ホムンクルス○○ヌフ

■ショートシナリオ


担当:勝元

対応レベル:1〜5lv

難易度:普通

成功報酬:1 G 62 C

参加人数:9人

サポート参加人数:-人

冒険期間:03月14日〜03月19日

リプレイ公開日:2005年03月22日

●オープニング

 ――とあるお屋敷の書斎。二人の人影がなにやら話し込んでいた。
 一人は椅子に座り、パイプを咥えた白髪の老人。机の上に置かれた水晶玉を一心に見つめ、ブツブツと呟いている。
 対するは執事の青年、ダビド君。額に浮かんだ汗をハンカチで拭いながら仕事の報告をしているようだ。
「――という訳で、あの森に盗賊団がいるのは確実ですね」
 その話を聞いた老人は、目をギラリと輝かせると椅子にかけたまま振り返った。
「うむ、これは君たちの出番だろう。ホムンクルス戦士、集合だ!」
「いや旦那様、集合と言われましても‥‥」
 そもそもホムとか言われても何の事やら。困り果てるダビド君だ。
「ええっと、では戦士達を雇ってじゃない、召集してきますので暫しお待ちを」
 青年は適当な言い訳でその場を誤魔化して、主に泣きつくべく部屋を飛び出したのだった。


「父の奇行がな、どうも再発したらしい」
 冒険者ギルドを訪れた男は、ひとしきり事情を語ると襲いくる頭痛に耐えかねたのか、うーんと唸って頭を抱えた。
「以前はイエローなんちゃらでしたっけ? ご愁傷様です‥‥」
 受付嬢は哀れみの視線を男に投げかけると、内心で『身近に変人がいなくて良かった』と神に感謝したのだった。

 簡単に説明しよう。
 この依頼人の父、どうにも酔狂が過ぎるというか思い込みが激しいというか、吟遊詩人などから聞いた話が気に入ると、その登場人物になりきってしまうという悪癖の持ち主なのだ。
 前回はジャパンから来たイエローゲート公というサムライだと嘯いていたのだが、今回は錬金術の権威ガンマ博士とやらになりきって、己の技術の粋を集めて作り出したホムンクルス戦士で悪を滅ぼすとか言い出したようだ。

「なんでもドゥは空を飛ぶだのトロワは耳がいいだの、挙句の果てにユイットは口から火を吐いてヌフは目にも止まらぬ速度で走るとか。何と言うか、荒唐無稽と言うか意味不明というか‥‥私にはもう、理解の外を行っている世界でな」
「はぁ、同感です‥‥」
 自称博士が言うには、彼が錬金術で作り出した戦士が九人いるらしい。溜息交じりの男の言葉に、心の底から頷く受付嬢である。
「冒険者なら、父の酔狂に付き合えるくらいの変じ――いや失礼、器量を持っている者もいるだろう。前回同様、父が満足するまで付き合ってやって欲しい。歩いて二日ほどの場所に適当な盗賊団も見つけてきたみたいだから、上手くやってくれ。ではな、後は任せた」
 言うだけ言ってそそくさと席を立つ依頼人である。
「‥‥判る人、いるのかしら‥‥」
 己の書いた依頼書に激しい疑問を感じながらも、とりあえず掲示板に貼り付ける受付嬢だった。

●今回の参加者

 ea2832 マクファーソン・パトリシア(24歳・♀・ウィザード・エルフ・フランク王国)
 ea8034 風見 未理亜(36歳・♀・志士・ジャイアント・ジャパン)
 ea8147 白 銀麗(53歳・♀・僧侶・エルフ・華仙教大国)
 ea8167 多嘉村 華宵(29歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea8872 アリア・シンクレア(25歳・♀・バード・ハーフエルフ・ビザンチン帝国)
 ea9449 ジム・ヒギンズ(39歳・♂・ファイター・パラ・ノルマン王国)
 ea9459 伊勢 八郎貞義(37歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 eb1069 アルベリーノ・サルサエル(52歳・♀・ジプシー・人間・イスパニア王国)
 eb1350 サミル・ランバス(28歳・♂・ファイター・ハーフエルフ・ノルマン王国)

