【天国と地獄】 金なら一枚

■ショートシナリオ&プロモート


担当:蜆縮涼鼓丸

対応レベル:フリーlv

難易度:易しい

成功報酬:0 G 78 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:12月20日〜12月25日

リプレイ公開日:2004年12月26日

●オープニング

「ホワーイ? 何故ですカァ?」
 妖しい抑揚でしゃべる自称吟遊詩人がギルドに一人。
 さらに不敵な笑みを浮かべるギルドの係員。笑みの下から出っ歯が覗く。
 先ほど、二人の藩士がかすていらを食べたいとギルドにやってきた。卵拾いでかすていらを入手できるあてはあったものの、藩士の一人は鳥に触ると蕁麻疹が出る身体、しかし留守番は拒否。ぜひとも自分の手でかすていらを入手したいらしい。先に相方が卵拾いに出発したあと、残ってどうにかカステラを安く手に入れる手段はないものか、喧々諤々の真っ最中。
 しかし自称吟遊詩人は、むしろ藩士がどうしてそこまで自力でのかすていら入手に拘るのかを知りたい様子。
「何故ですか〜ティーチミー・ホワ〜イ?」
「それはっ‥‥そ、それはっ」
 詰め寄る自称吟遊詩人、たじろぐ藩士。ギルドの係員が見かねて自称吟遊詩人を引き剥がした。
「客人に迷惑かけるんじゃねえ。‥‥な?」
 なぜかぞくっと身震いする自称吟遊詩人。そんなに係員の笑顔は怖かったか。
「さあて、と、そういえば確かあの辺に‥‥これか」
 ギルドの壁にべたべたと貼り付けてある紙の一枚をはがして持ってくる。
「師走大売出しに伴い手伝い募集。売り子、客引き、猫の手、4〜8名。売り上げに応じ上乗せ報酬あり」
 読み上げてから片目をつぶり、考えた。
「鶴亀屋ってぇと、菓子屋だな。歳暮の時期だから餅やら正月の菓子やらで忙しいこったろう。駄賃も弾んでくれるようだし、いっそ現品支給でと言やあもしかしたら、なあ。ものがかすていらでなきゃあ間違いはねえんだが、まあそれでも菓子屋の繋がりで安くかすていらを手に入れられるかもしれやせん。どうです旦那、一つ賭けてみますかい」
 鳥嫌いの藩士は激しく頷いた。いつまでもこの江戸に居られるわけでもない、期限もあろう。
「てなワケで、甘いもんが好きだとか商売の心得がある方、お手隙ならちぃと手伝ってやってくんなまし。うまくいきゃあかすていら、ダメでもそば饅頭かゆず羊羹ぐれえはお口に入りましょうさね」

●今回の参加者

 ea0076 殊未那 乖杜(30歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 ea0685 林 麗鈴(31歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)
 ea0691 高川 恵(29歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea1407 ケヴァリム・ゼエヴ(31歳・♂・ジプシー・シフール・エジプト)
 ea1959 朋月 雪兎(32歳・♀・忍者・パラ・ジャパン)
 ea4419 桐澤 流(36歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 ea7234 レテ・ルシェイメア(23歳・♀・バード・エルフ・イギリス王国)
 ea9676 グローム・フェーラー(29歳・♂・神聖騎士・ハーフエルフ・ロシア王国)

