続々・看板娘奮闘記!〜拳で稼ぎませんか〜

■ショートシナリオ


担当:菊池五郎

対応レベル:6〜10lv

難易度:難しい

成功報酬:5

参加人数:8人

サポート参加人数:2人

冒険期間:03月26日〜03月31日

リプレイ公開日:2005年04月04日

●オープニング

 エールハウスは、エール(発泡酒)好きのイギリス人にはなくてはならない存在だ。エールはイギリス人の国民飲料と言っても過言ではないくらい、イギリス人はエールが大好きなのだ。
 エールハウスは、冒険者達が集う酒場のようにしっかりとした造りではなく、宿泊施設もない、いささか粗末な店構えの、いうなれば居酒屋だが、エールが呑めてちょっとした食事が採れ、小さなステージでは輪投げや歌や舞踏と言った娯楽が楽しめる、老若男女問わず庶民の公共の憩いの場だった。

 エールハウスはキャメロットの市民街を中心に至る所にある。
 市民街のとある通りにも二軒のエールハウスが店を構えていた。
 一軒はオープンしてまだ半年の新しいエールハウスで、ディジィー・デンプシーという元気な少女が看板娘兼オーナーを勤めていた。
 ディジィーの店のエールは市販の物、出す料理は家庭料理、と、ありふれたエールハウスだが、売りは自家製のパンとそれを使ったお弁当だ。何より粉を持ち込めばパンを格安で焼いてくれるサービスが、ご近所のご婦人達に好評だった。
 また、こまめに冒険者ギルドへ足を運んで旅の吟遊詩人や踊り子、芸人を雇い、店内にある小さなステージで歌や踊り、芸を披露してもらっていた。
 もう一軒は古くからある老舗のエールハウスで、ローカルエール(地酒)とローカルメニュー(地元料理)で多くの常連客を抱えていた。
 こちらの店の看板娘チェリアは物静かな美女で、活発で直情的なディジィーとは容姿も性格も正反対だった。
 ディジィーの店がオープンした当初、チェリアの店の常連客による嫌がらせが絶えなかったが、冒険者の協力を得てある程度和解し、今では仲良く毎日、客に美味しいエールを出していた。

 キャメロットの夜はまだまだ冷え込み、冬の寒さを残しつつも、市場に並ぶ食材に春の到来を感じ始めたある日――。
「マズイなぁ、このままじゃ春が来る前にボクが冬を越せないよ‥‥」
 店終いが済んだ店内を、厨房からぐつぐつと野菜を煮込むいい香りが包んでいたが、長テーブルに座るディジィーはうんうんと唸っていた。
 彼女の目の前には革袋が転がっており、中から硬貨がこぼれ出ている。エールハウスの売り上げ諸々を含めたディジィーの全財産だが、運営資金としては些か少ない気もする。
「フレデリカさんを期待していたんだけど‥‥しょうがないよね」
 ディジィーはエールハウスのステージで踊ってもらおうと、“新緑の舞姫”と謳われるエルフの踊り子を雇ったのだが、彼女はちょっとしたトラブルに巻き込まれてしまい、現在、療養中だった。
 エールハウスは食事を楽しんだり、他愛ないおしゃべに興じる、庶民にとって教会の次に馴染み深い場所であり、日々の労働に追われている庶民に娯楽を提供する場でもあった。
 ディジィーは踊り子を呼び物のアテにしていたのだが、そのアテが外れてしまったのだ。
「チェリアさんのエールハウスは闘鶏や闘犬をよくやるけど、ボクにはツテがないしなぁ」
 闘鶏や闘犬は庶民の間で人気がある。
 頭の後ろで腕を組み、軽く上半身を逸らした。不意にステージが目に入る。
 6m四方の正方形のステージで、エールハウスを造る時、厨房のパン焼き窯と並んでこだわった部分だ。
 ディジィーは立ち上がるとステージへと上がった。
 構えを取る。
 先ずは軽くジャブ。
 相手のパンチを顔を逸らしてかわし、腹部にフック。
 反撃を両腕でブロックし、チャンスを窺ってカウンターを叩き込む。
 端から見れば、戦っている相手の動きも手に取るように分かる、滑らかな動きだった。
「うん、身体は鈍ってないね。久しぶりにパンチで稼ぐかな」
 パンチで稼ぐとは、要するに拳による賭け試合の事だ。拳闘はエールハウスの呼び物の華だった。
 ディジィーはファイターだが、拳闘を得意としていた。
 素手での戦いなら武道家が真っ先に思い付くだろう。しかし、西洋でも表には出ないものの、護身術やエールハウスのショーとして、ピュージリズムという拳闘が古来より存在していた。
 ディジィーの拳闘は我流だが、独自にピュージリズムを修めており、そこそこの腕前を持っている。
 彼女の場合、エールハウスの開店資金を貯める為に拳で稼いできたのだが。

