【禿の国から】妄想と情熱の狭間
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■ショートシナリオ
担当:勝元
対応レベル:フリーlv
難易度:易しい
成功報酬:0 G 46 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:09月04日〜09月07日
リプレイ公開日:2005年09月11日
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●オープニング
「陰謀解明、ですか‥‥?」
息せき切って乗り込んできた男の剣幕に、ギルドの受付嬢は圧倒され気味に呟いた。
「うむ、その通り」
男は大様に頷くと、まるで役者のように大仰な身振りで説明を始めた。
「そうでなければ、私がこのような目にあう筈が無い。高貴な家柄に生まれ、剣の腕も立ち、明晰な頭脳に恵まれた容姿。大通りの向こうから『きゃ〜シュバルツ様素敵〜☆』と黄色い声が飛ぶ事も珍しくないのだ。無論、私も手を振って答えよう。それが高貴な者の勤めだからな。そして街の娘たちの視線を一身に浴び、苦みばしった微笑で今日も悩殺するのだ。眩暈をおこして倒れる少女達をどうして責められようか! あぁ神よ、罪深き私をお許し下さい、アーメン。そして罪作りな私よ、ありがとう」
ああ、ヤバイヤバイ。つうか途中から陶酔しきってて意味不明だし。
「で、その、陰謀と言うのは‥‥」
受付嬢は別の意味で眩暈を起こしながらも、営業スマイル全開でなんとか乗り切ろうとした。幾ら二枚目で金持ちでも長時間の相手は御免被る。とっとと依頼を聞いて帰ってもらうのが得策だろう。
「うむ、そうだったそうだった。ところが今朝の事だ。昨夜、不覚にも酔って正体を無くした私が目覚めてみると‥‥ないのだ。大事なものが一部分、綺麗サッパリなくなっているのだ!」
男はがばっと帽子を取った。その頭頂部は‥‥見事なまでにつるんつるん。そりゃもう、見事に。
「そこで私は考えた。これはもしや、国際的な陰謀が働いているのではないか、と。美しい私の美貌を汚し、ノルマン国民全体の士気低下を狙う何者かがいるに違いないのだ!」
何だか大事になってきた。無論大事なのは男だけに決まってるのだが‥‥。頭を抱える受付嬢だ。
「聞けば、海の向こうでも同じような依頼が出されたとかなんとか。と言うわけで、私も依頼に来たのだ。不逞の輩の陰謀を暴き、ノルマン国民の明るい未来を守ってくれたまえ、と! 頼んだぞ諸君、そして輝かしき日々よ、カンバック!」
高笑いと共に出て行く男を見送り、受付嬢は深ぁい溜息を一つ、吐いた。
(「‥‥誰も集まらなかったって事にして、依頼出すのやめようかしら‥‥」)
その少し後の事だ。
「あ、あのぅ‥‥」
何処からともなく聞こえる、少年の声。受付嬢がカウンターの下をみやれば、年端もいかない少年が一人。
「あの頭やったの、ボクなの‥‥」
消え入りそうなか細い声で、告白した。
「‥‥キミが?」
「あのヒト、ボクのお父さんなの‥‥」
「あらまぁ‥‥」
受付嬢は心の底から同情した。自分にあんな父がいたら、生まれた瞬間世を儚んで北海にダイブするに違いない。っていうか生まれるのを拒否して引き篭もる。断固反対。ノーモア変父。
「でね、ビケイで強いからモテルらしいんだけど‥‥いっつもお母さんがないてるの。うわきしてるって。だから、きのうの夜、よっぱらって寝てるところに‥‥」