●リプレイ本文

●ホムンクルス戦士、集結!
 とあるお屋敷の前に数人の男女がたむろしている。年恰好から種族まで何もかもバラバラな彼らは錬金術の権威、ガンマ博士(依頼人のお父さん)が作り上げたホムンクルス戦士(という設定)だ。世を騒がす悪の結社(盗賊団)を打ち倒すべく、博士が緊急招集をかけたのである。因みにホムンクルスはゴーレム魔法なるものの延長線上にあり、錬金術とは縁も所縁もなかったりするのだが気にしないように。
(「わたくしは火を噴く料理人、わたくしは火を噴く料理人‥‥」)
 俯き加減に何事かブツブツやっているのはセスことマクファーソン・パトリシア(ea2832)だ。自分に暗示をかけようと懸命になるあまり、ついつい口から言葉が漏れてしまっている。
「セス‥‥習うより慣れろ、だ」
 その辺の木にとまっている野鳥を眺めていたサンク――伊勢八郎貞義(ea9459)は女の呟きを聞いて近付くと、軽く肩を叩いて小さく笑った。因みに野鳥観察をしていたのはサンク(の設定)がメンバー随一の自然派だからだそうだ。
 どうせやるなら、なりきって楽しんだ方がいいに決まっている。そんな訳で、サンク(八郎)は常の言葉遣いまで変える徹底振り。慣れぬ事ゆえ、何処かでボロが出そうな気もするがそれはご愛嬌。博士だって細かい事は気にしない。これを読んでいる皆も、ボロと括弧内は見えない振りをしよう(ぇー)。
「‥‥とは言え、わたくし火は噴けないのよねぇ」
 あ、努力虚しく自己暗示に失敗したっぽい。
 まぁ、こういう事はノリが大事だからサクッと切り替えて他を頑張ろうと思うセス(マクファーソン)である。
「なんだかよく分からないけど面白そうだね!! わくわくするぞ!!」
 一方、いかにも楽しそうにはしゃぐジム・ヒギンズ(ea9449)(の役どころ)はユイット。水中活動を主眼において作られたホムンクルス(という設定)である。
「‥‥泳ぐ事あるかな」
 我に返ってぽそりと呟くユイット(ジム)。言われてみれば微妙な能力のような気がしないでもない。うーむ、確かにないかもしれないねぇ。
「仮になくとも――」
 一同の傍にあった木に身体を預け腕を組み、目を閉じた男が静かに語る。彼の名はキャトル――サミル・ランバス(eb1350)である。刃金の如き鋭い空気が肌を切りつける。男は全身凶器とも言える戦闘特化ホムンクルス(のつもり)なのだ。
「――お前には数多の戦いを潜り抜けた経験があるだろう」
 キャトル(サミル)は片目を開け、ユイットをちらと見ると唇の端を僅かに吊り上げた。おお、ハードボイルド。
「俺たちには俺たちの戦い方がある‥‥それを貫けばいいのさ」
 そう言って男は再び目を閉じる。実の所、軽いノリに混じりたかったりもするのだが‥‥少々照れくさいので遠慮して渋く決めてみるキャトルである。
「困った老人のお守りとは面倒ですが‥‥」
 アリア・シンクレア(ea8872) がコッソリと呟く。彼女の役はトロワ。視聴覚を強化された偵察用ホムンクルスの設定だ。
「‥‥仕事である以上、全力を尽くすだけです」
