きょぬーの乳拓蒐集家

■ショートシナリオ&
コミックリプレイ


担当:菊池五郎

対応レベル:フリーlv

難易度:やや難

成功報酬:0 G 78 C

参加人数:4人

サポート参加人数:-人

冒険期間:12月21日〜12月26日

リプレイ公開日:2006年12月28日

●オープニング

 吐く息が白い。夜の冷え込みも日に日に増している。それに比例するかのように、夜空に輝く星々はより綺麗に見える。冬は空気が済むからだろう。
 だが、“それ”の目下には1人の女性が横たわっている。呼吸しているところを見ると、単に寝ているだけのようだが、この寒空の下で寝るのは健康上あまりよろしくないだろう。
 更に寝ている女性の胸元ははだけ、墨か何かで黒く塗られていた。
「胸がでかいと偉いの!?」
 “それ”は手に持っていた和紙のようなものと目下の女性を交互に見、憎々しげにそう吐き捨てる。
「ちょっと可愛くて胸がでかいからって、それが女の特権なの!?」
 “それ”はもう一度、寝ている女性に向かってそう吐き捨てると、何故か毛布を掛けて立ち去っていった。

「那雫殿、自首するなら早い方がいい」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥は!?」
 宿に帰ってきて早々、志士の仁藤高耶(ez1002)は、煌びやかな装飾の野太刀の手入れをしていた浪人の吉野那雫にそう切り出した。
 突然そんな事を言われた那雫は、たっぷり十秒、間を置いてから目を丸くする。
 高耶は、黒曜石を思わせる艶やかな梳った黒髪を湛え、同じく伏し目がちの黒い瞳が上品さを醸し出す、二十歳を少し過ぎた美女だ。殺人の剣ではなく自衛の剣『念流』を修め、長巻を愛用している。
 那雫は、黒髪をポニーテールのように結った、十五、六歳くらいの小柄な少女だ。若干十六歳で佐々木流の奥義・燕返しを身に付け、師匠より銘刀霧咲を賜る程の技量の持ち主である。
 高耶と那雫は先月、高耶の故郷である上州は馬庭村にて剣術勝負を終え、江戸に戻っていた。次の月道が開けば、京へ立つ予定だ。
「今ならまだ情状酌量の余地もあるだろう」
「あの、さ、何の事かさっぱり話が見えないんだけど?」
 頻りに自首を勧める高耶に、那雫は霧咲を畳の上へ置き、困惑げに頬を書く。
「では、これはお主がやったのではないというのじゃな?」
 思い当たる節がなければ分からないのも無理はない。
 それに那雫は浪人とはいえ、師から賜った愛刀を無くした時には切腹して償おうとするくらいの武士道の持ち主だ。嘘を付くのは苦手なのだ。
 そう思った高耶が見せたのは読売(=瓦版)だった。そこには、ここ最近、夜な夜な若い女性が外で倒れているという奇怪な事件のあらましが書かれていた。
 倒れているといっても寝ているだけで、何故か毛布が掛けられているという。
 女性達に面識はなく、種族も職業も一貫性はない(但し、パラやシフール、ドワーフや河童は除く)。
 共通点は、夜一人歩きだったという事と『胸が大きい』という事だ。また、倒れていた女性達の胸は一様にはだけ、墨か何かが塗られた跡があったという。
「‥‥ちょ、ちょっと待ってよ!? 何であたしが胸の大きな女性を襲わなきゃならないのよ!?」
「先日の剣術大会で、『きょぬー狩りをする』とか何とか言っておったから、拙者はてっきり」
「う゛‥‥それは否定しないけど‥‥第一、あたし達が江戸に着たのはつい最近じゃない。最初に倒れている女性が発見された日付と合わないでしょ!」
「言われてみれば確かにそうじゃな。拙者の勘違いでござった、すまん」
 高耶に痛いところを衝かれ、一瞬、言葉に詰まるが、やっていないものはやっていないと、那雫は自分のアリバイを告げる。彼女も納得したようだ。
「でも、高耶があたしを疑うのは無理ないわ。この犯人、おそらくあたしと同じ、胸の小さな女性だと思うよ」
 那雫は読売を読み返しながら自分の推測を述べ始める。発育真っ盛りにも関わらず、身長と胸が全然成長しないのが、彼女の唯一の悩みの種だ。
「この胸に塗られた墨って、多分、胸の魚拓っぽいものを取ってるんじゃないかな?」
「胸の魚拓でござるか!?」
「そ。言うなれば、“乳拓”かな? 裸とまではいかないまでも、胸がはだけた姿で見つかればそれなりに辱める事は出来るし、乳拓を取って復讐の代わりにしてるんじゃないかな?」
 那雫も以前、イギリスに武者修行へ行っていた時、キャメロットの胸の大きな女性達にひんぬーの事を指摘され、夜な夜な辻斬り未遂を行っていた事があった。だからこそ、この犯人の気持ちが理解できるのだ。
 まさにひんぬー同志のシンパシー!!
「それに、あたしの犯行じゃない決定的な証拠として、被害者の女性達が全員、大した外傷もなく眠っている事が挙げられるわ。峰打ち(スタンアタック)でも相手を眠らせる事は出来ないもの」
「相手を眠らせる‥‥精霊魔法のスリープや、忍術の春花の術か!」
「そういう事。あたしはどっちも使えないしね」
 那雫は、犯人のクラスは、スリープが使える吟遊詩人(バード)か陰陽師、春花の術が使える忍者まで、絞り込んでゆく。
「このまま放っておいても、いずれは捕まるだろうけどさ‥‥気持ちは分かるから、お役人に突き出したくないんだ。あたし達で説得して、乳拓を取る事は止めさせたいと思うの」
 那雫は那雫を背負うと、その足で江戸の冒険者ギルドへ向かい、きょぬーの乳拓蒐集家を捕まえる依頼を出すのだった。