‥‥思い余ってやっちゃったらしい。確かに、アレでは当分の間、浮気どころではないだろうが。
「そ、そしたら、あんなさわぎになって‥‥ボク、こわくなって‥‥っ」
少年は今にも泣き出しそうだ。あの性格では、普通に謝っても行動を改めたりはしないだろう。どう考えても筋金入りの変人だし。何より、少年が罰として折檻されたりしたら可哀想だ。
「大丈夫大丈夫、冒険者のお兄さんお姉さんに任せときなさいって☆」
受付嬢はにこり、と笑んで依頼書を手早く書き上げた。
『国際的ハゲ製造組織の陰謀を解き明かしてくれる者、募集。
追申:大げさであればあるほどベスト』
●リプレイ本文
●教団の野望
「私を呼び出したという事は‥‥ついに解明された、そういう事だな?」
窓際の椅子に腰掛けた依頼人が、斜め45度で流し目を送りながら言った。射し込む光が生み出すコントラストは、男の整った顔立ちをよりいっそう引き立てている。恐らく、演出効果を考えて窓際を選択したに違いない‥‥尤も、頭頂部も際立って輝いているから差し引きマイナスだったりするのだが。
ドレスタットの片隅、寂れたとある酒場で依頼人と冒険者たちは会合していた。場所の選定をしたのはパラーリア・ゲラー(eb2257)である。依頼人宅の近所に適当な酒場があるのに目をつけ、主人に金を握らせて貸切にしたのだ。その額はなんと30G――思わぬ臨時収入に喜んだ主人が、二つ返事で酒場を提供した事は想像に難くない。
「ええ‥‥驚くべき内容です。心して臨んで下さい」
真面目くさった顔で返事したのは多嘉村華宵(ea8167)だ。
「その絶妙な剃り具合、微妙に周囲を残したが為に余計に間抜けに見せる手腕‥‥間違いありません。『国際的ハゲ製造組織・ハゲ神教団』の仕業です!」
「な、なんだって!!」
男が驚愕のあまり叫んだ。実のところ口から出任せの嘘八百を並べているだけだったりするのだが、男の性格ゆえか、華宵の口車ゆえか、全く疑っていないようである。少しは疑おうよ。つか頼むから疑え。
「して、そのハゲ神教団とは‥‥」
「‥恐ろしい集団です。奴らは私の祖国ジャパンでもその被害を各地に広め、おかげで一部のジャパン人は頭頂部剃り剃りヘアに‥‥」
「むう、精強を誇ると噂に聞くジャパンのSAMURAI達が既に全滅していたとは。恐るべし、ハゲ神教団っ!」
そっと涙を抑える仕草の青年に、男は納得しきりである。だからそれは月代(以下略)。
「ここ最近、ドレスタットでもその被害者が急増中だ」
アルバート・オズボーン(eb2284)は怒りに震えるように拳を握ると、奥のテーブルに座る少年の下へゆっくりと歩いた。
「今日、別の被害者とコンタクトが取れてな‥‥彼から体験談もとい事情聴取できることになったんだ」
背を向けて座る少年――リュック・デュナン(eb3317)は、アルバートに肩をポン、と叩かれると鼻をつまんで己の事情を切々と語りだした。
『ええ、実は僕の父さんも禿にされました。そして僕は友達に『お前の父ちゃんハーゲ!』と馬鹿にされました。あんな思いは二度としたくない。だから僕は家を出たんです』
――どよっ
少年の言葉に同情したのか、周囲の聴衆からどよめきが漏れた。因みに、この聴衆もパラーリアが雇ったサクラである。
「背を向けているのはプライバシー保護の為だ。声も変えさせて貰った。ご了承願いたい」
「なんと、一家離散の被害者までいるとは‥‥っ!」
『このままでは様々な家が潰れ子孫は繁栄せず、王国崩壊を招くでしょう‥‥』
