そうだ、温泉に行こう
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■ショートシナリオ
担当:菊池五郎
対応レベル:フリーlv
難易度:普通
成功報酬:5
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:10月10日〜10月18日
リプレイ公開日:2007年11月03日
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●オープニング
京都より北東に位置する尾張藩は、平織氏の直轄領だ。
暗殺された藩主・平織虎長の後を継ぎ、尾張を統一したのは、虎長の妹・お市の方こと平織市(ez0210)であった。
尾張藩藩主――尾張平織家当主――の座についたお市の方は、『平織家は神皇の剣となり盾となる』をスローガンに、彼女の名を以て畿内を平織家で統一する『天下布武』を宣言した。
『天下布武』はあくまでお市の方の宣言であり、そこに蘇ったと噂される虎長の姿は一切無かった‥‥。
――那古野城。お市の方の本拠地だ。
那古野城は虎長の妻・濃姫が城主となっていたが、彼女は義妹であるお市の方に城を譲ると、本人は那古野城の城下町の一角に聳え建つ、尾張ジーザス会のカテドラル(大聖堂)へその居を移していた。
虎長が存命の頃は、彼の居城清洲城が尾張の中心地であったが、お市の方は尾張を統一後も本拠地を清洲へは移さず、那古野のままとしているので、那古野城下も今まで以上に人が集まり始めていた。
「温泉、ですか?」
「ああ、温泉だ」
那古野城の広間。お市の方と平織虎長、おじの平織虎光とお市の方の片腕・滝川一益が集まり、三河藩の源徳家康との同盟や美濃藩の併合について図っている時の事だ。
同盟を結ぶ際の諸条件や、美濃藩を治める斎藤道三へ誰が親書を届けるかなど、詰めの話し合いが一段落すると、虎長がお市の方に「温泉へ行ってはどうか」と切り出した。
「それはいい。市は夏からほとんど休み無しで働いているからのぉ。この辺で一息入れても良いじゃろう」
「しかし、虎光おじさま、『天下布武』を掲げ、これから畿内を統一しようとするこの大事な時に、城主だけが休みを取るのは如何なものかと‥‥」
「大事な時だからこそ、お市様には今後の事を見据えて英気を養ってもらいたいのです」
虎光が名案とばかりに手をぽんと叩く。お市の方は虎光や虎長が働いているのに、自分一人だけ休む訳にはいかないと断ろうとするが、一益も虎光と同意見だった。
「それに市が神皇の為に尽力している間、儂はちと休みすぎたからな。市が休んでいる間、同盟や併合の事は儂らで進めておこう。最終確認は市に任せるから、ゆっくりと骨休めをしてくるといい」
「‥‥分かりました。お兄様や虎光おじさま、一益の厚意は無下にはできませんからね。二泊の予定で蟹江町へ行ってきます」
虎長の一言が後押しとなり、大義名分を得たお市の方は、温泉のある蟹江町へ行く事を決めた。以前、友達に温泉へ誘われており、お市の方も本音を言えば温泉に行きたかったのだ。
蟹江町には、お市の方に武将として登用された、化け兎の上位妖怪、妖兎のうち、知多半島にのみ生息する『月兎族』三姉妹が次女、卯泉(うみ)専用の温泉がある。登用の条件として卯泉に温泉を用意したのはお市の方なので、入っても問題ないはずだ。
『一人で入るには広いからね。お市の友達や知り合いも呼ぶといいよ』
卯泉がいうには、内風呂も露天風呂もゆうに十人は一緒に入れる広さだという。
「美兎(みと)も晶姫(あき)も、那古野城の防衛で疲れたでしょう? よかったら一緒に行かない?」
『うん、喜んで。長い間お風呂には入れないけど』
雪女郎の晶姫は、長時間暖かい所にいると調子が悪くなるが、温泉に入れない訳ではない。雪の精の化身ともいわれる妖怪だが、溶けて無くなる事はないようだ。
