おとぎ話の中の虹
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■ショートシナリオ
担当:菊池五郎
対応レベル:4〜8lv
難易度:やや難
成功報酬:4 G 3 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:12月22日〜12月31日
リプレイ公開日:2005年01月01日
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●オープニング
もうすぐ『聖夜祭』を迎えるキャメロットの街中は活気づいていた。
この祭りは、ジーザス教を伝えた神の子ジーザスが生誕した前夜12月24日の降誕祭から、洗礼を受けた日である1月6日の主顕節までの約2週間、旧年を振り返り新年の到来を祝うのだ。
特に25日のジーザス聖誕祭はミサの日として聖夜祭の中でも盛大に祝われる。
キャメロットの市民街近くにあるジーザス教の教会に勤めるクレリック、シエルも、ここ数日は誕生祭のミサで信者に振る舞われる料理の準備や教会の敷地内にあるツリーの飾り付けに追われ、帰路に付く時間が遅くなっていた。
吐く息は白い。シエルとすれ違う者は、着込んでいる者もいれば、身を縮めて寒さに震える者もいる。
イギリスの冬空の下、寒風に揺れる白い法衣は端から見れば些か心許ないだろう。しかし、当の本人は寒さをものともしないのか、背筋を伸ばし、顎のラインで切り揃えたセミロングのプラチナブロンドの髪を軽快に揺らしながら、顔色1つ変える事なく家路を急いでいた。
キャメロットの市民街の通りは、夜遅くにも関わらず多くの人が行き交っていた。よく見ればエール片手に出来上がっている者も少なくない。
庶民にとって祭りは一番の娯楽であり、誕生祭は祭りの中でも年末年始を締め括る一大イベントである。待ちきれず、浮かれるのも無理はなかった。
だが、シエルの家は市民街の外れにあり、静かだった。
シエルが家に帰ると、通りに面した窓の戸が開いていた。まだ病床に伏している妹ミュゼットは起きているようだ。
「‥‥ただいま。まだ、起きて‥‥」
「あ! お姉ちゃん、お帰りなさい‥‥ゴホ!」
「お勤めご苦労様じゃ。邪魔しておるよ」
シエルの声は、ミュゼットが横になっているベッドの横に座っている人物を見て途切れた。
「うぃじぃに、今日はリネアの話を聞かせてもらっていたんだよ‥‥ゴホ! ゴホ!!」
「来て下さっていたのですか、ありがとうございます。ちゃんと名前で呼ばないと‥‥」
「いやいや、うぃじぃでいいんじゃよ。名前で呼ばれるよりもラブリーな愛称じゃしのぉ」
ミュゼットが咳込むとうぃじぃと呼ばれた老人が席を立ち、シエルは慌てて駆け寄って胸をさすった。
うぃじぃは頭頂の毛はなく、側頭部の毛を伸ばし、白い髭を蓄え、ウィザードのローブを羽織った、『人の良いウィザードのお爺さん』を地で行っている老人だ。
シエルの家の界隈に住んでおり、実際、ウィザードの修行をしていたようで、近所で『物知り爺さん』として有名だった。よく子供達に神話やおとぎ話を話して聞かせる事から、ちゃんとした名前はあるのだが、ミュゼットを始めとする子供達は“うぃじぃ”の愛称で呼んでいた。
教会勤めが忙しく、ミュゼット以外身内の居ないシエルは、とかく近所付き合いが疎かになりがちだが、うぃじぃがそれを取り持っていた。
「では、お姉さんが帰ってきた事じゃし、儂はお暇するとするかのぉ」
うぃじぃは玄関に行きながら、密かにシエルを呼び寄せた。
