あたし、あの娘に勝ちたい

■ショートシナリオ


担当:恋思川幹

対応レベル:1〜4lv

難易度:やや難

成功報酬:1 G 0 C

参加人数:8人

サポート参加人数:1人

冒険期間:03月15日〜03月20日

リプレイ公開日:2005年03月24日

●オープニング

 華国から来た武闘家・蓮包(レンポウ)は山賊の用心棒相手に苦戦していた。
『悔しいけど、攻撃を避けるので精一杯だよ!』
 オーラを纏っているので、頭は明晰に働き、体は思う存分動いてくれている。
 だが、超え難い大きな実力の壁の前にそんなものは焼け石に水であった。
 素早いサイドステップで敵を翻弄するテクニックがあってようやく敵の攻撃を避けている状態である。蓮包が得意とするカウンターも仕掛ける暇がない。今は回避だけに全力で専念しなければ、日本刀の斬撃は容赦なく彼女の体を斬り裂くであろう。
「くっ! 負けてられないんだから!」
 隙を見つけて反撃に出るが、蓮包の龍叱爪は用心棒の日本刀に易々と受け止められてしまう。
「闘気を使ってその程度か?」
 用心棒の嘲りが耳を突き、カッと蓮包の頬に朱が走る。
「このぉっ!!」
 怒りに任せた攻撃は甘い一撃になってしまう。
「むっ!」
 用心棒は状態を反らして、辛うじてそれを避けきった。蓮包に継ぎ手はなく、回避テクニックを使う間もない。
「俺の勝ちだ、残念だったな」
 上段に構えた用心棒の刀が陽に輝くのを蓮包は見た。
(駄目なの!?)
 蓮包が迫りくる死を意識した時であった。
「蓮包! 今、行きます!」
 血刀をひっさげた浪人・紫苑が駆けつける。
「ちぃ!」
 用心棒は紫苑に向き直る。
「貰います!」
 紫苑が用心棒を袈裟斬りにする。
「あぐぁ‥‥んの!」
 用心棒が苦悶の表情を見せながらも反撃を試みる。
 だが、紫苑は用心棒の攻撃を危なげなく受け流し、確実に斬りかえす。
 血塗れの浪人が倒れ伏すまでに、そう時間はかからなかった。
「凄い‥‥」
 自分が苦戦していた用心棒を危なげもなく倒してみせた紫苑の実力を改めて実感する蓮包。
「蓮包、怪我はありませんか?」
 刀についた血を手ぬぐいで拭き取りながら、紫苑は親友を気遣う。
「う‥‥うん。ありがと、紫苑‥‥」
 ふと見ると大勢いた山賊達もすべて倒れ伏していた。大半は紫苑が倒したものであるらしい。
「紫苑さんが今回の一番の功労者だな」
 一緒に依頼を受けた冒険者が紫苑を褒めている。
「いいえ、私などまだまだ至らないところばかりで」
 照れ笑いを浮かべながら、紫苑は謙遜してみせた。
「‥‥」
 その時、蓮包が感じていたのは‥‥。


