ルージュの伝言げぇむ♪

■ショートシナリオ&プロモート


担当:蜆縮涼鼓丸

対応レベル:1〜3lv

難易度:やや難

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:12月31日〜01月05日

リプレイ公開日:2005年01月07日

●オープニング

 ギルドの片隅で、二人の男が言い争っている。
「またアイツ等か、ったくしょうがねえ」
 出っ歯の係員が仲裁のためにやれやれと腰を上げた瞬間、ひゅう、となにやら赤いものが係員をかすめて飛んだ。
「お?」
 赤く小さな飛行物体は二人の側に降り立つと、
「シエンテセ ポル ファボル!」
 と声を上げ、手拍子を打ち、足を踏み鳴らし、赤い髪をふわりとなびかせてくるくると踊り始めた。赤い髪と翅、そして緋色のジプシーの衣装が、まるでそこに炎の精霊が踊っているかのような錯覚を覚えさせる。ギルドの客も思わず手を止め見とれるほどの、見事な異国の舞だった。二人の男もいつしか喧嘩を忘れ、特等席でほほを緩めていた。
 踊り手の動きがだんだん激しくなり、最高潮に達した一瞬。そのまま動きを止め、やがてゆっくりと礼をすると、踊り子の周囲は日常の空気にまた色を戻した。ギルドに集う人々はまた自分のやりかけの仕事‥‥依頼を出したり受けたり‥‥を再開したが、中には立ち去る前にちゃらりとおひねりを置いていく者もいた。
 踊り子はおひねりをバックパックに回収するとそのままギルドのカウンターへ飛び、係員の前に羽根一枚ほどの足音で降り立つと、何事か早口でまくし立て始めた。日本の言葉ではない。その手にあるじゃらりと音がする皮袋を見て、どうやら依頼らしいと見当を付けた係員は慌てて話を止めようとする。
「あ、ちょっと待っておくんなせえ、今シフール通訳を‥‥ッ!」
 しかしその時遅くかのとき早く、立て板に水どころか台風のあとの華厳の滝のような勢いでしゃべるだけしゃべると、シフールの踊り子は報酬らしい重みのある皮袋を押し付け、またすごい勢いで飛び去ってしまった。よほどせっかちなようだ。
 係員は途方にくれた。よく見れば皮袋と一緒に簡単な地図があり、近郊の村への道が記してある。ここへ行けということなのだろうか? 置いていった金額からすると数人いればいい仕事のようだ。
『せっかちなシフールね。あなた、彼女が何を言っていたかわからなかったでしょう? 彼女、イスパニア語でしゃべってたわ‥‥』
 灰色のローブを身に纏った金髪の美女が係員に近づき、親切にも係員に説明してくれた。とても色っぽく‥‥流暢なロシア語で。
「頼む‥‥後生だから、誰か、通訳を‥‥」
 もはや係員の目は宙を泳ぎ、半ばパニック状態である。実の所これまでこの国を出た事もなく、仕事でも外国語は通訳に頼りっぱなしの係員。
「ほえ〜。お呼びですか〜?」
 のほほんと一人のシフールが飛んできた。
「おや、見かけない顔だがお前さん通訳かい?」
「は〜い。おとといからお仕事始めました〜。よろしくおねがいしま〜す」
「じゃあ早速だが仕事を頼まぁ、こちらの姉さんの言ってる事をあっしに分かるように直してくんな」
「はぁ〜い」
 早速ロシア語の美女と話し始めたシフールは、数分後、内容を係員に伝えた。
「え〜とですね〜。『私は赤い名前です。ダンサーは作られます。村の近くで見つけた台風が損傷しました。友人を留める仲間は活力の順序で集まっているのを発注してください。僚友は歌手全員または演奏します。操作する人格はしたがってそれが戦う事は可能でなければならないので複数の小さい鬼がそこにいます。私の番号がついている人々は何人かの人々を計算するように。村への方法はあり、地図に傷つきます。私たちは私たちに出来る事を要求します』。以上で〜す」
「‥‥‥‥‥‥‥‥。誰か‥‥日本語でしゃべってくれ‥‥」
 もはや笑うしかない係員だった。