『お姉様はどうなさいますか?』
『儂は遠慮しよう。儂がいれば、そなた達も羽を伸ばせないじゃろう? それに今、那古野を離れる訳にはいかんからのぉ』
せっかく誘われたのだからと、美兎が長女の月華(つきか)にも声を掛けるが、彼女は申し訳なさそうに断った。
月華はかの大妖怪『九尾の狐』に匹敵する実力を持っている。『人間同士の戦いには関与しない』と断った上で、お市の方に協力しているが、彼女はお市の方が尾張を統一してからというもの、那古野城へ登城する回数が増えていた。また、四六時中、という程ではないが、城内で見掛ける事が多くなっていた。
まるで何かを見張っているかのように‥‥。
●リプレイ本文
●何やら慌ただしいです
お市の方こと平織市(ez0210)の居城、那古野城は、幾分、慌ただしさの中にあった。
「尾張統一の戦は終ったし、虎長様も蘇ったし、温泉入ってのんびりして、お市様が骨休めする良い機会‥‥だよね?」
「何か、戦の準備をしているみたいだね‥‥」
ジプシーのレベッカ・オルガノン(eb0451)とレンジャーのミリート・アーティア(ea6226)は、これからお市の方と温泉に行くというのに、どこかピリピリした空気を肌で感じていた。
「せっかくの楽しい気分を害してしまったらごめんなさいね。『天下布武』の号の下、伊勢藩へ送る援軍と三河同盟、美濃藩併合の準備を進めているのよ」
「‥‥わぁ、市の着物姿、素敵だね」
「ありがと。ミリートにそう言われると、嬉しいけど何か照れるわね」
お市の方が微苦笑を浮かべて彼女らを出迎えると、ミリートはその姿に目を見張った。考えてみれば、お市の方は普段から武者鎧「白絹包」を着ており、ミリートが私服姿を見るのはこれが初めてだ。
「にゃっす! あたしパラーリア、尾張にはかんこーに来ましたっ! お市ちゃん、よろしくっ! よろしくなのっ!!」
「こちらの方こそ初めまして、よろしくね。尾張には美味しい物もたくさんあるから、ゆっくりくつろいでいってね」
「もちろん! みそにうどん、いせえび、たらふくたべるっ!」
パラのレンジャー、パラーリア・ゲラー(eb2257)がお市の方の手を取って握手をしながらぶんぶんと振り、元気120%で挨拶する。
「師匠、私、日頃の修行の成果も、ばっちりお見せしちゃいますから!」
「る、ルンルン殿!?」
「師匠ったら照れてるんですか? 可愛いです」
那古野城の二之丸の方から、お市の方の片腕の忍者滝川一益と、ハーフエルフの忍者ルンルン・フレール(eb5885)が姿を現す。ルンルンは一益の腕に自分の腕を絡めており、一益の顔は真っ赤だ。
ルンルンは先の尾張統一の合戦で、甲賀流の中忍であり、尾張一の忍者一益に弟子入りしていた。現時点でジ・アース唯一のハーフエルフの忍者だろう。
「お似合いのカップルなの〜♪」
「か、かっぷる!? ルンルン殿、お市様の前で流石にこれは拙いでござるよ‥‥」
「イスパニアでは、師匠と弟子はこうやって歩くものなのです!」
「あら、私は気にしてないわよ?」
パラーリアが囃し立てると、主君の前という事もあって一益は組んだ腕を振り解こうとするが、ルンルンが放さない。イスパニアの喩えはもちろん嘘だが、お市の方も浪人の槙原愛(ea6158)もウィザードのシーン・オーサカ(ea3777)も、胸の前に手を合わせて「ごちそうさま」のポーズを取った。
その後から、月兎族の長女の月華(つきか)が、次女の卯泉(うみ)と三女の美兎(みと)、そして雪女郎の晶姫(あき)を伴ってやってくる。レベッカは駆け寄ると、晶姫達と手に手を取って久しぶりの再会を喜んだ。
陰陽師(と書いて魔法少女と読む)慧神やゆよ(eb2295)が、那古野城下の外れにある大聖堂(カテドラル)まで尾張ジーザス会を預かる宣教師ソフィア・クライムを迎えに行った。
