百合園の扉を開けて

■ショートシナリオ


担当:菊池五郎

対応レベル:1〜5lv

難易度:普通

成功報酬:1 G 62 C

参加人数:6人

サポート参加人数:2人

冒険期間:09月15日〜09月20日

リプレイ公開日:2004年09月24日

●オープニング

 一度、味わってしまった甘露を人は忘れられない。
 それを忘れるには、より甘い甘露を味わうしかない。
 より甘く、より甘く‥‥快楽を求める人の欲は留まるところを知らない。
 だから開けてはいけない、禁断の扉を。百合園への扉を。
 開けてしまったら、自分で閉める事はできないのだから――。

 キャメロットから歩いて2日程離れた郊外にある、貴族の別荘。
 麗らかな陽射しが降り注ぐ昼下がりの午後。秋の涼しさを含んだ風が吹く中、この館の主である女騎士エレナと姉のイングリットは、庭園で午後のお茶を飲んでいた。
 しかし、家に居るとはいえ、エレナはチェーンレザーアーマーを着け、イスの脚には愛用のウォーアックスを立て掛けていた。
 方やイングリットは普段着のドレスではなく、ラフな寝間着のままだ。
「‥‥え〜、つまり、今、あたしの目の前にいるお姉ちゃんはイングリットではなく、憑依してるサッキュバスって事?」
「そうです。言霊でこの娘を操っています」
 腕を組み、苦々しい表情で見据える妹に、姉はしれっと答えた。

 事の発端は今朝だった――。
 朝食を採り終たエレナは、騎士の鍛錬に出掛けようとしていた。
 曲がりなりにも騎士を名乗る以上、貴族の称号のオプションとではなく分相応の実力を持つべき、というのがエレナの持論である。
『私を満足させて欲しいのですが‥‥』
『ぶっ!? な、なな、何寝惚けてんのよ、おねえ‥‥まさか!?』
 そこへいつもならエレナより早く起きている、寝坊してきた姉の思い掛けない発言に、彼女は飲んでいたお茶を豪快に吹き出してしまった。
 イングリットは彼女の真っ正面に立っていなくて正解だったようだ。
 先ず口元を拭き、続けてテーブルを拭きながら、思い当たる節のあるエレナが理由を問いただすと、案の定、姉は再びサッキュバスに憑依されているというのだ。
 しかも、倒したサッキュバスの妹だという。サッキュバスに姉妹の概念があるかどうかは不明なので、姉として慕っているだけかもしれないが‥‥。
 サッキュバス等のデビルに普通の武器が効かない事はエレナも重々承知しているし、彼女はオーラ魔法を修得していない。姉を傷つける事はできても、サッキュバスを倒す手段はないのだ。
 その結果、彼女の用件を聞く事になったのだった。