 珍しく蓮包が一人で酒場にいる。
「紫苑でも至らないところばっかりだったら‥‥あたしは?」
 酒場の喧騒に紛れてしまう程度の‥‥小さな呟き。
 もやもやとした黒い感情が胸中に蠢いている。
 蓮包と紫苑は親友である。少なくとも蓮包は紫苑を親友だと思っている。互いの初めての冒険依頼で同行してから酒場で出涸らしのお茶を飲み交わしてきた仲である。
 けれど、同じ前衛に立つ戦士系の冒険者として、蓮包の実力を尊敬すると同時に‥‥彼我の実力差に少なからず嫉妬心を抱きはじめていた。
「やだな‥‥紫苑は友達なのに‥‥あたし‥‥」
 自分の暗い感情に憂鬱になる蓮包。
 尊敬と嫉妬心は紙一重。
 まして同業者であるなら、尚のこと。それは際どい釣り合いを見せるものであろう。
「‥‥‥紫苑に‥‥‥‥会いづらいよ‥‥こんな気持ち‥‥」
 それが一人で出涸らし茶を飲んでいる理由であるが、あいにくと紫苑の側にそういった屈託はなかったのかもしれない。
「蓮包! こんなところにいたのですね」
 蓮包の暗い気持ちに反するように、明るく弾んだ紫苑の声が響いた。
 蓮包がのっそりと背後を向くと、紫苑が自分のほうへ駆けてくる姿が見えた。いつもの蓮包ならここで元気よく挨拶を返すだろう。
 だが、蓮包はむっつりとしたまま、視線を出涸らし茶のほうへ戻した。
「あら? どうされました? なにやら雰囲気が暗いですよ?」
 紫苑がいつもと違う蓮包の様子に気づいた。
「なんでもないよ」
 蓮包は無愛想に答える。紫苑にしてみれば、それこそ何でもないはずがないと察せられる。
「蓮包‥‥私でよろしければ、いつでも相談に乗りますからね? 私などでは頼りないかもしれませんけれど‥‥」
「っ!!」
 蓮包は泣きたくなった。
『悔しい、悔しい、悔しい、悔しい、悔しい、悔しい、悔しい、悔しい、悔しい、悔しい、悔しい、悔しい、悔しい、悔しい、悔しい、悔しい、悔しい、悔しい、悔しい、悔しい、悔しい、悔しい、悔しい、悔しい、悔しい、悔しい、悔しい、悔しい、悔しい、悔しい、悔しい、悔しい、悔しい、悔しい』
 自分が嫉妬するほど紫苑は優れているのに、それでもまだ「私など」と謙遜する。それは飽くなき向上心を持っているということだ。省みて自分はどうか? 紫苑に嫉妬するばかりで自己を向上させる努力をしていただろうか?
 堪らなく、悔しい。自分は醜く嫉妬するばかりだったから。
 その悔しさも激しい嫉妬心に化けていく。
「蓮包? ‥‥蓮包?」
 だから、つい‥‥心にもない一言を言ってしまった。
「紫苑なんか‥‥大っきらいだ!!」
 蓮包は叫ぶと逃げ出すように酒場から駆け去っていった。
「蓮包‥‥」
 後には戸惑いの表情の紫苑が佇むばかりであった。


「‥‥ひっく‥‥・・こんなの‥‥こんなの‥‥嫌だよぉ‥‥ひっく‥‥」
 紫苑は親友で大好きであることに変りはない。なのに、自分の醜い感情でこんなことになってしまった。
 悲しかった。
「ひっく‥・・ぅぅ‥・・ぐすっ‥‥」
 十八歳は十分に成人と扱われる年齢である。
 泣きじゃくる蓮包の姿は傍目には情けないものであったかもしれない。
 道行く人は少なからず蓮包に注目していた。
『泣いてばかりじゃ‥・・駄目だ』
 そんな視線に蓮包は我に返ったのか、懸命に涙を拭う。
「‥・・あたし、紫苑に勝ちたい‥・・」
 蓮包の決意。
「なんでもいい! これだけは紫苑よりも勝ってるってことが一つでいいからあれば‥・・」
 それは自分自身に自信を持つということ。自分の存在意義の確認。
「そしたら‥・・前みたいに紫苑に向かって笑える‥・・笑ってみせるから!!」
 蓮包はその足で冒険者ギルドへと向かった。


 そうして蓮包の目に留まった依頼は、
・山中の洞穴に棲みついてしまった山鬼と小鬼の数匹を退治して欲しい
 という物であった。
「華国の武闘家で蓮包だよ。みんな、よろしくね!」
 無理に元気な様子を作っている。そんなところが端々の所作に感じられるのであった。