「‥‥ミュゼットは保って半年といったところですじゃ」
「‥‥そんな‥‥!?」
彼はシエルにそう耳打ちした。うぃじぃは医者の真似事もよくやっていたが、応急処置の腕は確かだった。
シエルは動揺が走る口を押さえた。
「‥‥ああ、セーラ様‥‥」
「‥‥それはセーラ様に仕えるシエル様の方がよくお分かりだと思いますが‥‥先が定められたあの娘に良い思い出を作ってやって欲しいのですじゃ。我が侭ではなく、希望でしたら多少の無理は承知で聞いてあげるべきですじゃ‥‥この老いぼれの戯れ言だと思ってお願いしますじゃ」
シエルは思わず胸に手を伸ばすが、その手は空を切ってしまった。本来、そこにあるべきはずのジーザス教のホーリーシンボルは、今はない。代わりに彼女はクルスソードを帯剣していた。
うぃじぃはそれだけを告げると家へ帰っていった。
「‥‥ゴホ、ゴホ!」
言われてみれば、ミュゼットの咳き込む声が重く、痛々しく感じるようになっていた。だが、シエルがいくら神聖魔法を使おうとも、彼女を病魔から救う事はできなかった。
ミュゼットはシエルの本当の本当の妹ではない。ミュゼットの村は数匹のコカトリスによって全滅してしまい、彼女だけが生き残ったのだ。偶然、ミュゼットの村に立ち寄ったシエルが彼女を保護したのだが、ミュゼットはショックのあまり身体を壊し、シエルの事を姉だと勘違いしているのだ。
「‥‥今日は、何のお話を聞かせてもらっていたのです?」
「リネアの話だよ。とっても綺麗な女の人なんだって! でも、お姉ちゃんには敵わないよね‥‥ゴホ‥‥」
ベッドの横に座ったシエルはミュゼットの髪を梳いた。こうすると自然と安心して眠れるのだとミュゼットはいう。
リネア――ケルト神話に登場する虹の精霊だと、シエルは思い当たった。
「‥‥リネアに会いたいなぁ‥‥ゴホゴホ!!」
余程リネアの話が気に入ったようだ。もしかしたら虹を見た事がないのかもしれない。
『我が侭ではなく、希望でしたら多少の無理は承知で聞いてあげるべきですじゃ』
不意にウィジィの言葉が思い出される。精霊に会わせる事は不可能だが、虹を見せる事は可能だ。
だが、シエルの知っている虹がよく見られるという渓谷に行くには、コボルドの塒(ねぐら)を通らなければならない。
問題は、ミュゼットが寒く、戦闘のある道中を耐えられるかどうかだった。
「‥‥リネアの居る場所に連れていく事はできますが‥‥ミュゼット、外はとても寒いですし、恐い思いをするかもしれませんよ?」
「‥‥ホント!? リネアが会えるなら我慢するよ!! ‥‥ゴホゴホ! ゴホゴホ!! ゴホゴホゴホ!!」
激しく咳き込みながらもミュゼットは懸命に笑い、大丈夫だとアピールした。
翌日、シエルは教会へお勤めに行く前に冒険者ギルドの門を叩いていた。
「虹を見に渓谷へ行くのですが、同行して下さる冒険者をお願いしたいのです」
シエルが向かう渓谷にはキャメロットから歩いて4日程の場所だが、コボルトの塒があるという。
渓谷に行く途中にあるので、避けて通る事はできない。
コボルトはオーガの中でも小型で、大して強くはないが、コボルトの戦士を束ねる族長となれば話は別だった。
しかもミュゼットを連れていく為、先に仕掛けるか、防衛戦にするか、策も問われるだろう。
虹を見る為にはコボルトの族長に匹敵する実力を持つ冒険者の協力が必要だった。
「できれば誕生祭の日に虹を見せたいので、先を急ぐ事になります。誕生祭は渓谷で祝う事になりますが‥‥それでもよければよろしくお願いします」