●今回の参加者

 ea0758 奉丈 遮那(32歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea6158 槙原 愛(30歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 eb3525 シルフィリア・ユピオーク(30歳・♀・レンジャー・人間・フランク王国)
 eb4673 風魔 隠(25歳・♀・忍者・人間・ジャパン)

●リプレイ本文


●ひんぬー同志
「那雫殿、友が疑いを晴らしに来たでござる!」
「ちょっと待てー!!」
 朋友の一大事を知った忍者の風魔隠(eb4673)は、浪人の吉野那雫と志士の仁藤高耶(ez1002)が逗留している旅籠屋へ駆け付ける。
 隠と那雫は“ひんぬー同志”という、同じ悩みを共有する暑苦しい友情で結ばれているのだ!
 部屋へ来るなり開口一番、勘違いを口走る隠に、那雫は愛刀の銘刀霧咲を鞘に入れたまま突っ込む。鋭い太刀筋に隠は回避できず、後頭部に直撃を受ける。
「あらあら〜、スコーンってとてもいい音がしましたね〜。綺麗に入りましたけど、大丈夫ですか〜?」
「な、那雫殿が手加減したから大丈夫でござるが、突っ込みはハリセンの方がいいでござる‥‥え!? そうじゃない?」
 浪人の槙原愛(ea6158)が、後頭部を押さえてしゃがみ込む隠の頭を優しく撫でる。「痛いの痛いの飛んでけ〜」と彼女が言うと、本当に痛みが引くように感じられるのだから不思議だ。
「当たり前でしょ! 第一、あたしが犯人だったら、『一緒に犯人捕まえて欲しい』なんて依頼、出さないわよ」
「もっとも、那雫自身が真犯人で、隠に疑い掛ける為に利用する、というのなら話は別だがな。隠にも動機はあるようだし」
「え!? 拙者も怪しいでござるか? バカを言ってはいけないでござる。拙者は正義の為に日夜努力しているでござる。剣術大会などではきょぬーは敵でござるが、悪ではないでござる」
 奉丈遮那(ea0758)は忍者という職業柄、先ず人を疑って掛からなければならない事が多く、那雫の説明に辛辣な意見で返し、隠に目線を向ける。
「那雫殿は義に篤い女子(おなご)じゃ。友を売るような真似はせぬよ」
「確かに、二人ともそこまで知能犯には見えないしな」
 熱く語る隠に高耶が助け船を出すと、遮那もそれには納得する。
 疑いが晴れたとはいえ、一言多い彼に今度は那雫と隠が納得がいかない様子だ。
「那雫や隠が犯人でないという疑いは、犯人を捕まえればいくらでも晴らせるでしょ? という訳で、今はきょぬーの乳拓を集めている犯人を捕まえる策を立てるのが優先だよ」
 レンジャーのシルフィリア・ユピオーク(eb3525)がウインクしながら投げキッスを一つ、その場をまとめるのだった。