●今回の参加者

 ea0257 白鳥 氷華(28歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea2831 超 美人(30歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea4387 神埼 紫苑(34歳・♀・志士・パラ・ジャパン)
 ea8896 鈴 苺華(24歳・♀・志士・シフール・華仙教大国)
 ea9913 楊 飛瓏(33歳・♂・武道家・人間・華仙教大国)
 eb0833 黒崎 流(38歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 eb0993 サラ・ヴォルケイトス(31歳・♀・ナイト・人間・ノルマン王国)
 eb1044 九十九 刹那(30歳・♀・侍・人間・ジャパン)

●サポート参加者

九十九 嵐童(ea3220

●リプレイ本文

●前哨戦
 唐突に遭遇してしまったのは、三匹の小鬼であった。
 互いを視認した距離が近すぎた。すでに静かにやり過ごすことは難しそうであった。
「やろう。鬼達にこっちを気づかれるにしても、誘いだすのと待ち構えられるのとじゃ意味が違・・‥」
 神埼紫苑(ea4387)が言いかけた時、真っ先に飛び出していった影が一つ。
 蓮包である。
「あっ! 早いです!」
 九十九刹那(eb1044)が止める間もなく、蓮包は小鬼に肉薄して龍叱爪を抉りこむ。不意打ちであったので見事に攻撃がはいったが、その見事さ故に他の二匹はすぐさま逃げ腰となり、遁走にかかろうとする。
「‥‥後の二匹を!」
 逃しては後に差し障る。声をかけて、サラ・ヴォルケイトス(eb0993)は弓を引き絞る。
「ボクに任せて!」
 鈴苺華(ea8896)が流れる星のように宙を駆ける。急所に的確な打撃を与えて、小鬼を昏倒させる。
 遁走を開始していた最後の一匹、そのままでは追いつけない‥‥が、
「‥‥いくよ」
 サラの視線の先、射放たれた矢が小鬼の背中に突き立つ。小鬼が痛みにもんどりうったところへ冒険者達が追いついた。


●蓮包の悩み
「理由はよくわからないが、気負って戦うとろくな事にならないぞ。楽に行こう、楽に」
 黒崎流(eb0833)が蓮包の肩を軽く叩く。
 蓮包の行動は勇み足だったのは明白であった。いかに小鬼といえど、三匹を逃さず確実に仕留めるには相応の連携が不可欠である。他の二匹の小鬼に逃げられていたら、鬼は鬼なりに冒険者を迎えうつ準備をしていたかもしれない。
 が、顔あわせの時のぎこちなさから一連の様子を見れば、蓮包が何か屈託を抱えているのは感じられた。
「あなたの攻撃には焦燥がある。それは力みにもつながり、本来の実力を出せなくなるし、状況判断も甘くなろう」
 超美人(ea2831)が指摘するように、そのことは共に冒険する上での不安要素ともなりえる。
「‥‥ごめんなさい」
 自分でもそれはわかっているから蓮包は俯いた。
「何か悩みがあるなら‥‥よかったら話してくれないかな? あたし達なりに相談にのるよ?」
 神埼が言う。幸い時間にはまだ余裕がある。
 楊飛瓏(ea9913)は鬼達に捕らえた者はいないか、鬼達の脅威が差し迫った問題ではないか、などを気にかけていたが、今回はそこまでの緊急性のある状況ではなかった。
「悩みを吐き出してすっきりしてから、悪鬼を滅するのでも遅くはないだろう」
 同じ武学を極めんとする者として、飛瓏も蓮包の様子を気にかけている。
「紫苑ちゃん程‥‥あっ、神埼紫苑ちゃんじゃなくて、蓮包ちゃんといつも一緒にいる‥‥あっちの紫苑ちゃん程じゃないけどね、ボクも蓮包ちゃんの友達だって思ってるんだよ? だからね、もしボクに出来る事があるのならどんな小さな事でも良いからやってみたいよ」
 苺華が熱心な口調でそういう。かつて、蓮包とその友人の紫苑が催した模擬戦に参加した苺華は蓮包とは既知の仲である。
 それだけに苺華が蓮包を気遣う気持ちは強く、彼女の真摯な様子は蓮包の心を開きやすくしたと言える。
「ありがとう、苺華。みんなも‥‥‥‥ええと‥‥ね‥‥」
 蓮包が自分の心中を語り始めた。紫苑との実力差、自分の嫉妬心、そのことへの自己嫌悪。
「蓮包は蓮包でしかないし、自分が役に立てる事を見つければいいんだよ。私は近づかれたら手も足も出ないし、だから皆で一緒に戦うんだしね」
 最初に口を開いたのはサラである。まだまだ駆け出しの冒険者であるものの、長く射撃一筋に修練を積んできたのであろう。射撃の腕前は熟練の専門家と言えた。それだけに自分の得手不得手がはっきりしている。誰かと協力し合うことを自分の能力を発揮できるタイプである。
『蓮包の心理はわからないでもない。それは志士や侍、華国では武闘家か? 誰でも通る道だ』
 白鳥氷華(ea0257)も蓮包の心理を察している。
「『答え』はまさにサラの言うとおりであろう。だが、どうやってどうすればという『応え』は実地で身につけるしかない。戦闘というものに限らず、この世は姿定まらぬ水面の如し」
「蓮包ちゃん。例え親友でも、ううん親友だからこそ負けたくないって負けん気、そういうのを向上心って言うんじゃないのかな? ボクそう思うよ」
 苺華が蓮包の自己嫌悪を和らげようと励ました。