誕生祭を祝う準備をしてきて欲しいとシエルは付け加えた。
もちろん彼女もこれから教会へ行き、ミサのお勤めを断るつもりだ。
●リプレイ本文
●聖夜祭のプレゼント
『聖夜祭』を間近に控えたキャメロットの市場は多くの人でごった返していた。
「ミュゼりん一緒に聖夜祭祝うの、おいら、楽しみにしてたんだ♪ この日の為にきれいなお酒も取っておいたんだよ」
「聖夜に虹を見せてやりたい‥‥孫の願いを叶えるのは、サンタクロースの務めだからね」
その人混みの中にカファール・ナイトレイド(ea0509)とアルヴィス・スヴィバル(ea2804)の姿があった。2人共、依頼人シエルの義妹ミュゼットと面識があり、特にアルヴィスは依頼の合間に孫(と勝手に決めている)のミュゼットに会いに行っていた。
「‥‥虹、か。悪くない計らいだと思う‥‥成功させねばなるまい、な。どういうものを食べるか詳しくないので、内容は任せたい、が‥‥その分、荷物は持とう」
「そうだな、鶏の丸焼きは外せないとして‥‥パンケーキも食いてぇな‥‥材料だけ買っておいて、向こうで誰か作ってくれんか?」
「家庭料理程度でよければ、私が嗜んでます」
オイル・ツァーン(ea0018)が荷物持ちとして名乗り上げると、ガイン・ハイリロード(ea7487)が食べたい料理を挙げていく。彼に応えたのはセリア・アストライア(ea0364)だった。
「聖夜祭を虹を見ながら祝うなんてロマンチックだわ! きっと良い思い出になるから、より楽しくなるようにご馳走持っていくしかないでしょ! ローストチキンにクリスマスプティングにミンスパイ〜、ワインがあるそうだけどウインターエールも外せないわよ♪」
「ジンジャークッキーといった、女の子の好きなお菓子と蜂蜜、紅茶も用意したいですね」
祭りや賑やかな事が好きなヴァージニア・レヴィン(ea2765)は、見ているセリアもついほころんでしまう程、嬉しそうに指折り数えていった。
「えぇい、無理難題を仰る」
ツウィクセル・ランドクリフ(ea0412)が注文を一回再確認した後、聖夜祭の料理の買い出しに向かった。10人分まとめ買いするから少し値引いて欲しい、と交渉するも、この時期はまとめ買いの客が多い所為かあっさりと断られてしまう。
結局、セリアが事情を話し、ヴァージニアが露店の前で歌を一曲披露して客寄せをする事で値引いてもらい、更に日持ちし、調理が簡単になるように下拵えもしてもらった。
「後、聖夜祭に必要なもの‥‥小さなツリーと飾りとかも買ってくか?」
10人分の食料をオイルの愛馬に積んでいると、ガインがそんな提案をした。
ツリーは1本の木を使用する為高価で、庶民は枝をリースにして玄関や暖炉、かまどの上に飾りつけるのが慣例だった。
「日々活きる糧は、既にセーラ神から戴いていますもの」
案の定、一番安いツリーでも10人分の食料費の10倍相当の値段だったが、セリアが多く出資し、購入したのだった。
「はぁ‥‥こんな事ならきちんとお料理も嗜んでおくべきでしたのね」
別行動を取っていた神薙理雄(ea0263)は、溜め息をつきながら冒険者街から市民街へ向かっていた。
聖夜祭がジャパンに入ってきたのは最近の事で、どのような物を食べるのか知らない彼女は、いい機会だからシエルやミュゼットにジャパン食を体験してもらおうと、知り合いの元・志士から豆腐を買ったのだ。
もっとも、イギリスでジャパン風の食材を手に入れるのは難しいし、それ以前に理雄は料理の腕がからっきしなので、湯に入れれば食べられる豆腐しか選択の余地がなかったのだが。
●突破!