 翌日の早朝、食材の買い出しを済ませたディジィーは、その足で冒険者ギルドを訪れた。
『パンチで稼ぎませんか?
 ファイトマネーは1人1G。自分や他の参加者に1回だけ最大3Gまで賭ける事ができ、倍率は2倍』

●今回の参加者

 ea0353 パトリアンナ・ケイジ(51歳・♀・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea0941 クレア・クリストファ(40歳・♀・神聖騎士・人間・イギリス王国)
 ea2765 ヴァージニア・レヴィン(21歳・♀・バード・エルフ・イギリス王国)
 ea3731 ジェームス・モンド(56歳・♂・神聖騎士・人間・イギリス王国)
 ea3970 ボルジャー・タックワイズ(37歳・♂・ファイター・パラ・ビザンチン帝国)
 ea4756 朱 華玉(28歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)
 ea5678 クリオ・スパリュダース(36歳・♀・ナイト・人間・ビザンチン帝国)
 ea9515 コロス・ロフキシモ(32歳・♂・ファイター・ジャイアント・ロシア王国)

●サポート参加者

逢莉笛 鈴那(ea6065)/ フィラ・ボロゴース(ea9535

●リプレイ本文


 逢莉笛鈴那は依頼がない時はディジィー・デンプシーのエールハウスの店員として働いており、夜明けと共に始まる朝市へその日の食材の買い出しに行くのが日課となっていた。
 その日の彼女の横には、“静かの”ミルコの巨躯があった。鈴那がエールハウスで開かれる拳闘に誘ったところ、即答で承諾し、鈴那の手伝いまで買って出たのだ。
 エールハウスの前で待ち合わせをし、朝市と酒卸ギルドを回って帰るまでの間は、鈴那にとってミルコとのデートも同然で、こっそり手を握っていた。

 ディジィーのエールハウスは昼前から開く為、昼食時も客で賑わう。
 ヴァージニア・レヴィン(ea2765)は愛用の竪琴を爪弾きながら、喧騒の中に朗々と通る歌声で、勇猛な拳闘士を讃える歌を紡ぐ。
「うふふ、今日から五夜連続で拳闘を行うの。クレア・クリストファさんにボルジャー・タックワイズさん、朱華玉さんにパトリアンナ・ケイジさん達が拳を交えるのよ!」
「今回は女性拳闘士も多いから‥‥くんずほぐれつの戦いが見られるかもよ? よかったら見に来てね!」
 間奏の時に朱華玉(ea4756)と一緒に宣伝を入れる。彼女が挙げた冒険者達は、いずれもキャメロットにその名が知れ渡っている者達ばかりだ。しかもステージでは紹介のあったクレア・クリストファ(ea0941)と従者のフィラ・ボロゴースが早くも身体慣らしの手合わせをしているし、更に華玉の男性陣の心をくすぐる謳い文句に、喧騒が色めき立つのも無理はなかった。
 パワーファイターのフィアに対し、クレアは大振りの右ストレートが炸裂させる。それが彼女のフィニッシュブローのようで、フィアはクレアが勝利するよう、額に月狼の名の元に接吻の祝福を贈った。