●リプレイ本文

●黄金色に魂を奪われて
「試食ですか?」
 殊未那乖杜(ea0076)の問いにそう返し、年配の女店員は首をかしげる。
「商品を持って売り歩く方が同時に売れるので楽ではあるし、ついでに試食用の物等も用意すれば知名度も上がるのでどうだろうか?」
 言われて少し考えた後、女店員は店の奥から赤い羊羹を何切れか持ってきて冒険者達に差し出した。
「鶴亀屋の新商品でございます。どうぞ一口召し上がれ」
「わあ、おいしそう!」
 真先に横から伸びた手が、羊羹をつまんで持っていく。はむ、と口にいれると朋月雪兎(ea1959)は幸せそうに目を細めた。
「おいしい! これってイチゴだよね? 甘くって、ほっぺた落ちそう」
「はい、月道渡りのじゃむを使った、じゃむ羹でございます。近頃は月道を渡ってこられた方も多うございますので、そちらに向けたお品物も用意していこうと。海を越えれば金一枚のものが10倍にも100倍にもなりますからね」
 最後の方は小声で、含み笑いを袖で隠しながら店員は言う。
「歩き売りをされるのでしたら、これと干支煎餅をお願いいたします。それに、小豆餅、三色団子辺りも売れ筋でございますね。どうなさいます?」
「全部食べたい‥‥じゃなくて売りたいな」
 目の中にきらきら星を輝かせて朋月が言うと、店員は頷いた。
「では、殊未那様と朋月様には歩き売りの支度をいたしましょう。他の方はいかがなさいますか?」
「私は人通りの多いところで宣伝をしようと思っています。もしパンフレットかチラシでもあれば配りたいのですが」
 レテ・ルシェイメア(ea7234)が言うと、これには店員は不思議そうな顔をした。
「ぱんふ‥‥チラシ‥‥ああ、もしかして引き札ですか? 町で配るようなものでは無いでしょう、お武家様のお屋敷にお届けするならともかく、その辺りを歩いている町のものには配っても読めますまいし。それに今から筆に墨付けて一枚一枚書いていたら年を越しますよ」
 レテはなるほど、と、口頭での宣伝に切り替えることにした。
「私も呼び込みをしよう」
「俺っちもいっぱい宣伝しちゃうよ〜んっ☆」
 ハーフエルフのグローム・フェーラー(ea9676)はぶっきらぼうに、シフールのケヴァリム・ゼエヴ(ea1407)は至って陽気に、宣伝を引き受ける。
「私は接客をお引き受けいたします」
 高川恵(ea0691)は既に礼服に身を包み、店頭に並ぶ菓子の種類や値段を覚えようと目を凝らしていた。
「私は猫さんの手になるですね♪ 私、猫さん好きですよ♪ 私はにゃーにゃー言えばいいですか?」
「麗鈴さん、猫の手って言うのはとても忙しい時にお手伝いをすることを言うんですよ」
 林麗鈴(ea0685)の誤解をやんわりと高川が解く。
「ふに? 猫さんの手にはならないですか? みゅー、ジャパンの言葉、とても難しいですねー」
 大真面目に一人頷く林を見て高川は、相変わらずなんですから、と、くすくす笑った。
「俺は……慣れない接客で失敗するより、素直に腕の生かせる仕事でもするかと思ってな。ちょっと作ってきたんだが、使えるか?」
 桐澤流(ea4419)がぬっと突き出した手の中には、小さな銅細工の鶴と亀。本職を刀鍛冶とする桐澤だったが、刀鍛冶というものは激しい力仕事であるのと同時に、刀身に仏像を刻んだり、鍔のこまやかな細工、また、柄の中ほどに掌に合わさるようにはめ込まれる目貫という金具など、繊細さもまた鍛えられるものである。とぼけたような表情の鶴となんだか眠そうな顔の亀を見て、店員は口元を緩め、即座に首を縦に振った。

