新撰組の出張所を作ろう!
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■ショートシナリオ
担当:菊池五郎
対応レベル:フリーlv
難易度:普通
成功報酬:5
参加人数:10人
サポート参加人数:2人
冒険期間:05月23日〜05月28日
リプレイ公開日:2007年06月05日
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●オープニング
――江戸城陥落!
この報せは瞬く間に京の都にも伝わった。
江戸城は安祥神皇の摂政を務める源徳家康の居城だ。家康は自領である三河へ落ち延びたというが、江戸が陥落したという事は、摂政の衰退を表しており、安祥神皇政権を根底から揺るがしかねない由々しき事態だ。
また、この報せは新撰組にも多大な影響を及ぼしかねない。
新撰組が家康直属の実戦部隊である事は周知の事実だ。しかし、その後ろ盾である家康が江戸より敗退したとあれば、新撰組の弱体化は否めない。今まで新撰組を煙たがっていた京都見廻組や検非違使が、ここぞとばかりに突き上げてくる可能性もある。
新撰組の屯所では、隊士達の動揺が隠せない。それを叱咤し、活を入れるのは、“鬼の副長”こと土方歳三だ。
今日も今日とて、屯所に歳三の声が轟く。
「土方さん、荒れてますね」
「ああ、鈴木君か。まぁ、事態が事態だからな、トシが荒れるのも無理もない」
こういう時こそ局長はどっしり構え、新撰組が盤石である事を印象付けるかのように、近藤勇はダンダラ模様の羽織の袖に手を入れて組んだまま、歳三の動向を見守っている。
そこへ現れたのは、微苦笑した一人の優男。彼の名は鈴木三樹三郎(ez1119)。新撰組九番隊の隊長だ。
新撰組九番隊の名はあまり知られていない。というのも、九番隊は後方支援が主な活動だからだ。武闘派揃いの新撰組の中にあって、後方支援は地味であり、目立たない。加えて、三樹三郎は剣術があまり冴えず、学者肌という事もあり、武闘派のトップたる歳三から煙たがられていた。
隊士はほとんどおらず、事務的な仕事や後方での補給が割り当てられているのだが、三樹三郎自身、後方支援の大切さを重視しており、役割分担は上手くいっているといえた。
「京都見廻組や薩摩見廻組からすれば、今はうちの勢力を抑える好機ですからね。ここは一つ、こちらから先手を打ちたいところですが」
「ほう、先手、という事は策はあるのか?」
三樹三郎にしては珍しい「先手を打つ」という言葉に勇は興味を覚え、にやりと笑う。
「出先機関として出張所を作り、新撰組の京の見廻りの範囲を拡大します」
「出張所か‥‥うちの台所事情を知っている鈴木君に言うのも何だが、金は出せんぞ?」
にべもなくそう言い切る勇。三樹三郎は補給を担当しているので、新撰組の台所事情はそれなりに把握しているが、それでも念を押した。
「土地と建物は長州藩邸跡を接収しますので、お金は掛かりません」
長州藩邸は五条の宮の乱の最中に半ば破壊され、住む者はいなくなっている。空き地になっているそこを新撰組が接収する分には問題ないだろう。
「出張所を作るとして、京の民には何と説明する? いたずらな勢力の拡大は、却って民の不安を煽るだけだぞ?」
「江戸城陥落の報せは京の民にも噂として広まっており、噂が噂を呼んで不安として蔓延しています。それがここ最近の犯罪の増加に繋がっているのは否めません。出張所を作る事で新撰組こそ京の治安維持に力を入れ、神皇様の政(まつりごと)が盤石である事を印象付けるのが狙いです」
