【勇者理論】勇者爆誕!?

■ショートシナリオ


担当:菊池五郎

対応レベル:2〜6lv

難易度:難しい

成功報酬:1 G 76 C

参加人数:8人

サポート参加人数:1人

冒険期間:05月25日〜06月02日

リプレイ公開日:2005年06月05日

●オープニング

 あなたはいつも通り朝食を採ると、冒険者ギルドへ向かった。
 入口のギルド員に挨拶を済ませて中へ入ると、奥にある広間へと向かう。奥の壁一面に羊皮紙――依頼書――が貼られ、テーブルやイスが置かれており、仲間との待ち合わせや依頼の相談、依頼人との顔合わせが行われていた。
 何の事はない、日常茶飯事となった見慣れた風景だ。
 依頼が決まれば、あなたもこの風景の一部となるのだから。
 ――だが、その日は違った。
「ああ‥‥!」
 不意に依頼書を見渡すあなたの後ろから声が聞こえた。耳に小気味いい声音の、溜め息とも取れるそれは、感歎の色を帯びていた。
 振り返ると、そこには1人の女性が立っていた。紺と白を基調とした飾り気のないローブを纏い、首から銀の十字架を下げている。一目でジーザス教のクレリックと分かる服装だ。
 歳は20歳を越えているだろうか。とりわけ美女という程ではないが、どこか艶っぽく、それでいて清楚な雰囲気を漂わせていた。
 明かり取りの窓から降り注ぐ陽光に、銀糸の如き銀色の髪が煌き、気持ち吊り上がった琥珀色の瞳には、真珠と見紛うばかりの珠の涙を湛えていた。
 嗚咽を堪えるかのように手で口元を押さえているが、身体の震えは収まっていなかった。
「‥‥やっと、やっと会えたわ‥‥大いなる父の御心に感謝します‥‥」
 雫が頬を伝わり、床へとこぼれる。『大いなる父』と言ったところをみると、この女性は黒のクレリックだろう。
 もちろん、あなたとは初対面だし、あなたがどんなに記憶を探ってもこの女性に全く見覚えがなかった。
 気が付けば、周りの冒険者達の視線があなたと女性に集まっていた。それはそうだろう。ギルドの中で女性を泣かせている――と少なくとも周りには見られている――のだから。
 あなたがこの女性と無関係だと弁解しようとした時、彼女が切り出した。
「あなたこそ、私が探し求めていた賢人、そう、勇者なの!」
 ――は!?
「あなたこそ、大いなる父の試練を受けるに値する勇者だわ」
 黒のクレリックの女性はニヴァと名乗り、聞き返すあなたに、再び、確かに“勇者”と呼んだ。
 勇者――冒険者なら憧れてもおかしくない、誉れ高き称号の1つだろう。
 自分にその素質がないとは言いたくないが、勇者と呼ばれて悪い気はしない。
「勇者を祝福するのが私のお役目なのよ」
 しかも、ニヴァはあなたに仕えたいと申し出た。先程の涙は、あなたという勇者と出会えた歓喜の涙だったのだ!
 ――だが、『大いなる父の試練を受けるに値する』という言葉が引っ掛かる。
 気が付くと、ニヴァは1枚の依頼書を手に取っていた。あなたが覗き込むと、ニヴァはわざわざあなたに見せた。
 それはキャメロットから歩いて3日ほど離れた比較的大きな街で起こっている、連続死亡事件の調査依頼だった。
 朝、路上で人が死亡しているのだが、目立った外傷はないというのだ。被害者に共通点はないが、一様にして皆、この世のものとは思えない恐怖の形相を浮かべているそうだ。
 尚、犯行は一律で夜、行われており、目撃情報はほとんどないが、たまたま現場の近くを通り掛かった者が、青い目をした馬らしきものが通り過ぎたと見たとか。
「恐怖の表情を浮かべさせるなんて、悪夢でも見せたのかしら? ‥‥デスの魔法か、そうでなければデビルかしら‥‥これを突き止めるのは勇者しかいないわ!」
 ニヴァは心当たりのある魔法やモンスターを挙げていきながら、あなたを指差した。これが『大いなる父の試練』のようだ。
「あなたにならできる! だってあなたは勇者だもの!!」
 ――ちょっと待て。その根拠は何処に!?
「依頼人はこの街を治める領主からだからは報酬は高いけど、あなたは勇者だもの。大いなる父の試練は、喜んで行わなければならないわ」
 ――ちょっと待て、無償で依頼を受けろと!?
 勇者も大変そうだ。