『天下布武、果たして思惑通りに行くものかの?』
「虎長様‥‥いや、お市の方のお手並み拝見、といったところじゃが?」
『貴様の二枚舌は良く回るものじゃな』
「うさちゃん、ソフィアおねぇーさんを苛めちゃ、め! だよ!」
月華と宣教師ソフィア・クライムが、水面下で何やら火花を散らす。月華が睨め付けると、やゆよが彼女を庇うように割って入った。
(「私は何故、月華に拒絶されているのだろうか‥‥?」)
尾張ジーザス会の洗礼を受け、その居をカテドラルに移した忍者の梅林寺愛(ea0927)は、宣教師ソフィア・クライムに同行していた。彼女は以前、月華にけんもほろろにいなされた事があった。それ以来、疑念の心を持つようになったものの、その理由を考えようとするたびに、心に深く深く突き刺さった楔のような棘が鈍痛を走らせ、その思考を邪魔した。
「いやー、また会えて嬉しいわ。ホンマ元気になって良かったで」
「ご無沙汰しておりますわ」
「ウチはジャパンの温泉初めて行くさかい楽しみや♪」
「イギリスでは、バースに行かれていましたものね。わたくしも妹のエレナと時々入りに行っておりましたわ」
シーンと宣教師イングリッド・タルウィスティグ(ez1068)はイギリスにいた頃からの旧知の仲であり、歓談に花を咲かせている。
「(妹‥‥エレナ‥‥エレナ・タルウィスティグ‥‥私はエレ姉の‥‥)くぅ!?」
「お市さんがいない間、よろしくお願いします‥‥って、愛ちゃん、凄い汗ですよ〜!?」
『‥‥それ以上、その事は考えない方が貴様の為じゃ』
槙原と月華が挨拶を交わしていると、傍らで梅林寺が左胸を押さえながら冷や汗を掻いていた。月華に言われた通り考えるのを止めると、梅林寺の胸の支えは嘘のように収まった。
「愛ちゃん、具合悪そうだけど、温泉に入れば治るよ!」
「たらふく食べて、温泉に入ってのんびりしよ〜♪ れっつ! ばかんすだよぉ〜☆」
「全員揃ったようだし、行きましょうか」
「「「「「「「「「「「「「「おー!」」」」」」」」」」」」」」
やゆよが梅林寺の背中をさすり、パラーリアが仕切り直すと、お市の方が出発の音頭を取った。
●胸の大きさがスタイルの善し悪しに影響するとは思ってはいけない
総勢十六名のちょっとした小団体は、蟹江町にある、川沿いに建つ鄙びた佇まいの温泉宿に入った。
「温泉には半年以上前に一度来たきりなので、今回は楽しみにしていたのですよ〜♪」
「んー、私も温泉は久しぶりです〜。卯泉さんが気に入ったという温泉ですし楽しみですね〜。ゆっくりまったり入りましょう〜」
「先にいせえびじゃないのぉ?」
「せっかく温泉に来たんだから、宴の前に入らなくちゃ! 基本よ基本!」
美容に良いと聞いて、ナルシストの気が強い梅林寺は内心うきうきしている。そんな梅林寺の気持ちを見透かしたかのように、槙原が宿に着いて荷物を置くと、早々に温泉へ誘う。
パラーリアはお腹一杯食べてから温泉に入るつもりだったが、お市の方にそう言われては温泉に入らない訳にはいかない。
露天風呂は、十五人がくつろいで入れるだけの広さがあった。
「はふぅ〜‥‥極楽極楽、なのですよ♪」
イングリッドの傍らでぽへーっとふにゃけ、極楽に至る気分でのんびりと浸かる梅林寺。
「‥‥浮いてる」
「‥‥浮いてるねぇ」
パラーリアとミリートの視線は、宣教師ソフィア・クライムとイングリッド、美兎に釘付けだ。
「イングリッドはんがスタイルええのは知ってたけど、宣教師ソフィア・クライムはんも美兎はんもごっつスタイルええんやなぁ」
シーンはたわわな双房をこれ見よがしにたゆんたゆんさせつつ浸かっているが、宣教師ソフィア・クライムとイングリッド、美兎の二つの果実は、そんな事をしなくてもぷかぷかと湯に浮いているのだ。
「えと‥‥ちょっと触ってみても良いかな?」