●今回の参加者

 ea5879 紫 霄花(24歳・♀・僧侶・シフール・華仙教大国)
 ea7676 アップル・パイ(22歳・♀・バード・シフール・イギリス王国)
 ea7677 レモン・パイ(22歳・♀・バード・シフール・イギリス王国)
 ea8222 ハロルド・ノートン(52歳・♂・ナイト・ドワーフ・イギリス王国)
 ea8846 ルゥナー・ニエーバ(26歳・♀・神聖騎士・ハーフエルフ・ロシア王国)
 ea9355 十六夜 熾姫(26歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea9956 ボボ・クバレル(45歳・♂・ナイト・ジャイアント・モンゴル王国)
 eb0061 葉櫻 霊沙(28歳・♀・忍者・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

●異なるコミュニケーション文化の収入〜異文化コミュニケーション
「ジャイアントのボボです。ぽあ。みなさん‥‥よろしく」
 ボボ・クバレル(ea9956)は今回集まったメンバーの中では身長がメンバー中最高値の240cm。シフールのアップル・パイ(ea7676)とレモン・パイ(ea7677)の双子は45cm、同じシフールの紫霄花(ea5879)は43cm。3人足してもやっとボボの半分を少し越えた程度という恐るべき身長差。ちなみに体重差を言えば差などというレベルではなく、200倍を越えるという、万馬券の配当のような話になる。
 ボボは大人に相応しい落ち着いた態度で仲間を見回し、言葉を続けた。いや暦年齢で言えばシフールのお嬢さん方のほうが実は年げふんげふん。まあそれは置いといて。
「今回は戦闘能力のない方からの依頼ということで、おそらく村の外側の修理が要求されると思われます。‥‥私の馬に修理道具や木材など積んでおきました。村では小鬼相手とはいえ戦闘の可能性もあるでしょう。みなさん気を引き締めていきましょう」
 シフールたちは華国語が理解できた為真面目に頷いているが、ほかの面子は戸惑うばかり。なにしろボボは華国語しかしゃべれないので華国語の知識がなければ彼の言っている事を理解のしようもない。葉櫻霊沙(eb0061)や十六夜熾姫(ea9355)は日本語しか使えないし、ドワーフのハロルド・ノートン(ea8222)とハーフエルフのルゥナー・ニエーバ(ea8846)は日本語含めたバイリンガルとはいえ華国語については全く知識を持ち合わせていない。
 紫が華国語を日本語に通訳して、そこでやっと皆が頷いた。依頼の解釈については、大筋に置いてはほぼ全員一致していた。だが、依頼の内容を確実に把握する為に、最初に依頼人の話を通訳した金髪の女性や、さらに彼女の話を日本語へ通訳したシフールに会うべく、何人かはまずギルドへと向かった。