●鬼に巣くわれた洞穴
 山鬼と小鬼が棲みついた洞穴には、依頼人の情報通りにたどり着くことが出来た。洞穴が見える茂みの中で一度歩みを止めて、その様子を窺う。
 洞穴の入り口には小鬼の姿が確認できる。鬼の知能なりに見張りくらいはいるものらしい。
「自分が挨拶しに行って、外に出てきてもらおうかね?」
 流の言葉は適当なことのようであるが、つまりは自分が囮になって敵を誘き寄せようということらしい。
「そうだね。小鬼達に逃げられないようにするなら、前衛を努める三人には洞穴を囲むように散らばってもらって、流と‥‥、それに蓮包には囮を頼んでもいいかな? 囮の後は苺華も一緒になって遊撃、鬼達に逃げられないようにね」
 サラが作戦を提案する。特に蓮包に対して語りかけるよな仕草を見せる。それは蓮包に対してよい意味で期待をかけているという意思表示である。
「後の三人は後方からの援護だね。それでいいかな?」
 冒険者達は同意して、配置の場所へ向かった。

「‥‥震えが止まらない‥‥でも、やらなくちゃ‥‥」
 茂みの中に潜んで、そう呟いているのは刹那である。
 修練を積んで剣の腕前は十分なのであるが、今だ戦闘に慣れていない刹那。分散して攻撃のタイミングを計っている今は、緊張もひとしおである。
 霞刀と軍配を握る手に汗が滲む。
「‥‥動いた!」
 蓮包と流が洞窟へむかって近づいていく。
 精神を集中させ、刀にオーラを纏わせる。心臓の鼓動でその大きな胸が震えだしはしないか? 刹那はそれほどの緊張の中で様子を窺っていた。

「‥‥言葉どおりに挨拶をしているのか?」
 流と蓮包が見張りの小鬼相手に挑発を仕掛けている。流が本当に小鬼に挨拶をしていたようであるのが、飛瓏にも見てとれた。
 数合、得物を交えるが、すぐに小鬼が追われて一度洞穴に引き込む。わずかに間をおいて小鬼が集団となって洞穴から姿を現した。
「囮にかかったな」
 拳を構えて飛瓏は茂みから飛び出した。
 呼応して他の冒険者達も姿を飛び出してくる。
 思った以上に多い敵に戸惑っている小鬼達。飛瓏は手近な一匹を目標に定めて肉薄し、渾身の一撃を叩き込んだ。
「悪鬼は滅する。この拳、まだ未熟ではあっても」