●どこまでがひんぬー?
「先ずは被害の情報が欲しいねぇ」
「それならここにまとめてあるわ」
「用意がいいですね〜」
 シルフィリアが和紙に江戸の大まかな地図を書くと、那雫がきょぬーの乳拓の事件を扱った読売(=瓦版)の束を持ってくる。ここ二、三週間のうちに事件は起こっているようで、那雫は江戸に来る前に発行された読売のバックナンバーも入手していた。
 その手際の良さに、愛はのほほんと胸の前で手を叩く。それだけ那雫がこの件を真剣に取り組み、自分の同じ境遇であろう犯人を諭したいと思っている現れだと、彼女にも分かる。
「読売の日付を見る限りでは、月明かりを避けているようだな」
「顔を見られちゃ拙いからねぇ。とはいえ、人間だけではなく、ジャイアントやエルフ、ハーフエルフも狙っているんだから、相当の腕前を持っていると見た方がいいねぇ」
「しかも、手際がよいところを見ると、市民街の地理に明るい者でござろう」
 遮那と隠が、読売に朱色の墨汁で印を付けられた被害場所と被害に遭った種族を読み上げ、シルフィリアがそれを地図に落してゆく。
 遮那とシルフィリアの指摘に加え、隠が言うように、月明かりのない場所で顔を見られずに犯行を繰り返している事から、地域の地理に詳しい者、おそらくは住んでいるか、長い間逗留していると考えられた。
 これらの推測に、那雫と高耶が、スリープか春花の術の類を使う、バードか陰陽師、忍者ではないかと、いう犯人のクラスの予想を加味し、遭遇しやすい時間帯と場所に見当を付けてゆく。
「怪しい人物に目星を付けるのは、流石に無理でござるかな?」
「冒険者は出入りが多い。新しく来た者や出ていく者に気を留める事は少ないだろう。それが、未だに犯人が捕まっていない理由だと思うぞ」
 隠はこれだけ犯人像が絞れたのだから、怪しい人物に目星を付けたいと思ったが、犯人が地元の者ではなく冒険者の場合、かなり難しいと遮那は答える。
 地元の者であれば、新しく入ってきたり引っ越しすればまず住人が覚えているだろうが、犯行の手際的に冒険者である可能性が高い。愛や隠のように、江戸の冒険者街に棲家を借りてある程度定住する冒険者もいれば、遮那や那雫のように旅籠屋暮らしの冒険者も少なくないからだ。
「被害者に聞き込みをするのはどうでしょう〜? 襲われた場所と状況を聞いておくのは、とても大切な事だと思います〜」
「被害者に会うのは‥‥止めた方がいいと思うよ。ただですら乳拓を採られたという事はショックだろうし、読売でも被害者の名前は伏せてある。それに、冒険者ギルドに犯人を捕まえて欲しいという依頼を出ていない事からも、被害者はあたいらには消極的だと思うし、あまり心の傷口を広げるのはよくないだろ?」
 愛の聞き込みの提案は、シルフィリアが状況からしてあまり得る物はないと踏んだ。
「そうですね〜‥‥聞き込みは止めますね〜」
「でも、囮作戦の為にも、拙者達も地理を覚える必要はあるでござるよ」
「では〜、被害のあった場所の付近を、のんびりと散歩できますね〜」
 少しだけがっかりする愛に、隠が分担や連携について調整を終え、囮作戦で行く事を告げると、彼女はぱぁっと明るくなる。
「囮、面白そうです〜。乳拓採ってもらえるなんていいですよね〜。採ってもらったら部屋に飾りたいです〜」
「いや、もらえないし、誇らしげに部屋に飾る物じゃないから」
 恐るべしは天然! 愛の言葉に回収した乳拓を全て破棄するつもりでいる那雫は、思わず突っ込んでいた。
「そうそう、きょぬーにとっては苦労話や笑い話であっても、ひんぬーにとっては嫌味や自慢としか取れない話題やカチンって来る言葉ってあるでしょ? もしよかったら聞かせてもらえないかい?」
「拙者の場合、きょぬーに慰めを言われると結構カチンと来るでござるな」
「慰めねぇ‥‥なるほど」
「あたしはきょぬーの奴に『きょぬーの苦労も知らないで』って反論されるとカチンと来るわね。確かに苦労話は聞くけどさ、それってひんぬーからすれば自慢にしか聞こえないから!」
「まぁまぁ〜、抑えて抑えて〜」
「気を付けるよ。しかし、ジーザス様も酷な事をするねぇ」
 今回の目的は犯人を捕まえるだけではなく、諭してきょぬーの乳拓蒐集を止めさせる事にある。その為、シルフィリアは『禁句』を隠と那雫に聞いた。
 途中、那雫がいきり立ちそうになる場面もあったが、愛が諭して事無きを得る。
「わひゃ!?」
 すると突然、隠が素っ頓狂な声を挙げる。今まで女性陣の胸を見ていた遮那が、突然彼女の胸を揉みしだいたのだ。
「な、な、な、何をするでござるか―――――!!」
「いや、みんながひんぬーひんぬーって言ってるけど、実際、どれくらいのものなんだろうと思ってな」
「だ、だ、だ、だから何で、拙者の胸を揉むでござるか―――――!?」
「だって、触るか揉んだ方が、感覚的に分かりやすいだろう?」
 腰帯に挟んでいた鉄笛を振り回す隠。だが、遮那はそれをかわしながら尚も揉み続ける。どうやら感覚的に掴めるまで揉みたいようだ。
「胸は好きな人に揉んでもらうと大きくなるそうですよ〜」
 高耶が鉄笛を白羽取りし、愛が隠を後ろから羽交い締めにしてようやく止める。その際、独り者の隠には慰めにならない言葉を掛けていたりする。
「なるほど‥‥このくらいがひんぬーか」
「だ〜か〜ら〜、そのいやらしい手付きは止めるでござる〜〜〜〜〜!!」
「一般的にはトップとアンダーの差が10cm(=Aカップ)未満の胸の事をひんぬーって呼ぶけど、感覚的、相対的な概念だから、明確な基準がある訳じゃないんだよ」
「シルフィリアさんの胸は誰から見てもきょぬーですけど、私も胸も人によってはきょぬーに見えますしねぇ〜」
 ひんぬーの感覚を体得した遮那に、シルフィリアと愛が一般的なひんぬーの解釈を説明する。
 胸を揉みしだいた手をワキワキさせ、感覚を覚える彼に、隠は顔を真っ赤にして叫んだ。