●その天使を飲むこと〜酔いどれ天使
 冒険者ギルドで件のシフール通訳を捕まえた。ほえほえ〜と鳴き声を上げながら(?)飛び回っている彼女をちょいちょいと手招きすると、首をかしげて寄って来た。そこをがっしり捕まえる。レモンが通訳の顔を覗き込む。
「忙しい所ごめんね。こないだ、金髪のお姉さんの通訳をしたよね? もう一度詳しく話を聞きたいんだけど、いいかな?」
「詳しくって言っても、私、普通に通訳のお仕事しただけですし〜」
 話を聞いてみても今ひとつ要領を得ない。アップルとレモン、ルゥナーの3人は、より最初の文章に近いと思われる関係者、ロシア語の金髪の美女を探すことにした。ちなみに実際にはロシア語という言語は存在せず、ロシア王国の公用語はゲルマン語なので、正確には「ロシアなまりのゲルマン語」ということになるが、都合によりこう表記させていただく。
 さて、目当ての人物は酒場に行った、という話を聞いて、3人はシフール通訳を連れたまま酒場に向かうことにした。
「わたくしもあまり日本語が堪能ではありませんから、そういった翻訳間違い、身に覚えがありますわね」
 ルゥナーは苦笑いを浮かべながら、左右からがっしりシフール通訳の身柄を確保している双子のシフールを眺めた。
「それに、たまには、母国語を喋れる方との会話を楽しみたいですしね。‥‥ああ、あちらにいらっしゃる方かしら?」
 冒険者の酒場の片隅で、憂いを帯びたまなざしで遠くを見つめ、時折深いため息を漏らす美女。灰色のローブから豊かな金髪が覗く。
「どうなのアレなの間違いないの?」
 アップルが通訳シフールをゆさゆさ揺すりながら尋ね、通訳シフールはあうあうあう〜と涙目で頷いた。それだけ聞くとアップルは通訳シフールをぽいと投げ捨て、解放された通訳シフールはほえ〜と鳴きながら飛び去った。レモンにはそれが、泣きながら、だったようにも聞こえた。
 頬杖をついた美女に、ルゥナーが
「こちら、同席してもよろしいでしょうか?」
 と尋ねると、美女はルゥナーに目を向け、軽く頷いた。
「ジャパンのお酒は悪くないわ‥‥私はワインの方が好きだけれど。あなたも一杯いかがかしら?」
「いいえ、結構です。実は貴女にお尋ねしたいことがありますの。先日シフールの踊り子がスペイン語‥‥」
「スペインの雨は主に平野に降るのよ‥‥」
「‥‥は?」
 ルゥナーの言葉を遮り意味不明な返答をすると、美女は手元の酒をくいっと飲み干した。そして給仕女を呼び、身振りでお代わりを要求する。給仕女は困った顔をして、日本語で聞き返した。
「いいんですか、もう13杯目ですよ?」
 給仕女が指差した空の徳利の山を見て彼女が言わんとしている事を察したらしく、美女は艶然と微笑んだ。
「構わなくってよ。いつもより少ない位だわ‥‥」
 アップルには奥の手があった。テレパシーの魔法でこのロシア美女とやり取りすれば、正しい依頼内容が分かるはず。それならば誤解なく会話が出来る‥‥はずだった、会話さえ出来れば。酔っ払いと会話‥‥コミュニケーションをとるのは、いかに魔法を使ったとしても難しい。
 そして現状において冒険者達が発見したのは必要な情報ではなく一人の酔っ払いだった。
「‥‥次行くわよ次!」
「お姉ちゃ〜ん」
 きびすを返して憤然と立ち去るアップルを追いかけるレモン以下、仲間たち。

●活動的な長さは45cmの火山〜体長45cmの活火山
 ふつふつと煮えたぎっているアップルの怒りをもろに浴びた被害者は、依頼を受けたギルドの係員だった。アップルは係員の目の前まで詰め寄るとびしっと鼻面に人差し指を突き出し、
「大体ねぇ、あぁ〜んな暗号じみた依頼っ!」
 すーと息を大きく吸い込んで。さん、はい。
「ぅわっかる、わけ、なぁいでしょうがぁぁ!!!」
 45cmの体から繰り出す高音域の大声量。流石は吟遊詩人。きぃぃんと耳の中に響く余韻に軽くめまいを起こしながら係員がやっと体勢を立て直す。
「まあまあ、アップル殿のお気持ちもわかりまっけど、もうちびっと静かに頼んますわ。騒いでもええ事はあらしまへん」
 ハロルドの一言は亀の甲より年の功。
「それもそうね。じゃあ、せめて楽器貸しなさいよ楽器。なんか必要になるっぽいし。それ位しても当然でしょこんな訳わかんない依頼出すんだから!無いとか言わせないわよ言う位だったらアンタ仮にもギルドの係員なんだから二ヶ国語三ヶ国語くらいは喋りなさいよっ!」
「すごいですね‥‥どこで息継ぎしているのか全く分かりません。私の水遁の術のようなものでしょうか?」
 真顔で感心する葉櫻‥‥初めての依頼だからか、微妙に感動ポイントがずれているきらいがある。
「あー分かった分かった。楽器だな、手配するよ。他に必要なもんはあるのかね? 大工道具やなんかはでかいのに渡しておいたからな」
「僕、白のジプシー衣装が欲しいんだけど、手に入るかな?」
「そこまではちっと面倒見切れねえなあ。服は緩いきついがあるからなあ」
 ちょっとがっかりする十六夜。ちなみにジプシー衣装、お値段的にはかすていらの10倍くらいはゆうに行くかもしれません、だってジャパンなんですもの。
 その後、保存食の個数を間違えていたボボに足りない分を売りつけるシフールが居たりで出発間際まで何かとばたついた、慌しい大晦日の出発となった。