●本日は晴天なり
 ケヴァリムはバックパックを店に置き、シフール便のギルドへパタパタ向かう。ついでにウェザーコントロールで天気をピカピカの快晴に。客を呼び込むなら晴れの方が良いだろうという親心である。別に親ではないが。
 ギルドではシフールや依頼人がいかにも年末らしく、気ぜわしく動き回っていた。片隅で待機中らしい2、3人のシフールが話し込んでいるのを見つけたケヴァリムは、何気なくその輪に混ざる。
「大晦日どうする〜?」
「どーしよっかなあ、イギリスやノルマンだったら聖夜祭で盛り上がっちゃうんだけどね〜」
「でも料理はイギリスよりこっちのがカラフルでおいしーよぉ」
「うんうん、鶴亀屋さんのお菓子なんか美味しいよね〜☆ 特にお餅が俺のオススメ、焼いた時の食感と、素材が活きまくってる香りが何とも言えないんだな〜♪ じゅるりっ☆」
「あ、私も食べたことある〜」
 ナイス俺っ! と、さりげなく宣伝出来た事を心の中で喜ぶケヴァリムだった。 
 その頃、鶴亀屋からそれほど遠くない場所でグロームもまた宣伝にいそしんでいた。ただ、それを宣伝と呼んでいいものかどうかは微妙な所。と言うのは、
「待て、そこの女」
「は、はい、私ですか?」
 異国の異種族の男に呼び止められた町娘は何事かと立ち止まる。
「鶴亀屋のカステラを食べた事はあるか?」
「いえ、かすていらなんて大層なものは見た事も‥‥」
「‥‥何ぃ?」
 ゆら〜りと立ち上がったグロームの、碧のまなざしが町娘に突き刺さる。ひいっ、と娘が小さく悲鳴を上げる。
「鶴亀屋のカステラを食べたことが無いのか? アレを食したことが無いとは、お前は、人生の3割を損しているッ!」
 目を剥くな。
「悪い事は言わん、兎に角行け。そして買え‥‥」
「はいっ買います買いますっ! 命ばかりはお助けを〜っ!」
 半泣きになりながら逃げていく町娘。もはや宣伝というより脅迫に近い。そしてなお、町娘が立ち去った後もグロームの『宣伝』は続いていた。
「嗚呼! 何という事か‥‥鶴亀屋の菓子を食したことが無い者がいるとは! ここ、江戸の流行の最先端、鶴亀屋カステラをぜひ食すべきだ。アレは‥‥良い物だ。神に誓って嘘は言っていないぞ。行け! 行って買うのだぁ!!」
「おかーさん、アレなぁに?」
「しーっ、見ちゃいけません!」
 目を合わせないように走っていく親子連れ。せめてグロームの未来に光あれと祈らずにはいられない光景であった。