少年は(たぶん)涙を浮かべ、哀願した(ように男には思えた)。実際は台詞運びがたどたどしいのを誤魔化しているのが結果オーライのリュックである。
『お願いです‥‥僕たちのような悲しい家族をこれ以上増やさない為にも、どうか教団の野望を叩き潰して下さいっ!』
「俺の妹は組織の餌食になり、人生を儚んで自殺した‥‥」
伏目がちに語るアルバート。
「俺は誓った。必ず奴らを追い詰め、妹の復讐を果たすと!」
「そう、私達は奴らを追うエージェント。そんな私達に偶然依頼するなんて貴方、実に運がいい」
微笑を一つ、華宵が依頼人の肩を軽く叩いた。
「しかし、何も自殺まで‥‥」
「そこが奴らの恐ろしいところだ」
「奴らが崇めるハゲ神とやらは、その呪われた力によりハゲを進行させて行くのです」
――ざわっ
告げられた衝撃の内容に、サクラがざわめいてみせる。隅の方でコッソリとパラーリアが手を回したり交差させたりして指示を出しており、ワケの分からない雰囲気を出すのに一役買っているのだ。依頼人も気づいてないようで何よりである。
「おっとそれだけじゃない! 何と最終的にはムキムキに‥‥所謂ハゲマッチョ化です」
「なんと、花も恥らう乙女にその仕打ち‥‥酷い、あまりに酷すぎる!」
「俺には‥‥止める術が無かった‥‥」
依頼人の言葉に、くっと俯き拳を握り締めるアルバート。その掌に爪が食い込み、一すじ、二すじと血が流れ落ちていく。
「私はその教団幹部が潜伏しているという情報から、月道を渡りノルマンまでやって来ました」
華宵も合わせ、真実を明かしていく‥‥
「既に他国の者達も集まっていますし、幹部――『ドレスタットの剃刀悪魔・ハゲール将軍』は追い詰めたも同然」
‥‥なんだかシリアスドラマの雰囲気だが、んなわきゃないから要注意である。
「――大変よ! 死相が出てるわオジサン!」
と、店に入ってきた一人の少女――エルトウィン・クリストフ(ea9085)が依頼人を見咎めると、血相を変えて告げた。頭からマントを引っ被って目の部分だけ出した怪しい占い師姿は胡散臭さ満点だが、ことこの場に及んでそんなの気にする輩がいよう筈もない。
「ああ、なんて事!? このままじゃ妻子にも逃げられて、お先真っ暗のどん底人生が待ってるわ!!!」
――ざわ‥‥ ざわ‥‥
パラーリアの指揮の下、サクラ部隊が口々にざわめく。正直言ってこのままじゃ妻子に逃げられそうなのは確かだから、妥当な占いのような気がしないでもない。
「こ、この私に限って、そんな馬鹿な‥‥」
案の定、本人自覚ないし。
「だけど、一つだけ人生のピンチを回避する手があるわ‥‥」
「そ、それは!?」
「‥‥ハゲ神さまにおすがりするのよ! そしてノルマン国民を全員ハゲにすれば、誰も気にしなくなるわっ!」
――どよどよっ
サクラが醸し出す「いくらなんでもそりゃないだろう」と言う雰囲気の中、男は驚愕の表情で――
「その手があったかっ!」
あ、信じた。
「ふふふ‥‥いいわよ、ハゲ色の人生は‥‥」
「騙されるなっ! そいつは教団の女幹部に違いない!」
妖しく囁く少女に、アルバートが警告の声を上げる。
「バレちゃ仕方ないわね‥‥出でよ、ハゲール将軍!」
大仰な身振りで、ばっと指差した店の片隅。テーブルの上から妖しい笑い声が轟いた。
●倒せ、悪の教団
「ふはははははっ! 天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ! ハゲを作れと轟き叫ぶ!」