パラーリアはパラだから仕方ないとはいえ、ミリートは内心ちょびっと凹みつつ、同年代(?)の美兎のたわわに実った水蜜桃を手で掴んでみるも、掌に収まりきらない程だった。
「あはっ、どうすればソフィアおねぇーさんみたいなナイスバディの格好良くて頭もよくて、なにより優しい女性になれるの?」
「これこれ、儂はそんなに完璧超人ではないぞ? 人並みに悩みの1つや2つや3つや4つはある」
やゆよは宣教師ソフィア・クライムを洗い場へ誘い、背中を流しながら疑問はストレートにぶつけた。
「お市さんやミリートさん、どうですか〜? 疲れ取れますよ〜?」
「私は遠慮しとくわ。シーンや愛にしてあげたらどう?」
「む〜、ならばよろしくお願いするのですよー」
「はいはーい♪ それじゃあマッサージしますね〜♪ んふ〜、身体解して疲れを取ってくださいね〜。愛ちゃんの身体すべすべですね〜。シーンさんには‥‥恋人さんの為にも、豊胸効果のある特別マッサージです〜♪」
「ん、あ、そこっ、ぁあっ‥‥エエわ‥‥すごく‥‥ぁんっ」
両手をワキワキさせる槙原に危険を感じたのか、お市の方は梅林寺とシーンへ矛先をかわした。
「私は伊勢の方にも顔を出してるから、そっちの方で少し役に立てるかも。出来る事なら、良い方向に行くといいんだけど」
そのまま同じく槙原のマッサージに嫌な予感を覚えたミリートと一緒に内湯へ避難する。
「色々迷ったりとかもOKだよ? 頑張った分だけ仲間が出来てるんだしね♪」
「そうね‥‥尾張の統一が私一人の力で成し遂げられなかったように、『天下布武』も虎長お兄様の言葉そのままではなく、皆の意見を聞きながら進めなければ為政者として失格よね」
ミリートとお市の方は有意義な一時が過ごせたようだ。
「美兎さんの田圃は順調?」
『ええ、お陰様で。もうすぐ餅米を収穫します』
レベッカは京都で買っておいた月見団子を肴に、美兎や卯泉、晶姫とのんびり歓談している。
晶姫は雪女郎故、長い間湯船には浸かれないので、洗い場に座って話を聞いている。彼女が退屈しないよう、シーンがペットの不思議な雪玉シァヴェルを紹介し、一緒に遊んでいる。
「月華さん、何で来れなかったのかな?」
『お姉様は市が尾張を統一して以降、全くと言っていい程、那古野から動こうとしないのよね。あたし達にも理由は教えてくれないけど‥‥ただ、お姉様が動かないという事は、相応の理由があって動けないという事でもあると思うの』
レベッカが気掛かりな事を聞くと、卯泉は宣教師達に聞こえないよう声のトーンを落として応えた。
紅一点ならぬ緑一点の一益は、お市の方の護衛を兼ねている。しかし、せっかくの慰安旅行なのだから温泉くらいは入って欲しいと、ルンルンは温泉を男女時間交代制にするようお市の方に頼み、一益がゆっくり入れる時間を確保した。
「弟子を取るつもりも、師匠を気取るつもりもないでござるが‥‥ルンルン殿は気の利く良い娘でござるな」
『師匠、お湯加減は如何でしょうか?』
一益がくつろいでいると、脱衣所からルンルンの声が聞こえてくる。
「快適でござる。ルンルン殿、お市様へのご配慮、忝(かたじけ)ないでござる」
「そんな水くさい、私と師匠の仲ではないですか!」
浴室の扉が勢いよく開き、ルンルンが強襲してくる。慌てて湯船へ潜る一益だが、ルンルンは胸に布を巻き、スカートを穿いて、お背中を流す為の装備は完璧だ。
一益は良く言えば慎み深い、悪く言えば奥手な性格だが、ルンルンに押し切られて背中を流してもらうのだった。
「師匠の背中、広いですね‥‥それに傷だらけ‥‥」
「ははは、ポーションの効果が追い付かない傷でござるよ。修行の時のものや主君を護る為のものでござる」
●海の幸・山の幸
浴衣に着替えたパラーリア達の前には、尾張の伊勢湾で採れた伊勢海老を始めとする、海の幸満載の舟盛りが置かれていた。
