ヤツが来る!?〜本命のGG〜

■ショートシナリオ


担当:菊池五郎

対応レベル:7〜11lv

難易度:普通

成功報酬:2 G 76 C

参加人数:8人

サポート参加人数:2人

冒険期間:07月30日〜08月04日

リプレイ公開日:2005年08月10日

●オープニング

 イギリス王国の首都キャメロット。
 その南東部に広がる冒険者街の一角を、2人のウェイトレスが歩いていた。
 2人はとある冒険者達の集まる酒場で働くウェイトレスで、これから川沿いにある酒場の倉庫まで補充品を取りに行く最中だった。
「ボニー先輩〜、そういえば倉庫って、この時期、“アレ”が出るって聞いた事、あるんですけど〜」
 ポニーテールのウェイトレスは両手を頭に当てて触覚のような真似しながら、隣を歩くセミロングの髪のウェイトレスに心配そうに、少し舌っ足らずな声で訊ねた。
「ああ、アレ、ね。川沿いだから出やすいけど、大丈夫。去年、冒険者さん達がきっちり退治してくれたわ」
 ボニーと呼ばれた先輩のウェイトレスは、後輩を宥めるようにウインクした。
 2人が言っている“アレ”とは、食事中の方がいる事を考慮して敢えて名前は書かないが、キッチンなどに現れる、黒光りする“ゴの付く虫”である。
 どの時代もゴの付くアレは女性の天敵だ。
 ヤツらは小さい割に生命力がずば抜けており、高速で移動して目視しづらい上に飛行能力も兼ね備え、更にその姿を見て気絶する者がいる事から、その身体自体が精神攻撃に匹敵すると言われている。しかも『1匹見たら30匹はいると思え』という格言があるように、1匹退治しても次から次へとエンカウントする事が多い、熟練の冒険者でも退治するには手を焼く極めて始末におえない虫だ。
 ボニーの酒場の倉庫は去年の夏頃、このゴの付くアレが大量発生したが、冒険者達の手によって退治され、以降、現れなくなっていた。
 後輩のウェイトレスは今年に入ってから働き始めたので、この事件を人伝で聞いていたようだ。

 ところで、「この時期」とはもちろん、夏の事だ。照り付ける陽差しは夏真っ盛りである。
 だが、ジャパン人の冒険者から聞いた話では、「イギリスの夏は涼しく過ごしやすい」というのだ。
 冒険者達の集まる酒場では、ウェイトレス達も様々な異国の国の話を聞ける機会が多い。
 ジャパンは夏になるとジメジメ蒸し蒸しするが、イギリスの夏にはそれが少ないという。
 ボニー達はイギリス育ちなのでこれが当たり前だが、そのボニー達もイギリスの夏はやはり暑いのである。

 倉庫に到着したボニーは、厚い木の扉を開けようとした。
「ボ、ボニー先輩〜、何か〜、音がしませんか〜?」
「音?」
 すると後輩がボニーの腕にしがみつき、扉を指差した。
 ――ガサゴソ‥‥ガサゴソ‥‥
 ボニーが聞き耳を立てると確かに物音がした。ちょっと大きめの“何か”が動いているような音だ。
「鍵は掛かっているけど‥‥盗賊でも入ったのかしら?」
「ボニー先輩〜、帰りましょうよ〜。店長を連れてきた方がいいですよ〜」
 後輩の言う事は正しい。万一、盗賊の類だった場合、非力なボニー達では太刀打ちできないだろう。
 しかし、店長に報告するなら、何者なのか確認する必要もある。
 ボニーは意を決すると、扉の鍵を外して中を覗き込んだ。
 帰りたがっていた後輩も、恐いモノ見たさからか、ボニーの下の方から中を覗き込んだ。

 ――いた! 暗がりの中に開かれた扉の隙間からわずかに差し込む陽光に照らされて‥‥。

「!?」
 後輩はそのまま意識を失い、ボニーにもたれ掛かってきた。彼女は慌てて扉を閉めると、鍵を掛け、後輩を引きずって倉庫から離しながら、上がった息を整えた。
「あ、アレ、よね‥‥でも、あんな大きなアレ、見た事ないわ‥‥」
 ボニーと後輩が見たのは、全長50cmからあろうか、巨大なゴの付くアレだった。
 しかも1匹ではない。少なくとも数匹、這い回っているのが見て取れた。