●今回の参加者

 ea0781 アギト・ミラージュ(28歳・♂・ウィザード・人間・イギリス王国)
 ea1812 アルシャ・ルル(13歳・♀・志士・エルフ・ノルマン王国)
 ea5884 セレス・ハイゼンベルク(36歳・♂・ナイト・人間・ビザンチン帝国)
 ea6917 モニカ・ベイリー(45歳・♀・クレリック・シフール・イギリス王国)
 ea7804 ヴァイン・ケイオード(34歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea8255 メイシア・ラウ(24歳・♀・ウィザード・エルフ・ビザンチン帝国)
 eb0379 ガブリエル・シヴァレイド(26歳・♀・ウィザード・人間・ビザンチン帝国)
 eb2276 メルシア・フィーエル(23歳・♀・バード・シフール・ビザンチン帝国)

●サポート参加者

ラグナリーチェ・ベイオール(eb2367

●リプレイ本文


●いきなり勇者理論崩壊の危機!?
「あなたこそ、私が探し求めていた賢人、いえ、勇者なの」
(「――勇者だって〜!?」)
 冒険者ギルドの奥、依頼書が貼ってある広間の一角にあるテーブルの端にちょこんと座っていたシフールのバード、メルシア・フィーエル(eb2276)は、耳に飛び込んできた珠を転がしたような声音に、耳を欹(そば)だてた。
(「勇者誕生のシーンに立ち会えるなんて、バード冥利に尽きるよ〜」)
「勇者、ねぇ」
 同じテーブルでは、レンジャーのヴァイン・ケイオード(ea7804)が依頼書を見ていた顔を上げた。彼の視線の先には、褐色の肌をしたクレリックの女性――ニヴァ――と、新雪を想わせる白い肌をしたエルフの少女、ナイトのアルシャ・ルル(ea1812)の姿があった。
「えっと‥‥勇者、ですか? わたくしが? ‥‥きっとそれは、何かの間違いです」
「おお! 断ったよ」
 キッパリと言い切るアルシャに、ヴァインは感嘆した。勇者といえば冒険者なら憧れてもおかしくない、誉れ高き称号の1つだろう。黒のクレリックに賢人として見出され、それを断ったのだから、驚くのも無理はなかった。
「お前‥‥凄いな」
 見守っていたナイトのセレス・ハイゼンベルク(ea5884)が思わずそう漏らした。するとアルシャは紅玉の如き双眸を伏せ、かぶりを横に振った。
 ――自分の実力の程は自分が一番よく解っている――と言わんばかりに。
「でも‥‥死者の出ている依頼は放ってはおけません。協力させて下さい」
「何と謙虚な‥‥それでこそ、大いなる父の試練を受けるに値する勇者だわ! あたしのお役目は、勇者であるあなたを祝福する事よ!!」
 しかし、ニヴァはアルシャの返答に謙虚さを見出し、ますます勇者として認めてしまったようだ。
「みんなを苦しめる悪い奴には、勇者は絶対負けないなの!」
 セレスの後ろから、ウィザードのガブリエル・シヴァレイド(eb0379)の溌剌(はつらつ)とした声が聞こえた。
「その通りよ! 古今東西、悪が栄えたためしはないわ」
「ガブリエルは悪い奴をやっつける勇者アルシャのお手伝いをするなの〜♪ そ・れ・に〜、かわい〜ね〜♪」
「はにゃ!? な、何をするんだ!?」
「このバカ弟子がぁ。また変な事に首突っ込んでるな? ったく‥‥無茶だけはするんじゃないよ」
「え゛!? し、師匠!?」
 ガブリエルは背伸びをして、嬉しそうにセレスの雲のようなふさふさした髪を撫でた。思わず照れるセレスだが、傍らにいた師匠のラグナリーチェ・ベイオールの一言で、ガブリエルといっしょくたにされたようだ。
「勇者は何でも出来る反面、何も出来ないって誰かが言ってたなぁ〜」
「器用貧乏、ですね。勇者は象徴的意味合いが強い称号といえるでしょう」
 ウィザードのアギト・ミラージュ(ea0781)の言葉に、エルフのウィザード、メイシア・ラウ(ea8255)が応えた。彼女が読んだ書物に書かれていた勇者達は、皆、偉業を成し遂げた人物だが、勇者という称号は後から付いてくるものだった。
「風の声はアルシャさんに付いていくよう告げていますが‥‥キミはどうします?」
「う〜ん、勇者とパーティーを組めるなんて、そうないからね〜。何だか俺が凄い奴になれる気分だよ。うん、あくまで気分だけどね」
「大いなる父の試練を乗り越えれば、気分だけではなくなるわ」
「大いなる父は、無垢な女の子を戦いの場に駆り立てて、それを試練というのかな?」
 メイシアとアギトに応えるニヴァに、シフールのクレリック、モニカ・ベイリー(ea6917)が彼女の言い種に少し毒を含んで訊ねた。モニカは白のクレリックであり、ある意味、仕方ないかもしれない。
「勇者の素質のない方には、大いなる父は試練すら与えないわよ」
「慈悲に溢れるセーラ様は、誰にでも遍(あまね)く祝福の光を与えて下さるけどね。勇者が試練を受けるのに、セーラ様のご加護があっても問題ないよね?」
 アンデッドかデビルが絡んだ事件という事もあり、モニカも同行を申し出た。
「勇者にナイト、クレリックにウィザードが揃ったから、残るはバードとかレンジャーだな」
「私とこの人でよければ一緒に行くよ〜」
 セレスが辺りを見回すと、メルシアが自分とヴァインを交互に指差した。ガブリエルの胸元が大胆に空いたローブから覗く双丘の深い谷間と、ニヴァのクレリックの法衣の下からそれを押し上げて自己主張するたわわな果実の夢の共演に目を奪われていたヴァイン――カマでもない限り、目を奪われても仕方ないだろう――は、自分の意見を聞かれる事なく、最後の1人として同行が確定したのだった。