「紫苑、山鬼が出てくる前に洞穴を封鎖する。洞穴の上、あれで洞穴を塞いでくれ」
 乱戦の中、氷華が紫苑に呼びかける。剣で指し示した先には‥‥
「蔓だね‥‥やってみるけど‥‥蔓くらいじゃ山鬼は止めきれないよ?」
 神埼が呪文の詠唱を始める。
「心配するな、私が補強する」
 氷華も呪文を詠唱する。
 神埼の魔法が発動し蔓が洞穴の入り口を格子のような姿になって塞ぐ。
 そこに重ねるように氷華の魔法が発動し、格子状になった蔓を氷漬けにした。
「ウガガアアァァッ!!」
 怪力を誇る山鬼も魔法の氷を破壊することは出来ず、洞穴の中に閉じ込める格好となった。

 飛瓏、刹那、美人が小鬼達をなぎ倒す。
 戦意を喪失して逃げていこうとする小鬼は、蓮包と流が仕留められていく。真剣を用いず、木刀を振るう流はその分だけ身軽であり、縦横無尽に小鬼を追い立てる。
 流と蓮包から奇跡的に逃れた小鬼も、高速で飛来するサラの矢と、流れ星の如き苺華から逃れる術は持ち得なかった。

 だが、最後の小鬼を倒し終えた時であった。
「ガアアアァァッ!!」
 山鬼が氷漬けの蔓を根ごと引き抜いて、洞穴から飛び出してきた。
 生半可の物理攻撃は受け付けない魔法の氷も、根の周りの土までは補強できるものではない。
「なに、目的は十分に果たせていたさ」
 氷華はそう言った。先に小鬼を全滅させるという目的は既に達しているのである。
 山鬼が蓮包に棍棒を振り下ろす。が、蓮包は素早いサイドステップで華麗に避けてみせる。
「あのような動きは‥‥我が流派にも似たものがある。‥‥私にはまだ出来ないが‥‥そうか、そういう戦い方もあるのだな」
 強さを求め、剣の腕ばかりを磨いてきた美人。だが、蓮包の動きを見て、自分に足りないものを見つけた。そのような天啓を得た想いであった。
「だが、まずは目の前の鬼だ!」
 美人が山鬼へ肉薄したところで、今度は美人を狙って棍棒が振り下ろされる。美人は日本刀でそれを受け止める。ビリビリと腕が痺れる。
「くっ、さすがに怪力だな。だが、その怪力を扱う技の拙さ、私の敵ではない! 覚悟!」
 強い生命力と怪力を誇る山鬼も倒れるまでに、そう時間を要することはなかった。


●そして‥‥
「あれ‥‥安心したら‥‥なんだか、また震えが‥‥」
 山鬼を倒した後になって、刹那がそんなを言った。戦闘中はほとんど無我夢中の態であったから、震えていたかどうかすら覚えてはいない。
「大丈夫? ゆっくり息を吸って吐いて‥‥そうすれば楽になるよ」
 蓮包が刹那をいたわる。
「私、まだまだ実戦は怖くて‥‥蓮包さんは大丈夫なんですか? 凄いですね」
 刹那はそう言って蓮包に尊敬の眼差しを向ける。
「蓮包には自分に足りない事を今回教えてもらった。お互い再開するまで腕を磨き再度共に依頼をこなそうではないか」
 次に声をかけてきたのは美人であった。
 二人とも親友の紫苑と同等の実力者である。それが蓮包に学ぶべきところがあったのだと言う。
『そっか‥‥すべてを持っている人なんていないんだよね』
 そう思うと、蓮包の心はふっと楽になった。
「あたしにも、あたしの『応え』が見つかるよね」
 蓮包はそう言って微笑んだのを、冒険者達も嬉しく思うのであった。