「治安維持か‥‥確かにここのところ、新撰組の出動も多くなってきているからな。それに出張所を作る事で、京都見廻組や薩摩見廻組への牽制にもなる‥‥よし、良いだろう、出張所新設の許可を出そう。金は出せんから、代わりに空いている他の隊の隊士も自由に使って構わないし、この機に九番隊の隊士を増員するのも良いだろう」
「ありがとうございます」
勇は三樹三郎の説明を受けて、出張所が及ぼす影響を計算すると、新設の許可を出した。
●リプレイ本文
●三樹三郎の深謀
新撰組九番隊隊長、鈴木三樹三郎(ez1119)が待ち合わせ場所に指定したのは、新撰組の屯所ではなく冒険者ギルドだった。
「お部屋をもらえるのですか? 住む所がないので、凄く嬉しいです」
「その歳で‥‥しっかりされているのに、苦労しているのですね」
「実際に元長州藩藩邸跡の具合を見ない事には確約は出来ないが、部屋をもらうのであれば、私に言ってくれれば、出来る限りレイアウトのリクエストに応じよう」
「ありがとうございます。もしもらえるなら、フリフリのカーテンが付いている可愛らしい部屋が良いですね」
エルフのクレリック、リティーラン・オービス(eb2281)は三樹三郎に丁寧に挨拶をした後、とても嬉しそうに言った。聞けば故郷へ戻る為、月道代を稼いでいるという。しっかりとした挨拶や丁寧な物腰はお嬢様のそれで、浪人の一条院壬紗姫(eb2018)は、彼女のような境遇の者を一人でも減らせるよう、九番隊への入隊を改めて決意する。また、イギリスはケンブリッジへ留学して学んだ事が役に立ちそうだと思い、馳せ参じた志士の茉莉花緋雨(eb3226)も、リティーランに同情的だ。
もっとも、リティーランは童顔で、且つ背が低いので外見年齢よりもっと幼く見えるのだが、故郷のイギリスのようにジーザス教の教会があればクレリックはそこに泊めてもらう事も出来る。しかし、ジーザス教の教会が少ないジャパンではそれもままならないのは事実だ。
「司‥‥あっ、夫がお世話になっております」
「隊は違えど、同じ新撰組隊士として新撰組の事に関して積極的に手伝っていきたいからな‥‥頑張らせてもらうよ」
「将門君にはこちらの方こそお世話になっているよ。氷雨君も来てくれて頼もしい限りだよ」
丁寧に挨拶するハーフエルフの武道家、将門夕凪(eb3581)と浪人の氷雨鳳(ea1057)に、三樹三郎も丁寧に応える。夕凪の夫は十一番隊隊士、鳳は十番隊隊士で、三樹三郎とも面識があった。
「新撰組の出張所か。確かに、天下が不安定な昨今、京の治安を安定させる意味でも、こういったものも必要かも知れん」
「治安拠点は有事に備えて多いに越した事はないです。ただ、京都には新撰組の他にも、京都見廻組や薩摩見廻組、検非違使がありますから、余計な衝突を招かなければ、ですけど」
侍の榊原康貴(eb3917)とハーフエルフの武道家、藍月花(ea8904)は、新撰組の出張所作りに概ね賛成だ。しかし、月花の言うように、京都の治安維持は新撰組だけが担っている訳ではない。徒(いたずら)に勢力を拡大すれば、他の治安維持組織との衝突も多いにありえる。
「鈴木さんは新撰組の中でも、強硬派ではないと聞いていますが、その点は如何お考えでしょうか?」
「これはあくまで僕個人の考えだけど」
三樹三郎は月花に先ず、これから話す事は新撰組の総意ではなく、三樹三郎個人の考えだと念を押す。
「安祥神皇様の政権が揺らいでいる今、京の都の治安は非常に悪くなっている。新撰組だけで治安を維持出来るとは思っていないし、だからといって新撰組が武力だけを強化するのも拙い。今は組織の面体といった形振り構っている場合ではなく、京都見廻組や薩摩見廻組とも連携して、京の都の治安を最優先に考えるべき時だよ」