「舟盛りは一つで四、五人前だけど、パラーリアは特別に一人で一つ注文しておいたわ」
「市ちゃんありがと〜♪ 温泉旅行って、なんてステキ企画なの〜♪ 新撰組のみんなにも息抜きに来てもらいたいね〜」
パラーリアは瞬く間に舟盛りの伊勢海老達を喰らってゆく。他にも食欲の秋を象徴する山菜や茸の焼き料理に、天むす、味噌煮込みうどんなど、尾張の秋の味覚フルコースが振る舞われた。
一足先に食べ終わったミリートがリュートベイルを爪弾き、シーンとイングリッドが賛美歌を唄った。
ミリートの演奏が続く中、旋律は気怠いそれへ変わり、レベッカが故郷エジプトの踊りを披露した。
「そういえば、先日月華さんとダンス対決したんだ。月兎族って身体柔らかいよね。美兎さん卯泉さんも私の故郷の踊りも踊れるんじゃない? どう、一緒に踊ってみない?」
レベッカに誘われて、美兎と卯泉、晶姫もジプシーの踊りを舞った。
「さぁさぁ、それではお遊びなのですよ♪」
梅林寺が三つのお椀と二つの球を用意して、その場にいる全員の前でお椀の中に球を入れて伏せ、お椀をシャッフルさせた後に何処に入っているか当ててもらう。
“賭博黙示録マナ”の異名は伊達ではない。芸と言われたら黙っておけない体質になっており、勝負師の血が騒いでいた。
――ざわ‥‥ざわ‥‥。
当たる確率は三分の一だが、達人の域まで達した隠密の術を使い、ルンルンや一益、宣教師ソフィア・クライム達以外には当てさせなかった。
「師匠、師匠のお陰で、忍らしくなれました! えいっ‥‥」
今度はルンルンが、一益やお市の方に修行の成果を見てもらおうと、スクロールを口にくわえながら、印を結ぶ。すると大ガマが呼び出され、彼女はそのままガマ回しを披露した。
「魔法少女は夢を与えるのがお仕事! はーい、みんな目を瞑って、好きな人がいる人はその人の事を想って、特定の相手がいなければ、こんな恋がしてみたいー、と念じて下さーい」
ルンルンが席に戻ると、入れ替わりにやゆよが魔法少女の枝を構えて前へ出る。
「ステキなトキメキ恋の予感に尾張はラブラブハッピネース!!」
軽快にステップを繰り返す踊りしながら魔法少女の枝を振り回し、呪文を唱える。その際、フォーノリッヂを使用し、自身の身体を金系統の淡い光で包む事で神秘さを醸し出すのも忘れない。
「僕の趣味で、夢は恋の魔法に限定だけどね。これでバッチリ、恋愛運上昇は魔法少女のお墨付きだよ♪」
「では、儂の悩みもやゆよのお墨付きで解決するかの?」
「ソフィアおねぇーさんの悩みって恋愛だったの!?」
「皆さん、色んな芸を持ってて凄いですね〜」
やゆよの宴会芸(?)から、宣教師ソフィア・クライムの意外な悩み事が分かった。
食べる人オンリーの槙原も、楽しそうに拍手を送った。
「今、上のお仕事とか大変だろうけど、あんまり無理しちゃダメだよ? 倒れちゃったりしたらどうしようもないもん。息抜き、息抜き♪」
ぎゅって抱っこして寝るのが好きなミリートは、お市の方と一緒の布団で寝た。
「温泉、楽しかった‥‥師匠、また来ましょうね」
「むずかし〜ことわかんないけど、笑顔で、みんなが幸せに、だよ〜♪」
ルンルン達がお市の方に礼を言う横で、革紐を加工し、『また、あえますよ〜に』と『みんなが幸せにっ』の意味を込めたうさちゃん根付けを作ったパラーリアが皆に配り、最後にお市の方に元気も分けた。
また、温泉宿で着た紫陽花の浴衣もお土産として配られた。
温泉旅行の間は難しい事は、すっぱり忘れるのが“ぱらいずむ”。
「‥‥どこかで見た事あると思ったんだけど〜‥‥う〜んう〜ん‥‥!? ま・さ・か、2年前の聖夜に、ケンブリッジを支配しようとしたあの女性(ひと)そっくり〜??」
京都に帰ってきてから、見覚えのある宣教師ソフィア・クライムをどこかで見たかパラーリアは思い出していた。