「よろしくお願いしますね」
「リネアを見に行くんでしょ! 今から楽し‥‥ゴホ! ゴホゴホ!!」
理雄と合流したアルヴィス達は、彼の案内で市民街の外れにあるシエルの家へやってきた。
既にシエル達は旅の準備を終え、聖なる母のような微笑みでツウィクセル達を出迎えた。
「あらあら、今から無理しちゃダメよ?」
「ミュゼりん、辛くなったら遠慮なく言ってよね」
防寒具を着ていても痛々しく咳込むミュゼットの身体を、ヴァージニアは用意してきた毛布で包み、カファールがちょこんと肩に腰掛けた。
挨拶代わりにやんわりと抱擁しようとしたアルヴィスは、その機会を失ってしまった。
「シエル先輩、こちらの方こそよろしくお願いします」
その横でセリアがシエルに恭しく頭を下げた。彼女はシエルの後輩にあたり、前に治療してもらった事のある恩人だった。
ミュゼットはアルヴィスが愛馬ハーヴィーくんに乗せ、道中できるだけ疲れないよう配慮した。シエルはキャメロット近郊の村々を回っていて旅慣れており、背筋を伸ばして平然と歩いていた。
「‥‥今のうちに虹に合う曲をいくつか選定しておこうかね。ミュゼット、何かリクエストはあるか?」
ガインがリュートベイルを片手にミュゼットのリクエストに応えると、ヴァージニアが合わせて歌を紡いで、飽きさせなかった。
「コボルトの塒(ねぐら)がある、事が分かっているなら、おおよその場所も分かっているのだろう?」
オイルがシエルに訊ねると、コボルトの縄張りについて説明した。
「コボりんとは何度か会った事あるよ。どの時も、おいらの友達が倒しちゃったけど‥‥」
カファールがコボルトの事を思い出しながら話すと、オイルは塒のある場所が広範囲に展開できない事を踏まえ、遠距離攻撃を主体とする策を提案した。
コボルトの塒は山の中腹にある洞窟だった。この前を通らなければ虹の見えやすい渓谷へは行けない。
パーティーの中でも特に目のいいヴァージニアが、洞窟の前に2匹の見張りが立っているのを確認した。
彼女は中にいるであろうコボルトの族長を狙って『ムーンアロー』を唱えた。光の矢は洞窟の中目掛けて飛んでいき、中からコボルトの族長と数匹のコボルト戦士が慌てて飛び出してきた。
「こっちだよ〜!」
カファールが頭の上をくるくる飛び回って挑発すると、コボルト族長はノーマルソードを振り翳して彼女の斬り掛かった。
「直撃させる!」
「ああ、こっちに来たようっと‥‥ぶっ飛べ!」
ツウィクセルが『ダブルシューティング』でショートボウに番えた2本の矢を射り、ガインが『オーラショット』を撃つ。
「‥‥‥‥深々と降り積もれ、氷蝕世界(アイスドアース)」
浮き足立つコボルト戦士達に、カファールが魔法の範囲にいない事を確認して、アルヴィスが『アイスブリザード』を高速詠唱で立て続けに放つ。
「オイルさん、今ですの」
「‥‥悪い、が、お前達に構っている時間はそう、ない」
コボルト戦士達が弱ったところへ、理雄の『ウインドスラッシュ』とシエルの『ホーリー』の援護を受けたオイルが斬り込み、両手に持ったナイフを二閃、『ダブルアタック』を繰り出してコボルト戦士に止めを刺した。逆にコボルト戦士のショートソードは彼の身体を捉える事はなかった。
「流石は族長と呼ばれるだけの事はありますね‥‥」
セリアはラージクレイモアのリーチを活かしてスマッシュを繰り出すが、コボルト族長はそれを簡単にかわし、距離を詰めてノーマルソードで斬り掛かってきた。刃には毒が塗ってあり、彼女は眩暈を覚えてふらついた。
コボルト族長が追い討ちを掛けると、セリアはその切っ先を構わず受け、そのまま『カウンターアタック』で『スマッシュ』を決めた。