●どの鬼が小さく来るか年が行く年それは去る〜行く年来る年出る小鬼
 ぐんと冷え込む夜。見上げる空から雪がちらほら降り始めたかと思うと、あっという間に積もっていった。街道脇の大樹の根元をその日の野宿の場所と定め、用意のいいルゥナーが持参したテントを手際よく設置した。
 防寒服の性能にあわせ、ほぼ3時間おきに見張りを交代する。人数は多いが、シフール3名ドワーフが1名という構成が幸いして、全員テントで体を伸ばして休めるようなローテーションを組むことができた。外にいる者には焚き火の暖が欠かせない。防寒具を準備していなかった紫には見張り役は出来なかったため、ロバの羅門の上で毛布二枚に革マントもかけて薄目を開けて寝ていた。
「なあ、なんぼ毛布重ねても寒いんちゃうか?」
 ハロルドが声をかけるが、紫から返事はない。思わず揺さぶるとやっとしっかり目を開け、
「生きてるよ‥‥」
 と答えた。普通に寝ていたらしい。例えこの状態で無事に一夜を過ごせたとしても、仲間の精神衛生上、好ましからぬ事この上ない。以降、半強制的に紫はテントの一角に据えられることになった。
 雪は夜中には降り止み、冷え冷えとした空気が滑らかに地を覆った。まだ夜明けまで大分時間があろうかという頃、焚き火の前にいた葉櫻と十六夜がはっと表情を変えた。
「どうかしましたか?」
 二人の変化に気付いたルゥナーの問いに、それぞれ得物を抜く事で答えを返す。忍びの耳には雪を踏む足音が届いている。一つ二つの数ではないのが、聞き耳の熟練者ではない二人にも分かった。ルゥナーはテントの仲間を手早く起こす。
 現れた影はハロルドとほぼ変わらない程度の背丈。だがドワーフのがっしりした体格に比べるといかにも貧相な体つき。数は10に満たないほどか。
 小鬼である。
 小鬼はこちらの様子を伺っているようだった。相手が強そうなら避けるし、弱いと見れば襲ってくる。そういうずるがしこさを持つ生き物なのだ。紫は襲ってくるまでの僅かな間を活用すべく、数珠を握り締めながらグットラックを仲間にかけてゆく。
「来た!」
 十六夜が鋭い声をあげるのと同時にテントに隠れていたボボたちが飛び出した。一瞬小鬼達はひるむが、数の利がまだあると見たか、再びこちらに向かってきた。
 葉櫻が春花の術を使おうとした。だが風はない。風がなければ術の効果は仲間にも及ぶ。そしてそれ以前に、両手に武器を装備した状態はいささか重過ぎ、術の詠唱を行う余裕がなかった。
 十六夜も忍法を‥‥こちらは疾走の術を使い、身を軽くしている。たとえ同じ装備でも体力があれば詠唱の余裕も出来る。身軽になった利を最大限に生かし、小鬼の攻撃を見切ってかわす。そして十六夜に攻撃してきた小鬼を、今度はハロルドがロングソードで切り倒す。彼もまた、オーラの魔法で防御と攻撃の力を高めている。
 ボボはロングソードを構え小鬼と対峙する。その腕前は達人級。やすやすと当たった一振りは、小鬼に相応の傷を負わせ、小鬼は背を向けて逃げようとした。そこへさらにルゥナーが霞刀の一閃を加え、二発のムーンアローが命中し、小鬼は倒れた。
 逃げ出す小鬼も多かったが、誰も追わなかった。仲間の中には多少傷を負う者もあったが、紫のリカバーのお陰で最終的には無傷の勝利となった。
 丁度そのとき、すうっと日が差して、所々赤く染まった雪を照らし出した。新しい年の夜明けだ。
 十六夜は初日に向かい眩しげに目を細め、何事かをつぶやくと、忍者刀を握る拳にぐっと力を入れた。