 で、今に至る――。
「ま、満足っていうけど、具体的にはどうして欲しいの?」
「私、恥ずかしながら男性が苦手で、まだ人を抱いた事がないのです‥‥キ、キスもこの娘が初めてでしたし‥‥ですから、口説き方や抱く方法を教えて欲しいのです」
「ふ〜ん、サッキュバスにも恥ずかしがり屋とか、異性が苦手ってあるんだ〜‥‥って、感心してる場合じゃなくて、何でお姉ちゃんに取り憑くのよ!?」
 躊躇いながらエレナが聞くと、イングリットは形のいい耳まで紅潮させていた。サッキュバスが憑依しているとはいえ、恥ずかしい事には変わりないようで、エレナは『意外と純情なんだ』一頻り感心した後、自分に突っ込みを入れながら身を乗り出していた。
「私達は人の精気を吸わなければ生きられませんし、この娘はお姉様が気に入られていたので憑依しやすかったのです」
「あんたの所為でお姉ちゃんが衰弱したら、元も子もないじゃない!」
 サッキュバスは人が他の生き物を殺して食すのと同じだ、とさも当然のように告げた。
「ですから、満足すればこの娘から離れて、別の依代を探します」
「う‥‥それはそれで困るような気がするけど‥‥満足させるっていっても、お姉ちゃんの身体を使われるのはなぁ‥‥」
 姉から離れてくれるのは嬉しいが、身体を付き合わせるのは嫌だし、結局は他の誰かに憑依する訳で、エレナはツインテールに結った赤毛の髪をぽりぽりと掻いた。
「あなたは駄目ですが、この娘と同じく百合の気がある女性でしたら大丈夫のようですよ」
「そりゃぁ、あたしはそっちの色恋には興味ないし‥‥分かったよ。でも、あたしはそういうのよく知らないから、知ってる人の力を借りるしかないようね」
 エレナは至ってのーまるである。だからこのサッキュバスもイングリットに憑依したのだろう。既に彼女の百合園への扉は叩かれているのだから‥‥。
「昨日憑依されたから、キャメロットまで1日‥‥帰ってきて3日か‥‥うん、何とか間に合うよね!」
 サッキュバスは憑依した対象を1週間で衰弱死させてしまう。
 エレナは指折り数えながら、満足させた暁にはちゃんと姉から離れるように念を押すと、馬車を駆り、キャメロットの冒険者の酒場目指した。

●今回の参加者

 ea0368 ソルティナ・スッラ(29歳・♀・ナイト・人間・神聖ローマ帝国)
 ea0502 レオナ・ホワイト(22歳・♀・バード・エルフ・イギリス王国)
 ea0734 狂闇 沙耶(28歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea1128 チカ・ニシムラ(24歳・♀・ウィザード・人間・イギリス王国)
 ea1923 トア・ル(33歳・♀・ジプシー・人間・エジプト)
 ea5442 エリカ・ユリシーズ(33歳・♀・レンジャー・人間・フランク王国)

●サポート参加者

レイジュ・カザミ(ea0448)/ クレア・クリストファ(ea0941

●リプレイ本文


●男性が苦手なサッキュバス
 レイジュ・カザミが手綱を操る馬車が、颯爽と森の中を駆け抜けていた。ここは女騎士エレナ・タルウィスティグが座っていた御者席だ。今、彼女は馬車の中におり、代わりに狂闇沙耶(ea0734)の執事という名の雑用係である彼が手綱を握っているのだ。
「‥‥可愛い女の子が一杯いるのに、男の僕が蚊帳の外なんて‥‥納得いかないよ」
 背中に当たる馬車の壁越しに聞こえてくる、黄色い楽しそうな声。
 レイジュからすれば目の前にご馳走を並べられていながら、お預けを喰らっているのと同じだった。