●おみっちゃん
 夜の帳が下り、江戸の街のところどころに提灯や篝火の灯りが点り、昼間とはまた違った風景を見せる。
「ん〜、流石に寒くなって来ましたけど〜‥‥夜空は綺麗ですね〜」
 愛は提灯を片手に、星空を見上げながらにこにことご満悦の顔で、ほぼ真っ暗の市民街を散歩している。
 服装は薄紅色の着流しのままだが、さらしを外して袂から見える胸の谷間を強調し、その上に防寒具を引っかけ気味に羽織ってる。
 冬は空気が澄んでいる事もあり、更に今日は月明かりもないので、満天の星空がいつもより綺麗な輝いて見える。
「愛、囮の意味、分かってるのかしら‥‥」
「あのくらい自然体の方が、囮だと分からんじゃろう」
 付かず離れずの距離を保ちながら尾行する那雫が、愛自身囮の意味を分かっていないのではないかと思ってしまうくらい、まったりとした足取りだ。高耶はフォローするが、残念ながら愛自身、依頼の事を忘れ気味だろう。

 一方、居酒屋へ来たシルフィリアは、おみっちゃんという名の吟遊詩人が奏でる琵琶の演奏と歌を肴に、熱燗で一杯やっていた。
 今の彼女は蠱惑的なナイスバディを惜しげもなく晒す、胸を強調したベストとパンツの上に深緑色の防寒服を格好良く羽織った姿で、砂糖に群がる蟻のようにシルフィリアに絡む酔った男性達を、ポニーテールの黒髪を振って追い払っている。
 このおみっちゃんという吟遊詩人はかなりの腕前で、『松之屋』で歌や曲を披露しても十分稼げるだろう。だが、本人は好んで場末の居酒屋で唄っている、と聞きもしないのに酔った男性達が教えてくれた。
 時間を見計らい、そろそろ犯人が現れる頃合いになると居酒屋を出て、ほろ酔い気分よろしく、千鳥足で良い気持ち良さそうに鼻歌を歌いながら帰路に就いた。
「かりん〜、まったく、野郎はジャパンもどこも同じで、スケベばかりで困っちゃうよ。み〜んな、あたいの胸ばかり見てさぁ。もっとも、大きいから肩は凝るし、弓を引く時は弦が当たって痛いし、走る時は固定しておかないと揺れて千切れそうになるしで、ひんぬーが羨ましいよぉ」
 やや頬が赤らみ、色っぽい彼女は、酔っ払いらしく愛犬かりんにきょぬーの苦労話を語る。
 すると急に眠気が襲い、シルフィリアはそれに抵抗する暇もなく、その場に崩れ落ちてしまう。
 「わんわん」とあらぬ方向に吠えていたかりんもまた、彼女の後を追うように、こてんと地面に転がった。
「きょぬーにはきょぬーの苦労がある!? 冗談じゃないわ!」
 一つの影が現れ、眠っているシルフィリアにそう吐き捨てた。
「なるほど、春花の術ではなくスリープのようだな。しかも、射程距離からしてかなり高レベルのスリープだ。そうだろう、おみっちゃん?」
「!?」
 影が防寒着を脱がせ、いよいよベストに手が伸びた時、遮那の鋭い声がその手を制止させる。
 彼が提灯を翳すと、そこには先程まで居酒屋で唄っていた吟遊詩人おみっちゃんの姿があった。
「私の目の前の人間の男性を撃て!」
 鋭いムーンアローが遮那に突き刺さる。一撃で中傷寸前の威力だ。
 彼が怯んだ隙におみっちゃんはその場を逃げ出す。幸い、ムーンシャドゥは修得していないようだ。
「隠! 愛! そっちへ行ったぞ!」
 後を追いながら巧みに隠達の方へ誘導する遮那。
(「ね、ねぇ、本当にやるの?」)
(「犯人にひんぬーの正義を見せるでござる! 恥ずかしがっている場合ではないでござる、さぁ!」)
「きょ、きょぬーを騒がす者よ!」
「とっととおウチに帰るでござる!」
「ひんぬーぶるー!」
「ひんぬーぱーぷる!」
「「二人はろりきゅあ!!」」
 隠と那雫は決めポーズを取ると、それぞれ鉄笛と霧咲の峰でスタンアタックを仕掛ける。
「お痛はそこまでですよぉ〜」
 それでも気絶させる事はできなかったが、愛がわざとエペタムでスマッシュEXを外してにっこりと微笑むと、おみっちゃんはその場に尻餅を付き、観念した。

