看板娘奮闘記!
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■ショートシナリオ
担当:菊池五郎
対応レベル:1〜5lv
難易度:普通
成功報酬:5
参加人数:10人
サポート参加人数:3人
冒険期間:09月11日〜09月16日
リプレイ公開日:2004年09月21日
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●オープニング
エールハウスは、エール好きのイギリス人にはなくてはならない存在だ。エールはイギリス人の国民飲料と言っても過言ではないくらい、イギリス人はエールが大好きなのだ。
エールハウスは、冒険者達が集う酒場のようにしっかりとした造りではなく、宿泊施設もない、いささか粗末な店構えの、いうなれば居酒屋だが、エールが呑めてちょっとした食事が採れ、小さなステージでは輪投げや歌や舞踏と言った娯楽が楽しめる、老若男女問わず庶民の公共の憩いの場だった。
キャメロットの市民街を中心に至る所にあるが、また一つ、新しいエールハウスが開店しようとしていた――。
「ここがボクのエールハウスか‥‥やっと持てたお店だもんね。よし、頑張るぞー!」
真新しい小さなエールハウスの前で、一人の女性が建物を見上げながらガッツポーズを取った。
彼女の名前はディジィー、このエールハウスの看板娘兼オーナーだ。ボーイッシュな口調同様、リボンをあしらったショートヘアなど、活発で直情的な、いかにも元気娘! という外見をしている。歳は18、9歳くらいだろうか(20歳までは「娘」の許容範囲という事で)。
廃屋だったものをディジィーが借りて、改装したのだが、前々からその様子を見ていたのだろう、数人が店を見に来ていた。
「いらっしゃいませ! 今日から開店だよ!!」
彼女は屈託なくにっこりと笑って店内へと案内した。
ディジィーが店を構えた通りには、エールハウスがもう一軒あった。
こちらは古くからある老舗で、ローカルエール(地酒)とローカルメニュー(地元料理)で多くの常連客を抱えていた。
当然、ディジィーの店はライバルになるのだが――。
「今度、向こう側にエールハウスを構えたディジィーです。よろしくお願いします」
「あら、あのエールハウス、今日オープンしたのですね。おめでとうございます。こちらの方こそよろしくお願いします」
老舗のエールハウスの看板娘チェリアは、ライバルといった事は一切気にせず、ディジィーのエールハウスの開店を快く受け入れてくれた。
「お互い、美味しいエールをお客様にお出ししましょうね」
「はい!」
微笑み合うチェリアとディジィー。
しかし、それを快く思っていない者達もいた――。
ディジィーのエールハウスは、エールは市販のものだし、料理は家庭料理が中心で(パンは自家製だが)、ごくありふれた店だが、それでも順風満帆とまではいかないまでも好調な出だしだった。
新しい店という事もあって物珍しさも手伝って客が入り、わずかながらディジィーの元気さと素朴な家庭料理に惹かれた常連と呼べる客も出来た。
しかし、開店してから一ヶ月が過ぎた頃――。
そんな出だしとは裏腹に、急に客足が途絶え始めた。
とある日の、冒険者の酒場では――。
「今度、市民街に家庭料理が食べられる新しいエールハウスが出来たんだってな」
「冒険に出ていると、そういう料理って無性に恋しくなるのよね。行ってみる?」
「止めとけ止めとけ。あんな店の料理、不味くて食べられたもんじゃねぇから」
「それより、チェリアさんのエールハウスのローカルメニューは家庭料理も逸品よ」
パーティーを組んでいる男女の冒険者がディジィーの店の噂をしていると、別の冒険者が絡んできた。