「綺麗なお姉さんが一杯だ〜♪」
 そのご馳走を美味しく戴いているのがチカ・ニシムラ(ea1128)だった。
 右隣に座っているエリカ・ユリシーズ(ea5442)は、ワイルドな香り漂うお姉さん。
 左隣に座っているソルティナ・スッラ(ea0368)は、凛々しく頼もしいお姉さん。
 真っ正面に座っているエレナは、わがままで気が強そうだけど元気一杯のお姉さん。
 右向かいに座っている沙耶は、灼熱の炎を思わせる紅い眼が印象的なお姉さん。
 左向かいに座っているレオナ・ホワイト(ea0502)は、色香溢れる大人の女性のお姉さん。
 そして今、自分を膝の上に座らせているトア・ル(ea1923)は、爽やかで格好いい、年下の同性が憧れてしまうようなお姉さん。
 チカは年上のお兄さんが好きだが、年上の綺麗なお姉さんも好きなのだ。
「可愛い事言ってくれるよね〜」
 トアはチカの身体をぎゅっと抱き締めた。まだ発育途中だからぷっくりした柔らかさは物足りないが、ふわふわ感と心地好い温かさは充分堪能できた。
「Anaretaとしては、すぐにでもサッキュバスを仕留めたいところだけど‥‥まぁ、狩るのは満足させた後でもいいでしょう」
「‥‥百合ですか‥‥でも、サッキュバスで男性経験がないなんて一体‥‥」
「サッキュバスが女性に憑く事があるのですね‥‥初めて知りました」
 その光景にレオナはくすりとたおやかに微笑んだ。彼女は化物殲滅集団“Anareta”のメンバーだが、同時に自分と同じ嗜好を持つサッキュバスを満足させたいとも思っていた。
 エリカは比較的ノーマルだし、ソルティナは単純にサッキュバスを退治する依頼だと思って来ていたから、チカとトアの光景に驚きを隠し切れなかった。
 エリカが知る限り、サッキュバスとインキュバスは同一の存在で、獲物の理想の異性の姿――女性ならインキュバス、男性ならサッキュバス――として現れるのだ。
 事情を知っているエレナに聞くと、姉のイングリットは男性に免疫がなく苦手で、サッキュバスにその心の隙を突かれたそうだ。
「なるほど‥‥確かに百合ならサッキュバスが憑依してもおかしくないですね」
 妙に納得してしまうソルティナだった。
「イングリット殿の憑依を解く為には、サッキュバスを満足させればいいそうぢゃからな。うぶなサッキュバスに手ほどきをする事なぞ、そうそうないしのぅ」
 沙耶は妖艶な笑みを浮かべていた。

「大きな別荘だね〜。ここにはエレナお姉ちゃんとイングリットお姉ちゃんしか住んでないの?」
「後、メイドが居るよ」
 キャメロットにある貴族の屋敷にも匹敵する別荘の建物を見ながらチカが聞いた。この別荘にはエレナ達と彼女達の世話をするメイドが住んでいるだけだという。
「ふふふ‥‥可愛い娘ね。彼女がイングリットかしら?」
 レオナの視線の先には、木陰で木の幹に背中を預けうたた寝している女性の姿があった。腰まで届く長く艶やかなワンレングスの黒髪に、清楚で流麗な雰囲気を持つ、高貴な美姫、エレナの姉、イングリット・タルウィスティグだった。
 ソルティナはその光景を羨望の眼差しで見入った。
 レオナが眼を奪われたのは、露出の低いドレスを着ているにも関わらず、豊かな胸と細くくびれた腰は隠しようがなく、色香がこぼれている事だった。これで百合の気があるなら、サッキュバスが放っておくはずはないと思った。
「似ておらん姉妹じゃな」
「まあね」
 沙耶にそう言われても、エレナはこう答えるしかなかった。エレナは赤毛だし、顔もあまり似ていなかった。
 何でこんな所でイングリットが寝ているかというと、今の彼女はサッキュバスが主導権を握っており、サッキュバスは夜行性だからだ。
 エレナはイングリットを起こすとトア達を紹介し、遅い昼食を兼ねたお茶会を開いた。
「私はレオナ・ホワイト。エルフのバードよ、よろしくね、素敵なお嬢さん達♪」
「わしは狂闇沙耶と申す忍じゃ」
 自己紹介をする間に、テーブルに料理が並べられていった。
「エレナ、ナイフとフォークはないのじゃろうか?」
 沙耶は目の前に置かれた水の入ったボールを見て、エレナに聞いた。貴族なら銀製のナイフやフォークを持っていてもおかしくないと思ったのだが、貴族のテーブルマナーは如何に手掴みで優雅に食べるかであり、エレナ達も多分漏れずナイフやフォークはなかった。ソルティナもナイフやフォークがなくても慌てた様子はなく、手を巧みに使って優雅に食していた。
「皆さんが私を満足させてくれるのですか?」
「ん? すみません‥‥私はそっちの方面はまだよく分からないのです‥‥」
「もちろん、満足させてあげるよ。その前に聞きたい事があるんだけどいいかな?」
 イングリットの隣に座ったソルティナは話を振られて言い淀むが、トアがちゃんとフォローした。
 トアの質問はサッキュバスの姉妹についてだった。今、イングリッドに憑依しているサッキュバスは3姉妹の末っ娘だった。サッキュバスには抱く知識は備わっているのだが、どういう訳か彼女は男性が苦手だというのだ。
 ちなみに、先日、イングリットに憑依したのは彼女の姉で次女だが、今はとあるメイド冒険者の棲家の一角を飾る石像インテリアとなっていた。
『悠久の音に乗って、今は現世から解き放たれん‥‥癒されよ、迷える子羊達よ』
「私の場合、その場の勢いという事が多いのですが‥‥」
 レオナの歌に合わせてトアが四肢を踊らせる中、エリカは自分なりの男性の口説き方や相手の仕方を話した。イングリット以外にもソルティナもちょっと興味を持ったのか耳をそばだてていた。
 その後、沙耶が故郷のジャパンの文化や風習、面白い依頼の話をし、楽しい時間は過ぎていった。