●勇者パーティーにあるまじきミス!?
「しまったなの〜」
「‥‥私もです」
 キャメロットを出発したその夜。キャンプを張り、バックパックの中身を見たガブリエルとモニカは素っ頓狂な声を上げた。保存食が足りないのだ。
 往路に支障はないが、復路は空腹でキャメロットまで帰る事になる。
「わたくしが余分に持ってきましたから、どうぞ」
 ――こんな事もあろうかと――とばかりにアルシャが余分に持ってきていた保存食を2人に渡そうとしたが、ニヴァがそれを遮った。
「アルシャ様、これも大いなる父が勇者に課した試練。仲間に対しても厳しくなければダメよ。ガブリエルも意気込みは認めるけど、冒険の準備を怠らないのは冒険者として基本中の基本だわ」
「しょぼ〜んだよ〜」
 ガブリエルとモニカは、アルシャから保存食を買う事となった。
 準備万端、用意周到なのも、勇者の資質かもしれない。

●勇者見参!!
 依頼のあった街へ着くと、まだ昼間だというのに閑散としていた。
「みんな、脅えているんだな‥‥俺達が不安を取り除かないとな」
 セレスが亡くなった人々に祈りを捧げると、メルシア達も倣って冥福を祈った。
 その後、アルシャとセレス、ニヴァはその足で依頼人でもある街の領主の元へ向かった。アルシャはそのつもりはないが、勇者が依頼を受けたとあって領主は大いに喜び、アルシャとセレスが街の人々に夜間外出しないよう頼むと、直ぐ様お触れを出して対応した。

 一方、ヴァインとメイシア、ガブリエルとモニカは街の広場に建つ数少ない露天商を訪れ、連続死亡事件の犯人の情報を集めた。
 皆、外出を控えている所為か買い物客の姿もまばらだったが、メイシアを中心に犯行現場と件数を聞き出す事ができた。