とある日の、市民街の一角では――。
「あのエールハウスでは、パンも焼いてくれるそうね」
「輪投げの大会も今度、あるそうよ。優勝すればパンをもらえるんですって」
主婦達が子供をあやしながら井戸端会議に洒落込んでいた。
輪投げは庶民の数少ない娯楽の一つだ。またパンは重要な主食である。ディジィーはそれらを組み合わせたのだが‥‥。
「今度、チェリアさんのエールハウスで、吟遊詩人達が歌を披露するそうよ」
「食べ物で客を釣ろうとする、どっかのあくどいエールハウスとは大違いだよな」
主婦達に聞こえるように、冒険者が話をしながら市民街を闊歩していた。
とある日の、ディジィーのエールハウスでは――。
「はい、キドニーパイとエール、お待ちどうさま! そちらは茹で野菜のスープとパンだよね」
「ちょっと待てよ、俺の料理の方が注文、そっちより早かっただろ!」
ディジィーが料理を運んでくると、まだ料理が運ばれていない男性客から苦情の怒声が聞こえてきた。
ディジィーが一人で切り盛りしているので、簡単な料理から出来た順に出していかないと効率が悪いのだ。
「す、すみません! お客さんの料理は時間が掛かるので、まだ調理中なんです」
「このキドニーパイ、形といい味といい、チェリアさんの店が昨日出した新作と変わらないじゃない! 何マネしてるのよ!!」
彼女が謝ると、そのテーブルに座っていたもう一人の女性客が料理を食し、チェリアのエールハウスの料理を真似ていると激怒する。
エールハウスである以上、メニューが似たり寄ったりになってしまうのは、ある程度は仕方のない事なのだが‥‥。
「そ、そんなぁ‥‥このキドニーパイは今日からお出ししていますが、前々から考えていて一昨日には完成させていたんですよ」
「そんなの、私は見てないから知らないわよ。このタイミングで、偶然重なったと言い逃れするなんて最低ね!」
ディジィーの言う事は本当だった。新作のキドニーパイを完成させたのは一昨日だったが、昨日は仕入れた材料の都合で出せなかったのだ。
どうやらチェリアの店でも、同じ様なキドニーパイを出していたようだ。もちろん、ディジィーがその事を知る由はないのだが‥‥。
男女の客は文句を言うだけ言うと、料金も払わずに店を出ていった。
その場にいた他の客も、気まずさからこちらは料金を置いていくと気まずそうに店を後にした。
開店から三カ月経った今、ディジィーの店はわずかな常連だけが通うという状態になってしまったのだ。
「このままだと潰れちゃうよ‥‥」
元々、私財をはたいて手に入れた店だ。余分な金は大してない。
ディジィーは残金を握り締めて意を決すると、チェリアの店の常連客に見付からないようにこそこそと隠れながら冒険者ギルドへ向かい、目立たない所に冒険者に店を建て直す依頼書を貼ったのだった。
「‥‥ごめんなさい、ディジィー‥‥」
その様子をたまたま見ていたチェリアは心を痛めたものの、自分の店の常連客とはいえ、自分ではどうする事もできなかった‥‥。
●リプレイ本文
●新メニューとリニューアル
タチアナ・ユーギン(ea6030)達がディジィーのエールハウスに集まったのは、閉店後だった。
「残りもので悪いけど‥‥」
ディジィーは木製のジョッキになみなみと注がれたエールを筆頭に、パンにフィッシュフライにキドニーパイ等を並べていった。
パンを見たリデル・ハート(ea5434)は「へぇ」と感心した。生地に野菜が練り込んであるのか緑色をしており、一口大の大きさに切り分けられていたのだ。これらは庶民のパンや食べ方ではなく、貴族のそれだった。
「作り置いて鍋で温めればすぐに出せる料理を何種類か用意して、このパンと組み合わせて選べるメニューはどうかしら? フライと組み合わせれば日持ちするから、お弁当にもなるわよ」