 心情は行いに表れるもの。どうやら彼女はポーズだけでなく本当に相手をするのが面倒だと思っているらしく、博士に必要が無いかぎり近付こうとせず、結果皆からも距離をおいたままだったりする。
 と。
 ――すっ。
 虚空から一人の女が染み出るように現れた。
「お待たせして御免なさいねぇ」
 超常能力を操るホムンクルス戦士・アンことアルベリーノ・サルサエル(eb1069)である。その類稀なる力を使って遠方より瞬間移動してきたのだ。ただ単にインビジブルの効果が切れただけだという噂もあるが、気にしない事にしよう。
 ――ヒュバッ!
 戦士たちの頭上を掠めるように、燃え盛る炎が飛来する! 炎はそのまま通り過ぎると空中でくるりと一回転し、突き刺さるように大地に着地した。
 ――ドォン!
 ド派手な音と共に砂煙が舞い上がり、その中から現れたのは一人の影――風見未理亜(ea8034)であった。飛行能力を付与されたホムンクルス戦士・ドゥが彼女の正体なのだ。え、ファイヤーバード? 知らないなぁ。
「よう、博士。緊急連絡たぁ、何事だい?」
 気さくに手を上げると、にやりと笑うドゥ(未理亜)である。
 ――ザザッ!
 その直後、風を巻いて一人の青年――多嘉村華宵(ea8167)が駆けつけた。人には有り得ない走り様はホムンクルス戦士・ヌフの名に相応しい。え、疾走の術? それ美味しい?
「酔狂に付き合える変人参上‥‥いや此方の話ですから気にしないで下さいね」
 ヌフ(華宵)は乱れた髪を軽くかき上げると、涼しげな微笑を浮かべた。一言多かったり怪情報を連発したりするのも彼の能力だが、それはヌフの特性というより彼本人の特性であるから誤解なきよう。因みに全部計算づくでやってる。たぶん。
「さて、あと一人だが‥‥遅いな」
 ガンマ博士が焦れたように呟いた。ここまでに集まった戦士は八名。あと一人来る筈なのだが‥‥
「もう来てますよ」
「‥‥どわっ!」
 不意に聞こえたその声は、キャトルが寄りかかっている木から聞こえてきた。驚いた男が振り向くと、その木は形を変え‥‥白銀麗(ea8147)の形をとった。己に与えられた変身能力を駆使して、木に化けていたのである。ミミクリー? あっはっは。
「イギリスよりホムンクルス戦士セット、参上!」
 因みにセット(銀麗)に与えられた変身能力は衣服に対して効力を発揮しない為、今見えている彼女の衣服は衣服のように見える彼女の身体の一部だったりする。便利だな、変身能力。
「どうりで何だか生暖かい木だと思った‥‥」
 流石のキャトルも全く予想外だったらしい。そりゃそうだ。
「じゃぁ参りましょうか、博士‥‥」
 アンが誘うように指をくねらせる。なんだか別の事に誘われているような気がしないでもないがその辺はお色気属性のサガなので仕方なし。
「うむ。ホムンクルス戦士、出撃だ!」
「了解あるよ〜」
 博士の号令にセスが答える。
 ともあれ、旅立ちの準備は整った。この日の為に博士が用意した、お揃いの黄色いマフラーが風になびく。
 愛(ネタ)の為、戦い忘れた人の為。悪を滅ぼす孤独な戦士たちの戦いが今、始まろうとしていた。