 ボニーは気絶した後輩を背負って酒場まで戻ると、店長に事の次第を報告して彼女を預け、その足で冒険者ギルドへ向かったのだった。
 もちろん、ゴの付くアレ退治の依頼を出す為だ。
 退治期間中の食事は酒場持ちで、報酬は少ないが珍しい保存食を1食分付けるという。
 ゴの付くアレも巨大になったら立派なモンスターのようだ。

●今回の参加者

 ea0412 ツウィクセル・ランドクリフ(25歳・♂・レンジャー・エルフ・フランク王国)
 ea1128 チカ・ニシムラ(24歳・♀・ウィザード・人間・イギリス王国)
 ea2179 アトス・ラフェール(29歳・♂・神聖騎士・人間・ノルマン王国)
 ea2929 大隈 えれーな(30歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea3075 クリムゾン・コスタクルス(27歳・♀・ファイター・人間・イスパニア王国)
 ea3173 ティルコット・ジーベンランセ(30歳・♂・レンジャー・パラ・フランク王国)
 ea5001 ルクス・シュラウヴェル(31歳・♀・神聖騎士・エルフ・ノルマン王国)
 ea9244 ピノ・ノワール(31歳・♂・クレリック・エルフ・ビザンチン帝国)

●サポート参加者

クリス・シュナイツァー(ea0966)/ ルフィスリーザ・カティア(ea2843

●リプレイ本文


●雪辱戦
「約1年‥‥待ちに待った時が来たのだ。多くのG達を討ってきたメイスと共に‥‥去年の屈辱を晴らす為に‥‥川沿いの倉庫よ! 私は帰ってきた!!」
 Gパニッシャーの名を冠したメイスを握り締めながら、ツウィクセル・ランドクリフ(ea0412)は川沿いにある倉庫を見上げて吼えた。照り付ける夏の太陽がやけに眩しく、目に染みて、涙がにじんでくるのは何故だろう‥‥。
「あの‥‥彼、どうかしたのでしょうか?」
「ああ、去年もこの倉庫でG退治の依頼があってな。その時、一緒だった妹の話ではな‥‥」
 1人でいい感じに盛り上がっているツウィクセルに声を掛けづらいアトス・ラフェール(ea2179)は、駄々っ子を見守る母のように、ツウィクセルを慈しみの眼で見つめるルクス・シュラウヴェル(ea5001)に訊ねた。
「そんな事があったのですが‥‥ツウィクセルさんはGの洗礼を受けて‥‥しかし、彼の尊い犠牲は無駄ではないはずです。デッドストリームアタックを今度こそ打ち破ればいいのですから」
「ただ、本音を言えば、私はアレは好かぬ。妹はあまり怖くなかったと言っていたが、あの娘はほとんど台所に入らぬからアレの恐ろしさを知らぬのだ」
 ルクスよりデッドストリームアタックの事を聞いたアトスは、表情こそ崩さないものの、胸の内で静かに、しかし激しく闘志を燃やしていた。
「いずれにせよ、滅すべき相手なのは間違いない。存分にやらせて戴こう」
「迷いは依頼失敗の原因になり得ますからね。GGもモンスターと見るべきでしょう。素速さで敵わない分、作戦で優位を取りたいですね」
「あの〜、ツウィクセル様はちゃんと生きてますけど〜」
 死亡説が流れ始めたツウィクセルを不憫に思った大隈えれーな(ea2929)は、こちらもいい感じに盛り上がる神聖騎士2人に突っ込んだ。
「いや、かつての古いタイプの俺はあの時散った‥‥ここにいるには、新しいタイプのツウィクセル、ツウィクセルマーク2だ! 目の前が川だから、Gがどうしても発生してしまうとは思っていたが、大型の個体を導入してくるとはな。G共め、真逆このような新個体を産み出していたとは‥‥」
「私も以前、別の依頼で大量のGと遭遇しましたが、こんなに大きなものもいるんですね〜。流石に1m近いGが露見すると、エールハウスの信用ががた落ちですから、ひっそりこっそり退治しますね」
 えれーなの突っ込みを逆に肯定するツウィクセル。