●魔法よりも鮮やかに
 喧騒。師も走ると書く年の瀬を走り回っていた一人の男が足を止める。ぎょっとしたように見る先には女がひとり立っている。見慣れない風体に一瞬幽霊かとも思うが、まさかこんな時期に幽霊など出るわけが無い、と思い、近づく。そばまでいって彼女をゆっくりと見て、ほう、とため息をついた。人間で無いのはわかる、風が吹いたら折れそうな華奢な体つきもとがった耳も、春の雨のような銀の髪も、この国では見慣れないものだから。それにしても。
「それにしても綺麗だなあ」
 男の言葉を耳にして、レテは微笑み会釈を返す。それからおもむろに手にした横笛を唇に当てると、済んだ高い音が響き渡り、さらに多くの人が足を止めた。二、三人が足を止めると、あとは行列効果というものだろうか、なし崩しに人垣ができる。レテは、祖国の古い調べを奏でた。
 一曲吹き終えるとレテは一礼し、数間先の鶴亀屋の店先を指し示しながら口上を述べる。
「過ぎる年を見送るために、明ける年を迎えるために、お菓子がご入り用の方はいらっしゃいませんか? お饅頭に、羊羹、お団子。何でも取り揃えております。もちろん、珍しい異国のお菓子も。お買いあげ頂いたお客様には、お好きな曲をお弾きします。腕がまだまだ未熟なのはご愛敬。間違えましたら、どうぞ笑って流してやって下さいまし」
 それを聞いて、一人のあまり柄の良くない客が半ば冷やかしからか、今年巷をにぎわせた平松剣ノ丞とかいう役者の歌う音頭をやって見せろ、などと言えば、レテは二つ返事ですぐに三味線の調子を合わせ、いともたやすく弾いて見せた。異人に日本の曲はまさか出来まいと思っていたのだろう、男だけでなく周りの人間からも驚きの声が上がる。ちなみに彼女、演奏は達人級の腕前である。
 だが言い出した当の本人は菓子を買うのが本意では無いらしく、なにやらぶつぶつ言った揚げ句、今度はレテに因縁をつけ始めた。人垣は男を恐れて四散する。レテがジャパン語に堪能であればどれだけ酷い言葉が使われたか理解できただろうが、この場合は幸いなことに、何か酷い事を言われているのは判ったが意味までは分からなかった。黙ってそのまま聞いていたが男はなかなか引き下がらない。いざとなれば魔法が使えるとはいえ、困った‥‥と思った所へ。
「おっさん、いい加減にしておけ」
 歩き売り用の道具を担いだまま声をかけたのは殊未那。
「なんだ、この左前野郎! 文句あんのか!」
「あ、また左前に着てたか」
 ぼそりと呟くと殊未那は体勢を低くし、瞬時に男の足を蹴り払った。男は宙を舞い、ドスンと尻から着地した。
「何しやがる!」
「何って、商売だな。旨い団子があるんだが、買う気はあるか? ‥‥あるよな? 御代はたったの銀一枚」
 団子の包みを手に、転がったままの男の顔を覗き込む。
「判ったよ、買やあいいんだろう!」
 男は懐から財布を出し、一分銀をつかみ出すと殊未那に押し付け、団子の包みをひったくると一目散に逃げ出した。
「毎度あり、っと」
 レテは殊未那に恭しく頭を下げた。
「‥‥ありがとうございます」
「たまたま通りがかったんでな。またああいうのが来ても何だから、一緒に売ることにするか。まだ売るものはたっぷりある事だし」
「なら、お店を離れてもっと人の多いところにも行けますね」
 利害の一致は一つの連携を産み、殊未那の荷物はこの後数刻ですっかり金に化けた。

●両手に花とか団子とか
 鶴亀屋の店先に筵を敷き、細工用具を並べて、桐澤は器用に銅板を金切りばさみで切り、やっとこで折り曲げたり丸めたりしている。ちょっとした実演販売である。寒いが天気が良いので防寒着の類が無くてもさほど苦にはならない。たちまち兎の箸置きが出来上がり、鶴亀や花の飾り物と一緒にちょこんと筵の上に乗せられる。
「かわいい。この兎、ちょうだい」
 女の子がひょんとしゃがみこんで話しかけてきた。
「‥‥悪い。売り物じゃないんでな、鶴亀屋で買い物をしたらおまけに付けてやる」
 別の子供も目ざとく小さな動物を見つけて近づいてきた。
「おかーさん、アレなぁに?」
「あら、可愛いわね。おいくら?」
「売り物じゃない。菓子を買った奴のおまけだ」
「おかーさんおまけだってー! お菓子買って買って買ってー!!」
 やかましいわこのガキ。などと言いたいところをぐっと飲み込む桐澤。
 子供に引きずられるように店内に入っていく親子連れを見ると、細工物は作った本人が思っているよりも人気があったようだ。
 少し離れた所では、林が日本語のみならず母語の華国語でも呼び込みをしている。何故か礼装して、右手に天晴れ扇子、左手に真鉄の煙管というすこぶるオリエンタルな格好だ。本人としてはジャパンらしさを表現したらしい。
『お菓子なら鶴亀屋のお菓子です。ふるさとへのお土産に鶴亀屋のお菓子、いいですね♪ 鶴亀屋のお菓子で来年も笑顔で過ごしましょうです☆』
 ついでにそのまま手にした煙管を振り回して武道の型を披露するので、見ている分にはほほえましくも、近寄るにはかなり危険であった。
「麗鈴さん、桐澤様も、お茶にしませんか? お菓子を用意していただきましたので」
 店から高川が呼びに来て、店先にいた二人も一度仕舞って中に入る。従業員用の小部屋で、最初に会ったあの女店員が熱い煎茶を振舞ってくれた。
「美味しいお水をありがとうございます。魔法というのは便利なものですね」
 とはクリエイトウォーターで水瓶を満たした高川に向けて。
 そこにはずっと奥で力仕事などをしていた伊左衛門も休憩していた。ふーふーと茶を冷ましながら飲んでいる伊左衛門に向かい、高川は何気なく問うた。
「もしや、どうしてもかすていらを食べさせてあげたい方が居られるのではありませんか?」
「ぶーっ!!」
「うわ熱ッ!」
 吹いた。前に座っていた桐澤が被害に遭う。
「なっ、あっ、やっそのっ」
 顔を真っ赤にして慌てる所を見ると図星のようだ。
「幼馴染の‥‥お栄ってのに、約束したんだ。おら、馬鹿だで。人の言うことすぐ信じて、鍋かぶって江戸を歩いたりもしたものな。郷里じゃ、いつもお栄に助けられて、おら、だから江戸の土産にかすていらを土産に持って帰って、たまにはお栄にいいとこ見せてやりてえと思っただよ‥‥」
 うんうん、と頷く冒険者達。林がぽんと伊左衛門の肩を叩いてにっこり笑った。
「がんばりましょうです♪」