見れば、テーブルの上に一人の男――ヘクトル・フィルス(eb2259)が仁王立ちである。
「ドレスタットの剃刀悪魔・ハゲェ〜〜〜〜ル将軍、見んんんんん参!」
――ばばーん☆
無駄に豪華なローブを脱ぎ捨て、謎の効果音とともに現れる一人の怪しい男。ツルツルに剃り上げた頭、整えられたカイゼル髭、見事なまでに鍛え上げられた肉体。その身に纏うはフンドーシ一丁、加えて得体の知れない油でテッカテカとあれば、そこいらの変態も裸足で逃げ出そうと言うものだ。いや寧ろ喜んで擦り寄って来るかもしれないが、いかに魔窟ドレスタットと言えどこれ以上は勘弁して頂きたいものである。いや、マジで。
「ハゲを作るのは‥‥楽しいぞ」
その傍らには日本刀を構えたリオリート・オルロフ(ea9517)が付き添い、駆け寄ったエルトウィンと三人、こうしてハゲ神教団ドレスタット支部は集結したのであった。
「見つけたぞハゲ神さまに選ばれしものよ、共にきてハゲマッチョを増殖するのであ〜るっ!」
ビシィ! と依頼人を指差し、流れるような動作で魅惑のポージング。輝く白い歯で誘惑するハゲール将軍(ヘクトル)。こう見えても黒の神聖騎士だったりするから侮れない。大いなる父は嘆いているぞ、たぶん。
「現れましたね‥‥ハゲール将軍! そしてオマケの配下A!」
負けずにびしい! と指差す華宵。つーか配下の名前が手抜きなのは如何か。
「いやぁ、面倒だったもので」
怪念波を受信したのか、あらぬ所に向いて微笑を浮かべる華宵である。
「此処で会ったが百年目‥‥ハゲマッチョと化した妹の恨み、思い知らせてやる!」
アルバートも抜刀すると、じりじりと間合いを詰める。
「いいのかしら、これで‥‥」
なんだか疲れたような小声でエルトウィンは呟いた。
見上げれば、華麗なポージングを決め、張り付いたような筋肉スマイルを浮かべる男。時折ピクリと動く大胸筋が気色悪いことこの上ない。決して彼女もノリが悪い方ではないのだが、此処まで来ると人間を通り越してバケモノ同然である。彼の国にはこんな輩が大量にいると言う噂だが‥‥そこまで考えて、脳裏の嫌ぁな映像を振り払うかの如く、半ばヤケ気味に少女は叫んだ。
「ええい、やっておしまいなさいっ!」
――ブン!
大降りに振り回される攻撃をアルバートは掻い潜る。そのまま掬い上げるように繰り出した一撃は配下A(リオリート)に余裕を持って受け止められてしまうが、問題ない。打ち合わせどおりに行けば、激闘と言う名の筋書きの下、悪人達は倒れる筈なのだ。
――はらっ。
と、アルバートの頭頂部から数本、頭髪が舞った。どうやら避け損ねたらしい。
(「おい、気をつけろよ。マジで刈られる所だったじゃないか」)
鍔迫り合いを模し、押し殺した声でアルバートは言った。
「‥‥」
リオリートは答えない。どころか、ニヤリと笑う始末だ。
背中にぞくりと悪寒を感じ、アルバートはバックステップした。
「‥‥これでさくりとやったら、立派なハゲが出来るぞ‥‥」
肩に担ぐように刀を構え、不敵に配下Aが笑う。その構えは明らかに頭頂部を狙って‥‥ヤバイ、コイツ本気だ!
アルバートは泡を食った。確かに迫真の演技の為ある程度は本気を出す必要があったが、そもそも腕が違いすぎるのだ。真剣勝負になったら勝ち目がある筈もない。
――グッ!
突然、青年は羽交い絞めにされた。一瞬の隙を突かれ、ハゲール将軍に捕まったのだ。
「さあ配下Aよ、やってしまうのであーる!」
「させません!」
――ズバッ!