●そんなこんなで情報収集
 と言うわけで戦士たちは、賊が出ると思しき森のすぐ傍にある村で情報収集に勤しんでいた。
「ドゥ、君は行かないのか?」
 そんな中、一人腕枕をして横になるドゥに博士が尋ねる。
「‥‥んぁ? 情報収集はあた‥‥俺向きじゃねぇしな」
「君の能力ならば、森の上空を一飛びして偵察も可能だが」
「ふっ‥‥ホムンクルスだとばれたら、一大事だぜ?」
 苦笑いを一つ、女は遠い目で空を見つめた。
「それこそ人の敵にされちまう‥‥悲しいもんだがな‥‥」
「‥‥ワシが不甲斐ないばかりに‥‥済まないな」
「おおっと、気にすんなって。博士は悪くねぇよ」
 沈痛な表情の博士を励ますように、ドゥは笑ってみせた。
 ‥‥物語に肩までどっぷり浸かって、雰囲気出しまくりの二人である。

「お待たせしました‥‥やはり出ますね、盗賊団」
 妙齢の女性に変身して情報収集を行っていたセットが報告を行う。
「あの森にアジトがある感じだ」
 同様に聞き込みを行っていたキャトルも博士に告げた。複数の村人が、森をたむろする怪しい男達を目撃しているらしい。
「ヌフ、君の方はどうだった?」
 博士の問いに、ヌフがここぞとばかりに怪情報発動。
「敵の名は『ファントム・ノワール』。博士に対抗すべく新たなホムンクルスの製造を目論んでいるそうです。盗賊行為も研究資金の為でしょう」
 ‥‥盗賊行為以外の情報が無茶苦茶な気がするがそれは言わないお約束。被害報告なんかもっと凄まじく、近隣の村の人間が丸ごと実験材料にされたとか実験材料が暴走して人々を襲っているとか影の黒幕は博士のライバルがどーたらとかもう言いたい放題なのだ。此処まできたら幾ら博士でも‥‥
「な‥なんだって!」
 あ、信じた。
「おいら達みたいな悲しい戦士を‥‥これ以上増やしちゃいけないよ」
「許せないあるね!」
「参りましょう、博士。事態は一刻を争いますわ」
 戦士たちも口々に怒りをあらわにしている。つくづくノリのいい戦士たちだが‥‥皆、本気にしてないよね?
「‥‥ひょっとして、冒険者の人たちですかい?」
 倒すべき敵の全貌が見え、いよいよ意気上がる一同に恐る恐る村人が声をかけた。どうやら冒険者の一行と勘違いしているようである(してません)。
「いや、我々は――」
 村人に正体をあかそうとした博士の口をヌフが慌てて塞ぐ。
「そうです。私はカピテーヌ・トレビアン‥‥トレビアンと呼んで下さい」
「おぉ、森に居座ったあいつ等を退治しにきてくれたんですかい?」
 口を押さえられ、何事かと目を白黒させる博士にヌフは囁いた。
「博士、ここは誤解させておきましょう」
 その方がカッコイイですからね、とは口に出さず、青年は目で意味深に訴える。
 博士が他の一同を見回すと、皆一様に頷いていた。‥‥勿論カッコイイからではなく、無関係な村人にまで変人の仲間だと思われたくないだけだったりする。
「あぁ、俺たちに任せるがいい‥‥」
 苦みばしった笑顔でキャトルが頷くと、村人はお願いしますだと何度も頭を下げたのだった。

●ホムンクルス戦士、誰が為に戦う
 さて、森に潜入した一同の捜索活動は順調に進んでいた。
「獣道を辿っていけばいいあるよ」
 森に詳しいセスが比較的新しい足跡のある獣道を発見したのだ。
「教授、木々がさざめいて、鳥の声が聞こえない。きっと、そちらに居るはずだ」
 サンクも雑学を応用してアジトの位置を示唆する。大まかな方向が定まった所で、セットが鷹に変身して上空から偵察を敢行。
「ガンマ博士! ファントム・ノワールのアジトを発見しました!」
 こうして、大した苦労もなくノルマン一不幸な盗賊団のアジトは見つかってしまったのであった。

「‥‥複数の話し声が聞こえます。それなりの人数ですね」
「盗賊たちが見えるわ‥‥間違いない、此処がファントム・ノワールのアジトですわね」
 アジトの傍でトロワが聞き耳を立て、アンが透視能力を発揮してアジト内部を観察した。
 すると、つい、と一人の男がアジトの前に歩みでた。
 ――サンクである。(名目上)メンバー随一の平和主義である彼は、穏便に事を収めるべく説得を試みるつもりなのだ。
「我々は戦いは望む所ではない、大人しく武器を手放し降伏するんだ」
 入口に立つ見張りのに語りかけるが、見張りの男達はハァ? とキツネにつままれたような顔。
「あぁ? テメエ舐めてンのか」
「痛い目みねえとわかんねえか?」
 見張りの男たちは凄むと、問答無用でサンクを殴り倒した。
 しかし、そこは無尽の回復力を誇る戦士サンクである。何事も無かったかのように起き上がると、
「ハハハ‥‥こんな事をして母が泣いているぞ」
 と涼しい顔で言い放つ。実際は魔法で傷を癒しただけなのだがそれは秘密だ。
「き、効いてねぇ‥‥」
「オ、オイ、お頭呼んでこいっ」
 コロッと騙された見張りの一人が、アジト内に駆け込んでいく。
「ま、やっぱり聞かなかったですね。仕方ないでしょ、ノワールだし」
 相変わらずワケの判らない理由を述べるヌフ。そもそも敵はノワールですらないような気がするのは私だけでしょうか。
「なんだなんだテメエらぁ」
 そうこうしている内にゾロゾロと現れる盗賊たち。
「ファントム・ノワール‥‥お前たちの悪行もここまでだ」
 キャトルが二本の得物をスラリと抜き放つと、敵に向けてびしと突きつける。
「さぁ、こい!! おいらが相手だ!!」
 間髪いれずユイットが挑発。まんまと乗った盗賊の攻撃を軽くいなすと、その手の長剣で素早く二連撃を加える。
 すかさずセスも水弾を発射。
「私のワラボン受けるあるヨ〜」