●振り返るとそこには
 朋月はケヴァリムを待ちながら道沿いの大きな木の根元に腰掛けていた。前の道をせわしなく人が行き来する。それを眺めながら、手持ちぶさたに担ぎ棒の通った大きな菓子入れの箱から蕨餅の包みを取り出し、封を切る。茶色の半透明なつやつやとした塊が、黄粉にくるまれて並んでいる。その一かけを楊枝で口に運ぶと、黄粉の味がほわあんと口の中に広がり、同時に砂糖の甘みが浮かび上がる。ぷにっと噛めば黄粉のしゃりしゃりとした感触の中に弾力のある葛餅の歯ごたえがまたたまらない。
 次に団子を取り出し、これも縛ってある紐をほどく。黒胡麻と白胡麻の二色の団子が仲良くつるんとした顔をそろえている。白胡麻の方が幾分上品な味がした。取っておいて、翌日に火鉢でこんがりと焼いて食べても、またおいしいかもしれない。売れ筋だという三色団子のほうは赤、白、黄色に染められていて、もちもちとやわらかく、みずみずしい食感だった。癖の無い甘みはほのかで、噛むほどに染み出てくる。
「雪兎ちゃんおっ待たせ〜☆」
 ケヴァリムが到着した時には朋月の足元にはいくつもの包みが転がっていた。
「え〜と、売るモノ残ってる?」
 ちょっと引きつった顔で尋ねるケヴァリムに、朋月は頬袋にどんぐりを詰めたリスのような顔で必死に頷く。お茶がこの場に無いのが恨めしい。そんな朋月を眺めていたケヴァリムは、自分も菓子入れから箱を一つ引っ張り出し、中身の落雁を取り出した。かりかりと端から削るように食べる。目を丸くした朋月に、ふふ〜ん♪ とにんまり笑ってみせる。
 少々放浪癖のあるこのシフールはまた旅に出る事を考えていた。お菓子は食べれば無くなるけれど、思い出は‥‥残る。
「ホントに美味しーよねっ☆」
 見上げた空は、快晴。

●行方
「本当に皆様ご苦労様でした、おかげで10個あったかすていらも全部売り切れて」
「それはおめでとうございま‥‥‥‥はい?」
 女店員の言葉で冒険者達と依頼人に衝撃が走る。しかし。
「それで、型崩れして売れない分でよければ、皆さんでどうぞ」
 渡された二箱のうち一箱は依頼人が、一箱を冒険者達が受け取る。
 その味は格別のものだったらしい。