華宵が猛烈な速度でハゲール将軍の背後に回りこみ、首筋に手刀を繰り出すが‥‥
「ふははははは! 貧弱ゥ、貧弱ゥ!」
‥‥全然効いてなかったりする。城砦の如き肉の鎧に阻まれているのだ。恐るべし、ハゲマッチョ。
「そしてようこそ、ハゲの世界へ!」
「冗談じゃない!」
必死でもがく。万力のような力で締め付けられているが、此方は人生がかかっているのだ。
ゆっくりと、配下Aの繰り出した(ある意味で)必殺の軌道が網膜に焼きつく‥‥。
と。
――ズルッ。
突如、アルバートの体が下にすっぽ抜けた。全身に塗りたくった油で滑ったのだ。当然のように、刀は将軍へ向かっていく。
「ふおおぉ!」
すんでの所で将軍はブリッジ、刀をやり過ごした。腕を組んで頭だけで体を支えている辺りは流石の一言だ。
――おーっ。
サクラ部隊から感嘆の声が上がった。指揮するパラーリアも思わず拍手である。
「運のいい奴だ‥‥」
相変わらずの構えで配下Aが呟いた。
「危ないところだったのであーる!」
将軍はむくりと体を起こしたが‥‥。
――はらり。
その顔から落ちる、カイゼル髭の片割れ。避けた際に刈られたらしい。
「ぬおおおおお! ヒゲが! ヒゲがハゲにぃぃぃ!!」
意味不明の叫びと共に錯乱するハゲール将軍だ。
「こ、これまでか‥‥っ!」
‥‥ヒゲが弱点だったらしい。
と、パラーリアが天井から垂れ下がっていた紐を引いた。
――ドサッ!
天井から小麦粉が大量に落下、店内に充満して視界を白く埋め尽くす。
「あぶないっ、自爆する!」
「皆さん外へ逃げなさい!」
アルバートと華宵が警告の声を上げ、店内の人間が我先にと逃げ出していく。
「司教よあとは任せたぞ。ジーク・ハゲ神帝国!」
白い空間から、ハゲール将軍最期の声が響き――
――ちゅどぉぉぉぉぉぉぉぉん☆
凄まじい轟音と閃光を上げ、酒場が爆発した。
●戦いは続く(ぇー)
「ハゲール将軍‥‥恐ろしい敵でした」
煙を上げる酒場に目を向け、華宵が呟いた。遠い目なのは察してあげよう。
店内が木っ端微塵に吹き飛び、一瞬にして瓦礫の山になっている辺りからも爆発の凄まじさが窺える。狭い空間に小麦粉をまくと火の精霊が大喜びしやすい――そんな噂を知ったのは暫く後の話である。
「今回はこの程度で許してあげる。行くわよ、配下A!」
「‥‥最後まで名無しか、俺は」
捨て台詞を残し、エルトウィンとリオリートの二人はその場を後にした。
「こ、これでハゲマッチョ化の呪いは消えた訳だな‥‥」
「いいえ。それは違うわ」
半ば呆然と二人を見送る依頼人に、パラーリアが告げた。
「君は‥‥?」
「私はフランクのエージェント。ハゲマッチョ化の呪いは自堕落な生活をしていると進行してしまうわ」
「確かに一つのハゲは滅びました。ですが、第二、第三のハゲが襲来する日はそう遠くありません」
パラーリアに合わせ、華宵がもっともらしく頷く。
「なんという事だ‥‥」
「進行を食い止める為にどうしたらいいか‥‥判るわね?」
「‥‥そ、そうか」
問われた男に閃く天啓。
「この私に悪の組織と戦えと! そういう事だな!」
「あーまあそんな感じだな」
投げやりにアルバートは頷いた。
この後、瓦礫の下から瀕死のヘクトルが素っ裸で発見されたり、そのヘクトルを回復しようにも彼の荷物は全部ギルドに置いてきていて危うく死に掛けたり、酒場を吹き飛ばされた主人と被害を被った周囲の住民からパラーリアに多額の賠償請求が来たりしたそうである。
「都会はこういう仕事が日常茶飯事なのですね‥‥とても恐ろしいところかもしれません」
田舎から出てきたばかりで衝撃の事件に遭遇したリュック君の感想だ。いや、こんな依頼は滅多にないですから‥‥多分。
その依頼人はと言えば、凄まじく悪かった女癖は鳴りを潜めたようだ。その代わり、ハゲ神教団を討つと称して冒険者デビューし、奇行の度合いをますます深めたとか。
冒険者達が彼と同じ依頼に巡り合うかどうかは‥‥ハゲ神様に聞いて頂きたい。