●各自と踊ること、私は村に活力を得る〜皆で踊って村に元気をつけましょう
『あんまり遅いから小鬼にビビって尻尾巻いて逃げ帰ったのかと思ったわよ全く!』
 到着するなり飛んでくる声。その言葉はギルドに来た時と同じイスパニアの言葉。腕組みをしてぷりぷりしながらシフールの踊り子が冒険者達を出迎える。予想通り、村の中には破損したままだったり、簡単な修理を行っただけだったりの箇所がちらほら見受けられる。
 アップルとレモンが彼女の前に進み出て、一番双方が理解できる言葉‥‥シフール語で会話を始めた。依頼について恐らく誤解があるだろう事も含め。
『‥‥って事は何? こっちの言ったコト全然通じてなかったって言うわけ? 信じられない! 大体仮にもギルドの係員なんてやってるんだから二ヶ国語三ヶ国語くらいは喋れて当然でしょうに!』
 どこかで誰かが同じような事を言ったのを最近聞いたなあ、と冒険者達はなんとなく視線を空中に彷徨わせる。
『私の名前はルージュ、職業は踊り子。近くの村が台風の被害にあって、そこの村にいる子を元気付けようと思ったのだけど、途中に小鬼が出るので、戦う事が出来てかつ歌か演奏ができるメンバーを数人都合付けて頂戴、って言ったのよ。ただそれだけなのに、なんだかややこしいことになったものね?』
 少し苦笑してから、集まった冒険者達を一通り見回し、続ける。
『音楽に縁のなさそうなのも居るけど、まあいいわ。修理のことなんてあたし全然頭になかったし‥‥ありがとうね、助かっちゃった』
 気の強そうな踊り子の表情が、一瞬ふっと和らいだ。ずっとボボに華国語で通訳を続けていた紫が、思い出したように尋ねる。
『ねえルージュ、私も一緒に踊りたいんだけど、いいかな? 独学だし、まだまだ拙いけど‥‥』
『あたしの師匠はこう言ったわ。才能は体じゃなく魂に宿るものだって。いいわよ、一緒にやりましょう。でも指導は厳しくやるから、覚悟してね? 他に手伝ってくれるのは誰?』
 アップルとレモンが手を上げる。ギルドから貸し出された楽器には「返さなくていい」とメモがついていた。よほど係員はアップルの剣幕が恐ろしかったようだ。
 十六夜も手を上げた。
「踊りはやったことないけど、身の軽さには自信があるんだ。僕にも踊りを教えてもらえないかな?」
 余計な一言をつい口にしてしまう所のある十六夜だが、今回の一言が余計だったかどうかはわからない。ただ、その後3日間、村の修復をしていたハロルドやボボの耳に、延々スペイン語の怒鳴り声とジャパン語の悲鳴が届いていた事だけ、記しておく。

 ルージュの燃え盛る炎に似た踊りには及ばずとも、紫と十六夜の心を込めた踊りは、そしてレモンとアップルの激しい調子を帯びて踊りを盛り上げた演奏は、あるいは華やかさの裏で地道に村の修復作業をしていた冒険者たちは。
 舞台を見に来た村人達の心の中に、ろうそくのように緩やかに、けれど確かに、火をともした。