 ――ずきゅーーーん☆

 水の弾をモロに喰らった男がもんどりうって倒れる。と言うか、火を噴く料理人だったのでは?
「私は火の代わりに水玉を飛ばす戦士になったアルよ〜」
「成る程、そうだったのか!」
 博士、妙に納得してるし。
「‥‥俺の渾名は‥‥死神だっ!」
 キャトルが鋭く叫ぶと、両手の得物で敵を追い詰める。左右同時に襲い来る斬撃に、腕の未熟な盗賊どもは反応する事すら出来ず、次々と大地に伏していった。
「むぅーん‥‥」
 こめかみを抑えるようにしてアンが念じる。すると、一閃の光が敵を撃ち抜いた。奥義、サンレーザー。超能力によって太陽光線を一点に集中したのである(一部嘘)。

 ――ちゅどーーーん☆

「うぎゃー!」
 強烈な光に焼かれた敵がのたうち回る。もはや何というか、戦況は一方的にすら見えた。
「い、一旦退却だっ」
 そう一人が叫ぶと、盗賊たちは我先にとアジトへ駆け出そうとした。しかし、そうは問屋が卸さなかった。
 ――めらめらめら‥‥
「わーっ、火事だーっ」
 そう、いつの間にか彼らのアジトは黒煙を吐き出していたのである。どさくさに紛れて賊に変身し、侵入したセットの仕業だ。
 もうこうなっては逃げるしかない。盗賊たちは散り散りになって逃げ出そうとしたが‥‥
「あた‥‥俺から逃げられるとでも思ったか?」
 紅蓮の炎に包まれ、高速で宙を駆けるドゥにあっという間に捕捉されてしまう。

 ――ずがーーーん☆

 猛烈な勢いで体当たりされ、錐揉み状に吹き飛ぶ男たち。そりゃもう景気のいい光景である。
 それを見ていた頭目、ドゥとは反対方向へ逃げていた。すると、後方から一人の青年が猛烈な速度で追いすがる。
 ――きゅいん!
「え、うわわ、待てまてマテ‥‥」
「流星・トレビアン脚!」

 ――どこーーーん☆

 半泣き状態で必死こいて逃げる男の背中に、問答無用でヌフの加速つきドロップキックが炸裂。
「直撃! トレビアン剣!!」
 派手にすっ転んたところに情け容赦なく刀の嶺が叩き付けられると、男はうーんと唸って気絶したのだった。


「さて、こいつらどうしましょ?」
 ヌフが一同に尋ねる。すっかり戦いも一段落、後は縛り上げた盗賊をどうするか決めるだけである。
 結局、サンクが根気強く「さぁ、自然に帰ろうじゃないか」等と説得する事によって改心を約束した数人を解放して、残りは官憲に引き渡す事になったという。
 その後、反省会と称してセスの手料理が振舞われ、一同は楽しい一時を過ごしたという事だ。
 なお、盗賊団の頭目は改心を約束して解放されていたのだが、当然の如く口から出任せだったらしく復讐の機会を虎視眈々と狙っているとかいないとか。
 もしかしたら、真の戦いはこれから始まる‥‥のかもしれない(ぇー)。