「これなら前の服より暑くない♪ 今回もお兄ちゃんやお姉ちゃんが一杯だから、露出度アップでサービスサービス♪」
「中はどうなってるんじゃん?」
 場違いとも思えるパステルカラーの魔法少女のローブを着たチカ・ニシムラ(ea1128)の『露出度アップ』という言葉を確かめようと、ティルコット・ジーベンランセ(ea3173)が彼女の目に止まらぬ早業でローブの裾を捲った。
「きゃあ!? もう、ティルコットお兄ちゃんのエッチ!」
 ティルコットからすればほんの挨拶代わりだが、チカは慌ててローブの裾を抑えた。それでもローブから覗く、日焼けしていないチカの眩しいくらいに白い素足と、下に着ていた踊り子の服。
「露出度アップもいいが、あれだな、本人の色気が足りないから、いまいち目の保養にならねんじゃねぇの?」
「むぅ‥‥どうせアタシは、四六時中出しっぱなしのクリムゾンお姉ちゃんのような胸はないですよーだ。でも10年後には、クリムゾンお姉ちゃんの彼氏、盗っちゃうかもよ?」
「10年後、ねぇ。まぁ、期待しないで待ってるぜ」
 チカの熟し始めたばかりの青々した肢体を眺めたクリムゾン・コスタクルス(ea3075)が、勝ち誇ったように高らかに笑う。彼女も胸は大きい方ではないが、冒険で鍛えた均整の取れた小麦色のバディを惜しげもなく晒し、チカの敵愾心を煽るのだった。
「今回の依頼は危険ですし、非常にばっちいでしょう。そのように肌を露出していて、GGに身体に触れられでもしたら‥‥」
「本人達は盛り上がっているんだし、いいんじゃないの〜?」
「いえ、GGは極めて強い毒を身体の表面に宿している可能性があります。素手で殴ったり、体当たりを受けたりしたら、毒に感染する恐れがあるのです」
 ピノ・ノワール(ea9244)の心配を余所に、ティルコットは「勝手にやらせておけば」と傍観する。
 ピノは卓越したモンスターの知識を修めているが、それでもGGについては情報が不足していた。1つ分かっているのは、ジャイアントクラブやジャイアントマンティスのように、巨大化したモンスターは手強いという事だろう。
「それにGですから、魔法の対抗力も高いと見るべきですし、暗闇でも自由に動ける事は間違いないでしょう。暗い倉庫では敵に地の利があるのは否めません」
「冒険者の俺らが来たからには任せてくれ。身体の大きさが差が戦力の決定的差でない事を教えてやるぜ。んで、無事に成功したら、飯、一緒に付き合ってくれよー、約束だぜ?」
「ええ、美味しい料理を作って待っていますね」
 ピノは普通のGを50cm〜1m大まで大きくし、その戦力を想定してゆく。
 しかし、彼の横ではティルコットがやはりどこ吹く風で、依頼主のウェイトレス、ボニーを食事に誘っていた。

●予想外
『流石に50cm大のGGを捕まえられる大きさの食虫植物はありませんね。あれば私が欲しいくらいです』
 ルフィスリーザ・カティアはティルコットとルクスと共に、キャメロット近くの草原で虫除け用の薬草を採取した。その際、ティルコットが食虫植物について話すと、Gが苦手な彼女はそう応えたのだった。
 またボニーより、倉庫で使っているランタン、エールハウスで使い終わった廃油と麻袋、残飯が用意された。
 ルクスが指示を出し、ツウィクセルとえれーな、クリムゾンとティルコットが廃油や粘り気のある植物を使って、GGを束縛するシートを作ってゆく。その上に残飯やえれーなが提供した甘い味の保存食を乗せれば、罠は完成である。