「私はエールを数種類扱っているのですから、この自慢の自家製パンを使って、エールに合う手軽にできるおつまみを作るのもいいと思います」
「どちらにせよ、先ずはこの店の“名物”を一つ作るこったな。これだけはこの店で食いたいって奴をさ。それから他の献立を揃えればいいんじゃないか?」
リデルがディジィーなりに客を呼び戻す努力が見られた事を話すと、先ずはメニューから見直そうと、タチアナが客に平等に料理を出せるアイディアを出した。次にリデルがパンを揚げたおつまみを提案すると、陸奥勇人(ea3329)が看板メニューを優先して決めたらどうかと意見を出した。
「ジャパン風味を献立に取り入れたらどうでござろう? ジャパン人の客も獲得できるのではないでござろうか」
そう切り出したのは沖鷹又三郎だった。月道で移動してきたばかりの彼は『これも縁と申すもの』と、冒険の合間にしばらく料理人として雇って欲しいと申し出た。ディジィーは相場の半分しか報酬は払えないと念を押すが、又三郎も安くても構わないと承諾した。
「あたしも冒険の合間になるけど、店を手伝いたいわ。自分でも店を持ちたいから、その時の為に仕入れとかノウハウを学びたいのよ」
朱華玉(ea4756)も申し出た事から、当面の人手不足は解消された。
ジャパン食はディジィーもおいおい覚える事になり、看板メニューは弁当、パンの串揚げはおつまみとしてメニューに加えられた。
「美味しいエールを飲ませたり、歌を披露させてもらえるエールハウスが一軒でも潰れると悲しいわ。ディジィーさんも頑張ってるし」
ヴァージニア・レヴィン(ea2765)は店内を見回した。実は開店して間もない頃、好奇心旺盛なヴァージニアは壁際にある小さなステージで歌を披露した事があった。
「新装開店、心機一転をアピールする為に、テーブルクロスを敷いてみるってどうかな?」
「テーブルクロスは高価な上に、舞姫達が困るのではないか?」
「そうだね。乗りに乗るとテーブルの上でも踊るし」
「難しい話はよぉ分かんないけど、早い話がお客さんを呼び込んで増やせばいいんだよね? だったらうちは演奏と歌で呼び寄せるよ〜☆」
次は店内の雰囲気と、ヴァージニアがテーブルクロスの事を思い出すと、速水兵庫(ea1324)が難色を示した。テーブルクロスは貴族が屋敷のテーブルにしか敷かないような代物だからだ。
加えて、リスフィア・マーナセル(ea3747)やハイエラ・ジベルニル(ea0705)も経験があるが、踊り子達がテーブルの上で踊る事は日常茶飯事だ。
今まで花を練り込んだ色鮮やかなパンを食べまくっていたクリスタル・ヤヴァ(ea0017)は、踊りの話になると横槍を入れた。
「ステージだけが舞台ではないからな。彩りを添えるなら、壁掛けの花飾りを設置するだけでもだいぶ変わると思うぞ」
「調度品とかを上手く使って“隔離用の席”のような場所は造れないかな? “いかにも”な人がきたらそこへ案内するの」
「力仕事の雑用なら俺に任せてくれよ」
ハイエラの花を壁に飾る案に続いて、リスフィアがトラブルの元になりそうな客を隔離する席を用意するように告げると、勇人が太い腕でガッツポーズを取った。
「みんなに頼んでよかったよ〜。潰れるなら2階にお風呂を造ろうと、本気で思ってたんだ」
ディジィーは次々と出るアイディアに、嬉し涙すら浮かべていた。
風呂とはサウナの事で、パンを焼く時に出る熱気を利用する事から、パン屋の2階が風呂屋になっている事も少なくない。
「チェリア殿の店の常連達を自粛させねば、根本的な問題解決にはならない。その為にはディジィー殿とチェリア殿の仲が良い事を印象付けるのがよいのだが‥‥『利きエール大会』を共同主催するのはどうだろうか?」