だからこそ、三樹三郎は集合場所をギルドにしたのだ。新撰組の屯所では見廻組に所属している冒険者は来づらいし(今回は来なかったが)、新撰組に所属するつもりのない者もまた然りだろう。そういった深慮が窺えた。
こういう考えの持ち主だからこそ、強硬派の筆頭である“鬼の副長”こと土方歳三に疎んじられているのだろう。
「三樹三郎さんのお考えはよく分かりましたわ。九番隊は事務方、比較的柔和で相談し易い雰囲気の方々のように思えますから、庶民の方々がふとした不安を気楽に相談出来るようにしてはどうかと思いますわ」
ファイターの明王院未楡(eb2404)が、主婦の視点からそう提案する。
「子供達が安心して集れる場所となれば‥‥更に読み書きを教えてる姿があれば‥‥周囲の目も変わってくると思うのですけど‥‥如何でしょう?」
「駆け込み寺ならぬ駆け込み所か‥‥出張所にはそういう機能も持たせるのも面白い案だけど、読み書きは誰が教えるんだい?」
「それは手の空いている隊士の方が‥‥」
「残念だけど、現時点での九番隊の台所事情では無理、と言っておこう」
三樹三郎は微苦笑しながら頭を横に振った。九番隊は隊士不足が深刻だ。隊士が増員されない限り、読み書きを子供に教える方まで手が回らない。
「見ていると‥‥哀しくなるのですよ」
忍者の梅林寺愛(ea0927)は三樹三郎や未楡の話を聞いて、京の都の現状を思い出す。五条の宮の乱によって荒廃した京の都も、かなり復興している。それでも治安が悪いというのは、それだけ庶民が不安がっている証とも取れる。
「んふふ〜、愛ちゃんまた一緒の依頼ですね〜♪ よろしくお願いします〜。愛・愛コンビで一緒に頑張りましょ〜」
「まだ、慣れないと言っているのですよぉぉ」
そんな梅林寺を慰めるように、浪人の槙原愛(ea6158)が頭を撫でた。人前で撫でられ、羞恥の頂点に達した梅林寺は、疾風の如く槙原の前から逃げ去った。
●修繕
全員が揃ったところで、三樹三郎に先導されて、一行は元長州藩邸跡へ向かった。
「これはまた景気良く壊されてますね。修理のしがいがありそうです」
大工を生業とする月花の、プロの目から元長州藩邸跡を見た第一印象だ。乱を起こした五条の宮や長州藩への怒りの矛先は、ここにも向けられていた。その無惨な佇まいに、梅林寺は市女笠越しに目を伏せた。
「不幸中の幸いと言うべきか、基礎と大黒柱はしっかりしているようだ。これなら間取りも比較的簡単に変えられるだろう」
「間取りを変えるのであれば、ジャパンの建築技法に西洋式の建築技法をハイブリッドし、耐久性に優れた建物にすべきだろう」
月花を始め、建築の知識を持つ康貴と緋雨、壬紗姫と梅林寺が建物と敷地の現状を確認して回る。半壊しているとはいえ、基礎や大黒柱はしっかりしているので、却って思い切った間取りの変更がしやすくなっていた。
「この程度なら‥‥資材はこのくらいでしょうか」
再利用出来る物をざっと見付けて、月花が必要な資材の概算を弾き出す。彼女は大工仕事の伝手で資材を安く仕入れる事が出来るし、場合によっては瓦に名前を載せるといった交渉で値引きする事も可能だ。
今回集まった寄付は600Gを越えており、月花の概算分は払えた。
「鈴木さんは出張所をどんな風にしたいですか? 新撰組の出張所ですから、局長や幹部用の部屋、怪我人や病人用の部屋、女性用の部屋は必要でしょう。それに、有事の際の防衛拠点にするなら屋根裏部屋など見張り部屋は如何ですか?」
月花が三樹三郎に間取りの希望を聞くと、彼女の提案と三樹三郎の考えはほぼ一致していた。加えて、書庫や書斎が欲しいと三樹三郎は付け加えた。
「防御拠点にするなら、侵入がし辛く、もし出来ても簡単に発見される、侵入者にとっては嫌な間取りにした方がいいのですよー」