●重なる心と身体と、守られた約束
 夕食を採り終えると、エレナが用意したそれぞれの部屋へ入っていった。
「‥‥って、なんであんたがあたしの部屋にいるのよ!?」
「サッキュバスの居る部屋の隣ではないですか。それにサッキュバスの切り札も用意してあるのですよ」
 エリカはベッドに腰掛けるエレナの隣に腰を下ろすと、彼女の手を取った。エリカはこの部屋に泊まるつもりだった。
「言っとくけど、あたしはそっちの色恋には興味ないか‥‥あ!?」
「分かっていますよ‥‥かさかさの手‥‥余程訓練を詰まれているのですね‥‥ん‥‥」
 エリカはウォーアックスの素振りで豆だらけのエレナの指を口に含んでいた。エリカはほんの悪戯のつもりだったが、思わぬ不意打ちに、エレナの口から可愛い吐息が漏れた。

 隣の部屋では灯りを消し、月の光だけが照らすベッドの上にトアとチカ、レオナと沙耶が横たわり、傍らに固唾を呑んで見守るソルティナとイングリットがいた。
「ん〜、トアお姉ちゃんいい香りがする〜♪」
「綺麗なお姉ちゃんに興味があるって言ってたよね? 僕の事教えてあげるから、チカの身体の事も教えてね」
 トアに抱きついて、胸に顔を摺り付けていたチカの寝間着の中に、彼女の手が入り込んでいった。
「ひゃう!? お、お姉ちゃん何を‥‥にゃう!」
「もう先も感じるんだ‥‥じゃぁ、ここはどうかな?」
「な、何‥‥ふぁ‥‥身体がぽかぽかして‥‥」
 トアの指先がチカの身体を蹂躙してゆく。少女は未知なる快楽に素直に身を委ね、お姉さんはその反応に満足しつつ、もっと声を紡がせたいと指を奥へと向けた。
「よく見ておきなさい」
「ふふ‥‥よかろう。存分に楽しもうな」
 レオナは沙耶を相手に女性の口説き方をサッキュバスに教えた。
「最初はキスからね。キスを疎かにしてはダメよ」
「ん‥‥んん‥‥ん!!」
 レオナは沙耶の口を塞ぐと、しばらく唇の感覚を味わい、やがて舌を伸ばしていった。大人のキスに沙耶の紅い眼はとろんと潤み、身体をレオナに預けた。
「んぁ‥‥はぁぁ‥‥き、気持ちいいよ‥‥」
 レオナは沙耶の右耳を甘噛みすると、そのまま唇を顎から首筋を伝ってはだけた忍装束の胸元へと這わせていった。沙耶の口から甘ったるい声が漏れた。
「ほ、本当にこのような‥‥」
 ソルティナは顔を真っ赤にしていた。既に彼女の理解の範疇を超越してしまっていたのだ。だが、その一方で身体の芯が疼いているのに気付いた。
『口説き方は満足してもらえたかしら? そろそろ大いなる父の裁きを受ける時間よ!』
 次の瞬間、扉が開かれると、クレア・クリストファの声と共にブラックホーリーが放たれた。それはイングリットに当たると、彼女とサッキュバスを引き離した。
 続けてエリカとエレナも部屋の中に入ってくる。
 エリカの言う切り札とは神聖騎士の事だった。ブラックホーリーなら、憑依されていたイングリットを傷つける事なく、サッキュバスを追い出す事ができるからだ。
「姉同様、この地で果てなさい!」
「恐れおののけ。そして罪を犯すな。床の上で自分の心に語り、静まれ‥‥堕ちなさい、ムーンアロー‥‥」