「この倉庫は広いですから、私のデティクトライフフォースでは探索範囲が限られてしまいますが、何処に隠れても無駄です。必ず突き止めます‥‥その陰に1匹、こちらに1匹。天井にも2匹いますね」
「むぅ‥‥虫さん、しかもGなんて大嫌いだから、居場所も知りたくないけど、やらないと終わらないしね〜‥‥これがGGの息なの!? やっぱりいやぁぁぁぁぁ!」
 ピノの生命探査範囲をカバーするように、チカがGGの呼吸を探ると‥‥彼女には8匹程の50cm〜1m大のGGの息遣いが感じられ、絶叫と共に鳥肌の立った自らの身体を抱き締めた。
「もう止めろよ! 女の子には荷が重すぎるぜ」
「‥‥う゛う゛‥‥ぎも゛ぢわ゛る゛い゛‥‥でも゛‥‥も゛う゛ずごじだがら゛‥‥」
 ピノとチカの頑張りで、GGのおおよその位置が把握できた。
「頑張ったじゃねぇか。見直したぜ」
 崩れ落ちるチカを抱き留め、ウィンクして親指を立てたティルコットが、地面に倉庫内の見取り図を書き、ボニーから聞いたおおよその荷物の位置、そしてGGの位置をそこに書き込んでゆく。
「これは少々厄介ですね‥‥GGは荷物の物陰に潜んでいるようですから、中の荷物を迂闊に運び出す事ができないです」
「せめて隅の荷物を真ん中へ寄せるくらいはしねぇとな。GGも空は飛べんだろ? 荷物を傷つけねぇようにしねぇといけねぇし、あたいの得物は広くないと使えないぜ」
「GGを刺激しないように荷物を移動させるのは難しいですよね」
「当初の予定と変更になるが、荷物を移動させて罠を仕掛ける組と、GGを引き付ける組に分かれた方がいいようだな」
「当然俺はGGを引き付けるぞ」
 アトスとクリムゾン、えれーなが荷物の移動を決めると、ルクスが二手に分かれる案を提示し、当然のようにツウィクセルはGGを引き付ける役に名乗り上げたのだった。

●デッドストリームアタック撃破!?
 身の軽いえれーなを先頭に、倉庫の中へ入っていった。
「虫だし、灯りに集まる傾向に‥‥あるのかな〜?」
 後ろでランタンを持つチカの考えはあっさり覆された。薄暗い倉庫の中に灯りが差し込んだ途端、GGは音も立てずに蜘蛛の子を散らすように物陰に潜んでしまったのだ。
 アトスとクリムゾン、ピノが荷物を破損させないように細心の注意を払いながら中央へ移動させ、その跡から出てきたGGをツウィクセルとえれーな、ティルコットが引き付け、チカが罠シートを敷き、ルクスがランタンを壁に掛けて灯りを確保してゆくいていく。
 クリムゾンが動かした荷物の物陰から出てきたのは、大きさ50cmはあろうか、黒光りするGGだった。
「乙女の敵は俺の敵。お前に恨みは無いが、ねーちゃんとのラブラブなディナーの為に死んでくれよ!」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥まぁ、これだけ食べ物ありゃ、どんなでっけぇGでも満足だろ」
 ティルコットがクリムゾンと睨み合うGGにダーツを投擲すると、それはGGの背に突き刺さるが、そのままGGはクリムゾンの前から逃げ出した。
 初めて見るGGにクリムゾンはしばらく絶句した後、溜まった息を吐き出すように感想を述べた。
「く!? 新しいタイプの俺でも、このGパニッシャーの能力を引き出せないというのか‥‥!?」
「気を付けて下さい! GGは戦闘馬より疾(はや)いですよ!!」
 ツウィクセルは苦戦していた。Gパニッシャーが全くGGに当たらないのだ。えれーなが注意するように、その速さは戦闘馬を越え、少なくとも疾走の術を使っていない彼女より3倍は疾かった。
 彼だけではない。えれーなのGパニッシャーもGGの身体を捉える事すらなかった。攻撃を当たられるティルコットも、ダーツでは有効打とはなっていないだろう。
「やはり素速い。だが、この程度なら十分やれる!」
「罠に掛かっても飛べる以上、動き自体を束縛するしかない」
 荷物の移動が終わったアトスと、ランタンを掛け終わったルクスが聖なる母に祈りを捧げる。罠ごと飛んでいた1匹は呪縛され床に落ちたが、もう1匹は抵抗されてしまう。
「く、来るなー! 気持ち悪いー!!」
「お前達の狙いは分かっています。やらせませんよ」
 チカに飛来するGGに向けて、彼女がウインドスラッシュで、ピノがブラックホーリーで迎撃する。ウインドスラッシュは抵抗されてしまったが、ブラックホーリーの一撃で途端に動きが鈍くなった。
「こいつら‥‥当たれば弱いぜ! ぶち抜け! 月の白刃!!」
「当たれば、だろ!? 矢や魔法しか当たらないんじゃ、な!」
 ティルコットがスクロールを取り出し、ムーンアローを放つが、それは当たってもダーツと同程度の威力しかなく、ほぼ無傷だった。その横からクリムゾンの苛立つ声が聞こえる。
 彼女のショートボウから射る矢も背中に突き刺さり、徐々に動きを弱めていた。
 それにしても恐るべき回避能力である。ダーツでは有効打にならず、かといって関節などを狙おうとすれば、今度は当たらないのだ。
 ティルコットは別のスクロールを取り出し、動きを鈍らせるが、それ程効果はないようだ。