「庭については言及が無かったように思うが、やはり訓練場にするのか? 個人的な考えだが、四季を感じる事の出来る草木を植えてみてはどうだろうか?」
「四季を感じる庭か‥‥火事に備えて防火設備用の溜池を作りたいと考えていたのだが、庭の池を非常用の水に転用するのは面白いかも知れないな」
梅林寺が卓越した隠密の知識と、元泥棒(今は足を洗ったが)としての経験を活かして防犯性を高める間取りを提案をすると、康貴と緋雨は庭に注目していた。庭も藩邸という事で、庭園風だった事が窺えたからだ。
「私の個室は、壁一面に愛らしい動物などの絵が飾れる場所があれば、他には特にないです」
「落ち着ける部屋で‥‥いくつか隠れた抜け道が欲しいのですよ‥‥」
「質素なものでも構わんが、茶を楽しめる風情があればいいな」
「礼拝堂はありましたっけ? 実家のお屋敷にはありましたよ」
「私は先程も言いましたが、子供達やご近所の方が気軽に立ち寄り、相談が出来る場として開放したいですわ」
また、10G以上寄付した梅林寺や壬紗姫、康貴やリティーラン、未楡が自身の個室や新しい施設の要望を告げ、月花が逐一書き留めてゆく。
「局長や幹部用の部屋なら分かるけど、一般の部屋に抜け道を造るのは構造的に難しいですね」
「礼拝堂は藩邸だから流石に元々無いが、西洋建築の技法を取り入れるから造ってみたいな」
梅林寺の抜け道は構造的に難しく、月花に却下されてしまったが、礼拝堂は緋雨の後押しもあって追加された。
早速、その日の内に、出された意見や要望を元に康貴が中心となって設計が行われた。とはいえ、康貴の設計技術はかじった程度なので、そこは大工として卓越した腕前を持つ月花の経験と勘が大いに活かされた。
建物の基礎や壁の補強については、ジャパン建築の木を生かしたしなやかな強さを、緋雨がケンブリッジで学んだ西洋建築の石組で補強する技法が採られた。要所は容易に崩されないよう補強し、壁は耐久力を増す為に西洋の石壁が取り入れられた。
設計が済むと、すぐに修繕作業が開始される。こちらは月花が指揮を執り、壬紗姫達に道具使い方やコツを教え、段取りを仕切った。
「‥‥壊す苦労より、こうやって作り上げる苦労の方がいいものですね」
金槌を振るい、額に滲んだ汗を拭いながら壬紗姫はそう漏らした。
●ご近所回りと芋煮会
出張所の修繕作業と平行して、槙原や鳳が中心となり、近所への挨拶回りが行われた。
「引っ越しするのですから〜、ご近所回りと宣伝を兼ねると効率がいいと思うのです〜」
「新撰組の出張所が近くに出来るとなれば、一時的にも不安を取り除く事にもなるだろうからな」
これには未楡の意見も含まれている。彼女は修繕作業に伴う騒音等のお詫びも考えていた。
初日はご近所回りだが、最終的には京の都を一通り回るつもりだ。
「ジャパンではお引っ越しすると、近所の方に『引っ越しソバ』を配ると聞きました。私も出張所に引っ越すので食べてみたいですね」
「引っ越し蕎麦のご用命なら、万屋「将門屋」にお任せ下さい」
リティーランが引っ越し蕎麦について切り出すと、夕凪が義妹の忍者、将門雅を三樹三郎に紹介した。
「万屋「将門屋」の店主、将門雅や。入用ならゆうてな」
「早速、引っ越し蕎麦を頼もうかな。数は槙原君や鳳君から聞いて欲しい。それと九番隊は補給部隊だから、有事の際は大量に買い付けが必要になる。出張所が完成した暁には、将門屋と取り引きしたいと思う」
「毎度! お姉を通じてゆうて下されば、大抵のものは調達するさかい」
「九番隊が効果的に機能すれば、夫も含め隊士の皆様が安心して仕事が出来ますので、その為のものですよ」
九番隊は万屋「将門屋」からも出張所の費用を寄付してもらっている。その事もあり、三樹三郎は万屋「将門屋」を九番隊の贔屓の店としたようだ。また、夕凪は九番隊と万屋「将門屋」のパイプ役となった。