「乳拓を集めたところで、きょぬーに勝った事にはならないでござる。むしろ、虚しいだけでござる。きちっと秘訣を聞き、努力する姿こそが正しきひんぬーの姿でござる!」
 隠がひんぬー同志として先ず話し掛けて警戒を解くと、おみっちゃんはぽつりぽつりと理由を話し始める。
 おみっちゃんには美形の彼氏がいたが、きょぬーの女性冒険者達は分不相応とばかりにひんぬーの事を散々言い、別れざるを得なくなってしまったのだ。
「そんな事があったのかい‥‥きょぬーを代表してあたいがお詫びをするよ」
 遮那に起こされ、駆け付けたシルフィリアは、おみっちゃんからきょぬーの乳拓を蒐集していた理由を聞き、きょぬーの女性代表として謝った。
「自分の体型を一番魅力的に魅せる事を考えてごらん。一番輝いている姿を知れば気にならなくなるさ」
 シルフィリアは、着物はひんぬーが一番魅力的に着こなせる事を話す。
「ただね、あたいはその人達は、着物を綺麗に着こなすあなたが羨ましかったんだと思うよ。あたいらじゃ、婀娜っぽくとか遊んでるように着るならまだしも、着物本来の美しさを引き出して着こなす事はできないからね」
「俺が好きな女も、胸が小さいのを気にしていたが、彼女はそれを努力して変えようとしていた。他をどうこう言うより、シルフィリアの言う通り、自分を磨いて欲しいものだな」
 シルフィリアの言葉を受け継ぎ、同意する遮那。
「それに、おみっちゃんはひんぬーを気にしているようだが、少なくとも、この隠よりはマシな大きさだぞ?」
「あんでござると―――――!?」
 実際、触診しただけの事はあり、遮那の指摘は説得力があった。ひんぬーを更に比べられ、絶叫する隠。
「駄目ですよ〜? こういうのはちゃんと相手との同意を得てからやらないと〜」
「同意を得てもやっちゃ駄目」
「まぁ、それはともかく〜‥‥世の中にはいろんな人がいるのですよ〜。大きいのが嫌いで小さいのが好きという人もいるんです〜。だから大きさなんて気にしちゃ駄目ですよ〜。ほら、よく言うじゃないですか〜。『胸なんて飾りです。エロい人にはそれがわからんとです』、と〜」
「いや、言わないってば」
 愛の説得には終始、那雫の突っ込みが入った。
 だが、その掛け合いの甲斐もあり、おみっちゃんは自分の罪を認め、金輪際きょぬーの乳拓は蒐集しない事を誓った。
「ところで〜‥‥改心したのはいいとして、今までのお仕置きとして‥‥あなたも一回乳拓を採られるというのはどうですか〜」
 いつの間にか筆と和紙を持って笑顔で迫る愛。誰も彼女を止められなかったという。

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