●身長差70cm
 ヴァージニアと華玉の宣伝効果により、夜には拳闘を観戦しようと客が詰め掛け、エールハウス内は食事どころの騒ぎではなくなっていた。
「拳と拳の熱い語り合い、そこに一杯のエールがあれば最高、1日の疲れも吹き飛ぶってもんだ‥‥飲みに来る人達のそういう気持ちはよくわかるんでな」
 拳闘と怪我は切り離せない。ヴァージニアが参加者からポーションを集めてステージ脇に救護場所を作り、そこで控えるジェームス・モンド(ea3731)はクレリックのシエル・ウォッチャーに、「お姑さんには黙っといてくれよ」と悪戯っ子のように笑った。万一に備えて鈴那の紹介でヴァージニアが連れてきたのだ。
「さぁ、今日のカードは“夜駆守兵団団長”クレア・クリストファと、“聳える巨腕”コロス・ロフキシモよ! 身長差は何と70cm! このリーチ差をどう覆すかがポイントね」
 ヴァージニアは更に選手紹介から入場曲まで幅広く請け負う。
「戦いの場においては女、子供であろうと関係ない‥‥我が拳の前にひれ伏せ!」
「あっはっは‥‥笑止! 遊んであげるから御出で」
 見下ろして睨付けるコロス・ロフキシモ(ea9515)に、彼に思うところのあるクレアは不敵に微笑んで手招きした。
「行くぞ‥‥」
 ディジィーの試合開始の掛け声と共に、コロスの巨躯が意外な速さでクレアに迫る。素手でありながらハンマーで殴られているような痛撃を、クレアは腕で外側に受け流し、彼の腕が泳いだところへ拳を叩き込む。
 それでもコロスのラッシュは止まらない。苛烈な攻撃にクレアの弾き逸らしが追い付かなくなる。そこへリーチを活かしたこめかみを狙ったフックが繰り出される! 綺麗にもらったクレアは場外ギリギリまで吹き飛んだ。
「もらうぞ!」
「弱者の気持ちが分からなければ、大いなる父には選ばれない!」
 追い討ちを掛けるコロスの目前で、クレアは即座に横に跳び上がる。打撃の衝撃に逆らわないで自ら跳び、ダメージを最小限に抑えたのだ。
 側面に回ったクレアは、体重を込めた掌底突きを放つ。
「ムウゥ‥‥やるな。腰の入ったいい拳だ‥‥だが、勝利だ! この俺のな!!」
 だが、コロスはそれをブロックした。コロスの拳が死に体となったクレアの腹部に入った。そのまま蹲る。重傷により試合続行不可能と見なし、ディジィーがコロスの勝利を宣言した。
「あはは、負けたけど楽しかったわ」
 空元気を振りまくクレアをジェームスがお姫様だっこして救護場所へ運び、ヒーリングポーションで応急処置後、シエルがリカバーを掛けて快復したのだった。

●インターバル
 翌日はディジィー対ミルコという、前日と同じくウエイト差ありまくりの対決だった。
 しかし、ディジィーはフットワークを活かしてミルコを翻弄すると、辛勝を勝ち取った。ミルコは得物を持って本領発揮するタイプだろう。