 その間、メルシアは街の上空を飛び、地理を頭に叩き込んでいた。

「こういう時はご同輩に限るってね」
 アギトは仲間から離れると、それらしいエールハウスを見付けて中へ入り、隅で呑んでいる男達に声を掛けた。
「怪盗トリニティ‥‥っていえば分かるかな?」
 生業の名前を名乗ると、男達はどよめいた。アギトは自称とはいえ、生業ではそれなりに名が通っていた。
 それでも礼儀は忘れない。全員に1杯ずつエールを奢ると、流石はご同輩。事件があっても夜、外出している者が多く、犯人の有力な目撃情報が得られたのだった。

「青い目の漆黒の馬ねぇ‥‥確か、イギリスにそんなようなモンスターがいたような‥‥」
 領主が用意した宿屋に集合した後、メイシア達が集めてきた犯行現場の情報と、アギトが仕入れてきた目撃情報を聞くと、ヴァインはモンスターの知識を総動員させて特定を急いだ。
「‥‥アンデッドのナイトメアだ!」
「ナイトメアだね。夜に現れ、悪夢を見せて人々の精気を奪うアンデッドだよ。月の精霊魔法の他にデビルの魔法も使う、かなりの強敵だよ」
「‥‥俺の存在意味がねぇな‥‥これも大いなる父の試練とやらか‥‥」
「アルシャ様なら悪夢など負けないわ! だって勇者だもの」
 散々悩んで思い出すと同時に、アンデッドに詳しいモニカがナイトメアについて自分より詳細な説明をし、ヴァインは遠い目をしてぽつりと呟いていた。その呟きはニヴァの勇者理論によって掻き消されたようだ。
「買い被られても‥‥わたくしは‥‥」
「いや、アルシャ殿は弱くなどない」
 否定しようとするアルシャに、セレスが微笑み掛けながら――でも目は真摯に――そう告げた。

●布石
「春〜、の風に誘われて〜、勇者が街に遣ってきた〜♪」
 翌日、昼前から広場でメルシアが使命を受けて悪を倒す勇者の歌を朗々と軽快に歌った。まだまだ駆け出しのバードで、素人に毛が生えた程度の歌唱力だったが、シフールならではの空中でのアクロバットを交えるなど、動きで歌唱力を補った。
「勇者に逃げるへっぽこ馬〜、歌で唄えば3歳児も笑い出す〜、人を笑わせる幸運馬だね〜♪」
 メルシアの歌を聞き付けると、明るい話題を欠いていた街の人々は噂が噂を呼び、広場は普段通りの活気に戻っていた。
「この活気がいつものように続くよう、ナイトメアを倒しましょう」
「みんなで懲らしめてやるなの!」
「勇者のアルシャ様ならできるわ」
「この根拠は分かりませんが、とにかく凄い自信ですね」
 アルシャとガブリエルがこの光景を取り戻そうと告げると、モニカ達は深々と頷いた。ニヴァの勇者理論には、メイシアが突っ込んでいた。

●試練を乗り越え、勇者爆誕!?
 この街にも深い夜霧が立ち込める。
 領主からの外出禁止令が出ている為、外を歩く者は誰もいない――メルシア達を除いては。
 ナイトメアは夜霧が立ち込める日に、表通りから辻1つ入ったそう広くない路地に出没する事が分かっていた。
 メルシアは囮役を買って出ると、犯行現場をふらふらと飛んでいた。
 彼女と着かず離れずの距離に、『クレバスセンサー』で物陰を見付けながらメイシア達が後を付けていた。モニカは定期的に『デティクトアンデット』を使うが、今のところナイトメアの反応はなかった。専門ランクで使えばすぐに魔力が尽きてしまう為、ナイトメアとの戦いを考えると初級ランクに抑えて使っていた。
 尚、忍び歩きに長けているアギトは1人だけ別の方向からメルシアを見守っていた。