「おっほっほ、それならわたくしの出番ですわね。詐欺師の名に掛けて客を騙して差し上げますわ」
「お客さんを騙すのは勘弁して欲しいかな。利きエール大会は面白そうだよね」
「(ちぃ)おっほっほ、冗談ですわ。ではわたくしは酒卸ギルドに挨拶を致しましょう」
兵庫はチェリアにも協力を呼び掛け、お互いの店の中間の路上でイベントを開く案を提示すると、アミィ・エル(ea6592)が自分の出番とばかりに云い放った。ディジィーに苦笑を向けられたアミィはこっそり舌打ちしつつ、エールの卸しを扱っているギルドに協力してもらえるよう挨拶に行くと告げた。
●盛り返すエールハウス
翌日の早朝、一番鶏が鳴き始めた頃には、ディジィーのエールハウスの厨房には火が入り、タチアナとリデル、華玉がディジィーの指示で下拵えを始めていた。
その間、ディジィーは勇人とアミィと共に市場へ繰り出し、食材とエールを樽数個仕入れた。
「ディジィーさんのお店が客に営業妨害を受けておりますわ。あなた方は一体、何をなさっておりますの!?」
早速、アミィは酒卸ギルドの1人に詰め寄っていた。しかし、酒卸ギルドはあくまで酒をエールハウス等に卸すだけのギルドで、店に対して強制力を持っている訳ではない。
アミィはタダでは引き下がらず、利きエール大会に参加する協力を取り付けた。
「ほぉ、あの元気な看板娘のエールハウスがリニューアルしたのか。自家製のパンは美味しかったが、更に持ち帰れるメニューが加わるとはな。今夜辺り、私も踊りに行こうか」
ハイエラは別行動で壁に飾る花を買いながら、傍らを飛ぶイフェリア・アイランズからたった今聞いたかのように相づちを打った。エールハウスは庶民に馴染みの場所であり、市場なら噂が広まるのも早いと踏んだのだ。しかもイフェリアは噂話をさり気なく流す術に長けていた。
「この辺りに、美味しいパンを売っているエールハウスはございません? 今、わたくし達の間で噂になっているのですが」
礼服を着てお忍び貴族に扮したアミィが道行く人々にディジィーの店の場所を聞く振りをすると、噂は更に広まった。
昼食時には噂を聞き付けた新しい客で、店内は一杯になった。
「リスフィアの情熱的な踊り、とくとご覧あれ〜☆」
――しゃらん、しゃんしゃん、しゃらん
クリスタルがオカリナを吹き始めると、鈴の音と共にステージ上のリスフィアが軽やかに舞った。クリスタルの奏でる軽快で楽しいリズムに合わせ、彼女の蜂蜜色のポニーテールが宙を舞い、ふわりと身体に絡み付く。それを払うように、手が弧を描き、すらりと伸びた足が躍動的に上がる。
客から拍手が沸くと、クリスタルも負けじと彼女の頭上で一回転し、リスフィアは近くの母親に連れられてやってきた女の子を誘って、また鈴の音を纏って踊る。
豊満な踊り子の情熱的な踊りと銀眼の妖精の陽気な曲の重奏は、お昼時一杯、店内を満たし続けた。
「ごきげんよう。ゆっくりと楽しんでいってね」
クリスタルの曲を聞いたタチアナは演奏したくてうずうずしたが、リデルと一緒に弁当作りに奔走しており、その余裕はなかった。
「この店、初めてだからちょっと寂しいのよ‥‥一緒でいいかしら?」
その頃、華玉はチェリアのエールハウスで、男性客をナンパしていた。
「そういえばこの通りにもう1軒、エールハウスがあったけど‥‥どんなのだか知ってる?」
奢ってもらったエールを呑みながら華玉が聞くと、案の定、『チェリアさんのメニューを平気で真似している』だの、『新人だからサービスは極悪。行かない方が身の為』だの、『ちょっとエールの種類が多いからって調子に乗り過ぎ』だの、真実を知っている彼女からすれば根も葉もない話をあたかもチェリアと自分達が被害者のように語った。