●投げレンジャーvs毒舌騎士
「3日目のカードは、パティの愛称で親しまれている“投げレンジャー”パトリアンナ・ケイジと、黙っていれば男装の麗人、今回はどんな毒舌が飛び出すのか! クリオ・スパリュダースの対決よ!」
 軽快な音楽と共にステージへ上がるパトリアンナ・ケイジ(ea0353)。反面、クリオ・スパリュダース(ea5678)はレクイエムでの登場だ。
「悪いが、『ケンカ』に付き合ってもらうぜ!」
 試合開始と同時に、一気に間合いを詰めるパティ。対するクリオは右手で牽制のジャブを繰り出す。
 試合の流れは一方的で、クリオが握っているように見えるが、最初から多少の直撃を覚悟しているパティの勢いはジャブの牽制では止められない。
 クリオはジャブを顔面狙いに切り替えて防がせ、空いた腹部にストレートのボディを打ち込む。パティの相変わらず単調なタックルにはカウンターアタックを合わせる。
 流石に効いたのだろう。パティの防御が下がったところへ、再び顔面狙いのジャブ。しかも、今度は直前で指を開いて指先で瞼を狙う。
「もらったよ! ザ・パトリアンナレボリューション・魁!」
 ところがパティは頭突きに切り替えていた。彼女はそのまま頭でクリオの腕を弾き、隙をこじ開けると、頭と腰を抱えて持ち上げて後ろに倒れ込んだ。
 事前にディジィーとクリオから掴んでもいいか確認を取っていたのだ。
 だが、パティもダメージの蓄積で中傷を負っている所為か、キレが今一つ。
 2人はほぼ同時に立ち上がった。
「なかなかやるじゃないか」
「大人が寝るには、まだ早い時間なのでね。ああ、でも、年寄りはそろそろ寝た方がいい」
 不適に笑い合う。お互い、次のクリーンヒットで勝負が決まるのは分かっているようだ。
 再び、先に仕掛けるパティ。それに丁寧にジャブを重ねるクリオ。やはりジャブだけではパティの勢いは止められない。ボディへの一撃を、パティはカウンターよろしくその腕を取って背負い投げる。
「これで極めるよ! ザ・パトリアンナレボリューション・漣‥‥」
「毒が、回ったかな‥‥」
 パティはクリオをそのまま場外へ投げるが、彼女もその場に崩れ落ちてしまう。クリオの一撃はスタンアタックだった。
 クリオは場外、パティは気絶――という事で、この試合は引き分けとなった。

●二度死ぬ漢
 豆腐売りの志士、仁藤高耶(ez1002)は蛙が跳び掛かるような姿勢から左ストレートを繰り出し、ジェームスの胸部を捉えた。彼はもんどり打って倒れた。
 高耶とジェームスは、お互いの隙を伺って攻撃を捌き合う、テクニカルな試合展開を繰り広げていた。高耶は我流の使い手で、ジェームス程攻撃に長けていない分、回避を重視しているようだ。
「アマダスナカムラ、ダウン! ‥‥頭を強く打ったようだけど‥‥!?」
「ま、まだ起き上がるというのでござるか‥‥!?」
「ジェームス・モンドは不死身なんだ‥‥それに」
 沸くエールハウス内。実況するヴァージニアの声音が驚愕の色を帯びる。高耶も信じられないといった様子で、ゆらりと立ち上がるジェームスを見た。
 “アマダスナカムラ”とはお姑さんの目を恐れてマスカレードを着けたジェームスの偽名である。
「それに?」
「俺が勝てたら、トウフのミソスープを食べさせてもらう約束だからな」
『俺もトウフには興味があって。小さい頃、ジャパン人だった父親が、もう一度トウフを食べたいといつも言っていたのでな』
 試合前、ジェームスは高耶に、勝ったら豆腐入りの味噌汁を食べさせてもらう約束をしていたのだ。
 満身創痍のジェームスだが、目の輝きは全く衰えていない。
 双方、再び出方を伺う。
 先に動いたのはジェームスだった。縦横無尽に繰り出すジャブを、高耶は正拳・裏拳問わず弾いてゆく。高耶がカウンター狙いなのは分かっているから、体重を乗せた必殺パンチで彼女のそれを敢えて誘う。
「あの状態でも顔を狙わんとは‥‥痛み入ったでござる」
 クロスカウンターになったとはいえ、高耶のパンチは軽い。ダメージは彼女の方が重く、高耶は構えを解いて投了の意思を示すと、ジェームスの深慮に感謝して頭を下げた。
「え‥‥!?」
 高耶に3G賭けていたクリオは本気で驚いて絶句したという。