夕方には万屋「将門屋」から蕎麦が届き、夕凪や未楡達、修繕に携わっていない者が手分けして茹でて、ご近所回りが始まった。
「さて、それじゃぁ宣伝頑張りましょうね〜」
「笛を吹くくらいしかできないが、精一杯やらせてもらおう」
槙原が新撰組の出張所の説明が書かれた看板を持ち、鳳は横笛で楽しい愉快な曲を演奏してご近所から練り歩く。
「この度、あちらに新撰組の出張所が出来ましたので、ご挨拶に参りました」
リティーランは引っ越し蕎麦を手渡しながら、にこやかな笑顔で挨拶する。
「こちらが引っ越しソバです。私も食べましたけど、とっても美味しいんですよ。それにも出張所には私のお部屋も出来るんですよ。遊びに来てくださいね」
新撰組の京の都での評判は庶民の間でも賛否両論だが、彼女のとっても嬉しそうな笑顔の前には、そんな事は些細な事のように思えてしまうから不思議だ。
翌日からは少しずつ足を伸ばして、宣伝する範囲を徐々に広げてゆく。
鳳の横笛の音に合わせて、市女笠の下に小面を着け、着物の上に薄絹の単衣を羽織った梅林寺が三つの球を取り出す。動きの途中で人々の視界から球を消し去り、一つは見物人の手荷物に、もう一つは市女笠に、そして最後の一つは愛犬の玩丸の口の中から取り出してみせる。
「玩丸、これは食べ物では無いのですよ?」
「新撰組の出張所が出来れば、治安も今よりより良くなる‥‥と言いたいところだな」
梅林寺の芸は、道を行き交う人々の歩みを止めた。槙原と鳳が空かさず宣伝する。
更に依頼期間の最終日には近隣の人々を出張所の庭先に集めて、芋煮会が行われた。
「皆様で食事を楽しむ事は幸せな事ですから」
「そうだな、美味いものを食えば皆明るくなるだろう」
用意された食材は、夕凪が万屋「将門屋」から仕入れていた。
修繕作業に掛かりっ切りの月花と康貴、緋雨と壬紗姫を除いて、鳳達は総出で集まった庶民達と触れ合い、親交を深めた。
●新撰組九番隊始動!
「うわぁ、出来ましたね」
リティーランが感嘆の声を上げながら、色々と歩き廻る。新撰組の出張所の修繕はほぼ完了した。
隊士が集まる大部屋や詰めている隊士の寝室、浴場の他、局長や各隊の隊長用の部屋、怪我人や病人用の部屋、女性用の部屋、書庫、礼拝堂が設けられ、屋根裏部屋も完備されている。女性用の小部屋には月花力作の、月と花の図案が彫ってあった。また、庭には訓練場の他、木々が植えられ、溜池が造られた。
この出張所を修繕するに辺り、寄付をした者について、個室がある者は各自の個室に掛け軸や陶器人形、ちゃぶ台が置かれ、個室を希望しない者は三樹三郎から手渡しされた。報酬は全て三樹三郎が選んだという。
「復讐者としてでなく、世の為人の為になる別の生き方を模索した結果、九番隊への入隊を希望します」
「私の刀でどこまで切り開けるか分からないが、月や星をのんびりと眺められる世の中にしたいものだ」
「九番隊は京の都に住まう人々を、隊士を、生かす為の隊だ。人々を生かす為にも、一条院君と榊原君の入隊を歓迎するよ」
「私は‥‥真っ直ぐ生きると決めたのですよ」
「三番隊での仕事は私には難しいので、九番隊に入れてくれませんか?」
「梅林寺君には真っ直ぐな生き方を九番隊で模索してもらいたいし、オービス君のようなクレリックは僕の方から歓迎するよ」
「後方支援程、常日頃の街の方々との繋がりが試される所は無いと思います。ささやかですが、お力になりますわ」
「読み書きの件は、当面は明王院君に任せるよ。みんなの“おっかさん”になって欲しい」
出張所で、壬紗姫と康貴、梅林寺とリティーラン、未楡の九番隊への入隊が、三樹三郎より認められたのだった。