「あれだけ挑発したんだから、私を狙ってもおかしくないはずだよ〜」
 昼間、勇者の歌を唄っていたのは、『目障りなバード』として印象づける為だったようだ。しかし、既に深夜になってもナイトメアはメルシアの前に現れなかった。
「ああ‥‥止めて下さい‥‥もう‥‥殺さないで‥‥」
 その時、アルシャが目を見開き、虚空を見つめながらとめどなく涙を流して呻いた。
「‥‥ナイトメア!?」
「アルシャの背後だよ!」
 モニカが何度目かの『デティクトアンデット』を使うより早く、アギトの『ライトニングサンダーボルト』がアルシャの横を掠めていった。そして彼女の背後の上空に潜むナイトメアに当たると、それは姿を現した。
「デティクトアンデットやクレバスセンサーを使ったのが、仇になったようです」
 メイシアも分析しながら即座に『ライトニングサンダーボルト』で応戦する。
「オーラパワーを使っている余裕はないな‥‥アルシャ殿には指1本触れさせない!」
 アルシャにナイトメアの蹄が迫ると、セレスがその間に割って入り、ライトシールドで1撃目を受け流した。続くもう一方の蹄はかわせず、一撃で中傷を負ってしまう。
「レンジャーでも学者肌だから‥‥とはいってられないな。モニカ、レジストデビルを頼む」
 ヴァインは2本のロープ繋げて1本にしたものを硬く括り付け、回収できるようにしたスピアを投げた。モニカの情報ではナイトメアに武器耐性はないから、普通のスピアでも十分、ダメージを与えられた。
「シャドゥフィールドはみんなを巻き込んじゃうから‥‥青い馬さんにムーンアローだよ。ニヴァ、今のうちに解いてあげてよ!」
「いえ、これもアルシャ様に課せられた試練だわ」
 メルシアはナイトメアが『イリュージョン』を使ったと踏み、ニヴァに『ニュートラルマジック』で打ち消すよう頼んだが、彼女はそれを断った。ニヴァはアルシャの従者で助けるのがお役目だが、同時に大いなる父の試練を見届けるのもお役目だからだ。

 ――アルシャの目の前で戦火に、モンスターに殺されてゆく両親や兄弟。
 ――その時、何もできなかった自分に、死んだはずの両親や兄弟が「力不足」と呪怨に満ちた言葉を吐く。
 ――アルシャの心を支配する、非力な自分への憎しみ。
「‥‥たとえ弱くても‥‥何も出来なかったとしても、これ以上誰かを、仲間達を失いたくないから‥‥立って、戦わなければいけない‥‥わたくしを生かす為に戦ってくれた‥‥人達の為にも!」
 母親の形見である銀のネックレスを握り締める手に、『オーラソード』が生まれていた。

「勇者であるあなたなら、大いなる父の試練を乗り越えられると信じていたわ!」
 ナイトメアが見せる悪夢を振り払うように、『オーラソード』から『ソニックブーム』を繰り出すアルシャにニヴァは歓喜の声を上げ、ナイトメア目掛けて『ブラックホーリー』を叩き込んだ。
 『イリュージョン』を打ち破ったアルシャに、戦いの最中とはいえ、メルシアが、ヴァインが、セレスが、ガブリエルが、アギトが、メシイアが、モニカが「おかえりなさい」と微笑み掛けた。
 再び、アギトとメイシアの『ライトニングサンダーボルト』が放たれ、ヴァインはスピアでナイトメアの足の関節を狙い、跪かせる。モニカの『ホーリー』とメルシアの『ムーンアロー』、ニヴァの『ブラックホーリー』が着実に弱らせ、アルシャは『オーラソード』の二刀流から『ソニックブーム』を十字に放つ。
「これで止めだよ〜」
 ガブリエルの『アイスブリザード』がナイトメアの息の根を止めたのだった。

●銀雪花の勇者の章・完
 やがて朝が訪れた。
 この街はもう、ナイトメアの悪夢に悩まされる事はないだろう。
 後日、“銀雪花の勇者”と名付けられたエルフの少女と、彼女の大切な8人の仲間の物語が、キャメロットのエールハウスでシフールのバードによって語られたという。