●華国からの刺客
 拳闘も5日続くと噂が噂を呼び、ディジィーのエールハウス内はエールのジョッキを持って立つのがやっとの賑わいとなった。
「泣いても笑っても今日が最終日! あの二丁目で名を轟かせた紅の小悪魔、十二形意拳の使い手、朱華玉に対するは、コカトリスやサンダーバードといったクリーチャーを屠ってきたクリーチャーキラーの歌うパラの戦士、ボルジャー・タックワイズよ!!」
(「奥義でハッタリ掛けたけど‥‥狭くて対角線上でしか打てないわね‥‥嗚呼、オーラエリベイション、使いたい‥‥」)
「今度は酒場で拳闘だ〜。武器はなしでこぶしだけ〜♪
 パラの戦士は素手でも強いぞ、負けないぞ〜。パラッパラ〜♪」
 ヴァージニアの紹介にこれでもかと言う程盛り上がる店内。顔で笑って心で溜め息を突く華玉と対照的に、ボルジャー・タックワイズ(ea3970)はへたっぴぃながら華玉と戦える嬉しさを歌にしていた。
 救護場所にいるシエルと目が合うと、ボルジャーは笑い、彼女は十字架のネックレスを手に持って祈りを捧げた。それはシエルが前にボルジャーにあげたもので、壊れないように彼が預けたのだ。
「さて、武道家だし、みっともない戦いだけはできないわね。今までの拳闘を見て、拳だけの戦闘に慣れてる人はあまりいなかったから‥‥ボルジャー、悪いけど出端を挫かせてもらうわよ」
 試合開始の合図と同時に、華玉、ボルジャーともステージ中央へ間合いを詰める。そのままインファイトの展開になるかと思いきや、華玉はボルジャーのリーチの届かない中距離からラッシュを繰り出した。
「うわ!? よ! ほ!」
(「ちょ!? マジで当たらない!?」)
 先手を取られた形になったが、ボルジャーは華玉のラッシュを首を縮め、右腕で弾き、左手で受け止め、胸を逸らして、悉くかわした。目は着いていっているようだが、驚くべきはシフール並の回避だろう。
「よーし! 今度はおいらの番だ!!」
「あう! きゃ!?」
 華玉の拳の壁を悉くかいくぐったボルジャーの攻撃がヒットすると、彼女は(わざと)悲鳴を上げた。男性陣からボルジャーにブーイングが飛ぶが、楽しくて仕方ない彼の耳には入らない。
(「やば‥‥こういうの、楽しいわね!」)
 いつの間にか華玉も、ボルジャーと拳を交えるのが楽しくて仕方なくなっていた。手数は華玉の方が多いが、ヒットしているのはボルジャーだ。
 間合いを取った刹那、最大の好機が生まれた。2人は対角線上に対峙し、且つ、充分な間合いがあったのだ。
「はぃぃぃぃぃ! 馬走拳!!」
 十二形意拳・午の奥義が炸裂! 華玉が朱馬の如く疾駆する。その一撃はボルジャーを直撃するが――彼はそれを受けても尚、立っていたのだ。
「馬走拳、かっこいいよね!」
「‥‥ふふふ、あたしの負けだわ」
 試合中とは思えない彼の感想に、華玉は負けを認めた。
「パッラッパパッパ! おいらはパラっさ!!
 パラッパパラッパ! おいらはファイター!!」
 エールハウス内にへたっぴいなボルジャーの勝利の歌が高らかに流れたのだった。

 パティ達のお陰で拳闘は大いに盛り上がり、ディジィーのエールハウスも無事に春を迎える事ができそうだ。
 高耶はジェームスとの約束通り、最終日の客が帰った後、彼だけでなく拳闘に参加した全員に味噌汁と豆腐料理をご馳走し、拳闘の疲れを労ったのだった。