ここでスケちゃんも合流。思いっきり素に戻ってたりするが、流石に仕方ないだろう。
「ゲギャギャー!」
 と、フォーリィに追い立てられたゴブリンが数匹、ご隠居たちめがけて突っ込んできた。
「‥‥カクさん、スケちゃん、懲らしめておあげなさい!」
 遅まきながら、ここでご隠居の指令が発動。
『はっ!』
 待ってましたとばかりにスケちゃんが抜刀、ゴブリンに斬りかかった。
 運良く少女の斬撃を掻い潜ったゴブリンもいたが‥‥

 ――ゴスッ!

 次々と飛来した石礫が気勢を削ぐ。
 動きの止まったゴブリンどもは、ご隠居を護っていたカクさんとゴールドがあっという間に叩き出した。混乱したゴブリンなど物の数ではない。
「ご隠居‥‥」
 何処からともなく現れたヤシーチェが、老人の傍らに控えた。ご隠居の傍には常にスリングのヤシーチェが控えているのだ。
「カクさん、スケちゃん、もういいでしょう」
 大勢が決したと見るや、老人が重々しく告げた。いよいよクライマックスである。
 この言葉を聞いて、カクさん、スケちゃんの二人が声を上げた。
「静まれ! 鎮まれ! しずまれぃ!」
「この紋所が目に入らぬか!」
 言いながら、カクさんが懐から出したのは‥‥手裏剣。
「あれ? 間違えました、うっかりですねぇ」
 サクッと投げつけると笑って誤魔化し、仕切り直しのうっかりカクさんである。
「此処におわすお方を何方と心得る!」
「このお方はジャパンのサムライ、イエローゲート公にあらせられるぞ!」
「ええい、頭が高い! 控えおろう!!」

 ――チャ〜チャララ〜チャララ〜ラ〜♪

 ワケの判らない盛り上がりに加えて無駄なほど荘厳な音楽まで流れ、否応無しにハハーっと土下座させられるゴブリン達。因みに一番最後まで鎮まらなかったのがフォーリィだったりするが、カノンがサクッとスリープで眠らせたので安心である。
「さて、如何したものですかなぁ」
「そうですね‥‥」
 最後の裁きに悩むご隠居に、答えたのはミスゴールドだ。
「‥‥殺っちゃいましょう☆」
 この見事な神木裁きによって『護武林』一党はあえなく全滅したのであった。


 ‥‥かくして、世直しの旅は終わった。
 この後、帰り道の保存食が足りないのに気付いたゾナハがエヴァリィから倍額で譲り受けたり、無理が祟って高熱を出したエヴァリィがぶっ倒れたりと色々あったが、ご隠居様には満足してもらえたようだ。カノンなどは今回の一件を曲にすると意気込んでいたりする。
 その出来栄えは、いずれ酒場で確かめられる‥‥かもしれない。