 現実に引き戻されたソルティナがオーラソードを発動させる横で、クレアはもう一度、ブラックホーリーを唱え、合わせてレオナがムーンアローを放った。
 だが、それらはサッキュバスと倒れたイングリットの周りを覆った、漆黒の炎が燃え盛るシャボン玉の様な球状に阻まれてしまった。
「デ、デビルの魔法だよ‥‥」
 まだ夢うつつのチカが辛うじて知識を引っ張り出した。デビルだけが使える魔法で、カオスフィールドという敵味方関係なく結界内への攻撃を一切無効する魔法だ。チカも裸のままライトニングサンダーボルトを放ったが、やはり結界に吸収されてしまった。
「お姉様はこうやって倒されたのですね」
 サッキュバスに有効な攻撃手段を持たない沙耶とトア、エリカとエレナは遠巻きに見守るだけだ。
 オーラソードを完成させたソルティナが激痛を我慢しながら結界内へ入り、サッキュバスに斬り掛かった。しかしその切っ先は鋭く伸びた爪で受け流されてしまう。
「誰も殺さないと約束してくれるなら、イングリットの代わりに僕が依代になってもいいよ」
 トアがそう呼び掛けるが、サッキュバスは悲しそうにかぶりを振った。するとその姿が銀色の淡い光に包まれて消え、クレアの影から現れていた。彼女の抵抗空しく、クレアは憑依されてしまった。
「この身体は後で必ずお返しします。ですから今は見逃して下さい」
 ブラックホーリーを使えるのはクレアだけだ。ムーンアローやライトニングサンダーボルト、オーラソードではクレアの肉体は傷つけても、サッキュバスにダメージを与える事はできない。この時点でサッキュバスを倒す手段はなくなったのだ。
「分かったよ。その代わり、次に会った時は狩らせてもらうよ!」
「ありがとうございます、灼眼の修羅」
 沙耶がみんなを代表して頷くと、クレア――に憑依したサッキュバス――は嬉しそうに微笑んだ。せっかく教わった口説き方を試したかったのかも知れない。
「ん‥‥」
 カオスフィールドの中にいたソルティナは、イングリットの無事を確認したが、その時彼女が無意識に抱きつき、先程のトアやレオナ達の光景を思い出し、また顔が真っ赤になっていた。

 翌日、エレナと目覚めたイングリットに見送られて別荘を後にした。
 エリカは別れ際に不意打ちでエレナの唇を奪おうとしたが、読まれており、不発に終わった。
「また会えるお呪いをさせてもらうよ」
 一方、沙耶の接吻はレオナとトア、チカの唇をちゃんと奪っていた。
「エレナに内緒で、こっそりキャメロットに遊びに行ったら楽しいと思うよ。僕達に声を掛けてくれれば、お泊まりする時はたっぷり可愛がってあげるし‥‥♪」
 トアはイングリットへのフォローも忘れなかった。その腕にべったりチカがくっついていて、少し説得力はなかったが。

 サッキュバスはキャメロットに着いてから、約束通りクレアを解放し、いずこかへ姿を消した。イングリットからの憑依を解くという目的は達成されたが、結果としてサッキュバスを一体、見逃してしまったのだった。
 だが、百合にしか興味がないサッキュバス故、それ程害があるとは思えなかった。