コボルト戦士が解毒剤を持っており、ヴァージニアがシエルに『応急手当』を施し、シエルが『リカバー』で回復させた。
●汚れなき刻
オイルの策が功を奏し、25日の昼過ぎには渓谷へ着いた。しかし、霧が立ち込めており、晴れるまで虹は出ないだろう。
その間に聖夜祭の準備をする事になった。
オイルが道すがら集めた薪で火を起こし、ツウィクセルが簡単な竃を作ると、セリアがパンケーキを焼き、ヴァージニアがミンスパイ等の料理を、カファールが飲み物を温めた。
ガインが竃の傍らに、愛馬に積んできたツリーを置いた。
「知得屡先生、ウチにもイギリスの料理を教えて欲しいですのね」
凍った豆腐を湯で戻して湯豆腐にしながら、理雄はシエルにイギリス料理の作り方を請うた。料理に全く自信のない理雄は、湯豆腐を作っていた筈が焼き豆腐になっていたのだ。
「はい、ミュゼりん、あったまるよ〜♪」
カファールが蜂蜜をたっぷり入れた紅茶をミュゼットに渡した。
「ミュゼットくん、見てごらん。あれがリネアだよ」
「‥‥ゴホ! ‥‥うわぁ‥‥キレイ‥‥」
アルヴィスが指差すと、うっすらと霧が晴れたそこには、巨大な虹が渓谷一杯にアーチを描いて煌めいていた。ミュゼットはその雄大さに思わず目から涙をこぼしていた。
「心が洗われるわね」
ヴァージニアも、カファールも、ツウィクセルも、セリアも、理雄も、虹の精霊リネアが架けるという優美で荘厳な虹の橋に、呼吸すら忘れて見入った。
「ほほぅ、綺麗なものだ‥‥虹の精霊の化身、か‥‥」
「茶請けに、は、少々、美味し過ぎる、な」
ガインはおもむろにゆったりとした曲を奏で、オイルは紅茶を飲みながら静かに虹と音楽を堪能した。
「リネア、キレイだったね〜! ゴホ! ‥‥あ、でも、お姉ちゃんの方がキレイだよ! ‥‥ゴホゴホ!!」
その日の夕食は聖夜祭の料理が並んだ。生まれて初めて虹を見たミュゼットは、興奮冷めやらぬ感じでまくしたてていた。
ガインの演奏に合わせてヴァージニアが讃美歌を歌い、聖夜祭を祝った。
(「シエルさんの心の内を思うと、下手な慰めは言えないから‥‥」)
「はい、おじさまからの聖夜祭のプレゼントだよ」
先ずアルヴィスが市場で見繕ったぬいぐるみをミュゼットに渡した。
「これは、おいらからのプレゼント! 復活祭の頃にね、この花が咲くの。野原一面黄色くなって‥‥凄くキレイなんだよ。来年は、ミュゼりんも‥‥一緒に見に行こうね」
「うん! 約束だよ‥‥ゴホ!」
カファールからはナルキッソスの花を象った銀のネックレスが首に掛けられた。
(「し、しまった! 折角麗しい女性達とこうして聖夜祭を祝っているというのに、何も考えていなかった‥‥くっ、これでは男失格。『つまらない男だね』とか思われても仕方な‥‥!?」)
プレゼントを用意しておらず、悔やむに悔やみきれないツウィクセルは、ヴァージニアの美声に込められた想いを汲み取り、カファールとの約束の返答に堪えきれなくなり、物陰で泣いているシエルに気付くと、気休めと思いつつも声を掛けた。
「命の長さは神が決める‥‥それは分かっているが‥‥やり切れないものだな」
ウインターエールやスイートベルモットが空になり、いい感じで微酔いになった理雄がすっくと立ち上がり、焚き火の前で神楽舞を披露した。本人はかじった程度の腕前だが、ジャパン独特の振り付けと動きに、皆、注目した。
――キャメロットに帰ってきてから数日後、セリアは数日遅れの聖夜祭のプレゼントを渡す為にシエルの家を訪れた。
それは1枚の絵だった。ミュゼットが皆と聖夜祭を楽しみ、彼女を見守るシエル似の虹の精霊リネアの姿が隅の方にあった。
『あなたとお姉ちゃんに、常に慈愛の神と虹の祝福がありますように』とメッセージカードが添えられていたという。