(「ディジィーさんの店を妨害しているのが、全員冒険者と言うのは気になったけど‥‥常連の誰かが冒険者を雇ったじゃなくて、常連の冒険者が自分達で妨害していたのね」)
調査に来ていたヴァージニアはそう結論付けた。彼らの話を聞いて人知れず困惑しているチェリアを見れば、彼女がこんな事を望んでいないのは一目瞭然だ。
「大変ね‥‥」
「‥‥ええ‥‥」
華玉もそれは分かったようで、色々な意味を込めてそう言うと、近くを通り掛かったチェリアは寂しそうに応えた。
彼らは善意でやっていると思っているのだ。
会計の際、華玉はチェリアに店の裏手に来るように告げると、兵庫の姿があった。
「チェリア殿、協力してくれまいか? お互い常連客が不仲なのは不本意だろう?」
兵庫が利きエール大会の事を切り出すと、チェリアも喜んで協力を申し出た。
その際、華玉がディジィーの店の売上が落ち始めた頃に何が遭ったのかを聞くと、やはりチェリアの店とメニューが被ったのが原因らしいと彼女は告げた。
竪琴を爪弾きながらしみじみと郷愁を誘うヴァージニアの天上の歌声に、客は静かに耳を傾けた。
夜ともなると客層はがらりと変わり、仕事帰りの大人が大半を占める。そこで彼女は家庭料理が売りという事を踏まえて故郷を思い出させる歌を唄ったのだ。
「次は私の祖国の恋歌を‥‥」
ヴァージニアに贈られる惜しみない拍手が鳴り止むのを待って、タチアナが祖国で流行った恋歌を朗々と唄い上げる。聞き慣れない異国の旋律はしかし、自分達の初恋を思わせるようにほろ苦く甘酸っぱい感じがした。
「さぁ、“MOONRISE”からの出張公演だ。“月光の舞姫”の舞に今宵も酔いな‥‥」
ハイエラはステージの上に立つと、エヴァーグリーン・シーウィンドの奏でるオカリナの音色に合わせて舞った。時にはしなやかに、時には荒々しく。たなびく白磁の髪が、乱舞する褐色の体躯を一層映えさせる。ハイエラはシフールのように軽やかに、テーブルからテーブルへと舞う。そして、その場限りのパートナーの手を取って踊る。
月の光は時に人を惑わせるという。ハイエラの蠱惑的な舞はまさに月光のそれだった。
ディジィーのエールハウスはその日、久しぶりに閉店まで人の声が途切れる事はなかった。
●全ては誤解から
利きエール大会は取り敢えず成功を収めた。取り敢えずというのは途中、やはりチェリアの店の常連達が妨害に来たのだ。
「あ、すみません。表示が逆になっていました」
ディジィーのエールを貶せば、華玉がどちら店のエールか分かるようにしてあった札が逆である事を告げ――。
「結局、新参者はさっさとイギリスから出ていけとでも言いたいのか? 呆れたもんだな。お前らが初めて冒険に出た時はどうだった? ベテランに『ポっと出が邪魔するな』とでも言われたか? お前らがやっている事はまさにそういう事だ。しかもチェリアが頼んだ訳でもない勝手な思い込みでな。粋じゃねぇなぁ」
勇人が事実をバッサリと切り捨てた。ディジィーとチェリアのお互いのメニューが重なったのも偶然だし、ディジィーにチェリアを攻める気は毛頭ない。
全ては彼らの思い込みから始まったのだ。
果たして、彼らが考え直してくれるかは分からない。
だが、チェリアの事が好きなら、彼女がこのような事は望んでいない想いを知ったなら、今後はディジィーのエールハウスを妨害する事も少なくなってゆくだろう。
「ディジィーさんとチェリアさんの店のメニューが、お互い被らないように相談し合うのも1つの手ですね」
これはリデルの提案だが、もちろん、彼女達の努力も必要だ。
ディジィーのエールハウスは少しずつではあったが、新しい客が増え、常連も帰ってきた。
「わたくしの秘密の店にしようと思ったのに、残念ですわ」
その光景に満足しつつ、素直に喜べない天邪鬼なアミィだった。