 それでも8匹中、4匹倒したところで、3匹が縦一列に一糸乱れぬ編隊を組んで、クリムゾンへと迫った。
「来たな、デッドストリームアタック!」
「あれがデッドストリームアタックですか。なかなか侮れない連携ですが問題ありません。必ず止めを刺しましょう!」
 1度喰らっているツウィクセルが気付くと、アトスもクルスソードを構え直す。
「そちらがコンビネーションで来るならば、こちらもコンビネーションで応えればいいだけの事! えれーなさん、ルクスさん、協力してくれ。3本のGパニッシャーで以て、GGを迎撃する!」
 ツウィクセルの号にえれーなとルクスが応える。まず先頭のGGをツウィクセルがGパニッシャーで横殴りにするがこれはかわされ、続くえれーなの逆袈裟懸けからの攻撃は飛ばれて避けられる。
「仲間を踏み台にしただと!?」
「フ‥‥やっぱり俺って、不可能を可能‥‥!?」
 ルクスがGパニッシャーを振り上げる目の前で、3匹目が2匹目のGGを踏み台にして彼女をやり過ごし、クリムゾンの視界一杯をGGの腹が広がる。
 だが、ツウィクセルが間に割って入ると、顔面に直撃を受けた。数本の脚は見事に口の中に入っていた。
「ふぅー、こっちは間一髪ってか!」
「ティルコットお兄ちゃん、ありがとね♪ あたし、あれ、まとも見られないし、見たくないから」
 チカの元へ向かっていた1匹目のGGは、ティルコットが石の壁を創り出して辛うじて防いだ。
「あたいに構わず‥‥撃て、ピノ・ノワール!!」
「滅せよ!」
 編隊を整え、再びデッドストリームアタックを仕掛けてくる黒い三連GGを、ショートボウを放り一身に受けるクリムゾン。
 そこへ放たれたピノのブラックホーリーが黒い三連GGの1匹を倒し、編隊が崩れたところへ再びコアギュレイトによって呪縛された2匹をアトスとティルコットが倒すが、その隙を突いて最初に入ってきたのだろう、倉庫の壁の隙間から1匹が逃げ出してしまった。

 ツウィクセル、クリムゾンという尊い犠牲を出したものの、GGの撃退には成功した。
(「でも、ま‥‥川沿いにあるんだ。しっかり洗えばなんとか‥‥って、ちょっと待て。確か川って言ったって、あんまり綺麗な川じゃないって聞いたような聞かなかったような‥‥」)
「恐ろしい敵だった‥‥前回のGの子供達の復讐、か?」
「でしたら、また帰ってこないように、卵や子供は徹底的に処分しませんとね」
「綺麗にしてまたあんなのが沸かないようにしないとね♪ ‥‥出来ればもう一生見たくないし」
 ルクスが横たわるクリムゾン達の解毒を行う中、アトスとチカはGGの卵や子供がないか徹底的に確認していた。その横ではえれーながGGが倉庫に侵入した穴を埋め、ティルコットとピノが荷物の整理を行った。

「これで当分は悩まされないで済むでしょう。後はボニー達ウエイトレス次第ですよ」
「しばらくは大丈夫ですが油断しないように。定期的に掃除する事も忘れないで下さい」
 白と黒の神聖騎士に言われれば、流石に頷くしかない。
「ま、終わったんだし、ノマノマしようぜぃ。ねーちゃんもいっしょにな」
 その後、何とか快復したツウィクセル達を連れてエールハウスへ向かい、ボニーが用意した食事でティルコット達は舌鼓を打ち、彼女にお酌をしてもらいながら浴びるようにエールを飲み、帰りにお土産としてノルマンの珍しい保存食をもらったのだった。

 しかし、GGは完全に駆逐された訳ではない。
 彼らの残党がまだ息を潜めているかも知れないのだから‥‥。